やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
やっぱりイベントにもシナリオとか欲しかったなぁ…、ストーリーのシナリオそこそこ好きだったし。
俺ガイル最終巻がいよいよ発売…するよね?もう延期しないよね?
【武部宅】
「「「「「沙織お姉ちゃん、トリック・オア・トリート~!!」」」」」
「はーい!みんな並んで並んで、今配るから待っててね」
さて、次なるターゲットは武部なのだが、ハロウィンお菓子強奪隊を前に更なるチビッ子お菓子強奪隊が武部を囲んでいた。
「さすが武部先輩、モテモテだね」
「…あれってモテモテって言うのかな?」
言ってやるな山郷。しかしなんだろうか、毎度この武部のちょっとベクトルの違うモテかたは。
「「「「「武部先輩、トリック・オア・トリート!!」」」」」
そして君ら一年もよく堂々とチビッ子に混ざれるよね、恥ずかしくないの?
「わっ!せんしゃだー!!」
「かっけー!!」
だがチビッ子達の興味は戦車に移ったようだ。ほう…その年から戦車の良さがわかるとは将来有望なチビッ子じゃないか。
まぁ大洗は戦車道の優勝高校なので、今も学園艦全体で戦車をアピールしている。こういうチビッ子が戦車に興味をもっても不思議ではないが。
「ウサギさんチームのみんなと…え?比企谷!?な、なんであんたも居るのよ!?」
「なんでだろうなぁ…、いや、てか居ちゃ駄目なのかよ?」
「だっていきなり来られても困っちゃうっていうか…、今眼鏡だし…」
確かに武部の眼鏡姿は珍しいけど…前にも一度見ているというのに、そんなに慌てる程の事か?
「やれる菓子が無いなら、その文句は俺じゃなくて一年共に言っとけ…」
チビッ子に配る分は用意してあったようだが、ウサギチームの分までそう都合良く用意してはいないのだろう。
「あ、ううん、それは大丈夫。多めに作ってるから」
大丈夫なのかよ…じゃあなんで困るの?俺がチビッ子達に圧でもかけると思った?
「つーか毎回こうやって配ってるのか?」
小町も近所の子供の分も用意していたが…さっきの武部の慕われようはそれ以上だった。
学園艦といえば中~高校生の為の船であるが故、子供といえばその年代が大半だが、別に小さな子供が居ない訳じゃない。
俺や秋山みたいに実家が学園にあったり等、親の都合上、小さな頃から学園艦に住む子供も少なからず居る。
「子供が好きなんだよねー、可愛いし」
この台詞、言う人が違えば完全に犯罪者予備軍になるのが恐ろしい。大切な事は何を言うかじゃない、誰が言うか、だ(真理なので何度でも言う)。
「比企谷はどう?ほら、小さな子とか」
しかも、それ俺に聞いちゃいますか?俺が同じ台詞を答えれば犯罪者予備軍側の扱いされるのは、やむ無しじゃない?
「別に嫌いじゃねぇけど」
「ふーん…」
極めて平静を装って答えたつもりだったが、武部はジトーっと俺を見つめてくる。
「…なんだよ?」
「一年生のみんなとも仲良さそうだし、てっきり年下の方が好きなのかなって」
「単に巻き込まれた被害者なだけなんだよなぁ…」
そもそも、いつの間に俺の好みの年齢の話に変わってんだよ…。
「あ!じゃあ比企谷先輩の好みって年上なんですかー?」
と、ここで話を聞いていたのか、武部からハロウィンのお菓子であるカップケーキ(高クオリティ)を貰ってもぐもぐしていた一年共が声をかけてくる。
「えー、年下の方が良いですよねぇ、比企谷先輩~」
宇津木が撫で声でぶーっと頬を膨らます?うーん…あざとい。
いや、今はそんな事より…えーとだな。
「いや、別にそんなのどうでも…」
「ほら比企谷、せっかくだし好みの年齢くらい答えてあげれば?年上とか年下とか。そ、その…同じ年とか!!」
「…そうだな」
仕方ない、ここは正直に答えるべきか。
「…養ってくれる人だな」
「「「「「……は?」」」」」
「年なんて関係ない、将来俺を養ってくれる人がベストだ」
「ヒモだ…」
「ヒモじゃねぇよ、専業主夫希望なだけだ」
「ヒモじゃん」
だからヒモじゃねぇって、…ヒモじゃないよね?
