やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
最近ちょっといろいろ忙しくて執筆が進まない…。
「なんでお前さんは更新が遅いんだ」
「わしが悪いのではない!この手が悪いのだ…この手が勝手にソシャゲとか始めるのだ!!」
「あぁ!動かなくなったナリ!!」
「さすがに…もう腕がパンパンっちゃ…」
ぴよたんが持っていた砲弾をゴトリと床に落とす。
当然だ。煙幕を張ってから今まで、装填の連続だった。いくら山籠りで鍛えたとはいえ、人は必ず疲弊し、消耗する。
「西住さん、ごめんね、私達ゲームオーバーみたい…」
『皆さん、怪我は!?』
それは彼女達が出来る最後の報告、そして…伝えなければいけない情報。
「それは大丈夫だけど」
「ボス…倒せなかったぴよ」
『いえ…、ありがとうございます』
その言葉を聞いて通信を終える。彼女達は今現在も一騎打ちの最中だ、これ以上会話を続けて集中できなくなる事は避けなければならない。
副隊長の撃破には失敗した。その情報をきちんと伝えたアリクイさんチームのメンバーは戦車から降りる。
…心残りはもちろんある、悔しくも。
「…ごめんね比企谷さん、せっかく作戦考えて貰ったのに」
ーーー
ーー
ー
「………」
三式中戦車から出てきたアリクイチームは、見るからにヘロヘロだった。
…当たり前だ。装填の間隔を狭めて連続砲撃なんて、口で言うのは簡単だが、実際にやるとなると無茶苦茶もいいところである。
更には、相手の出方を見て最後の砲撃をぶちこむタイミングを見極める必要さえあるクソゲー感。誰だよ、こんな作戦考えた奴。
…うん、俺なんだよね。そんなクソゲー作戦をアリクイチームの奴らは文句も言わずにやってくれた。
あいつらが居なけりゃ、俺は戦う資格さえなかった。いや、思い返せばいつだってそうなんだが。
練習試合でも、一回戦でも、二回戦でも準決勝でも、結局いつも最終的に俺は誰かになにかを頼っていた。
試合に出ない俺が一人であれこれ考えても、それは全くの無意味で無力だ。
作戦があっても手段がない。そしてその手段を得るには常に誰かの力が必要だった。
笑えてくる冗談だ。ぼっちこそ至高!他人に頼らず一人で生きているぼっちこそ完全無欠!とか言っていた俺がである。
今でもはっきりと言おう。別にそれが間違っているとは思っていない。一人でいる事が悪い事だ、寂しい事だ、って考えは当然間違いだと思う。
何も知らない奴等が勝手に決めつけて嘲笑うな、憐れむな。
でも、だからといってーーー。
「マックス…あなた」
「意外ね。立ち直りも早かったし、わりと清々しい顔してるじゃない」
「そりゃ、これで仕事が終わりましたからね」
誰かに頼る事を、それを勝手に悪と決め付けるのも…間違い、なんだと思う。
そもそもが知らなかったのだ。やり方がわからなかった、その発想が無かった。
それをあいつらが教えてくれた、やり方を教えて貰った。
"魚の取り方すら知らなかった俺に、魚の取り方を教えてくれた"。
「あとはもう…立ち合いは強く当たってもらって、あとは流れでお願いしようかなと」
「お兄ちゃん…それ、仕事放棄なんじゃないの?」
「いや、それはどっちかというと…」
いや、黒森峰相手に八百長組めるとは思えないけどね…。
「いいか小町、俺の作戦は失敗したんだ。無能な奴が働くのは組織にとって一番迷惑なんだぞ」
無能な働き者ほど迷惑なものはない。つまり、無能で働かない者は逆接的に組織にとって有益になり得るという事だ。
「ハンス・フォン・ゼークトですね」
どうやら聖グロリアーナの格言センサーが反応したのか、オレンジペコが解説を入れてくれた。ところで格言センサーってなんだろ?
