やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
正月一発目なので番外編でも書こうかなとも考えたんですけどもう決勝戦ですし、下手に中断せず一気に書ききりたいなって。
つまり、新年一発目からまさかの風紀委員主役話、こりゃ今年一年縁起が良い。…のかな?
いまだに三人の名前と顔が一致しない事もあるけどアニメスタッフも時々わからないらしいしセーフ!!
「ルノーが…」
風紀委員、カモチームがマウスの砲撃によって大洗本隊と分断されてしまった。
圧倒的存在感を放つマウスを前にして、ただ1両で取り残されたのだ。
「まずいですね…」
戦車スペック的にルノーはそこまで悪くない、大洗にとっては貴重な重戦車でもある。が…今回は相手が悪い。
「お、おい!そど子の奴、大丈夫なんだろうな?」
「いや…あれ?アンチョビさん、そど子さんの事知ってるんでしたっけ?」
ノリと勢いで通ってるアンツィオ高校の隊長である安斎さんと、真面目堅物な風紀委員の委員長、そど子さん。接点はいまいち出てこないが。
「もちろんだ、風紀委員のみんなとは一緒に宴会した仲だからな!!」
あぁ、そういえば前に肝試しやった時にそんな話聞いたな…。ちなみに大洗の風紀委員は100人以上居るので結構な大宴会になっちゃったそうである。
というかそど子呼びで良いのね…そういや本人は嫌がってたけど、後藤も金春もそど子って呼んでたなぁ。
「ルノーに乗っているのは大洗学園の風紀委員なのね」
「風紀委員会の皆さんには小町もよくお世話になってますよ、応援してる子も多いんじゃないですか?」
「え?そうなの?俺とかよく小言言われるし、反省文書かされる事あるんだけど?」
普段からあの厳しさだし、恨み辛みの溜まってる生徒のが多そうに思える。
「それはお兄ちゃんがそういう扱い受けてるだけでしょ。ちゃんとしてれば優しいよ、そど子さん」
「そういう扱いってどういう扱いだよ…」
「あなたがきちんとしていないのはわかったわ」
「問題児なのね、やっぱりサンダースの反省会に出る?」
勘弁して下さい。てか…いつの間にかそんな風紀委員のブラックリスト入りしてたのね、さすがに冷泉より上ではない事を祈りたい。
「お兄ちゃんだって別に風紀委員は嫌いじゃないでしょ?」
「…お小言と反省文が嫌いだけどな」
厳しいお小言も優しさの内、ってのは日頃のそど子さんと冷泉の関係を見ていれば良くわかる。単にそど子さんが世話好きなのかもしれないが。
100人規模の風紀委員も一見多いと思われがちだが、生徒数が三万人規模な事を考えるとむしろ少ない。つーかよくよく考えたら少なすぎて風紀委員までもがブラック委員会なんだよなぁ…。
そんな人数で大洗全体の風紀を守ろうとするそど子さんが大変なのはよくわかる。なので冷泉はもうちょっと迷惑かけないようにした方が良い。
え?俺?大変だろうから風紀委員の皆さんの負担を少しでも減らす為にも、ブラックリストから除名してくれちゃって良いですよ。
ーーー
ーー
ー
「比企谷君!ちょっと良いかしら!?」
「はい?…げっ」
決勝戦を間近に控えたある放課後、声をかけられたので振り返ると風紀委員の面々が居た。
「ちょっと!人の顔を見るなりげっ、とは何よ!失礼じゃない!!」
「いや…まぁ、その…なんか用ですか?」
いや、だってこれ、またなんか説教されるパターンでしょ…。俺、またなんかやっちゃいました?は基本的にこう使われるべきである。
「まぁいいわ、あなたにこれを渡そうと思って」
「…応援の心得?」
えーと…なになに。
ヤジはとばさない、フラッシュをたかない、かぶりものをかぶらない。
…うん、まぁ、なんだこれ?
「なんですか?これ」
「見てわからないの?応援の心得よ!!」
それは書いてあるからよくわかるけど、だから何なのか聞きたい。
「あなたも決勝戦、応援には来るでしょ?」
「まぁ…そうですね」
ここまで来たのだ、いくら生中継されるからといって今さら家でのんびり見るつもりはない。
…結果はこの目で見てみたい。
「これはその為に用意したのよ、それにあなたの他にも見に来る生徒は多いわ。応援も大洗の生徒らしく、秩序あるものにしたいの」
「フラッシュもたきませんし、かぶりものもかぶりませんよ…」
カメラとか苦手だし、かぶりものって…歴女グループじゃないんだから。
「そう?それなら安心ね!!」
「ヤジをとばさない…は否定してないよね?」
「大丈夫かなぁ…」
安心するそど子さんの隣でひそひそと話す後藤と金春、君達のような勘の良い子供は嫌いだよ?
