やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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2016年6月14日の初投稿からおおよそ三年を超え、【やはり俺の戦車道は間違っている。】最終話です。
ここまで付き合って読んで頂いた皆さんに感謝しつつ…とか書き始めたらめっちゃ長くなりそうなんでそこは後書きにでも。

後書き&今後についてはまた後日投稿しようかと思います。



ラストの締めって超難しい…なんか良い事書きたかったけど無理でした。


【最終話】そして、大洗学園戦車道チーム一丸の作戦が始まる。

【大洗学園結婚式特別会場】

 

「なんで結婚式をわざわざ学園艦で?」

 

「なんでも新郎と新婦はこの学園で出会った事をきっかけでご結婚なされたんですって」

 

「ロマンチックよねぇ~」

 

「学園艦婚、ステキよね!!」

 

なんやかんやあった、それはもう…なんやかんやとあったのだ。

 

「それでは新郎様」

 

「は、ひゃいっ!!」

 

緊張している中、式場のスタッフに呼ばれて返事をした声は完全に裏返る、恥ずかしさに顔から火でも出そうだ。

 

「新婦様の控え室に」

 

スタッフの人は慣れているのか、特に表情を崩す事なく柔らかく微笑んだまま、俺を誘導してくれる。

 

新婦…君の待つ控え室へ。

 

扉を開く、もちろんその姿はリハーサルの時から見ていたものなのだが。それでもウェディングドレスを着た今日の彼女には月並みな言葉しか出てこない。

 

「…綺麗だ」

 

「ありがとう、はち君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「すいません、小田谷 八郎(おたがや はちろう)さんの結婚式会場はここですか?」

 

「はい、…えと」

 

「あの、関係者じゃなくて、生徒会から祝電の手紙と花を持って来ました」

 

「ありがとうございます、お預かりします」

 

生徒会からのお使い通り、結婚式場の受け付けのお姉さんに手紙を渡す。比企谷 八幡、はじめてのおつかいは誰にも見つからずお出かけなのよ。

 

あの歌良いよね、何より歌詞が素晴らしい。誰もいなくても寂しくないとかぼっちの聖歌とも言える。違うか?うん、違うな。

 

そんな訳で何の縁(えん)も縁(ゆかり)もないリア充カップルの結婚式会場に赴いて祝電を渡すというある意味拷問のような仕事をしたのだ、俺の目もいつもの三割増しくらいには腐っているだろう。

 

式場全体を包みかねないこの闇のオーラに飲まれるがいい、闇に飲まれよ!!

 

「はぁ~素敵!私もいつかこんな場所で結婚式を…」

 

だがそんな俺の闇オーラは虚しくも、すぐ横に居る武部の圧倒的な光のオーラによって中和されるどころか、あっさりかき消されてしまう…さっきからもう鬱陶しいくらい目がキラッキラだ。

 

「おい、用事も済んだしさっさと帰んぞ…」

 

「えー!もうちょっと!もうちょっとだけ待ってよ!!せっかく来たんだしブーケトスは狙わないと…」

 

それもう終盤じゃねぇか、もうちょっとの定義が崩れちゃうだろ。

 

「止めとけ。何の関係もないお前がブーケトス取ってどうすんだよ、暴動起きるぞ」

 

そういうのはもっと切羽詰まっている方に譲ってあげなさい、具体的にはどこぞのアラサー一歩手前の国語教師の方にでも。

 

「恋泥棒だね!!」

 

「うまくねーよ…」

 

普段はツッコミ役に回ってもらっている武部が恋愛…しかも結婚式関係になるとここまで暴走するとは…。

 

「むー…、じゃあせめて」

 

不満顔でさっき祝電を渡した受け付けに向かう武部。はて?と眺めていると武部はこっちに振り向く。

 

「何してるの比企谷、こっちこっち」

 

こっちこっちと呼ばれて仕方なく武部を追う、まぁこれでこいつが諦めるなら安いもんか…。

 

「すいません、結婚式のパンフレットとかありますか?ある分全種類下さい!!」

 

高いわ!重い…あと重い、思いが重い。

 

「まぁ!それでしたら卒業後は是非とも私達に式をお手伝いさせて下さい」

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

いやいや、何がよろしくなの?あとなんで受け付けのお姉さんこっち見てすごいニコニコしてんの?

