やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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教官!なんか黒森峰の副隊長さんが試合を前にめっちゃ挑発してるんですけど、礼儀を重んじる戦車道としては良くないんじゃないですかねー?
と、試合前のあのやり取りを見てるとすぐ近くにいる教官にチクりたくなってくる(笑)


そして、戦車道全国大会決勝戦が始まる。

「ここで試合ができるなんて…」

 

「そんなにすごいんですか?」

 

「戦車道の聖地です!!」

 

大洗駅から電車に乗ってしばらく、ついにやって来たのは東富士演習場。

 

なんたってここは自衛隊が演習にも使用している場所だ。戦車道…というより戦車好きにとっての聖地ともいえる。

 

しかし、こんな形で聖地巡礼できるとは思わなかったな。あーありがたやありがたや。

 

「なんで比企谷はさっきから拝んでるのよ…」

 

そりゃ聖地に来たら拝むものでしょ?ちなみに戦車だが電車に牽引してもらった、これにはさすがの駅長も苦笑いである。

 

「はい!私は今、決勝戦の会場に来ています!いやーすごい人と熱気ですね!!」

 

ふと大洗の制服を着たメガネ女子がなんか実況しているのを見かけた。あいつは確か放送部のマスゴミ、王 大河…だったっけ?

 

実際決勝戦の会場はえらい賑わいだ。出店は飲食はもちろん、プラモデル等の戦車グッズがあちこちにあるし、戦車の展示なんかも見える。よし、後で是非とも寄っていこう。

 

「美味しそうな出店がたくさんありますね」

 

「甘いものが食べたい」

 

「私も見たい戦車グッズが…」

 

「こらっ!!まずは戦車を格納庫に持っていくぞ、すぐに試合の準備だ」

 

出店の誘惑に釣られそうな五十鈴と冷泉、そして秋山に河嶋さんが喝をいれる。戦車を指定された格納庫へと移動させて、砲弾の積み込みや最終確認等をする必要があるからである。

 

…早速出店の誘惑に負けそうなうちの戦車道チームなんだけど、出店といえば結局アンツィオは来ているのだろうか?

 

「本日の試合の審判長を勤める蝶野 亜美です、よろしく」

 

格納庫で俺達を出迎えてくれたのは蝶野教官だった。この人審判長なのか…大丈夫なの?。

 

「それにしても初めてで決勝戦までくるなんて、みんなグッジョブベリーナイスよ!!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

だってほら、この会話のクオリティなのでだいぶ大雑把な性格してそうだけど、…正直不安だ。

 

「いやー、こちらこそ戦車道の指導やらなんやら、いろいろと感謝していますよ」

 

「いいのよ、こうやって戦車道を盛り上げるのは私達自衛隊としても大事な事だからね」

 

会長と蝶野教官が話してる。あぁ、考えてみればなにも指導だけじゃなくて、戦車道再開時の立ち上げから教官は関わってきているのか。

 

しかし会長はどういう経緯で教官と知り合ったのだろう?改めて底知れない人である。

 

「本当はこういう贔屓は良くないけど、あなた達が決勝までこれた事は私も嬉しいわ」

 

戦車道の大会の強豪校の顔触れは基本的に変わらない。なぜなら戦車戦というのは基本的には強い戦車を持っている方が有利に出来ているからだ。

 

そして強豪校は当然として強戦車を持っている。人員が卒業やらなんやらしても戦車は残るのでこの図式は基本的に変わらないだろう、それなんてクソゲー?

 

だが、そこで大洗の決勝戦進出だ。無名の高校がお世辞にも強いとは言えない戦車で、それも数も揃えないままに勝ち進んだ。

 

そりゃ大洗学園が戦車道を盛り上げるのに一役買っているのは間違いない。うん、それくらいの事はしているよね。

 

「大洗が優勝すればもっと盛り上がりますから、なんならもっと贔屓しちゃっても良いですよ?」

 

「もちろん、審判長として不正はしないわよ」

 

ちょっと、まだ俺なにも言ってませんよね?なんで今釘を刺されたの?

