やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
正直来るとは思わなかったけど原作も最終巻が出ますしこれは最後までいくって事ですよね。
ラノベの最後までやったアニメってすごい少ないというか…下手すれば無いんじゃなかったかな?
まぁいつから始まるかはわかりませんが…うん、待つのは得意なんだ(震え声)。
煙幕の中のアリクイチームもただその場で待機するだけじゃなく、位置を特定されないよう僅かに動きつつ砲撃を繰り返している。
これなら現副隊長さんも早々に仕掛けてはこれないだろう。束の間ではあるが膠着状態という訳だ。
その間に西住が姉を倒してくれるのがベストなんだろうが…一騎打ちまで持ってきてもそこは西住まほ、激戦は今も続いている。
その出入り口ではポルシェティーガーが集中放火を浴びているが…黒森峰も戦力が分断された以上、どうにも攻めきれないようだ。
一つは煙幕で足止めを食らっている現副隊長の隊、そしてもう一つはーーー。
『根性ーーーーー!!』
うん、モニターからでも聞こえるくらい磯辺が声をあげている。逃げる八九式と、それを追いかける黒森峰だ。
ただ逃げるだけじゃなく、時には相手戦車を挑発し徹底的に引き付けてくれている。
「八九式…やはり良い動きですね」
ふと呟いたのはノンナさんだ。そういやこの人と八九式にも多少だが縁があったな。
準決勝のクライマックス、逃げる八九式とそれを追うプラウダの本隊。その中でノンナさんはフラッグ車のアヒルチームを撃破する為に狙いを定めていた。…あいつら、大体いつも逃げてんな。
高校戦車道において特集が組まれるくらいには有名な砲手としてナオミが上げられるが、ノンナさんもそのナオミと肩を並べるレベルの砲手らしい。
そのノンナさんと、さらにはプラウダの本隊をプラスした相手に最後まで逃げ切ったバレー部連中のスペックの高さって、冷静に考えたら恐ろしいな…。
「あんな低スペック戦車でよく逃げ回れるわよね」
「今あるもので最善を尽くしてこそ、ね」
「そうだぞ。たとえタンケッテでも戦い方によっては重戦車を相手に出来る、という事だ」
そんな、落ちこぼれだって必死に努力すればエリートを越えられる、みたいなことをどや顔で言われても…。
「カチューシャ、あなたもわかっているはずです」
「うぐっ…、わ、わかってるわよ。認めてあげるわ。でもノンナ、次は絶対倒すのよ」
「はい、もちろんです、カチューシャ」
一回戦からここまで、隊長ズのアヒルチーム評価の高いこと。まぁそれだけ実績を残しているという事だが。
確かに八九式はカチューシャさんのいう通り低スペックだが、それを根性で補うバレー部の高スペックっぷりなんだよなぁ…。
ーーー
ーー
ー
「トスッ!」
「レシーブ!!」
「アターックッ!!」
体育館にバレーボールの音が響く。ちなみに時刻だが、もうとっくに放課後を過ぎている。
「…まだ残ってたのか」
いや、俺が言う台詞でもない気はするが。決勝戦に向けての作戦会議やらなんやらで、最近帰るのが遅いのだ。社畜ここに極まれり。
ようやく帰れると思ったら、体育館に明かりがついており、聞いたことのある声と最近よく聞くバレーボールの音。もう聞きすぎて耳に残っちゃってるので、下手すればバレー部に洗脳されてそう。
「あっ!比企谷コーチ!!」
体育館に残っていたのは案の定アヒルチーム、バレー部の連中だ。俺が残っていたのは作戦会議等をしていたからであって、戦車道の練習自体はもう終わっているはずなんだが。
「お前ら何やってんだ?」
「バレーの練習ですけど?」
あぁ、うん。それは見ればわかるんだけど…問題はこれが戦車道の練習が終わった後だという話だ。
戦車道の練習だって、最近じゃ決勝戦に向けて結構ハードなんだけど、そこからこいつらバレーの練習してんのか…どんだけ体力モンスターなんだよ。
「…なんでまたこんな時間に?」
