やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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小説書く時に参考がてらガルパン見てたら西住殿と五十鈴さんと武部さんは同じクラスで普通Ⅰ科2年A組で秋山殿が普通Ⅱ科のクラスは不明、冷泉さんは不明だと思ってました。
でもそど子さんが冷泉さんの遅刻データを消す時、そこに書かれていたのは普通Ⅰ科A組だったんだけどどういう事なの…?
一応この小説では八幡、西住殿、五十鈴さん、武部さん、ねこにゃーは同じクラスとして扱ってます。

更新の遅い理由、しほさんと八幡の会話が全然出てこない…。


そして彼は再び西住流と出会う。

ここは試合会場から離れた平原。一応はモニター越しに試合を見れると言えば見えるが、少し歩けば観客席にはつく。

 

だから人が居ない所へと向かっていた俺も、自然とここに辿り着いた訳なんだが。

 

なのに…なぜ?

 

「………」

 

なんでここに(西住流師範の)先生が!?…この出だしだとなんかギリギリなハプニングでも起きそうだし止めとこう。

 

正直もう会う事は無いと思っていたこの人と、まさかここでエンカウントするとは。

 

つーかめっちゃ睨まれてるし、さっき突っ込みを入れたのをそんなに根に持っているのか…。

 

「試合…見に来てたんですね」

 

ともあれ出会ってしまった以上、このまま無言を貫くのも空気が重いので声をかける。

 

「…えぇ」

 

え…それだけ?俺も大概会話とか苦手だけどこの人、言葉のキャッチボールする気ないのか?

 

「…やはり、あの子は西住流に相応しくないわ」

 

むしろドッチボールだったよ!いや、ドッチボールじゃ生温いな…会話の砲撃じゃねぇかこれ。

 

「…さっき拍手してませんでした?」

 

「蚊が居たのよ」

 

えぇ…マジでそれ押し通すつもりなのかよこの人。

 

「いや…だからそれで誤魔化すのは無理が…」

 

「蚊が居たのよ」

 

「…そうですね、蚊が多いですね、夏ですし」

 

…押し通されてしまった。この突破力はさすが西住流だ。

 

いや、仕方ないじゃん。…だって超怖いんだもん、この人。

 

「西住流には相応しくない…ですか」

 

「えぇ、あの子の戦いを西住流と呼ぶ訳にはいかないわ」

 

まぁ…そりゃそうだ。他にやり方が無かったとはいえ、煙幕やらなんやら使える物はなんでも使った。

 

西住流の戦い方とはかけ離れたやり方だ。どう言葉を取り繕っても、あれを西住流とは呼べないだろう。

 

「でもーーー」

 

でも、だが、それでも。この人が認めなくても一つの事実はここにある。

 

「でも、勝ったのはみほね」

 

「………」

 

驚いた。俺が言おうとするより先に、しほさんは答えたのだ。

 

「…どうかしたのかしら?」

 

「え?あ…いや、すいません、意外だったんで」

 

よくよく考えたら失礼な返答ではあるが、それだけ驚いていたのだろう。

 

「私はただ事実を口にしただけよ。優勝したのは大洗学園、それだけよ」

 

…本当にそれだけだろうか?いや、そこは変に突っ込むのも野暮になるだろう。

 

その言葉を、この人から聞けただけで充分だ。

 

「比企谷さん」

 

「…え?」

 

「…なにを戸惑っているの?あなたの事でしょう?」

 

…あぁ、いや、そうなんですが、急にこの人から呼ばれると違和感というか。つーか俺の名前覚えてたのね。

 

「…えと、なんですか?」

 

「みほは…来年も戦車道を続けるつもり?」

 

「続けますよ、たぶんですけど」

 

もちろん、決めるのは西住だ。だからこれは俺の勝手な憶測になるが、今の西住が再び戦車道から離れる事はないだろう。

 

「…そう」

 

それだけ、ただそれだけの短い返事だ、表情もほぼ変わらない。

 

そう…ほぼだ。その僅かな変化は、姉住さんが微笑んだ時の柔らかい表情に良く似ている。

 

先ほど拍手の時にも見せたその表情は、やはりこの人も母親なのだと思わせる。

 

「…嬉しそうですね」

 

だからか、それを茶化すつもりはなく、素直に感想を口にしてしまった。

 

「えぇ。来年、あの子の居る大洗を黒森峰が倒さないと意味が無いもの」

 

…本当、素直じゃねぇなこの人。しかもサラリととんでもない事言ってくれるし。

 

去年の敗北から今年はマウスとかいうチート兵器持ち込んで来た黒森峰だ、来年辺りにはもうドーラとか持ち込んで来てもおかしくない。

 

あ、ドーラって80㎝列車砲の事ね。うん、80㎝砲なんだよ。なお!戦車道は安全には充分配慮されています!!(重要)

 

「もちろん、あなたも居る大洗をね」

 

「……………え?」

 

…なんですと?この人今何を言い出したんだ?

