やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
ここで書くとネタバレなので詳しくは後書きにて。
「ごちそうさまでした」
決勝戦を前に思わぬ遭遇となってしまったが、やはりアンツィオ高校の飯は美味いな。
「ふ、ふん…まぁまぁ美味しかったわ」
しかし、なぜプラウダ高校の二人と昼食を共にする事になったのだろう…カチューシャさん、口元にパスタのソースつけてるし。
「ん?カチューシャ、口元にソースがついてるぞ、ほれ、拭いてやるから動くな」
そしてそれを拭ってやる安斎さん…、普段のアンツィオ高校の連中への対応といい、この人もやっぱりおかん属性なんだよなぁ。
「それでプラウダ高校も大洗の応援か?」
「えぇ、カチューシャがどうしても来たいとの事でしたので」
「ちょっとノンナ!余計な事言わないで!!」
いや…今更そこ否定しなくても、もうバレてますからね。
「へへん、私らなんて前日から来てたんだぜ!!」
「寝坊しなくて良かったですね…」
なんだろうか…うん、本当にね。
「そうか、そろそろ決勝戦が始まるのか…」
チラッと安斎さんが時計を見る、決勝戦開始までもうそろそろか…俺も早めに小町と合流しないとな。
「ドゥーチェ、あとは私達だけで大丈夫ですから、ドゥーチェも決勝戦、見に行ったらいかがですか?」
「いや、しかし店の事もあるし…」
アンツィオ高校の屋台にはなかなかの行列が出来ている、ここで安斎さんが抜けるとキツい気がするが。
「試合が始まればお客さんも少なくなると思いますから」
「私らの分まで応援してきて下さい、アンチョビ姉さん!!」
「ドゥーチェ!!」
「ドゥーチェ!!」
「「「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!!」」」
「みんな…、すまん!あとは任せたぞ!!」
すげぇ盛り上がってる所悪いんだけど、周りのお客さんついて行けてないからね、この突然のドゥーチェコール。
「アンチョビさんは仲間に慕われてますね」
「そうみたいね、まぁカチューシャ程じゃないけど」
「プラウダでもカチューシャコールが必要ですか?」
「え?それは……………、い、いらないわよ!そんなの!!」
いや、今絶対ちょっと良いかも?とか思ったでしょ、なんか間があったし。
まぁそんな訳で安斎さんも決勝戦を見れるようでなによりだ。いやー良かった良かった。
「じゃあ安斎さん、俺達はこれで」
颯爽と、自分なりの精一杯の良い笑顔を作ってこの場から去ろうとする。
「…え?ちょっと待て比企谷、それは無いだろ!この流れで私を一人にするんじゃない!!あとアンチョビだ!!」
…ダメでしたか。いや、そんな気はしてたんですけどね。
「それと、そのなんか企んでそうな邪悪な笑顔はやめてくれ…」
自分なりの精一杯の笑顔を全否定されてしまった…。比企谷 八幡は笑顔になれない。ふっ、また新しいラノベが誕生してしまったぜ…。
「残念だったわねアンチョビ、ハチューシャは私達と決勝戦を見るのよ」
「そうなのか?てっきりまたダージリン達と見るかと思ってたんだが…」
もうこの人の中では、俺が試合を観戦する=ダージリンさんのお供って公式が成り立ってるのね。うん、そうだよね。あの人、結局毎回来てるもんね。
「まぁ良いじゃないか、宴会でもそうだが何事も大勢の方が楽しいものだ」
いやーそれはどうっすかね安斎さん、わりと今までの経験則で言えばそんな事は無いと思うんですが。
んー、でもこの会話の流れ前にもあったような…あの時言い出したのは確か…。
「ハァイエイトボール!久しぶりね!決勝戦進出、おめでとう!!」
噂をすればなんとやらというか…向こうからやって来たのはサンダース大学付属高校のケイさんである。
「えと…ども、応援に来てくれたんですか?」
「オフコース!またエキサイティングでクレイジーな作戦、期待してるからね!!」
応援に来てくれたのは嬉しいんだけどこれ、直訳すると興奮する狂った作戦を期待してるって事だよね!?
相変わらずアメリカンにテンション高い人だ。そんなケイさんの圧倒的陽オーラに隠れがちだが、アリサとナオミも居る。
「なんであいつはまた女の子に囲まれているのよ、どうして私の気持ちに気付かないのぉ…」
訂正、隠れがちとは言ったがアリサも負けていない。ただし圧倒的負のオーラである。
なんだこいつ、まだたかしの事を気にしてんのか。女の子に囲まれてとか、そろそろたかしの奴爆発しても良いんじゃないかな?
「ところでアリサ、通信傍受機は結局ダメだったのか?」
チラッと安斎さんとプラウダの二人と話してるケイさんを確認して、こそこそとアリサに声をかける。
「だから没収されたって言ったでしょ。というかあんたまだ諦めてなかったの…」
呆れられちゃったよ…いや、だってほら。やっぱり欲しいじゃん?