「我々バレー部がこの体育館を使えるのは、早朝かこの時間くらいなんだ」
「他の部活動の人達が使ってる間は使えませんからね…」
「やっぱり体育館で練習するのが一番ですから」
「お、おう…」
部員不足で廃部となったバレー部は体育館も満足に使えないので、こうやってゲリラ的に体育館を使うしかないって事か…。
会長…もうバレー部復活させてやれよ、悲しすぎんだろ…。
「それで、比企谷コーチはどうしてここに?」
「みなまでいうな、佐々木。比企谷の心意気を汲んでやるんだ」
「え?という事はキャプテン!!」
「あぁ!ついにバレー部五人目のメンバーだ!」
「いや…ないから、勝手に数に入れないでくれる?」
同情して損した…、つーか宗教じみてて怖いんだけど。
「今ならもれなくレギュラーになれます!!」
「ならないし…」
そもそもうちをいれて五人や、試合には出れないしスクールアイドルも成立しない。
「残念です。せっかくバレー部が復活できると思ったのに…」
「大丈夫だ河西!決勝戦に勝てばバレー部を復活させると生徒会と約束はしてある!!」
「そうでした!絶対勝ちましょう!!」
まぁ負ければ大洗学園そのものが廃校になっちゃうから、復活も何も無いんだけど。
「…そういやそんな約束してたんだっけ?」
これがバレー部連中が戦車道を選択した理由らしいが…人数不足のバレー部を、いくら戦車道特典とはいえ復活できるものなのか?
「あぁ、会長も『んー、良いんじゃない?』と言ってくれたからな」
…なにそれ怪しすぎだろ。もうちょっと人を疑う事を覚えた方が良いと思うんだが。
余談だが、自動車部も四人なので部活動としては人数不足なんじゃ………止めておこう。これ以上はほら、いろいろとアレだから。
うちの生徒会も大概、闇が多いんだよなぁ…。
「それに決勝戦で活躍できれば、バレーに興味を持ってくれる人もきっと出てくるはずだ」
「いや、その理屈はおかしいだろ」
戦車道に興味を持つ奴なら居そうだが、なんでそこでバレー?そいつちゃんと試合見てたの?
「我々バレー部が乗り込めば、そこはコートであり、バレーだ!なぁみんな!!」
「「「はい!キャプテン!!」」」
「お、おう…」
なんかもうそれでいいや…。こうして比企谷 八幡は考えるのをやめた。
「あっ!アヒルさんチームの皆さん、ちょうどよかった。ちょっと良いかな?…あれ?八幡君?」
考えるのをやめていたら、入り口から西住がちょこんと顔を出した。先に帰らせたはずだったんだが、まだ残ってたのか。
「西住、お前まだ残ってたのか?」
「えと…うん、帰る途中で体育館に明かりがあったから、もしかしたらって」
どうやら俺と同じ理由のようだ。ヤバいな…俺もそうだったように、なんかバレー部に引き付けられている気がするんだけど?
「はい、なんでしょうか西住隊長!!」
磯辺が率先して前に出る。磯辺と西住は同じ歳なんだが、こうして敬語なのはバレー部の体育会系が染み付いているのだろう。
「うん、決勝戦の市街戦での作戦なんだけど…」
西住がバレー部に市街戦でのアヒルチームのおおよその作戦を説明する。まぁ大雑把に言えば、黒森峰の戦車を引き付けるだけ引き付けて逃げ回れってものなんだが。
「なるほど!おとりになりつつ逆リベロし、相手をコミット・ブロックしつつ、サイドアウトを得てシンクロ攻撃ですね!!」
「え、えと…」
「まぁそれでだいたいあってる」
「あってるの!?」
西住、深く考えるな、俺と同じく考えるのを止めるのだ。
「よーし!みんなもそれで大丈夫か!!」
「「「はい!キャプテン!!」」」
「これ…私が変なのかな?」
こらこら西住、俺をあいつらと一緒にするんじゃないよ。
「ところで西住隊長、バレーに興味はありませんか?」
「え?えと…バレーですか?」
ふと矛先が西住の方へと向く。部員確保に全力だとしても見境なさすぎだろこいつら…。
「はい!楽しいですよ、バレー!!」