 

「とりあえず10式戦車下さい」

 

「…もちろんあげられないけど、あげても試合には出せないわよ」

 

そうなんだよなぁ…。戦車道のルールによると参加可能戦車は終戦までに戦線で活躍したか設計が完了されて試作が作られた車両に限定される。10式戦車は試合には使えないのだ。

 

「あれってそんなにすごい戦車なの?」

 

「もちろんです!陸上自衛隊の最新国産主力戦車ですよ!!」

 

「あれ1両あれば黒森峰は楽勝なレベルだ、無双できる」

 

黒森峰を相手に散々あれこれ悩んでた後に言う事でもないが、それが技術の進歩だ。かがくのちからってすげーっ!!

 

「…聞き捨てならないわね、誰が誰を楽勝だって?」

 

「…ん?」

 

俺の言葉に噛みつきながら向こうの方からやって来たのは…。

 

「…お姉ちゃん」

 

黒森峰隊長、西住 まほ。それと…えと?逸見ヶ丘 エリカさん…だったっけ?

 

「10式戦車があれば黒森峰も楽勝って話だが、なんか変な事言ってるか?」

 

「…ふん、無い物ねだりはみっともないわよ。そんな物あったって試合には使えないわ」

 

わかってんならそんくらい聞き捨てとけよ…。

 

「んで、何しに来たんだ? 試合前の偵察か?意外に狡い手を使うな」

 

「そんな訳ないでしょ!試合の前に教官に挨拶しに来ただけよ!!」

 

あぁ、そういえば知り合いなんでしたっけ?

 

「…本日はよろしくお願いします」

 

「えぇ、よろしくねまほさん」

 

姉住さんが教官に頭を下げる。こちらの方は見向きもしない…か。

 

「お久しぶりね」

 

代わりに西住に声をかけていたのは現副隊長さんだった。違う、お前じゃない。

 

「弱小校だと、あなたでも隊長になれるのね」

 

「…っ」

 

相変わらずやたらと西住に敵対心むき出しのやつだな…。しかしプラウダの時といい、みんな試合前に西住狙い過ぎだろ。

 

まぁ西住が今更こんな事で気落ちする奴じゃないのはわかっているが、個人的に現副隊長には罰を与えてやろう。

 

「教官、あんな事言ってますけど?」

 

「…えっ!?ちょっとあんた!!」

 

ただし与えるのは俺ではなく教官に任せる。ここはレッドカードで一発退場とかどうっすかね?

 

「逸見さん、戦車道は礼に始まり、礼に終わるの、そういう態度は良くないわね」

 

「す、すいません!!」

 

謝りながらもギラギラと俺を睨んでいるのがわかる。いや…教官の前で堂々と挑発すんのが悪いでしょ。

 

「正々堂々、お互いの健闘を祈ってるわ。今日は素晴らしい試合にしましょう」

 

そう言って教官は去っていく。試合の前にこの人もやることがいろいろあるのだろう。

 

「いくぞ」

 

「…はい」

 

それを確認した姉住さんは現副隊長さんに声をかけた。あぁ、もう行っちゃうのね。やっぱ西住には一言もないのか。

 

姉住さんにとって西住は西住流として倒すべき相手という事だろう。試合が始まれば全力で潰しにくる、という事か。

 

「…たまたまここまで来れたからっていい気にならないで」

 

去り際にまた現副隊長さんが声をかけてくる。いや、だからお前じゃないって…まったく反省してねぇなこいつ。

 

「なんだ?たまたまで決勝戦まで来れるほど、戦車道って楽な武道なのか?」

 

「その減らず口も今日までよ。見てなさい…あなた達邪道は叩き潰してやるわ」

 

教官、あの人まだあんな事言ってますよ。さっきのがイエローカードだったとしてもこれで退場とかどうっすかね?もう教官居ないけど。

 

「あなた達…、えへへ」

 

「…なんでちょっと嬉しそうなんだよ?」

 

「う、ううん!なんでもないよ!!」

 

ったく…叩き潰してやるとか言われたんだよ?本当、黒森峰は物騒な奴らばっかで困るよなー。

 

「エリカさん、あ、あの…」

 

ん?おや?あ、あれは!!

