やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
第一段は時期もちょうど良いのでハロウィンの話、劇場版との時系列?気にしたら負けです(笑)
ハロウィン…オニランド…サンタサンバ…うっ、頭が!!
あ、卵は美味しかったです。
それは彼とウサギ達のハロウィン・ウォー【その1】
ハロウィン、それは恐怖のイベントである。
もちろんここでの恐怖とは、べつにお化け等の仮装が対象という話ではない。
ハロウィンとは、渋谷等でコスプレをした狂気の若者達がウェイウェイ練り歩きながら、トラックを横転させ、ゴミを巻き散らかしていくという恐怖のイベントである。
彼等彼女等に問いたい、そもそもハロウィンの起源が何か知っているのか?と。
渋谷に集まる若者に聞いてみるといい、せいぜい一割程度がまともに答えられれば良い方だろう。
本来ハロウィンとは宗教的な神事に近い。古代ケルト人が秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す為の行事なのだ。
そもそも仮装だって悪霊を追い出す為のもので、コスプレでやるものではない。
だが、今はどうだ?ハロウィンだなんだと大義名分を掲げて好き放題する狂気の若者達は、悪霊よりもよほど悪霊らしい。特に自分達がそれほど悪くないと思っている辺り質が悪い。
ゲイ・ボルグられても仕方ないだろう。
また、ハロウィンと言えば誰もが思い浮かぶ有名なフレーズが【トリック・オア・トリート】だろう。
直訳すると「ごちそうか?いたずらか?」である。要するに「ごちそうをくれなきゃいたずらしちゃうよ?」という意味になるこの言葉。
ごちそうとは…まぁ、おかしの事だ。ハロウィンとなればお化けや魔女に仮装した子供が近所を周り【トリック・オア・トリート】と告げてまわるのだが、これが甚だ疑問である。
嘘つきの大人達が言わないなら俺がはっきり言ってやろう。それ、脅迫じゃね?と。
「おかしをくれなきゃ…わかるよね?俺、ちょっとなにするかわかんないよ?」と言っているようなものだ、やっている事なんて強盗とそう大差がないだろう。
おまけに仮装のお陰で身元もバレないという徹底ぶり。
こんな強盗紛いのやり方を小さな子供達に教えるハロウィンというイベント。若者達がトラックを横転させゴミを巻き散らかしていくハロウィンというイベント。
…はて?そもそもハロウィンとは必要なんだろうか?
その問いに、嘘つきの大人達が言わないなら俺がはっきり言ってやろう。
ソシャゲのハロウィンイベントのログインボーナス、美味しいです。
ーーー
ーー
ー
『ここ、渋谷では本日のハロウィンに向けて早くも多くの人が集まっており…』
最近、この時期になると毎度のようにこのニュースが流れる。渋谷にハロウィン、混ぜるな危険。
そもそもハロウィンなんて数年前まで日本では何も騒がれてなかったはずだが…まったく、いつからこうなったのやら。
「おー、今年も盛り上がってるねぇ!!」
台所でなにやら一仕事をしていた小町が、そのニュースを見て楽しそうに声をあげる。
「まったくだ、もっと盛り上がらねぇかな」
BGM変わりにつけていたニュースだったが、小町にそう返事を返す。
「い、今、お兄ちゃんが…ハロウィンが、もっと盛り上がらないかなって言ったの?」
小町は信じられない物を見た顔でぶつ切りに言葉を繋いだ。いや…普通に失礼でしょ。
「どうしたの?いくらハロウィンだからって…まさかお兄ちゃんの仮装をした誰かなの!?」
いや…そんなに意外だった?てか俺の仮装ってなんだよ、そもそもハロウィンってお化けの仮装をする日だよ?
「今年はどんな馬鹿が、どんな馬鹿をやらかして捕まるのか、楽しみだ」
そういうアホはもっと間引きされれば良い。そしてそれを炙り出すにはハロウィンというイベントは都合がいいだろう。
「んー…これはお兄ちゃんですねー」
「どういう基準だよ…」
まぁそんな訳で、渋谷の騒動なんてしょせんは対岸の火事のようなものだ。炎上するならそれでこっちはなんの関係もない。
いやー、学園艦在住で良かった。渋谷の若者共もさすがに学園艦横転させには来ないだろう。
ま、学園艦でハロウィンとかやりだそうものなら、そいつらには説教が必要だがな。
と、考えていると家のインターホンがなった。…誰か来たのか?
