やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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四周年福袋はクレオパトラでした、持ってなかったから大勝利!!いぇい!!

一周年だというのになんのイベントもやらないソシャゲがあるらしい…、1ヶ月以上新ガチャが来ないソシャゲがあるらしい。
みんなの戦車道がこの先生きのこるには…?


滞りなく、祝勝会の準備は進む。

「えっ…」

 

「なっ!!」

 

突然の格言爆弾投入に西住は驚き――何故かアリサもだが――場が凍りついた気がした…格言爆弾とかいうパワーワードやめーや。

 

「あ、あの!ダージリンさん、八幡君は、その…」

 

西住がめっちゃあわあわしてる、なんかもうあわってる。決勝戦でマウスが出てきた時でさえ、そんなあわあわしてなかったのに。

 

「あら?変ね、私は彼の名前なんて一言も言っていませんわよ」

 

「あぅ…」

 

あっさりダージリンさんに一本取られるポンコツっぷりだ。だいたいあの格言テロはどう見ても確信犯だろ…格言テロとかいうパワーワードやめーや。

 

「でも、おかげで得るものはあったわ、それも2つもね」

 

「…なんですか、それ?」

 

「みほさんとは戦車道以外でもライバルとなるようね、それと…もう一人かしら?」

 

まだあわあわしてる西住と、ナオミに肩にポンと手を置かれたへなへなになったアリサを見ながらダージリンさんが呟く。あわってたりへなってたり、どういう状況なのこれ?格言爆弾の威力高ぇな…。

 

「一応聞いときますけど、もう一つは?」

 

「もちろん、あなたがちゃんと動揺してくれた事よ。それ、拾わなくていいのかしら?」

 

スマホを落としただけなのに、そこまで察せられるとか、この人の観察眼どうなってるのよ。あぁ…いや、スマホ落としたら大変だもんな、映画にもなるくらいだし。

 

「人を動揺させるのが収穫とか、趣味が悪いですよ」

 

「あら人聞きが悪い。あなたが動揺したのが嬉しいのよ」

 

どちらにせよ趣味が悪い事に変わりはない。特に俺が、というのが。

 

「俺、ダージリンさんの本名すらまだ知らないんですが?」

 

心の中を見透かされた気がして癪だったので軽く反撃を試みてみる。いや、実際知らないんですがね。スマホの連絡先に【ダージリンさん】とか、知らない人が見たら紅茶が友達なんだと哀れまれそうである。

 

「名前がそれほど重要かしら?バラと呼ばれる花も、他の名前で呼んでも甘い香りは変わらないものよ」

 

「シェイクスピアですね…」

 

かの有名なロミジュリの一文である。ちなみにさっき落とした格言爆弾もシェイクスピアなのを見ると、最近はシェイクスピア系の格言にハマっているのかな。

 

ちなみにシェイクスピアなら【恋は、涙とため息で出来ている】が一番胸に響いている。特に涙の方がすげぇ共感できる。中学時代、俺がそれでどれだけ涙したと思ってんの?

 

「ミホーシャにハチューシャ!!」

 

過去のトラウマが蘇り泣きそうになっていると、カチューシャさんが声をかけてきた。珍しくノンナさんとドッキング(肩車)はしていない。

 

ちなみにノンナさんとクラーラも後ろに居るが…なんだろ?なんか見られてない?俺。

 

「カチューシャさん」

 

「黒森峰を倒したのね。まっ…私達に勝ったんだし、それくらい当然よ!!」

 

「ーーー(良い試合でした、おめでとうございます)」

 

「クラーラはおめでとうございますと、私もカチューシャも同じ気持ちです」

 

「か、カチューシャは別に祝福なんてしてないわよ!当然の事なんだから!!」

 

すまねぇ、ロシア語はさっぱりなんだ、と思っているとノンナさんがしっかり通訳してくれた。あとカチューシャさんのツンデレにもバッチリ通訳を入れてくれる有能っぷりである。

 

「ま、まぁでも、良くやった方ね。このカチューシャが誉めてあげるんだから」

 

「はい、ありがとうございます!カチューシャさん」

 

「そんな訳だから、ご褒美にカチューシャが作ったピロージナエ・カルトーシカを食べさせてあげるわ、喜びなさい!!」

 