「なによそれ?」
「有能な怠け者は司令官に、有能な働き者は参謀にせよ。無能な怠け者は下級兵士に、無能な働き者は銃殺刑にせよ、ね」
という有名な組織あるあるである。イギリス好きなダージリンさんにとっては、ドイツ軍人の言葉なんだがどうなんだろう?
「お兄ちゃん、下級兵士だって」
「今の話聞いて下級兵士で断言するってどんだけだよ…」
「ふふっ…そうね、あなたはどちらかと言うと司令官向きかしら」
「それ、誉めてるんですか?」
怠け者という評価はどうやっても変わらないらしい…。
まぁ怠け者の仕事はここまでとして、あとは有能な働き者に頑張って貰う事にしよう。
特にうちの自動車部はそこら辺がヤバい。すごい…のではない、ヤバいのだ。
ーーー
ーー
ー
「お疲れ様です」
「あぁ、比企谷か、お疲れ様ー」
昼間のポルシェティーガー炎上事件から気になって自動車部へと顔を出してみる。しかし、今現在進行形で仕事中の自動車部メンバーにお疲れ様と言われるのはどうにも心苦しい。
「ポルシェティーガー…なんとかなりそうですか?」
「んー、あとは調整次第かな。決勝戦までには間に合わせるよ」
「腕の見せ所だね」
いや…そうは言っても昼間のあの大炎上の後だ。まず修理するとこから始めるとして、こんな事繰り返してても決勝まで間に合うかどうか…。
「ほら、ポルシェティーガーならそこに」
…直ってらっしゃる!少なくとも外見はもうバッチリだった。なんなのこの人達、ジョバンニなの?一晩でやっちゃうの?
「いや…部品とかどうやったんですか?」
そもそもこれ、別にポルシェティーガーだけの話じゃなくて、前々から疑問だったのでこの機会に聞いてみる事にする。
大洗にある戦車は多種多様、各国戦車の闇鍋パーティーだ。当然戦車によって使う部品も違ってくる。
学園艦といえば海の上、そう都合良く部品が手に入るとは考えにくい。
「私達、学園艦が寄港した時にそこの自動車工場の仕事を手伝ってるから、そのお礼に部品を分けてもらってるんだよ」
「君達が来てくれると5倍は仕事が捌けるって評判良いんだよな~、これが」
おい…それで良いのか自動車工場…。
「でもそれ、自動車の部品なんじゃ…」
「あと足りない部品は自分達で旋盤で加工して作ったり…って所かな」
「すんません、もう充分っす…」
あ…ありのまま今聞いた事を要約するとだ。この人達、部品すら一から加工して作ったりしているって事になる。
技術力とかジョバンニとか、そういうチャチなもんじゃねぇ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
「上手く間に合えば良いんだけどね…テラダ先輩の仇討ちって訳じゃないんだけど」
「…テラダ先輩?」
「うちの部長だった人、去年卒業しちゃったんだけどね」
あぁ、自動車部の前の部長さんか。テラダ先輩…、なんか24時間耐久レースに連続出場しそうな名前だ。
「ほら、そこにある車。学園艦の隅に埋もれてたのをそのテラダ先輩が見付けて来て、24時間寝ずに整備してた事もあったんだ」
そっちの24時間耐久かよ!?…えー、その人本当に高校生なの?
「でも、結局卒業までに間に合わなかったんだよね」
「戦車道が落ち着いたら、私達で直してあげたいね」
そう言って自動車部メンバーが手を添える車はというと。
「いやそれ…マッタビハイクルじゃないですか!?」
「マッタビ…?」
「違う違う、これはコスモスポーツって車だよ」
いーや、違うね。これは帰ってきたウルトラメンに出てたマッタビハイクルだ、カラーリングこそ違うが間違いない。
テラダ先輩…なかなか良い目の付け所である。
「なんかわからないけど、比企谷も車に興味があるって事かな?」
「ならツチヤ、あれ持ってきて」
「はーい」
…しまった、なんか知らん間に目の前に大量の自動車専門雑誌っぽいのが積まれている。
「いや、俺はその…別に」
そういえば自動車部もバレー部と同じく四人なんですよねー。しかもツチヤ以外は三年生なので、来年卒業ときたらバレー部以上に部員確保が必要なのは違いない。
はいそこ、バレー部が廃部になったのに自動車部は…とか突っ込まないこと。そのネタはもう散々やったからね。
「自動車部に入れば毎日24時間、車も戦車も弄り放題だよ」
だからそれ、なんのセールスポイントなんだよ。バレー部も似たような事言ってたけど。
…いや、まぁ好きな人にとっちゃ本当にセールスポイントなんだろうな。バレー部のバレーも、自動車部の自動車弄りも、それこそずっとやっていたいくらいには好きなのだろう。
うーん…このワーカホリック感、やっぱり働いたら負けなんじゃないだろうか?