「小町ー、お客さんだぞ」
「えー、小町今ちょっと手が離せないし、お兄ちゃん代わりに出てよ」
そう言うと小町はさっさと台所に戻っていく。…チッ、仕方ないか、変なセールスだと面倒だな。
再びインターホンがなる。…ちょっとしつこいな、今出るって。
玄関に出て扉を開ける。
「「「「「比企谷先輩!トリック・オア・トリート!!」」」」」
「間に合ってます」
扉を閉める。っかしーな?今一瞬仮装した一年どもが見えた気がしたがきっと気のせいだろう。うん。
…またインターホンがなる。しかも今度は連続で。
「…何の用だよ」
「その前にいきなり閉めるなんてひどいですよ!!」
「そーだそーだ!!」
仕方なく扉を開けると一年共がぶーぶーと猛抗議してきた。そりゃ閉めるだろ、強盗対策には無闇に扉を開けないのが一番である。
「比企谷先輩、今日がなんの日か知ってます?」
「諸聖人の日」
「なんですかそれ~?」
知らねぇのかよ、ハロウィンよりよっぽど大事だと思うんだが。
「ほらほら、比企谷先輩、私達の格好見てくださいよ」
いや、言われなくても扉開けた時からずっと見えてるから。見えててあえてスルーしてんだから察しろ。
一年共だが、いかにもハロウィンを満喫してます!と言いたげな仮装…てか、コスプレをしている。
「どうです、似合いますか?」
「いや…まぁ」
似合う似合わないでいったら…まぁ、似合ってはいるが。
「え~、はっきり言って下さいよぉ」
言葉を濁していると宇津木が迫ってくる。うーん…あざとい、さすが元彼氏持ち。
「そんな訳で比企谷先輩、トリック・オア・トリートです」
「おかし下さい!!」
一年共が欲望に忠実すぎる…。
「…お前ら、ハロウィンの起源知ってるか?」
「え?おかしが貰える日じゃないんですか?」
「だからこうやってみんなで集まって、いろいろお家を回っているんですけど」
…やっぱり強盗じゃねぇか、風紀委員に通報すんぞ?
「悪いが家にはお前達にやる物はない、だからさっさと帰ってーーー」
「あ!皆さんどうもどうも、これ、おかしです」
追い出そうとしたら後ろから小町が声をかけてきた。綺麗にラッピングされたあれは…おかしか。
「ありがとう小町ちゃん!!」
「やったー!クッキーだ!!」
…君ら高校生だよね?中学生からおかし貰って喜ぶとか、先輩として威厳とかないの?
「いえいえ、兄がいつもお世話になっておりますので」
違う、威厳がないのは俺だこれ!むしろ小町が保護者すぎる…。
「てか、いつの間にそんなの用意してたんだよ」
「さっきから台所で作ってたでしょ」
あぁ…そういえば朝からずっと台所でなんかやってたなぁ。
「せっかくのハロウィンだからね、近所の子達にも配る予定だったし」
…一年共の扱いが近所の子供と同レベルなんですけど。
「ちなみに俺の分は?」
「え?ないけど」
「…ないかー」
小町のクッキー…、こまクッキー。ないかー…。
「…比企谷先輩、本気で落ち込んでる」
「可哀想…」
「やっぱりシスコンだよね…」
ひそひそと一年共が話をする。だからシスコンじゃねぇって、ただ小町の手作りクッキーが食べたかっただけだから。
「これで用は済んだだろ、じゃあな」
まぁこれでこいつらもお目当てのおかしはゲットした訳だ、もう用事もないだろう。
「あ、あの…比企谷先輩、今日は暇ですか?」
「暇ですよねー?」
「いや、暇じゃねぇな、やる事がある」
暇だと断言されると抗いたくなるのは別に俺がひねくれているからではない、たぶん誰だってそうだ……きっと。
「…お兄ちゃん、朝からずっと居間のソファーでぐてーとテレビ見てただけじゃん」
…小町が居るのでその手の嘘は通用しなかった。そして俺を見る一年共の視線がなんとも痛い。
「暇なら私達のお手伝いして欲しいな~って」