「ピロ…、えと?なんです?それ?」

 

「だから!ピロージナエ・カルトーシカよ!!」

 

いや…だからなんなのそれ?サッカー選手の名前っぽいんだけど。

 

「ロシアのケーキです」

 

あぁ、ロシア料理か、そりゃ馴染みがないのも当然だ。

 

「…ん?えと、カチューシャさんが作ったんですか?」

 

「そうよ、あまりの美味しさに頬っぺたが落ちちゃっても知らないんだから」

 

「…材料をお使いに行ったんじゃなくて?」

 

それなら、はじめてのお使いが出来てえらいねーと誉めてあげたいくらいなんだけど。

 

「…どうやら、シベリアに送られたいようね?」

 

いや…だってカチューシャさんがキッチンに立つ姿をいまいち想像出来ないというか…むしろ想像するとNHKの教育番組になっちゃうというか。

 

「ニーナとアリーナにアルバイトをさせ作らせた物ですが、カチューシャもきちんとお手伝いしていました」

 

「ちょっとノンナ!余計な事は言わなくていいの!!」

 

うーむ、無惨政権は相変わらずというか、やはりプラウダは恐ロシアである。

 

「いいから食べてみなさい!!」

 

「えと…いただきます」

 

しかし食べないと後が怖いというか、むしろ後ろの二人が怖い。超怖い、俺この二人に何かしたっけ…?

 

「あっ…美味い」

 

カチューシャさんが自信満々なだけはあってマジ美味いなこれ、マッ缶にも合いそうだ。

 

「…やった」

 

「え?」

 

「な、なんでもないわ!どう?美味しいでしょ」

 

「えぇ、まぁ…美味いですね」

 

「これはプラウダでしか食べられないわよ?プラウダに来てカチューシャの家来になるんなら、毎日食べさせてあげても良いけど」

 

いや、どんな交換条件なんですかそれ?

 

「ーーーーーー」

 

クラーラさんがロシア語でなにやら言っているが、さっぱりわからないのでチラリとノンナさんに目で通訳を訴えてみる。

 

「クラーラも比企谷さんがプラウダに来てくれれば嬉しいと言っていますよ」

 

え?そうなの?わりとこの二人の俺に対する視線て、何故かいつも歓迎されている気がしなかったんだけど…。

 

「ーーーーーーー」

 

「プラウダに来る時は是非とも自分におもてなしさせて欲しいと、"おもてなし"の準備はバッチリで、いつでも"やれる"との事です」

 

なんかノンナさんの通訳のニュアンスがおかしい。おもてな死とか、いつでも殺れるに聞こえてくるんだけど気のせいだよね?

俺の思い過ごしだよね?

 

「いや、その…大洗も廃校を回避できましたし、遠慮しとこうかと」

 

「ーーーーー」

 

「とても残念と、もちろん私も残念ですね」

 

だからどういう意味での残念なのそれ!?

 

「…プラウダにはもう来ないの?」

 

震えた声にカチューシャさんを見ると…え、なんでちょっと泣きそうになってるの?そして後ろの二人からもなんかオーラが出てるし…。

 

「遊びに行くくらいなら…お邪魔しますが」

 

「そ、そう?しょうがないわね!いつでも遊びに来なさい、約束よ!!」

 

「…はい」

 

圧迫面接とか、そんなチャチなもんじゃない…、もっと恐ろしい何かを味わった気がする。

 

…将来カチューシャさんと付き合う人には今のうちに念仏を唱えておこう、南無。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

祝勝会の準備は滞りなく進み、西住は表彰式の準備の為、大洗メンバーと合流しに行った。

 

サンダースの大量の材料をアンツィオが料理し、もちろんサンダースもアメリカンな料理を出し、それに対抗するかのように躍起になったカチューシャさん率いるプラウダがロシア料理を出す。

 

そして聖グロリアーナは主に飲み物を担当している。イギリス料理は…ほら、いろいろとアレだから、じゃがいもがマッシュマッシュしてるのとかね。

 

こんなに一度に各国の料理を見る機会はそう無いだろう、と言えば聞こえは良いが、ただ単にカオスな闇鍋っぷりである。

 