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「はぁ…ブーケトス」

 

「まだ言ってんのかよ」

 

どんだけ未練引きずってんだよ…。それならもういろんな結婚式の会場にスタンバってブーケトスだけ狙えば良いんじゃねぇか?

 

ブーケトスになると突如どこからか現れてブーケを奪い去るとか。…新手の妖怪かな?

 

「これで私が結婚できなかったら比企谷のせいだからね」  

 

「ひでぇ言いがかりつけるな…」

 

「その時は…その、責任とってーーー」

「しっかし、わざわざ学園艦に戻ってまで結婚式上げるとか変わってるよな」

 

武部が何か続きを言おうとしていたが、ちょうど言葉がかぶってしまった。

 

「えー!信じられない!!ロマンチックで良いじゃん!!」

 

すると武部が「こいつ何言ってんの?」と食いぎみに反論してくる。

 

「学園艦で出会った二人がそこで結婚式を上げるなんてステキ~!!」

 

また武部の妙なスイッチを踏んでしまったらしい…。

 

「ほら!映画でもあるでしょ!!船の上で愛を誓い合う二人!!」

 

「氷山にぶつからなきゃいいけどな…」

 

まったく、縁起でもない事を言い出さない。せっかく廃校回避したのに、それじゃあ物理的に学園艦が解体してしまう。

 

あのカップルの詳しいなれそめも知らんが、きっかけはこの学園艦での出会いだったらしい。

 

大洗学園が戦車道全国大会に優勝し、廃校問題が解決した事で無事、学園艦で結婚式をあげられたそうな。

 

大洗学園内での結婚式という事で生徒会からも祝電と花の贈呈があり、そのお陰で俺の仕事が増えた訳だが…。

 

結婚式と聞いてすぐさま手伝いに立候補した武部、あれ?これもしかして俺行かなくて良かったんじゃね?

 

ちなみに花の方は五十鈴作である。…武部に限らず女の子なら誰もが聞けばそわそわするのが結婚式、というやつなんだろう。

 

「つーかもう戦車道関係ねぇよな。あの生徒会…どんだけ人をこき使うつもりなんだよ」

 

「それは仕方ないでしょ、忙しいみたいだし」

 

…まぁ、単純に言って人手が足りないのだ。

 

大洗学園の戦車道全国大会優勝は、無名校の大洗学園を一躍有名校へと押し上げた。その為、生徒会は連日申し込まれる取材やらなんやらで手一杯のようだ。

 

当然といえば当然か。そもそも戦車道といえば強豪校が基本的に強い、9連覇の黒森峰にプラウダと上位の面子は大抵決まっている。

 

そんな中での無名校の優勝、しかも隊長が西住流となれば世間が騒ぐのも無理はない。

 

広報の河嶋さんも、これを機会に各メディアのインタビューを組んで大洗をアピールすべく取り組んでいる。ただ悲しいのは、あの人に対する直接的インタビューは一切無いのだけど。

 

「…西住も大変だな」

 

「…うん」

 

もちろん、一番インタビューを受けているのは西住だ。あいつ…もともと人見知りだし、インタビューでもあわあわおどおどしてて危なっかしいんだよな。

 

その点は姉住さんの外面の良さを見習うべきだろう。あの人あれでテレビ慣れしているというか…そこら辺、さすが西住流である。

 

戦車道全国大会も終わり、祭りの後は後の祭り。燃え尽きた花火とまではいかないが、しばらくは大きな大会もないはずなのでこうした事後処理がメインとなる。

 

「って…わかってるなら比企谷もみぽりんに声かけたら良いのに」

 

「いや…まぁ、そこはお前らが労ってるんだろ?」

 

「それはもちろんだけど…」

 

そんな訳で最近は西住も忙しいのか、戦車道の授業に来てもある程度の練習方針を伝えるぐらいが手一杯のようだ。俺もそういえば会話らしい会話を最近した覚えがない。

 

え?教室?ないない…むしろ一番ないくらいだ。

 

大洗学園の廃校を回避した西住の教室内での人気者っぷりは、え?君本当に転校したてはぼっちだったの?と疑いたくなる程だ。

 