「ダメ元でケイさんに聞いてみるとかどうだ?」
「ちょっと!あのあと私が反省会でどんな目にあったか知らないでしょ!!」
え?そんなに怯えるとか、マジでどんな目にあったの…。ちょっとサンダースの反省会の闇が深いんだけど。
「二人共なんの話をしてるのかな~?」
「「い、いえ!なんでもありません!!」」
うわ…びっくりした、いきなり声をかけてくるんだもん。今の会話聞こえてないよね?
…しかし、この通信傍受機の事もそうだが、武部のアマチュア無線の件も含めてアリサにはだいぶ恩がある、いずれこの借りは返さないとな。
「と、ところであんた、決勝戦なんだけど…もし良かったら私と一緒にーーー」
アリサが何か言おうとしていたが、それよりも先にある人物が目についたのでよく聞こえなかった。
なぜなら早速借りを返せそうだからだ。そのある人物には俺も見覚えがあった。サンダース高校に偵察に行った時に顔を見ていたからだ。
「アリサ、たかしが来てるぞ」
アリサが思いを寄せている女の子に囲まれてるらしいなろう系リア充ハーレムボーイ、たかし君だ。異世界から転生でもしてきたのかな?
「え?いや…それよりも」
しかもどうやら今は一人でいるらしい、これはチャンスだろ。
「声をかけるなら今がチャンスだぞ」
「え…えと、その、………そ、そうね」
猫でもぼっちでも、与えられた恩はきちんと返す。だからみんな、もっとぼっちには優しく接しよう。でもあんまり接しすぎないでね、そこら辺とっても敏感だから。
たかしに向かうアリサだが…、んー、なんかとぼとぼ歩いてるけど大丈夫か?あいつ。
「あれ?ナオミ、アリサは?」
「…たかしの所へ行きました」
「え?そうなの?私はてっきり…」
ケイさんがまっすぐに俺を見てくる。正直、こういうまっすぐな性格の人にじっと見られるのは苦手だ。…心を見透かされてる気さえしてくる。
「…まぁ、素直になれないアリサも悪いわね」
「隊長、アリサの事は私に任せて下さい」
「えぇ、頼んだわよ、ナオミ」
「イエスマム」
おっぱいの付いたイケメンさん、ナオミはクールにアリサを追いかける。え?追いかけちゃうの?
「エイトボール」
「は、はい…」
ケイさんが俺の肩に手を置いた。…なんか、前にもこんなシーンを見た事があったような。その時は俺じゃなかったけど。
「今度またサンダースに遊びに来てね。…反省会するから」
…前半と後半で声のトーンが違うんだけど…。前半はなんか「お腹がすきました」とか言いそうだけど、後半はもう聖剣とかぶっぱしそう。
どうしよう…すっげぇ行きたくねぇ、というか反省会するから遊びに来いってどういう事ですか!?
「…はい」
…とはいえ、それくらいの罰は甘んじて受けるべきなんだろうな、俺は。
ーーー
ーー
ー
「ハチューシャ、まだなの?もう歩き疲れたわよ」
「もうちょっとですよ…、つーか歩いてないじゃないですか」
ノンナさんに肩車されてるカチューシャさんが、いかにもツッコミいれて下さいとでも言いたげな発言だったのでつっこんどく、ようやく小町との待ち合わせ場所についた。
「おーい!小町!」
「あっ!お兄ちゃん遅……………い?」
あ、小町が固まったよ。久しぶりに見たな、姉住さん以来か。
いや、そりゃ固まるよね…だってこれ。
「久しぶりだな、元気だったか?」
安斎さん…は、肝試しの時にも一度会ってるからまだ良いとしても。
「ハァイ!この子がエイトボールのシスター?」
サンダース大学付属高校のケイさん。
「カチューシャより…背が大きい」
「こんにちは、小町さん」
プラウダ高校のカチューシャさんとノンナさん。
と、小町からすればいきなり知らない女子が三人も登場である。さすがの小町もフリーズ中だ。
なんかRPGばりに人が増えてってる気がするが、これが本当にRPGなら酒場に仲間を預ける所なんだけどね。もちろん預けるのは俺、だって魔王討伐とかやりたくないし。
「…はっ!お兄ちゃん、ちょっと良い?」
我に帰った小町がちょいちょいと俺を手招きする。うん、言いたい事はだいたいわかる。
「お兄ちゃん、これ…どういう状況なの?」
「本当にどういう状況なんだろうなぁ…」
言いたい事はだいたいわかるが答えを返せるはずがなかった、本当にどういう状況なの?どうしてこうなった!!