そんな中で俺はというと…。

 

「………」

 

黙々と、ただひたすらに、無言でサンダースのバーベキューセットで肉を焼いていた。

 

え?表彰式?出る訳ないだろ、いきなり男が出てくるとか会場が冷えっ冷えになるわ。

 

大洗のメンバーが居なくなり、各隊長さん達も祝勝会の準備で知り合いがぐんと減った。しかも周りを見渡せば女子ばかり、そんな空間で俺が存在出来ると思うか?いや無理。

 

そんな訳で「あまり話かけないでね?お肉焼くのに集中してるから」オーラ全開で、コンロに肉を乗せて焼けたら返して皿に乗せ、また肉を乗せる作業を繰り返し続ける。俺はそういう機械だと自分に言い聞かせるのだ。

 

てかサンダースの用意してきた肉が分厚くて軽く引くわ。これを普段から食べてるとかアメリカンにも程がある。

 

「比企谷、ここに居たか」

 

声をかけられて視線を久しぶりにコンロから移すと…ん?

 

「…まほさん」

 

予想外の人物だった。この人が祝勝会に来る事は無いと思っていたのだから。

 

「遅れはしたが、私達も祝勝会に参加させて貰えないか?」

 

「いや、それ俺に聞かれても…」

 

あまりに突然の事で上手く言葉が出てこない。

 

「大洗の皆はもう表彰式の準備で居ない、なら君に聞くのが筋だと思うが?」

 

あぁ、まぁ…そうですよね。まぁこちらとしては問題は無いだろう、西住も帰ってきたら大喜びだ。

 

「こちらは構いませんよ、でも…そっちは大丈夫なんですか?」

 

だが、あくまでそれはこちらとしては問題がないだけである。黒森峰が、西住流の後継者が敗れた相手の祝勝会に参加するのは問題になるだろう。

 

「あぁ、何も問題はない」

 

だが、姉住さんはきっぱりと、はっきり答えて見せた。

 

「姉が妹の勝利を祝うだけだ、問題は何も無い。だろう?」

 

…素直に驚いた。まさか、この人の口からそんな言葉が出てくるとは思いもしない。

 

というかその言葉って、現副隊長さんめ…バラしたな。

 

「とんでもない屁理屈ですよ、それ」

 

自分でも言っといてなんだが、まぁ屁理屈に違いはないのだ。

 

「そうだな、屁理屈なんだろう。君が得意な…な」

 

それじゃあまるで俺が屁理屈ばかりみたいじゃないか。いや、屁理屈も立派な理屈だ、全ては論破出来ない相手が悪い。やだ、俺超理屈的じゃん。

 

「何か問題はあるだろうか?」

 

「いや、それで充分だと思いますよ」

 

一つ問題があるとするなら、この人、妹のこと好き過ぎるだろ…、シスコンさんめ。

 

「もちろんこちらも手ぶらという訳にはいかない。手土産を持ってきている、祝勝会で出してくれ」

 

「そんな気を使わなくても…」

 

「いや、他の学園艦もいろいろ用意しているようだ。ここで何もしなければ、それこそ黒森峰の名が落ちるというものだ」

 

ふむ、わりと遠慮という言葉を知らなそうな姉住さんだったが、そこら辺をきちんと用意している辺り成長が見える。

 

「エリカ」

 

「はい」

 

姉住さんに言われて現副隊長さんが台車でゴロゴロと何やら持ってきた。…ん?こいつが大人しくしているとは珍しいな。

 

「黒森峰では有名なノンアルコールビールだ、祝勝会で開けると良いだろう」

 

へぇ、これが噂の黒森峰ノンアルコールビール…え?良いの?高校生が祝勝会でノンアルコールビール飲むとか問題にならないかな?

 

大洗の優勝取り消しとかないよね…?

 

「本当なら一文字のぐるぐるか太平燕のスープがあれば良かったんだが…急だったから用意出来なかった」

 

一文字のぐるぐる…?太平燕?なんぞそれ?ピロージナエ・カルトーシカもそうだけど知らない料理ってのは結構多いよな。ピロージナエ・カルトーシカ…何度か声に出して言いたいロシア語である。

 

「逆にこれだけのノンアルコールビール、よく用意できましたね」

 

「あぁ、黒森峰女学園が優勝したお祝いに飲むように送ってくれた物だ」

 

「………えと、今なんて?」

 

「? 黒森峰女学園が優勝した時の為に送ってくれたんだが、我々には不要になったからな。皆で飲むと良い」

 

飲めるかぁぁぁぁああ!!重いわ!!