同じクラスはもちろんとして、別のクラス、更には別の学年、極めつけは船舶科や農業科等の普通科以外の生徒も西住に会いたくてやって来るのだ、仕事しろ仕事。

 

廃校問題を救った西住にお礼を言いたい者もいれば、有名になった西住とお近づきになりたい奴まで、真っ当なものから不純なものまで動機は様々だ。

 

…人気者ってのも大変だよな、西住が疲れるのも無理はないだろう。

 

「あっ!じゃあ今度みぽりんをお昼ご飯に誘ってみたら?そしたらみぽりんも元気出ると思うし」

 

「いや、なにがあっ!なんだよ…、それと西住を労うのになんの関係があんだよ」

 

「…本当にわからないの?」

 

「………」

 

武部の真剣な表情に居心地が悪くなる。あぁいや、さっきまでブーケトス狙っていた表情も真剣だったけどね。…こっちのは俺を責めているのだ。

 

…んなの、答えられる訳ねぇだろ。わかるともわからないとも軽々しく答えられない。

 

「…女子を飯に誘う気の効いた文句なんて知らないんだが?」

 

「それは大丈夫!比企谷にそんなの求めてないから!!」

 

とんでもなく失礼な太鼓判を押された、笑顔で。いや、俺としても求められても困るんですけどね。

 

「もう…しょうがないなぁ、私がとっておきのやり方を教えてあげるから」

 

…一年共へのアドバイスといい、こういう時に自信満々なこいつはあんまり信用できないんだよなぁ。

 

「と、その前に…」

 

不穏な気配を感じていると武部がなにやら携帯を取り出し、スラスラメールを打ち込む。

 

「…何してんだ?」

 

「ん?やっぱりここは通信手の腕の見せ所でしょ?」

 

「いや、だから何のだよ…」

 

俺の質問には答えず、武部はメールを次々へと送る。いや、メール打つのが早いのは通信手とはそんな関係ないと思うが…。

 

「ふふん、それじゃ比企谷、作戦開始だよ!!」

 

そして唐突に、謎に満ちた作戦開始を告げられたのだ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「やっとお昼かぁ…」

 

最近いろいろと忙しくて授業もぼんやり、気が付けばもうお昼ご飯の時間となりました。うぅ…成績落ちないようにしないと。

 

「みんな、今日はどこで食べよう?」

 

このお昼ご飯の時間は私の大切な時間、みんなとゆっくりご飯を食べたいな…。

 

「あ…ごめんみぽりん!私一年生の子達にちょっと呼ばれてて…」

 

「え?そうなの…」

 

「すまないが、私もそど子に呼び出しを受けている」

 

「麻子さんも?」

 

「私も生徒会からお昼に生徒会室に来るようにと…」

 

「すいません西住殿、今日はカバさんチームの皆さんと約束があって…」

 

「えぇっ!?みんな用事があるの!?」

 

そうなんだ…、用事があるなら…うん、仕方ないよね。

 

お昼…どうしようかな?そうだ、猫田さんを誘ってみよう。

 

「あの…猫田さん、お昼ご飯一緒に食べませんか?」

 

「ご、ごめんね西住さん、お昼は戦車ゲームのランキング上げしないといけないから」

 

「そ、そうなんだ…頑張ってね」

 

…なんか邪魔しちゃダメな雰囲気が。

 

じゃあ今日は私一人なんだ…。え!あれ!?どどどどうしよう!! 

 

一人でご飯を食べるなんて久しぶりで、なんだろ…こ、困っちゃう。

 

前の私はどうしてたんだろう…、大洗に転校して来たばかりで、まだお友達もできなかった頃の私は。

 

…そうだ、彼を見てた。その時は別に特別な感情があった訳でもなくて。ただ私と同じで、いつも一人だったから気になって。

 

その席に自然と視線が移る、授業が終わるとほぼ同時に空席になった彼の席を見て「らしいなぁ…」と思わず心の中で苦笑してしまいました。

 

…うん、そうだよね。私も強くならないと!!

 

教室の誰かに声をかけてみようと辺りを見渡すと…。

 

「…あれ?」

 

誰も居ない…、え?みんなもうお昼に行っちゃったの!?

 

「どどどどうしよう!!」

 

思わず声に出ちゃった…、うぅ、恥ずかしいな。

 

よし、気を取り直して…ご飯食べに行こう!!