「はぁ…また始まった」
冷たい眼差しの一年共とは違い、呆れてため息をついた武部は俺の前にもカップケーキを差し出した。
「それなら比企谷、私より料理上手にならないと駄目だからね」
…なんで武部がハードルなの?ちょっと設定高すぎるよそのハードル。
ーーー
ーー
ー
【西住宅】
マンションを進み西住の部屋へと向かうが、部屋の飾り付けに俺達は思わず立ち止まった。
西住の部屋の扉に飾り付けされたジャックオーランタン、これはハロウィンガチ勢の飾り付けだ。
このマンションだが、大洗学園の生徒が借りているマンションなので住民は必然、高校生だ。
つまり、ハロウィンでお菓子を貰いに回るような年齢ではない生徒が大半である。
ん?一年共?いや、それはこいつらが例外なだけだし、何事も考え方しだいですよ?
なので他の部屋を見渡しても、ここまでハロウィンガチ勢な飾り付けをしている部屋は見当たらない。
「もしかして西住隊長って…」
「ちょっと…変わってる?」
なんだお前ら、今頃気付いたのか?
呼び鈴を鳴らすとすぐに扉が開いた…、早っ!!
「トリック・オア・トリート!!」
満面の笑みで仮装して決まり文句と共に俺達を迎えいれる西住…ちょっと、何やってるのこの子?
「えーと…西住隊長?」
「どうしたんですか?」
これには一年共も冷静にならざるをえないようで…、まぁ端から見てればお前らも似たような事やってんだけどね。
「え、えと…黒森峰の頃ってハロウィンとかそういうのあんまりやった事なくて、私もやってみたいなって…」
と、そういう訳らしい。要するにハロウィンのばか騒ぎに憧れがあったようだ、黒森峰ってどれだけ遊びなかったの?
「そういう事でしたら、西住隊長、私達のお菓子をどうぞ」
「好きなのとって下さい!!」
良い話な風ではあるが、そのお菓子も元々は別の所からの貰い物でしょうに…。
「それじゃあ私達も」
「うん」
「「「「「西住隊長、トリック・オア・トリート!!」」」」」
「うん、みんなどうぞ」
続けて西住から一年共にお菓子が配られる。…単なる物々交換になっちゃってるが本人達が楽しそうだし、良しとするか。
「つーか西住、その仮装」
「うん!ハロウィンボコバージョンだよ、可愛いよね!!」
平時でも包帯ぐるぐる巻きでミイラ男みたいな仕様の熊なんだが…、その着ぐるみというか、パーカーみたいなのを着ている。
「ほらここ、ハロウィンスペシャルの時にボコがコウモリにやられた所をすごく再現しててね。この噛みつかれた跡とかーーー」
「いや、良いから、わかったから…」
だからなんで、その熊の話になるとこんなに饒舌になるの?しかも内容がバイオレンス。
「あ…そうだ、八幡君」
「…ん?なんだよ」
改めて名前を呼ばれたので何なのかと思うと、西住は少しだけ楽しそうに微笑む。
「えぇと…その、うん!トリック・オア・トリート!!」
「…は?」
「だから、お菓子か?悪戯か?だよ」
いや、それは知ってる。問題はそこではなく。
「それならさっき一年共にやっただろ?」
「でも八幡君にはやってないよ」
言われてみれば…そこに気付くとは、やはり天才か?
「悪いがやれる菓子なんて持ってないぞ…」
回収したお菓子の大半はM3戦車の中に置いてある。さっき一年共が持っていたのも食べ歩き用にたまたま持っていただけだ。
「じゃあ…えっと、悪戯、かな?」
「………」
お菓子を貰えないなら悪戯しても良いという、ハロウィンならではの免罪符。いや、そんなものあってたまるかって話だが。
「…えへへ、えと、悪戯…悪戯」
だがハロウィンを満喫する気満々の西住は、そのルールに則るつもりらしい。うーんと悪戯について首を傾げて考える。
「八幡君、悪戯って何すればいいのかな?」
「俺に聞くなよ…」
根が良い子すぎて思い付かないのが西住らしいのだが…そんな事俺に聞かれても困る。
「…はぁ、西住、トリック・オア・トリートだ」
なので、ここはさっきの一年共と西住のやり取りを使われて貰おう。
「…え?私?」
「あぁ、お菓子か、悪戯か、わかるだろ?」
ここで西住からお菓子を貰い、それをそのまま西住に返せば形の上では一応、お互いお菓子を得た事になるだろう。
「う…うん」
西住もそれに気付いたのか、頷くと。
「えと……どうぞ?」
…何故か目を閉じて来た。いや…どうぞって何を?