「…手伝い?なんのだよ」
「もちろん、ハロウィンであちこちまわる手伝いですよ」
「おかしもみんなで山分けしますよ!!」
「いや、行かねーから…」
危うく犯罪の片棒を担がさせるはめになる所だった。俺まで共犯者にするつもりかよ。
「えー、行きましょうよー!!」
「………」
「ほら、紗希も比企谷先輩と一瞬に行きたいって言ってますよ」
だから無言の圧力止めーや…、その純真な目でじっとこっちを見つめるのは止めて。
「えー、いいじゃん。お兄ちゃん、どーせ暇なんだし、ここは頼れる先輩の力を見せなきゃ」
「いや、俺はハロウィンなんてイベント自体興味がないんだが、そもそも仮装の用意もないし」
「大丈夫です、比企谷先輩ならそのままでも充分ですから」
「もっと自信を持って下さい!!」
「ゾンビっぽい感じがとっても良いと思いますよぉ」
喧嘩売ってんのか?こいつら。
「あー、そういえばクッキーの材料まだ余ってるし、お兄ちゃんが皆さんのお手伝いするなら、小町もお兄ちゃんの為に作ろうかな」
「そこは普通にお兄ちゃんの為に作ってくれねぇかな…」
しかし小町の手作りクッキー…、こまクッキーをチラつかされるとこちらも重い腰が上がりそうになる。
「ほらほら、良い機会なんだしお兄ちゃんもハロウィンを堪能して来なよ」
「そうですよ、せっかくのハッピーハロウィンなんですよ!」
「ハッピー!」
「ハロウィン!!」
「そもそもハロウィンってハッピーな行事じゃないけどな…」
なんにでもハッピー付けるとかこいつらの頭ハッピーセットかよ…。
ーーー
ーー
ー
「だいたい家をまわるって言っても、そんなにおかし貰っても置いとく場所ないだろ」
クエスト報酬のこまクッキーに見事に釣られて結局家から出てしまった。
…まぁ、こいつらほっとくのも心配だしな。いつハロウィンの熱に受かれてトラック横転させんとも限らない…このネタはさすがにもういいか。
「毎回貰ってその場で食ってるのか?」
「ふっふっふ、そこはちゃーんと準備してありますよー」
大野がキラリとメガネを光らせる。普段メガネをかけない武部やぐるぐるメガネの猫田、意味があるのかもわからない片メガネの川嶋さんが居る大洗では貴重な正統派メガネっ娘だよな、こいつ。
「準備?」
「桂利奈ちゃん」
「あーい!!」
阪口が元気いっぱいに手を上げてとてとて先行していくと、やがて家の玄関先にM3リー戦車が停車した。
ただし、外装が…ハロウィンの飾り付けをされている。カラーもジャックオーランタンを彷彿とさせるハロウィン仕様。
「…………………」
あぁ…M3リー戦車が見る影もない、これはひどい。いつぞやかのピンク一色カラーはまだデザートピンクで脳内を誤魔化せたが。…GGOの二期待ってます。
「あれ?比企谷先輩黙っちゃった」
「きっと私達の戦車に感動しているんだよ」
「可愛く飾り付けできたよね」
よーし並べ、今から説教だ。
「お前ら、これで家をまわってたのか?」
「え?そうですよ」
「これならたくさんおかし貰っても大丈夫ですし」
「あや頭良い~」
…正統派メガネっ娘だからって頭が良いとは限らない良い例だな。
「不思議とみんな素直におかしくれるんですよ」
「きっと、私達の戦車が可愛いからだよ!!」
そりゃ家先にいきなり戦車が来て「おかしか?いたずらか?」とか言われりゃ誰もがおかし差し出すわ!!
【トリック・オア・トリート】ならぬ【ファイア・オア・トリート】である。「おかしくれなきゃ砲撃しちゃうよ?」とか…完全に脅しなんだよなぁ…。
「それじゃあみんな、ハロウィン作戦、開始だよ!!」
「「「「お~~~~~!!」」」」
「………」
澤の号令と共に楽しそうに手を上げる一年生達。やはり、ハロウィンとは恐怖のイベントなのだろう…。