やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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小説執筆中の自分「さすがにアリクイさんチームの筋肉設定やり過ぎたかな?大丈夫かな?」

最終章ドラマCD3を聞いた後の自分「筋肉のやべーやつら」

どういう事?と思った君!ドラマCDを是非聞こう!!(ダイレクトマーケティング)。


試合が終わり、ようやくチームは一息つく。

「あ、あの…比企谷さん」

 

「…ん?」

 

声をかけてきたのは猫田達、アリクイチームの三人だった。もじもじとなにやら申し訳なさそうにしている。

 

「さ、作戦失敗してごめんなさい…」

 

「副隊長…倒せなかったっちゃ」

 

あぁ…その事か、黒森峰の現副隊長さんを仕留める為に用意したあの煙幕と電柱の作戦。

 

結果、それは失敗という形に終わった。俺から一方的に押し付けたような作戦だ、彼女達に非が無いのは当然だろう。

 

だが、実際に決行した彼女達にとっちゃ気にするなというのも無理があるか。

 

「あー…まぁその、なんだ、腕…大丈夫か?」

 

「さすがに筋肉痛になりそうなり…」

 

煙幕の中、ほぼ絶え間無く装填と砲撃を繰り返した自動装填装置も形無しな作戦やっちゃってるのに、むしろなんでその程度で済んでるんですかねぇ…?

 

「今回はアレだな、ちょっとフラグを立てすぎたわ」

 

「フラグ…」

 

「私に良い考えがある、だな」

 

それ系統の失敗フラグはガチ、偉大な河嶋先輩が身をもって教えてくれた教訓である。

 

ちなみにこれが『俺に良い考えがあります』とかだと成功フラグに聞こえるのが日本語の不思議な所だ…いや、ラノベ語かな?

 

もちろん自信はあったが、それにしたってダージリンさん達にドヤ顔的な説明してた自分を見返すとすげぇ恥ずかしい…八幡の黒歴史にまた1ページ。

 

「つーか、あれはあそこで盾になったパンターの功績だ。うん、すげぇよなあのパンターの車長、土壇場でのあのアジャイルな判断マジリスペクト」

 

「ひ、比企谷さんが壊れたにゃー!!」

 

失礼な、まだろくろを回す手つきはしてないでしょうが。

 

とはいえ…あの作戦に関して誰が勝ちかという話ならば、やはり赤星なのだろう、アグリー?

 

「だからお前らもそんな落ち込む必要はーーー」

 

「やっぱりまだ筋肉が足りなかったもも!!」

 

え?そうなの?これでもまだ足りないの?

 

「また山に籠って一から鍛え直すっちゃ!!」

 

「炭酸の抜いたコーラも用意するずら!!」

 

ほう…炭酸抜きコーラですか、たいしたものですね。…じゃなくて、こいつらどこのグラップラー目指してるんだ?

 

今までアリクイチーム=ネトゲチームだったんだが、西住的に言うならもう筋肉さんチームになりつつあるな…、強そう(小並感)。

 

さて、筋肉に磨きをかける誓いを立てたアリクイチームは…そっとしておくか、なんか自分達で立ち直ったっぽいし。

 

「あー!やっと見つけぁ!!」

 

と思ってたらまた騒がしいのに声をかけられたな…。

 

「ラーメン!!」

 

「先輩!!」

 

「あ、じゃあラーメン先輩ってどうかなぁ?」

 

「おい、人の事コンビニチキンの先輩みたいに言うんじゃねぇよ」

 

あの人29歳独身バイト暦11年って何気にヤバいスペックしてんだぞ…。

 

そんな訳で騒がしい一年共だ、別に隠れてたつもりはなかったんだが。

 

「で、何の用だよ?」

 

「ふふ、惚けたって無駄ですよー」

 

「作戦成功したらラーメン、奢ってくれるんですよね?」

 

「私!味噌ラーメンの野菜マシマシが良い!!」

 

阪口が欲望に正直すぎる…、もうちょい女の子として自粛なさい。

 

「却下、撃破されといて成功とは言えんだろ」

 

てな訳で自粛させる意味でも却下。ふっ…素晴らしい配慮だ、理想の先輩がここに居た。

 

「「「「「え~~~~~~!!」」」」」

 

「私達、あんなに頑張ったのに!!」

 

「ケチ!!」

 

「意地悪!!」

 

「性格悪い!!」

 

「比企谷先輩!!」

 

「おいこら、比企谷先輩は悪口じゃねぇだろ…」

 

この大ブーイングである。丸山は…まぁあれだが、五人からの容赦ないディスりをくらう。

 