「悪戯…するんだよね?」
恐る恐ると片目だけチラリと開ける。あざとい…さすが西住、あざとい。
「言い間違えた…西住、トリート・オア・トリートだ」
「え?でもそれじゃあハロウィンの意味が…」
「良いからさっさとお菓子をくれ…」
ほんと、俺の理性とかそこら辺がちょっとでも残っているうちに早くね……。
ーーー
ーー
ー
【冷泉宅】
一軒家を前にピーンポーンと呼び鈴を鳴らすが反応はない。
「冷泉先輩、居ないのかな?」
「寝てるんだろ。ったく、わざわざ後回しにしてやったのに…」
「それで冷泉先輩の家は最後にしろって言ってたんだ…」
当たり前だ、だって冷泉だぞ?休みの日であの時間帯に起きていたら逆にびっくりだ。
「でも寝てるなら仕方ないよね…」
「うん、ここは次に…え?」
合鍵を差し込んでがらがらと玄関扉を開ける。
「あのー…比企谷先輩?」
「あ?」
「それ…なんですか?」
「何って…鍵だろ?」
それくらい見てわかるだろうに…何言ってんだこいつら?
「あの、問題はそこじゃなくて…」
「冷泉、入るぞ」
合鍵をしまうと挨拶もそこそこに、そのまま冷泉の寝ている部屋へと入る。
「えぇ…比企谷先輩、何してんですか?」
「は?冷泉起こすんだろ?」
すやすやと布団に丸まって寝ている冷泉の横にしゃがみこんで、秘密兵器を取り出す。
対冷泉になるだろうと、あらかじめ持ってきておいた戦車喫茶ルクレール御用達、「押したら戦車の砲撃音のなるボタン」である。
それをポチっと押すと心地よい砲撃音と共に、冷泉がものすごく不機嫌そうにこちらを睨み付けてきた。
「比企谷さん、今日は休みだぞ…休みの日くらいゆっくり寝かせてくれ」
「もう充分ゆっくり寝ただろ。真っ当な人間ならもうとっくに起きている時間帯だぞ」
「なら、比企谷さんが起きているならまだ寝てても良い時間帯だろう…」
「どういう理屈だ…それよりほれ、一年共が用事あるんだと」
と、一年生に声をかけると…なんだあいつら、ぼーっとして。
「…私達、何を見せられたんだろう?」
何って…冷泉起こしただけだろうに何言ってんだ?
「と、とにかく冷泉先輩!!」
「「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」」
「ひっ!お、お化け…」
元気良く挨拶した一年共だが、冷泉はその姿を見るなり俺の背中に隠れる。…えー、この低クオリティの仮装にも怯えちゃうのかよ、どんだけお化けダメなの?
「ちょっと待って下さい!!」
「なんで私達には怯えて、比企谷先輩には普通なんですか!!」
「さすがに失礼ですよー!!」
「お前らがな…」
「無理やり起こしてお化け連れて来て、なんの嫌がらせだ!!」
俺の背中で冷泉が抗議するようにギュっと服を掴む。おいこら、服伸びちゃうだろ…。
「落ち着け冷泉、ウサギチームだ。ハロウィンでトリック・オア・トリートでお菓子をくれと」
慌てて要点だけを説明してやる。しかしここまで余裕のない冷泉を見るのは久しぶりだ、寝起きに苦手なお化けをぶつけるとこうなるのか。
「無理やり起こしてお化けの仮装してきて、お菓子をよこせとかなんの嫌がらせだ!!」
うーん…ごもっとも。
「あー…お前ら、とりあえずそこの戸棚に買い置きのバームクーヘンがあったから、とりあえずそれ持っていけ」
「…なんで比企谷先輩がそれを知ってるんですか?」
なんでって言われても…たまに朝飯作ってやってるんだし、その時に目に入ったってだけなんだが?
「ば、バームクーヘンは駄目だ!!」
「だがバームクーヘンの犠牲でお化けは消えるぞ?」
「うぐぐ…」
バームクーヘンとお化けへの恐怖で葛藤している冷泉を見て、さすがにちょっと可哀想になってきた。
「あー…悪いお前ら、バームクーヘンは無しだ。確かそっちの奥の棚にせんべいが入ってたから、それで勘弁してやってくれ」
「だから、なんで比企谷先輩がそれを知ってるんですか!?」
「比企谷先輩と冷泉先輩って…」
いや、そんな不可解な視線送られても…冷泉起こす為に通ってたら自然とこうなったというか…。