 

「小梅、試合開始までは自由と言ったはずよ。…好きにすればいいわ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

誰かこっちにやって来る。あぁ…ついに俺にもお迎えが来たようだ。

 

「あ、あの…みほさん、今日はよろしくお願いします!!」

 

「小梅さん…、うん。こちらこそよろしくね」

 

天使かな?天使じゃないよ、赤星だよ。なんだ天使じゃないか!!(確信)。

 

「比企谷さんも、今日はよろしくお願いします」

 

「あぁ!こちらこそ末長くよろしく!!」

 

「え…えと、ど、どうも?」

 

どうもって事はこれもう肯定って事でよろしいんでしょうかね!?

 

「二人共…やっぱり知り合いだったの?」

 

「え?」

 

「あ?」

 

…しまった。天使の降臨にあまりにもテンション上がっちゃったよ。

 

「いや…まぁその、あれだ。…やっぱり?」

 

「だって前に作戦会議した時に小梅さんの事聞いてたし…」

 

え?やだ嘘バレてたの?おっかしいなー、俺の偽装は完璧だったはずなんだけど。

 

「えと、前に私がみほさんに会えたのは比企谷さんのおかげで…」

 

「やっぱりそうだったんだ…」

 

それもやっぱりなのね…、いろいろと察し良すぎないこの子?

 

「言ってくれても良かったのに」

 

「別に、わざわざ言う事でもないだろ」

 

たまたま赤星が天使だったので上手くいっただけで、下手すれば余計なお世話にさえなった可能性もあるんだし。

 

「…八幡君、お姉ちゃんの事も知ってるよね?」

 

「まぁ…たまたま、だけどな」

 

「逸見さんともさっき仲良かった気がするけど」

 

「西住?視力大丈夫か?ちゃんと目見えてる?」

 

さっきの俺と現副隊長さんとのやり取りを見て言っているのなら、試合前にこれでは大変だ!いや、マジで!!

 

「さっきからどうしたんだ?」

 

「…別に、なんでもないよ」

 

いや、明らかに拗ねてるし、なんでもないとかいう奴は大抵なんかあるものだ。

 

…なんか、ね。

 

「それよりほら、せっかく赤星が会いに来たんだからいろいろ話しとけ」

 

「う、うん…」

 

正直言えばもっと話していたい所だが、ここは空気を読む。というか空気を読んだ結果西住がなんか怖いので、ここはとりあえずあんこうチームの所にでも退散しておこう。

 

「比企谷、みぽりんと話してる人って…」

 

「黒森峰の頃の友達だろ」

 

「比企谷さんともお知り合いのようでしたが?」

 

いや、お前らもかよ…。俺と赤星が知り合いだとそんなにマズイの?天使と話すには身分不相応って事なの?

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ごきげんよう、みほさん」

 

黒森峰の襲来を終えて格納庫内で最終チェックをしていると、ダージリンさんとオレンジペコがやってきた。

 

「ダージリンさん、オレンジペコさん、こんにちは」

 

「決勝戦進出おめでとうございます。まさかあなた方がここまでこれるとは思いませんでした」

 

珍しいな。毎回試合を見に来てくれているのは知ってるけど、こうして試合前に直接挨拶に来るのは初めてじゃないか?

 

「えと…私も驚いています」

 

「ふふっ、あなた方はここまで毎試合、予想を覆す戦いをしてきた。今度は何を見せてくれるのか楽しみにしているわ」

 

「が、頑張ります」

 

「あなたにイギリスの言葉を送るわ。四本足の馬でさえ躓く、強さも勝利も永遠じゃないわ」

 

もしかしてこの人、格言を言いたいからわざわざ来たんじゃないよね?ちなみにこれを日本語訳するなら『猿も木から落ちる』とか『河童の川流れ』みたいなことわざだ。

 

つまり日本語訳するならダージリンさんは『こんな言葉を知っていて?河童の川流れ』と言っている。イギリスに比べて日本って…。

 

「それを言う為にわざわざ来たんですか?」

 