「で、どう?こんなものかしら」
「…何がですか?」
「応援の心得よ!他にも何か注意する所はないのか聞いてるの」
「いや、なんで俺に聞くんですか?」
「だって比企谷君、戦車道の試合を最初から見てたし…」
「戦車道の試合って普通の試合と同じような応援でも良いのかって急にそど子が言い出して」
「当然よ!やるからには応援もきちんとしたものじゃないとダメなんだから!!」
あー、まぁ戦車使いますもんね。他の競技とかに比べても異質すぎるか。
「別に普通で良いんじゃないですか…」
というか、クラス対抗運動会とかでも勝ち負けなんてどうでも良かった俺からすれば、あんまり応援とかもした事ないので応援自体良くわからんのが本音だ。
「そう、ありがとう。なら早速風紀委員のみんなにこれを配るよう伝えるわ」
てきぱきと後藤と金春に指示を送る。応援のやり方まで考えてるとか、真面目というか堅物で頭が硬いというか…。
「それにしても黒森峰ね、戦うとなるとあまり気乗りしないわ…」
「まぁ強敵ですしね…」
戦わずに済むならそれにこした事はないが…もう決勝戦だ、そんな事は言ってられない。
「戦車道の話じゃないわ、風紀の話よ!黒森峰の生徒といえば礼節のある真面目な生徒が多いと聞くわ、そんな生徒相手に戦うのは風紀委員としてどうなのかって事よ!!」
そっちかよ!なにこの人、悪特攻と善攻撃半減でもついてるの?
「試合は試合だよ、そど子…」
「それはわかってるわよ、でも私達は戦車道メンバーである前に風紀委員でもあるのよ!!」
風紀委員である前に戦車道メンバーである事も考えて欲しい…、なにこの無限ループ?
「比企谷君、なんとかしてそど子を納得させれないかな…」
「なんとかっつってもな…」
後藤に言われてどうしたもんかと考える。まぁ確かに黒森峰の生徒のイメージって品行方正というか、堅物というか、軍隊というか…。
『ふん、だいたいこんな型落ちの戦車と素人ばかりの学校に黒森峰が負ける訳ないわ』
…わりとそうでもないというか、あら不思議!現副隊長さんを混ぜる事で黒森峰のイメージが一気に変わる!?この影響力はさすが副隊長ですわ。
「黒森峰もそんな真面目って訳じゃないと思いますよ」
「そんなはず無いわ、黒森峰の生徒といえば規律をしっかり守る事で風紀委員の中でも有名なのよ」
すげぇな黒森峰のブランド力って…、だがそど子さんは勘違いしている。ならば俺はその幻想をぶち壊す!!
「黒森峰には速度無制限のアウトバーンがあるんですよ」
「そ、速度無制限ですって!?」
「えぇ、速度制限が無いって事は暴走行為をやりたい放題って事ですよ?」
いや、実際暴走行為する生徒が黒森峰に居るのか知らんけど。そもそもアウトバーンは黒森峰学園艦の外周にある。つまり下手すれば海にドボンだ。
改めて考えると危険すぎない?よく封鎖しないよね…。
「で、でも…それもみんな秩序を守って暴走行為なんてしないからあるんじゃないの?」
んー、もう一押しか、だったらこいつはどうだろうか。
「あと、(ノンアルコール)ビールが有名だとかで学園艦内の工場で作られてます。生徒も平均して150Lは年間飲んでるとか」
「び、ビールですって!?私達まだ未成年なのよ!!」
「はい、(ノンアルコール)ビールです」
いやほら、未成年でもノンアルコールビール飲むのも正直どうかと思うし、アルコールがあるかないかはこの際良いだろう。
今回大事なのは未成年がビールを飲んでいる、この事実だ。
「速度無制限の道路にビールですって!と、とんでもない不良じゃない!ごも代!パゾ美!これは風紀委員の出番ね!!」
「なんか上手く乗せられた気がするんだけど…」
「嘘は言ってないぞ、嘘は」
「戦車道にとっても、風紀にとっても、黒森峰は負けられない相手ね!風紀委員の力を見せてあげるんだから!!」
あー、こうなるとうちの風紀委員は手強いぞ…、思わず黒森峰に同情したくなってくる。
こうして決勝戦を前にして打倒黒森峰に決意を燃やした風紀委員、カモさんチームだった。
ーーー
ーー
ー
『カモさんチームの皆さん!大丈夫ですか!!』
「大丈夫よ、私達の事は良いから先に行って!!」
カモさんチームが取り残された事に慌ててⅣ号から通信が入る。目の前にはマウス、どう考えても大丈夫といえない状況だが、車長、園 みどり子はそう返した。