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「うっうっうっ…西住殿ぉ~!!」

 

とぼとぼと寂しそうに歩く西住 みほの少し後ろ、廊下の角で秋山が目に涙をためていた。

 

「ちょっとゆかりん、みぽりんにバレちゃうでしょ!!」

 

そんな秋山に武部がしーっと口元でジェスチャーをする。

 

「ですが武部殿~!西住殿が、西住殿が寂しそうにぃ~!!」

 

「仕方ありません。優花里さん、これも作戦ですから」

 

「しかし、私達や猫田さんはともかく、他のクラスメイトはどうやったんだ?」

 

そんな訳で西住 みほ以外のあんこうチームのメンバーは彼女に見つからぬよう、ひそひそと会話をしているのだ。

 

「え?普通にお願いしただけだけど」

 

「相変わらず…武部殿のコミュニケーション能力は凄まじいですね、羨ましいです」

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「え?食堂ももういっぱいなんですか?」

 

「悪いわね西住隊長、今風紀委員のみんなで使っていて席が空いてないの」

 

「そうなんですか…」

 

チラリと食堂を覗くとカモさんチームの皆さんと同じようにおかっぱ頭の人達がたくさん見えました。

 

私は今日お弁当だし、ここで食べるのはちょっと悪いかな…。

 

「あ、麻子さんの用事はもう終わりました?」

 

「え?…あ、その…まだよ!冷泉さんには言いたい事がまだまだたくさんあるんだから!!」

 

「そうですか…」

 

あれ?でも食堂の中に麻子さん居なかったような…。

 

「い、いいから!せっかく天気が良いんだし中庭でも行きなさい、ほら!!」

 

確認しようとすると園さんがぐいぐいと私を押すので諦めて食堂を後にしました。

 

…中庭?

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「あれ?西住さん、お昼まだなの?」

 

「え?はい…」

 

歩いていると知らない男の人達に声をかけられました、誰だろう?

 

「良かったら僕らと一緒に食べない?」

 

「いいね、いろいろと話も聞きたいし」

 

「えと…その、あの」

 

ど、どうしよう?そんな急に知らない人達とご飯なんて…。

 

「せっかくの機会なんだし、ね?」

 

一人で食べるのは寂しいけど…でも、全然知らない人達と食べるのはさすがに…でも、断るにもどう断ったら。

 

「「「「根性ーーー!!」」」」

 

「え?えぇ!?バレー部の皆さん!?」

 

「あ!西住隊長!偶然ですね!!」

 

ぐ、偶然なの…?これ?

 

「えーと、君達は確かアヒルチームの…」

 

相手の人達も突然の磯辺さん達に驚いてます。

 

「私達を知っているという事は…」

 

「キャプテン!これは…」

 

「あぁ!わかっている近藤!!あなた達、バレーに興味があるんですね!!」

 

えーーーーーーー!?

 

「え?バレー?いや、別に俺達は…」

 

「いえ、言わなくてもわかります!私達を知っているという事はバレーを知っているのと同じ!バレーを知っているという事はバレーに興味があるのと同じ!!」

 

…そ、そうなのかな?

 

「できれば女子部員が欲しいが、これで男子バレー部も作れる。私達と共にバレーに青春を賭けようじゃないか!!」

 

「す、すいませんでした~!!」

 

男の人達はぐいぐいくるバレー部の皆さんに押されて走りだしちゃいました…。

 

「ほう、早速ランニングとは見所があるな。よーし、私達も続くぞ!!」

 

「キャプテン、その前に…」

 

「おっとそうだった…、西住隊長!今日は中庭にいい風が吹いてました」

 

「あそこでご飯とか食べたら、きっと美味しいですよ」

 

「ではまた!!」

 

そう言ってバレー部の皆さんは走り去っていきました…。えと、なんだったのかな?

 

…中庭?