「………」

 

つーか丸山でさえ訴えるような目でこっちを見ている気がする…、無言の圧力が一番怖い。

 

「…お前ら、冷たいもんとか食いたくないか?」

 

まっ…努力賞くらいは、うん。今日くらいは良いだろう。

 

「はぁ…冷たい物、ですか?」

 

「あっ!わかった!冷やしラーメン!!」

 

「冷やし中華じゃないの?」

 

「………」

 

「紗希はざるそばが食べたいって言ってまーす」

 

うん、とりあえず麺類から離れなさいね。

 

「外でアンツィオの屋台があったからジェラートでも買ってこい。俺の名前出せば一段おまけして貰えるはずだ」

 

…はずだよね?安斎さん忘れてないよね?その場のノリと勢いでつい言っちゃっただけとかじゃないよね?

 

えーと、財布財布と、つーか今さらだが六人分だと結構な額になるな、足りるか?

 

「「「「「「………」」」」」」

 

…丸山が増えた。じゃなくて、なんか全員驚いて無言である。

 

「え?い、良いんですか?」

 

「…いらんなら別にいいが」

 

「やった!私ダブルにする!!」

 

「あー!あやズルい、私もダブル」

 

一番ズルいのはダブルOK前提で話進めてるこいつらである。いや、俺もシングル限定とは言わなかったけどさ、遠慮とかないのね。

 

「一段おまけで貰えるっつったろ…、お前ら3つも食うのか?」

 

試合終わった直後と考えるとわりとキツいぞ、だからシングルにしときなさい。大切なのは値段じゃない、この気配りだ。

 

「じゃあ~、残り一段は比企谷先輩にあげますよぉ♪」

 

「…は?」

 

なにこの子超あざといんだけど!!

 

「あ、それ良いかも」

 

「うん、いろいろ相談に乗ってくれたお礼って事で、みんなで比企谷先輩にプレゼントしよう!」

 

…そのジェラート自体、俺の懐から出た金で買ったものになるんだが、それはお礼になるのか?

 

まっ…でも、こいつらも少しはこうやって先輩を敬う気持ちが出来てきたっていう事か…。

 

…ん?あれ?つまり俺にジェラート6つ食えと?

 

わいわいと何の味にするかで話してる一年共に怯えつつ、まっ…金は後で払えば良いかと背を向ける。

 

「…おつかれさま」

 

「…ん?」

 

ふと、一年共の会話の中に聞いたことの無い声が混じった気がしたが、はて?

 

お疲れ様…といえば、今大会で一番お疲れ様と言えるのは彼女達だろう。

 

「ホシノー、工具の準備はできた?」

 

「さっき戦車道連盟から借りてきたから大丈夫」

 

「スズキー、足りない部品は?」

 

「オッケー、近くの自動車修理工場から余ったパーツを貰ってきたよ」

 

「ツチヤー、修理箇所のチェックは?」

 

「バッチリチェック済み、いつでもいけますよー!!」

 

「よーし、じゃあ始めよっか?」

 

「「「おー!!」」」

 

………なんなのあの人達。

 

「…何を始めるんですか?」

 

いや、もうわかってますけどね、だいたい予想はつくんだけどね。一応…ほら、違うかもしれないじゃん。

 

「決勝で壊れた戦車を修理するんだよ、明日までに自走できるくらいにはしたいかな」

 

ほらー!やっぱりじゃん!試合終わったばっかだよ?休もうよ…、ワーカーホリックだよこの人達。

 

「修理って…」

 

並んでいる戦車だが…無事なものは何一つ無い。当然だ、うちはあんこうチーム以外の全チームが撃破されたのだから。

 

中でもヘッツァーなんか特に酷い、マウスの下敷きになっちゃったもんね…。

 

しかもこれを全部今日中に自走出来るように?何の冗談…とも言えないのが自動車部の恐ろしい所だ。

 

「別に無理して今日中に直す必要はないんじゃ…」

 

とはいえこの人達にも休息は必要だろう。じゃないとほら…試合にすら出ていない俺の立場無いじゃん?

 

「会長が言ってたけど明日は大洗に凱旋になるからね」

 

「せっかく街のみんなが迎えてくれるのに、戦車がぼろぼろだと格好つかないだろ?」

 

ぼろぼろの帰還とかなんの成果も得られませんでしたーさんが出てきそうだが、しっかり優勝して帰るんだしそれは良いんじゃないかな…?