「でも私、バレーとかやった事ないし…」
「大丈夫です!うちは初心者も大歓迎ですから!!」
「アットホームで誰でもできる簡単な部活動ですから!!」
その誘い文句だとブラックな匂いがぷんぷんするんだけど?俺も将来こういう企業の宣伝には騙されないようにしよう…そもそも働きたくないんだが。
「えぇっと…その」
あー…見るからに困ってんなぁ、西住は押しには弱いだろうし、バレー部連中はぐいぐい来るからな。
「まぁ待て、西住は戦車道の隊長の仕事があるし、バレー部と両立は無理だろ」
「それは…確かに」
「すいません、西住隊長」
「ううん、力になれなくてごめんね」
まぁバレー部連中も別に悪気があった訳じゃない。ただ新入部員確保に必死なだけなのだ…わりと死に物狂いでだが。
「…八幡君、ありがとう」
「…ん、あー、まぁ気にすんな」
そもそも西住がバレー部に入って戦車道が疎かになってみろ、また河嶋さんがアップを始めちゃうだろ?『監督、肩はもう暖まってるんで自分、いつでも行けます』とかアピールされちゃうよ。
「そうか、残念だが仕方ない。せっかく比企谷も入部してくれたのに」
「えぇ!?八幡君、そうなの…?」
「いや…ねぇから、さらっと記憶捏造しないでくんない?」
「バレー…、バレーかぁ」
「…西住?」
おーい、戻ってこーい。だから入部してないからね?やんないから、最強のおとり役とか目指さないからね?
ーーー
ーー
ー
『大洗学園、八九式中戦車、行動不能』
無情にも蝶野教官のアナウンスがアヒルチームの撃破を告げる。
モニターに映る白旗を上げた八九式。黒森峰を引き付けていたが、さすがに逃げ回り続けるのも限界であり、砲撃が直撃した。
とはいえ、ここからこの黒森峰の戦車隊が姉住さん達の所へ向かうとするなら相当時間がかかるだろう、仕事としてはそれで充分だ。
最強のおとり役ってのもあながち冗談とはいえなくなってきたな…。
これでこっちは残り三両…、いよいよ追い込まれてきたな。
それに…だ。八九式が撃破された事で戦況もまた動いてくるだろう。
今もまだ、ティーガーⅡに乗る逸見は二両のパンターと煙幕の前で砲撃戦を続けている。
それを続けている限り、決定打はよほど運が悪くないと起きないはずだ。だから…仕掛けてくるならそろそろだろう。
「それで、副隊長さんをどうやって倒すのかしら?」
ダージリンさんも、逸見がそろそろ仕掛けてくる事を予想しているのだろう。
「言っとくけど、ティーガーⅡは強いわよ」
「わかってますよ…」
なんせⅡと銘打つ以上、あのティーガーⅠの後継機…と言って言いか個人的に微妙だが、武装はティーガーⅠの更に上。どっちが強いかは…まぁ、一長一短といったところか。
まぁ、それでも…勝算はある。三式の火力なら、倒せない相手ではない。
「こんな格言を知っていて?」
「ダージリン様」
「えぇ、そろそろ来る頃だと思っていたわ」
ピクッと反応したのはダージリンさんとオレンジペコ…一体何を警戒してたんだこの人達。
ん?いや…その二人だけかと思ったが、カチューシャさんが吹き出しそうになったし、ノンナさんも顔を隠して震えている。
ふっ、俺の物真似も決勝戦へ来てクオリティが相当上がっているようだ…なにそのいらないスキル。
つーか聖グロリアーナだけじゃなくて、別の学園艦のこの二人にまで通じるって…ダージリンさん、普段どんだけ格言言いまくってんだよ。
「上ばかり向いている者は、下に何があっても気付かない」
「…ペコ、これは誰の?いえ、漫画なのかしら?」
「すいませんダージリン様、私もわかりません。ローズヒップさんが居れば良かったんですが…」
ちょっとー、なんで漫画って決めつけるの?
「まぁ…今適当にふっと出た言葉ですし、強いて言えば自分の言葉、ですかね?」
どうせ似たような言葉はたくさんあるだろうけどね。
「マックス、それはルール違反でなくて?」
「むしろ、いつからルールができてたんですかね…?」