やっぱり暇なんじゃないかな、この人達。

 

「ふふっ、もちろんマックス、あなたを誘いに来たのよ」

 

「えぇっ!?」

 

…またこの人は、なんで涼しい顔して平気で爆弾落としていくのよ。

 

「あら、ご存知じゃなくて?私達は毎試合、一緒に試合を見ているのよ、そうでしょ?マックス」

 

「いや…まぁ、そうですけど」

 

たしかに成り行き上そうなんですけど、何も今言わなくても良いでしょうに…。

 

「そういう事でみほさん、マックスを借りていくわね」

 

「だ、ダージリンさん!!」

 

「なにかしら?」

 

…珍しく西住が強めの口調でダージリンさんに声をかけている。ダージリンさんもそれを正面から受けていた。

 

「えと…その、ちゃんと…返して下さいね」

 

「…あら?」

 

…あら?と俺も思わずダージリンさんと同じような反応をしてしまう。それほど西住には珍しい言葉だった。

 

それとは別に…借りるとか返してとか、物じゃないんだから。

 

「ふふっ、それはどうかしらね。決めるのはマックスではなくて?」

 

しかし、西住のこの言葉にも涼しい表情で返答するダージリンさんマジぱねぇな…。

 

「は、八幡君…」

 

「いや、そんな目でこっち見られても…」

 

というかダージリンさん、ここで俺に話振らないで。どうしろっていうのよこれ。

 

「…帰る場所があるなら帰るのがぼっちだ」

 

例えばそう…自宅とか、後はほら…自宅とかね! やだ俺自宅大好きじゃん!!

 

「…帰る場所はあるよ、絶対なくなったりしないから」

 

「…そうだな」

 

そういえばもうあったのだ。俺が、自宅以外にも帰れる場所が。

 

舞台は決勝戦、いよいよ大洗学園の存続をかけた最後の戦いが始まるか…。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…んで、なんでわざわざ呼びに来たんですか?」

 

「私なりの宣戦布告…かしらね。イギリス人は恋と戦争には手段は選ばない、と言ったでしょ?」

 

「それは聞きましたけど…」

 

なんで今更宣戦布告してくる必要があるのか。おかげでなんか試合前なのにもう砲弾飛び交いそうな勢いだったよ…俺に。俺にかよ。

 

「それではいきましょうか?今日は決勝戦に相応しいティータイムを用意しているわ」

 

「あー、その話なんですけど。すいません、今日はちょっと約束があって」

 

「えっ…」

 

えっ…て、いや、そこで素でびっくりされても。

 

「いや、今日は妹が来てるんで、相手してやらないと」

 

「あ、あぁ…妹さんね。そういえば挨拶がまだね、よろしければ紹介して下さらない?」

 

「いや、紹介って言われても…必要ありますか?」

 

「もちろんよ、もしかしたら今後聖グロリアーナに入学する可能性もあるでしょう?」

 

ある…かなぁ?聖グロリアーナってお嬢様学校だし偏差値とか高そうだ、大洗でもわりとひーひー言ってる小町が受験するのは難しい気がする。

 

…と思って、俺の知ってる聖グロリアーナの面々を考えていくと…ローズヒップが頭に過った。うん、たぶんいける。

 

「そうなったらあなたの妹さんが私のダージリンの名前を継ぐ事になるかもしれないわね」

 

「いや、小町は戦車道は未経験ですから…」

 

そういえば聖グロリアーナのソウルネームって代替わりでの襲名制なんだっけ?

 

「そうなると…比企谷 ダージリン、ふふっ…素敵だと思わないかしら?」

 

えぇ…素敵なのかなぁ、この人のダージリンに対する評価が謎すぎる。

 

しかもそうなると俺は妹の事をダージリンと呼ばなければいけないのか…?ちょっとカオスすぎない?

 

「そういえばダージリンさんの本名は教えて貰えるんですか?」

 

「…そうね、あなたにはいずれ、ね」

 

少し悪戯っぽく微笑みながらダージリンさんが答える。なんだか上手くはぐらかされたような…ある意味少しだけホッとしたような…そんな気がした。

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