 

「まっ、私達が好きでやってる事だから、気にしなくていいよ」

 

そしてコレである。もう…なんかすいませんとしか言い様がない。

 

「それより比企谷、最後のⅣ号見た?」

 

それより、と軽く流されてツチヤに興奮混じりに話しかけられる。

 

「Ⅳ号の最後って、あの突撃か?」

 

「あれはドリフトだね!くぅ~、良いなぁ、あたしもやってみたい!!」

 

そう、姉住さんとの最終局面、あんこうチームのⅣ号戦車が見せたあの動きはまさにドリフトだ。

 

ドリフト、それを戦車で。うん、正直もう訳わからん、冷泉の奴どんだけチートなの?

 

車ならドリフトなんてやろうと思ったらできる、とか思ってる奴、車と戦車の違いを勉強なさい。

 

タイヤ2つと転輪履帯だ、ドリフトの難易度がどんだけ違うかなんて説明するまでもないだろう。

 

「ナカジマ先輩、あたし達もドリフトやりましょーよ!!」

 

そんなあんこうチームの離れ業にドリフト狂いのツチヤが触発されない訳がない。

 

「おいおい…正気かよ」

 

とはいえ、戦車でドリフトなんてそう簡単に出来てたまるか、あんこうチームのⅣ号だって結果転輪のいくつかは吹っ飛んでたし。

 

「大会も終わって一段落ついたし、挑戦してみるのも良いかもね」

 

「…本気ですか?」

 

「あんこうチームが出来るって証明しちゃったしね」

 

「自動車部としても負けられないかな」

 

この人達…マジだよ。案外あんこうチーム一番のライバルって自動車部なのかもしれない。

 

「でも、乗ってるのはポルシェティーガーですよね?」

 

ポルシェティーガーの足回りの悪さについては散々説明したので省くとして…それでドリフトって、条件悪すぎだろ。

 

「そこは調整次第でどうにでも出来るさ」

 

「腕がなるねー!!」

 

うちの自動車部がチート過ぎる件について…また新しいラノベが誕生したな。いや…どっちかというとなろう系統の無双系か。

 

「あ、そうだ比企谷、Ⅳ号も修理したいんだけど西住さんに声かけてくれないかな?」

 

「西住に?」

 

言われてみると、Ⅳ号だけ見当たらない事に気付いた。

 

決勝戦ではあんこうチームのⅣ号戦車以外全滅だが、そのⅣ号戦車だって無傷ではない。

 

姉住さんのティーガーとの一騎打ちに最後のドリフトだ、無傷どころかわりとダメージは深刻なはず。

 

「…そういやⅣ号ないですね」

 

「西住さんがまだ乗ってるって聞いてたけど」

 

…試合が終わったっていうのになんでまた?

 

「あんこうチームのみんなもまだⅣ号の所なんじゃないかな?」

 

「冷泉ならそど子さんの所に居ましたけど」

 

ついでに言うなら抱き合っていた。ご馳走さまです。

 

「それは冷泉さんが風紀委員に呼ばれたからだと思うよ」

 

あぁ、遅刻の取り消しの件で冷泉だけ先に抜けたのか、納得。

 

「わかりました、西住にも声かけときます」

 

じゃあⅣ号はというと…まぁ、探す必要は特に無いけどね。向こうにあるし。

 

「よぅ。…お疲れさん」

 

「あ、比企谷さん、お疲れ様です」

 

「比企谷!ちょうど良かった!!」

 

五十鈴と武部が俺に気付く、ちょうど良かった?

 

「た、大変です、西住殿が!西住殿が!!」

 

そんでもって秋山はめっちゃあわあわしていた。くせっ毛を抱えてどうしようかと呟いている。

 

「…西住になんかあったのか?」

 

秋山のこのただならぬ慌てよう…もしかして西住の奴、怪我でもしたのか?

 

あれだけの激戦だ、試合中に戦車から身体半身を出している西住なら特にあり得る話だ。

 

「西住はどこだ?」

 

そう、さっきから西住の姿が見えない。辺りを見てもやはり姿を確認できない。

 

「みぽりんなら…まだ、戦車の中に」

 

「ッ!!」

 

気付けばⅣ号の車体に乗り上げていた。無理やりにでもよじ登り、西住がよく半身を乗り上げているキューポラに向かう。

 

…だから、無茶すんなって言ったのに、クソッ!!

 

キューポラを覗く、そこにはーーー。

 

「…あ、八幡君」

 

西住が、ちょこんと椅子に座り込んで驚いた表情で上を向いていた。

 

「あーその。…何してんだ?」

 

「えと、その…力が入らなくて」

 

恥ずかしそうに顔を赤くして答える西住だが…。うん、どう見ても客観的に恥ずかしいのは俺の方だわ、これ。


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