 

「いや、俺は関係ないと思いますが…」

 

「蝶野教官からあなたが大洗の戦車道に関わっている事は聞いてるわ、作戦も考えているそうね」

 

ちょっときょーかーん!本当にあの人ちょくちょく俺の前に障害作ってくれるよね…、前に戦車道が嫌いだと言ったのをまだ根に持っているんだろうか。

 

…ん?あれ?この流れどっかで…と思ったら、そういや姉住さんも同じ流れで俺の事知ったんだよな、親子揃ってなにやってんの!?

 

「みほの今の戦車道にはあなたも居る、だったら…あなたが居ない大洗を倒しても意味が無いもの」

 

それってつまり西住流のターゲットになってません?『お前もまとめて叩き潰すんだから逃げんなよ?』宣言ですよね!?

 

嫌だなぁ、怖いなぁ、ドイツ戦車に囲まれる夢でも見そうである。

 

「…準決勝の時とはずいぶん印象が違うわね、今のあなたからは覇気を感じられない」

 

そりゃ俺は覇王色の覇気は使えませんし。そもそもあの時はいろいろ覚悟完了していた訳だけど、今回は完全に不意討ちだったのだ。

 

「しっかりなさい、それでは認められないわ」

 

「…認められないって何をですか?」

 

「…なんでもないわ、菊代」

 

「はい、奥様」

 

「…え?」

 

気付いたら背後に菊代さんが居た。にこにことした笑顔でなんかすごい楽しそうにしている。つーか全然気配を感じなかったんだが…これも西住流なの?

 

「…いつから居たんですか?」

 

「今来た所ですよ」

 

絶対嘘だ、すごいにっこにこ顔しながら平気で嘘付いてるよこの人、怖ぇよ。

 

「帰るわよ」

 

「わかりました。では比企谷さん、少しだけよろしいですか?」

 

しほさんに言葉を返して頷くと、菊代さんはちょいちょいと俺を手招きする。

 

「みほお嬢様との事、頑張って下さいね」

 

「…何がですか?」

 

はて?と惚けてみると菊代さんは、ん~と口元に人差し指を当てて考える。

 

「もしかして…まほお嬢様ですか?」

 

「いや!?だから何がですか!?」

 

あれ?もしかして西住流で一番恐ろしいのって実はこの人なんじゃね?とさえ思える。

 

ラスボスの黒森峰を倒したと思ったら、どう転んでも勝てなさそうな隠しボス、更には裏ボスの出現とかどうやっても詰んでるじゃねぇか…。

 

「わかりませんか?でも…これはわかっているはずですよ。今あなたが本当に居るべき場所は、こんな所ではないはずです」

 

「………」

 

まぁ…そうだ。本当なら照れも恥も捨てて、試合が終わったなら一番に向かうべき場所はそこであるべきだ。

 

「ふふっ、心配はいらないようですね。では比企谷さん、またお会いしましょう」

 

菊代さんはペコリと頭を下げて後ろで待っていたしほさんの所へ向かう、しほさんは俺達の様子を無言で見つめていた。

 

そのまま帰る二人の背中を目で追う、いきなりの出会いではあったがおかげで気持ちも固まった。

 

…そろそろ試合の後片付けも一段落している頃だろう。大洗も黒森峰も、各選手は撤収の準備をしているくらいか。

 

はっ!そうだった…、赤星が帰ってしまう前に会いに行かねば!!(使命感)

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

大洗学園の戦車倉庫に顔を出す頃には、日も沈みかけて夕方頃になっていた。各チームは戦車から降りて勝利に大盛り上がりといった所か。

 

「うおぉお!ありがとぉ!そど子ぉお!!」

 

「ちょっと!離れてよ!!」

 

着くなり冷泉とそど子さんが抱き合っていたというまさかの百合スタートである。…なにこれ?

 

「なぁ…、これどういう状況なの?」

 

意味がわからずゴモ代とパゾ美に聞いてみる。

 

「冷泉さんの遅刻データをそど子が消したの」

 

「そういう約束なんだよね?」

 

あぁ…それで、つーかあんなテンション高い冷泉を初めて見た、そんなに嬉しかったのか。

 

「でも良いのかな?こんなやり方で遅刻を無しにするなんて風紀が乱れそう…」

 

「司法取引的なアレだ、生徒会が良いって言ってたし何も問題はないだろ」

 

そもそもこれを餌に冷泉を戦車道に誘った俺からしても、遅刻は取り消して貰わねば困る。

 

「そもそもこの取引を持ち出したのって…」

 

「比企谷君よね」

 

はて、なんの事やら私にはさっぱりですな。滅相もない、私には無理でございます、このように目も腐ってますし。

 

「…そういやあいつ、どんだけ遅刻してたんだ?」

 

学園主席で成績トップな冷泉が留年に関わるくらいとかどうなんだろう?