 

なんなのこの人、大丈夫なの西住流!?

 

「…おい」

 

現副隊長を見る。あっ…こいつ露骨に目を反らしやがった。

 

こいつが大人しい理由がわかったわ。…いや、わかってるなら止めろよ、その為の副隊長でしょ?

 

「そ、その…すいません、比企谷さん」

 

よし、許した。赤星がそう言うなら仕方ない。考えてみれば姉住さんも善意による行為なんだしな。

 

ただノンアルコールビールの出所だけは黙っておこう…うん。

 

「比企谷さん、お肉焼いてるんですね?」

 

っと…そういえば話に集中してて肉を見てなかったな、危ない危ない、焼き加減は…ちょうど良いな、さすが肉が分厚いだけはある。

 

肉を皿に移して丁寧に塩胡椒を振りかけて…と、最高の一皿を作り上げる。

 

「赤星、味見してくれ」

 

「え?あ、ありがとうございます…」

 

なるべく紳士的に、かつ大胆に、最高の一皿を赤星に渡した。料理漫画でも良くあるあまりの美味しさに服が破けるのは事故だ、そうなっても俺に責任はない。

 

「…なんでこんな奴に負けたの、私」

 

現副隊長さんはその一部始終を見てドン引きしていた。仕方ない、後でこいつにも肉やるか…そこのちょっと焦げたやつ。

 

「てか、なんであなたが肉焼いてるのよ?仮にも祝われる側でしょ?」

 

仮にもじゃなくて一応は大洗の祝勝会なんだが…。

 

「こういう場で一人の奴は誰よりも働く事で憐れみの視線から開放されるんだよ、何もしてないで一人だと目立つだろ」

 

これ、わりとガチでオススメだから知り合いの少ないバーベキューとかに嫌々呼ばれた君!試してみてね。

 

「本当、なんでこんなのに負けたの…」

 

「おい、せめて“奴”は付けろ」

 

どんどん格下げされてないか?あと本気で落ち込むんじゃないよ…。

 

「…まぁ良いわ。それでは隊長、私はこれで戻ります」

 

「エリカ、良いのか?」

 

「…はい、私は馴れ合うつもりはありません」

 

「エリカさん…」

 

祝勝会に出るつもりは無いと現副隊長さんは背中を向ける。そうだな、こいつはそういう奴だ。

 

別にそれが悪いとも思わないし引き留めもしない、それが彼女の信念なのだろう。

 

「…肉もそろそろ飽きたな、次はハンバーグでも焼くか」

 

「え?ハンバーグ!?」

 

クルリと反応する現副隊長さん。おい、信念どこ行った?

 

「ハンバーグもあるのか?」

 

「えぇ、サンダースが優勝祝いに秘蔵のひき肉を用意してくれたみたいで」 

 

「エリカさん、ハンバーグですよ!ハンバーグ!!」

 

「う、うるさいわよ小梅!だからなんなの?私は別にハンバーグなんて子供っぽいもの好きでも嫌いでもないわ!!」

 

とか言いながら戻ってくる辺り、こいつも可愛らしい所があるもんだ。

 

「…カレー」

 

姉住さんがそんな二人の様子を見ながら、ちょいちょいと俺の服を引っ張って小さく何か呟いた。

 

「…へ?」

 

「カレーは無いのだろうか?あると…その、嬉しいんだが」

 

現副隊長さんや赤星には聞こえないような小さな言葉に少しだけ頬を赤らめる。

 

戦車道最強流派西住流も、黒森峰も、好きな食べ物には敵わない。こういう時の彼女達は普通の女子高生なのだろう。

 

そろそろ…表彰式か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ比企谷、1つ伝える事があった」

 

「…なんですか?」

 

「蝶野教官から、表彰式が終わったら一度顔を出して欲しいと」

 

「え"っ…」

 

「いったい何やらかしたのよ、あんた…」


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