ーーー
ーー
ー
思えば働いたら負けだという信条を掲げていた俺ではあるが、まさか本当に働いて負けるとは…因果応報というか。いや、今はそこら辺はどうでもいいか。
そんな訳で自動車部はその有能さと働き者具合が混ざりあって最強に見えるまである。
黒森峰相手に集中放火を受けながらもただ受けているだけでなく、近付いてきたパンターを撃墜までしてる、ヤバい(確信)。
しかしこれならもう少しは持ちこたえられそうだ…。
「ティーガーⅡ…来たわね」
…来ちゃったかぁ、もうちょい空気読んでくれても良いと思うんだけどね。
「彼女…顔付きが変わったわね」
「…ですね」
モニター越しでもはっきりと見てとれる。先ほどまでとはまるで違う逸見エリカがそこに居た。
くっ…、きっと赤星から大量のバフを貰ったんだな!天使からのバフとかなんてけしから…じゃなくて羨ましい。
とかそんな冗談言ってる場合じゃなくて、だ。やはりここでこいつが来るか…。
本当に、あの時仕留められなかった事が悔やまれる。まほさんと一騎打ちに持ち込む作戦を考えた時から、最大の障害はこいつになる事はわかりきっていた。
戦いの中で成長し強くなる。なんて展開は王道だ、現に大洗学園の連中も試合を通じて強くなった。
ただ、それをどうして仲間内だけの特権と都合良く言えるのか?当然、相手にだってその権利はある。
『邪魔よッ!!』
逸見エリカの合流後は早かった。本人の戦力は当然だが、その的確な指示に砲撃を受けるポルシェティーガーは項垂れたように砲塔を下げ、白旗を上げる。
『大洗学園、ポルシェティーガー行動不能』
「これで…残りあと1両」
大洗の戦力は西住達あんこうチームを残すのみ、それも逸見達が合流すれば袋叩きは確実だ。
だが…まだだ。
『突撃!中央広場へ急げ!!』
残る戦力を一まとめにして逸見は中央広場、西住達姉妹の所へ向かおうとする。
『ッ!ポルシェティーガーが邪魔で通れません!!』
だが、その入り口には白旗をあげたポルシェティーガーが今もまだ陣取っている。
『白旗のあがった戦車は攻撃してはならない』、つまり破壊不能の障害物が今度は入り口を陣取るという訳だ。
これを排除するのは彼女達選手の役割ではない。
『回収車急いで!!』
『ゆっくりで良いよ~』
とりあえず…回収車が来るまではなんとかなりそうだ。本当にゆっくりでいいからね、もっとゆっくりしていってね。
「…そう穏便にはいかないようね」
「ーーーッ」
だが、その時の逸見は地団駄を踏む訳でもなく、回収車を待つ訳でもなく。
味方の戦車を踏み台にし、ポルシェティーガーの上を無理やり通り抜けようとした。
強引で無茶苦茶だ、つーかまずどうやって味方の戦車の上に乗り上げた?
いや、そもそも問題はそこではなく。
あの黒森峰が、逸見エリカが、お世辞にも王道とはけして呼べない、こんな泥臭い無茶苦茶な発想を思い付いたのだ。
『今行きます!待っていて下さい隊長ッ!!』
突破は予想よりずっと早く、逸見はポルシェティーガーを乗り越え中央広場へと向かう。
そこではⅣ号戦車とティーガーⅠ、二両の戦車が向かい合っていた。