 

「えっと…確か」

 

「251日だったよね」

 

「…今って二年の一学期だよな?」

 

…一年ちょいでその遅刻数とか、今ある遅刻がチャラになっても結局危うくないかあいつ。

 

「冷泉さん、これからは遅刻せず毎日きちんと朝学園に来る事、良いわね!!」

 

「大丈夫だ、なぁ比企谷さん」

 

「なぜそこで俺に同意を求める…」

 

完全に俺に起こして貰う事込みで考えてるよね、こいつ。

 

「あなた達…また風紀を乱すつもりでしょ!!」

 

だから俺まで風紀委員に巻き込まれるのは勘弁だ。風紀委員のお小言は冷泉が受けるべきなので、さっさとこの場から離れよう。

 

「比企谷、私達バレー部の力を見たか!!」

 

離れようと思ったらバレー部に捕まった。

 

「バレーってかそこは戦車じゃねぇのか?」

 

「八九式も我々バレー部の一員だ!つまり…八九式の力はバレーの力でもある!なぁ!みんな!!」

 

「「「はい!キャプテン!!」」」

 

バレーって万能なのな…。

 

「…良かったな、これでバレー部も復活すんだろ?」

 

「あぁ!ついにバレー部の復活する時が来たんだ!!」

 

磯辺達元バレー部のメンバーはその為に戦車道を志願し、ここまで戦ってきた。

 

…じゃあ、バレー部が復活したらどうするんだろうか?

 

「…良かったな、これでこれからはバレーの練習に打ち込めるぞ」

 

「あぁ!そうだな!!」

 

こいつらが戦車道をやる意味は…もう無くなるのだろう。

 

厳密には戦車道は部活動ではなく選択授業なので、選択授業で戦車道をとれば続ける事は出来るだろう。

 

だが朝練もあるし練習時間も長い戦車道だ。これからバレーの練習に本腰を入れるなら、彼女達が戦車道を選択するはずがない。

 

「よーし来年も戦車道をやるぞ!!」

 

「「「「おーーーーー!!」」」」

 

…ん?どゆこと?

 

「…戦車道、続けるのか?」

 

「? 何言ってるんだ比企谷、当たり前だろ」

 

「いや、さっきバレーの練習に打ち込めるって言ってただろ」

 

「もちろんだ、戦車道を続ければバレーが上手くなる!バレーが上手くなれば戦車道が上手くなる!!」

 

「これが私達の考えた戦車バレーです!コーチ!!」

 

囲碁サッカーばりの新スポーツの誕生である、バレーマジ万能。なんか俺も最近そんな気がしてきた。

 

い、いかん…なんか洗脳されている気がする。肉体労働で疲弊した身体に精神論をぶちこむのはブラック企業でよくある手なので、これから労働する人は気を付けよう。

 

盛り上がるバレー部連中を置いといて…いや、向こうでは更に盛り上がってる集団があったな。

 

「勝鬨でござる!」

 

「えい!」

 

「えい!!」

 

「「「「おーーーーーーー!!」」」」

 

歴女達だ、あれに混ざりたくはないな、うん。

 

「へルマン!なにぼーっとしている!!」

 

…見つかったよ。

 

「お前ら、試合終わったのに元気だよなぁ…」

 

いや、さっきのバレー部連中も元気だったか。…なんで試合に出てない俺はこんなに疲れているんだろう?

 

「当然だ。我々は優勝したのだからな、ローマ帝国の統一だ」

 

「まさに連合国との会戦にて数々の勝利を収めたエルヴィン・ロンメル軍のような破竹の勢いだった」

 

「かつて織田信長公の夢見た天下統一はここに成った」

 

「日本の夜明け、いや…大洗の夜明けぜよ!!」

 

とりあえず歴史ネタで話すにも時代を統一して一本で語ってくれませんかね?ややこしいんだが。

 

「よし、ここに我等の旗を立てよう!!」

 

こいつらマジ自由だな…。

 

「もちろん真田の六文銭ぜよ」

 

「いや、旗といえばやっぱり新撰組ぜよ」

 

「新撰組のやつか?なんか意外だな、てっきりお前は倒幕派だと思ったんだが」

 

おりょうとか名乗ってるくらいだし、新撰組より攘夷志士が好きなんだと思ってたんだが。

 

「それはそれ、これはこれぜよ」

 

…やっぱりただのミーハーじゃねぇのかこいつら。

 

「いや、ここは汗を流せ、血を流すなの文字を…」

 

「…普通に大洗の校章で良いんじゃねぇの?」

 

「「「「それだ!!」」」」

 

「いや、立てるなよ、ここ自衛隊の演習場だからね?」

 

…つーかそれで良いのかよ、歴女マジフリーダム。


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