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ごめんねー西住さん、今戦車の整備しているから戦車倉庫はちょっと入れないんだ」

 

「そうなんですか…その、ありがとうございます」

 

この前みたいに戦車倉庫でご飯を食べようかと思いましたが、ここも自動車部の皆さんが使っているらしくてダメみたいです。

 

…自動車部の皆さん、ご飯食べなくていいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

「あ、あの…西住隊長、その…この先は今日うさぎを散歩させていて」

 

えーと…。

 

「ごめんね西住ちゃん、今からちょっと生徒会でここ使わなきゃいけなくなって」

 

うーんと…。

 

「すまない西住隊長、この先にはベルリンの壁があって通行止めなんだ」

 

えぇぇえ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…どうしようかな」

 

なんでだろう…?今日に限ってご飯を食べれる所が全然見つからない。

 

なんだか戦車道チームのみんなとよく会うけど、誰かとご飯を食べる機会は全然なくて。

 

こんな事なら教室で食べれば良かったかな…。

 

でも、一人で食べるのは…やっぱり、ちょっと寂しいな。

 

気が付いたら私は中庭まで来てて…。

 

「あ…中庭」

 

そこで私はふと、思い出しました。

 

ここのすぐ近く、よく彼が一人でご飯を食べている場所がある。

 

たぶん…ううん、絶対今日も。

 

そう思うと自然と身体はそこに向かって、地面に座り込んでいる彼の背中を見つけるのはすぐでした。

 

「よし…」

 

声をかけよう。

 

八幡君と一緒にお昼を食べよう。

 

「………」

 

そう思いましたが、私はお弁当をぎゅと抱き締めると…その場から離れる為に後ろを向きます。

 

前に一度、八幡君と初めて話をしたあの日の事を思い出して。

 

一緒にご飯を食べるのを断られた…というより、八幡君は私の事を相手にするつもりもなかったんだろうな。

 

もちろん、その時も悲しかった。でも…もし今また同じ事になったら…。

 

きっと、あの時とは比べ物にならないぐらい、悲しくなると思うから。

 

だから、声をかけるのは止めよう。

 

ご飯はこのまま教室に戻って食べよう。

 

「西住」

 

「…え?」

 

ふと、八幡君に呼びかけられてびっくりして振り向くと、背中を向けていた八幡君は私を見てました。

 

「あー…その、なんだ?えと、まぁ…つまりだな、いやーーー」

 

八幡君は難しそうな表情で歯切れがとても悪くって…でも、何か言いたそうにそんな言葉を繰り返しています。

 

「…八幡君?」

 

どうしたんだろ?と思い声をかけようと八幡君に近寄ると。

 

「へ、…へい彼女、一緒にお昼……どう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

あーーーー!!

 

あーーーーーー!!

 

あーーーーーーーーー!!

 

言っちゃったよ!

 

言っちゃったよこれ!!

 

武部のやつ…、何が『とっておきのやり方』なんだよ!!

 

だいたいセンスが古いんだよ!今時「ヘイ彼女」とかどこの昭和世代向けだよ、昭和とかもう年号2つ違うからね?(重い事実)。

 

いや…まぁ、そのね?他に上手い言葉考えつかない俺が悪いんだけどね、わかってるけどね、それくらい。

 

それに戦車道チームの連中にここまで御膳立てしてもらった手前…いや、あいつらも絶対楽しんでそうではあるが。

 

しかし、今時こんな誘い文句に嬉しがる女子なんて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん……、うん!!!」

 

彼女は。西住 みほは本当に、今まで見てきた中でも抜群に嬉しそうに、楽しそうに、満面の笑みを浮かべていた。

 

…武部さん。いや、武部様ってマジもんの恋愛マエストロだったの?

 

「えへへ…、えっへへ」

 

なんかもう、西住の表情がゆるみまくっている。すっげぇゆるゆるで戦車乗ってる時とは完全に別人である。

 

そんな表情でふわふわと危なっかしいくらいの足取りで西住は俺の隣にやってくると、ちょこんと座り込んで弁当を広げた。

 

俺はその楽しそうな様子を横目に眺めながら、残っていた昼飯用のパンを頬張る。

 

あの日、初めて西住と会話をしたその日から。

 

大洗戦車道が再び動き出したその日から。

 

ずいぶんと時間がかかり、ずいぶんといろいろな事があり、相変わらず俺は間違い続けてはいるけれど。

 

それでも今日。この場所で、俺と彼女はあの日できなかった昼食を共にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【やはり俺の戦車道は間違っている。『戦車道全国大会編』】

 

 

【完結】




前書きでも書きましたが後書き&今後については後日活動報告に投稿します。

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