「そど子…どうするの?」
「決まってるわ!あんな戦車校則違反よ!風紀委員として見過ごせないわ!!」
「戦車道のルールと校則は関係無いんじゃないかな…」
「でっかい図体の癖に何がマウスよ!こうしてやるんだから!!」
ルノーの放つ砲撃はマウスに直撃するが装甲に阻まれびくともしない。
お返しとばかりに放つマウスの砲撃はルノーをわずかに掠め、近くに着弾した。
先ほど比企谷が言っていたが、壁に砲身をぶつけた事で多少だが照準が狂っているのだ。だが…それも時間の問題だろう。
まるで次は外さないとでも言わんばかりにマウスの砲身がルノーに向かう。
「も、もうダメかも…」
「諦めちゃダメよごも代!!」
それが単なる強がりだというのはそど子自身がわかっていた。ルノー単独でのマウスの撃破はほぼ不可能といえる。
だが、風紀委員として、彼女は諦める訳にはいかない。
不良(多少捏造ではあるが)を前に、屈する訳にはいかない。
「もう一度いくわよ!スーパー風紀アタック!!」
ルノーはもう一度マウスに挑むべく砲身を向けた。
と、そこで…。
「お前達の火力で装甲が抜けるものか!あっひゃっひゃっひゃっ!!」
そど子は確かに聞こえたのだ、日頃から風紀を守ってきたその耳で。
そして視力2.0の不良生徒を見逃さないその目で、彼女は見つける。
マウスの背後でチョロチョロと動いているのはⅢ号J型、先ほど大洗のチームをマウスの所まで誘導した戦車である。
まるでこちらを煽るようなその言葉、行動にそど子はわずかに砲身の先を変えた。
「今よ、撃ちなさい!!」
「うんっ!!」
放たれた砲撃はマウスの横を通りすぎ…。
「馬鹿めっ!どこを狙って…、えっ!?」
Ⅲ号に直撃し、白旗を上げさせた。
「やったねそど子!!」
「当然よ!影でこそこそしてる不良を私達が見逃すはずがないわ!!」
「でも…、さすがにもうダメだよね」
パゾ美がぼそりと呟く、後ろのⅢ号戦車こそ破壊したもののマウスの砲身はこちらに向いたまま。
砲撃が発射され、直撃をうけたルノーはぶっ飛ぶと逆さまにひっくり返り白旗を上げた。
ーーー
ーー
ー
『大洗学園、ルノーB1bis、行動不能!!』
「………」
蝶野教官のアナウンスが告げる、カモチームはこれでリタイアか…。
いや、あの状況でよくⅢ号を落としてくれたものだ。正直マウスのインパクトが強くて忘れかけてたけど、あれにうろちょろされてたら厄介だった。
いや、うろちょろしてくれたおかげで撃破できたんだけど、しかしこれはどう見ても…。
「というかあのⅢ号…カチューシャならシベリア送りにしてる所ね」
「学園艦の裏庭で戦車道訓練用の塹壕掘りですね」
プラウダ怖ぇ…。いや、端から見ても迂闊には思うけどね、おとなしくマウスの後ろに隠れてれば良かったのに。
まぁそれを見逃さなかった風紀委員の皆さんが流石というか…風紀委員の力に磨きがかかってきて、それはそれで今後が厄介だなぁ。
ともあれこれで大洗は標的をマウスに絞り込めた、これならなんとか…。
『大洗学園、Ⅲ号突撃砲、行動不能!!』
「ッ!!」
ルノーを撃破したマウスは進軍を続ける。カバチームの砲撃を弾いたマウスはそのままⅢ突を撃破してみせた。
「あぁ!カバさんチームの皆さんが!!」
「これで2両撃破された…」
しかもここでカバチームがやられたのは痛い…痛すぎる。低い車高を生かした待ち伏せは市街戦でも存分にその力を発揮できたはずだ。
試合の度に相手戦車を倒してきた大洗のポイントゲッターだが、肝心の黒森峰の本隊を前にして失うとは…。
迫るマウスとモニターにはもう1つ、パンツァーカイルの陣形でまっすぐ市街地を目指してくる黒森峰の本隊も映っている。
到着までもう時間もないだろう、それまでにこのマウスを仕留めなくてはならない。
「さすがマウス…大洗学園は正念場ですね」
それ、もう何回聞いた事か…もう毎試合ピンチか正念場しかない気がするのは気のせいかな?
「正念場を乗り切るのは勇猛さじゃないわ」
オレンジペコの言葉にダージリンさんはモニターを眺めながら静かに呟いた。
「冷静な計算の上にたった…捨て身の精神よ」
…つまり、それくらいやらないと勝てない相手って事なんだよな。
こちらに残された時間は少ない、いよいよ対マウス攻略に向けた最終決戦が始まるだろう。