「いくら小町にとってお姉ちゃん候補が増えるのは良いことだと言っても…アメリカの人とか高身長の人とか、更には小町より年下とか…節操なさすぎだよ」
「言っとくが小町、あの人達全員日本人だから」
「え?そうなの?」
「それと全員俺より年上だ」
「えぇえ!?そうなの!!」
前者と比べて後者の小町の驚き具合がヤバい。なにがすごいかってこれ、ほぼカチューシャさんが驚きの大半をかっさらってるのがさすがだ。
しかし事前に教えられて良かった…。下手すればまたカチューシャさんがヘソを曲げそうだったし。
「ま、まさかみんなお兄ちゃんに会いにきたの!?」
「いや、大洗の試合を見に来たんだろ…、みんな今までの対戦校だぞ」
つまり西住に会いに来たのだ。もう流石というか…これが西住流か?ちょっと西住流万能すぎるだろ、俺も学ぼうかな。
「とはいえ!小町のお姉ちゃん候補には間違いない!!」
ちょっとうちの妹大丈夫なの?そんなにお姉ちゃんが欲しかった?ごめんね、お兄ちゃんで。
「とと、皆さん、挨拶が遅れてすいません。兄がいつもお世話になってます、妹の小町です」
そして、この敏腕営業マンさえ認めそうなスマイルである。
「ハチューシャの妹ね。私はカチューシャよ、言っとくけどあなたよりお姉さんなんだから」
だが相手は無惨様ばりの暴君で知られている…かは知らないけど、カチューシャさんだ。これは強敵だぞ、小町。
「はい、よろしくです、カチューシャお姉ちゃん」
「お、お姉ちゃん…、ふ、ふーん、なかなか見る目あるのね」
ちょっとカチューシャさんがチョロすぎて、簡単に契約して魔法少女にでもなってしまいそうで不安になるんだけど…。
「ふふっ、元気が良いわね。こっちこそよろしくね、小町」
「はい!でも皆さんこれから試合を見に行くんですよね、小町がご一緒でも良いんですか?」
「もちろんだ、なんなら小町にも試合前にうちの料理を食べて貰いたかったんだがなー」
わいわいと会話を続ける。しかし小町の奴、溶け込むのが早い早い、相変わらず抜群のコミュニケーション能力だな。
「じゃあ早速行きましょう!レッツゴー!!」
「と、待て小町、その前にダージリンさんだ」
「もーお兄ちゃん、紅茶なんか飲んでる暇ないよ!早くしないと良い席無くなっちゃうんだからね!!」
「お前それダージリンさんの前で絶対言うなよ…」
1日10回はティータイムをするらしい聖グロさん達相手には、絶対禁止のワードである。
「一応…人名?まぁ人名みたいなもんだからな。前に言ったろ、聖グロリアーナの隊長の人だ」
いや、紅茶の名前を人名と言っていいのか正直判断がつかないんだが、本名を知らないので仕方ない。
「…マジでお兄ちゃん、どうしちゃったの?明日死ぬの?」
「…なんか俺もそんな気がしてきた」
妹の声がマジで心配してるトーンでした。
ーーー
ーー
ー
「ダージリン様、もう少しで紅茶の用意ができます」
「えぇ、ありがとう、ペコ」
試合の度にいつも用意している観戦席に座り、聖グロリアーナの隊長、ダージリンは余裕の表情を見せていた。
「それにしてもダージリン様、どうして今回は直接マックスさんを誘いに行ったんですか?」
「行動する事は少しも恐れはしない、恐れるのはただ無為に時を過ごすだけよ」
「チャーチルですね」
「私なりに今までの経験を踏まえたの、ただ待っているだけでは得られないものもある、と」
「恥ずかしがらないで最初から素直にマックスさんとだけ一緒に試合を見たい、と言えばいいと思うんですが…」
「何か言いまして?オレンジペコ」
「い、いえ!なんでもありません!!」
取り繕って紅茶の用意を続けるオレンジペコ、しかし今回のダージリンには自信があった。
淑女として、自分から男性を誘うのははしたない(という言い訳)と考えていた彼女が自分からアプローチをかけたのだ。
「妹さんが来ているのは予想外だったけど…、いずれご挨拶はしようとは思ってましたし、ちょうど良かったわ」
先手は打った、あとはもうただ待つだけである。
「ペコ、勝利の紅茶を頂けるかしら?」
「はい、ダージリン様、ちょうどマックスさん達も来ました」
「えぇ…、…達?」
オレンジペコに言われたダージリンが違和感と共に向こうからやってくる人達を見る。
「ちょっとダージリン!言っとくけどハチューシャはカチューシャと試合を見るんだから!!」
「お久しぶりです」
「ダージリン!また楽しいお茶会にしましょう!!」
「わ、私も良いのか?良いんだよな?」
彼女にとって見知った顔が何人もいた。ちなみに比企谷 八幡だが…一番後ろからのそのそと来ていた。
「………」
「…ダージリン様、今日は最高級の茶葉を用意しました」
「…さすが、オレンジペコの名前を継ぐ者ね」
「えぇ…まぁ、どうせこうなると思っていたので」
「………」
はい、そんな訳で決勝戦の観戦メンバーです。
本当は登場キャラ全員出してオールスターも考えてたんですがキャラ多すぎるとそれはそれで回しきれないというか、逆にそれぞれのキャラにスポットが当たりにくくなるなーと、まぁ自分の力量不足ッス。
なのでやっぱりメインは各高校の隊長となりました、ノンナさんは仕方ない。
小町は俺ガイル側からいずれがっつり出したかったので、八幡以外にももっとガルパンキャラと絡ませてみたかったです。