やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
理由は『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』最終巻を読み終えるまで執筆を止めていたからです。
やっぱり好きな物語が終わっちゃうのって…いろいろ思う事あるんですよね。
「「「「「トリック・オア・トリート~!!」」」」」
「や一やー、ウサギさんチームのみんな。これ、ハロウィンのお菓子ね」
大洗学園の自習室にて会長が手渡したのは、今現在も自分がもぐもぐと食べている干し芋の入った袋である…だよね、知ってた。
そもそも干し芋はお菓子に含まれるのだろうか?これはバナナ以上に遠足に持っていくお菓子討論が出てきそうまであるが、この人が自信満々に渡してきたのだ、大洗学園では干し芋はお菓子に含まれるらしい。
更には干し芋パスタなる物もアンツィオ高校に作ったそうなので干し芋はメインメニューにもなるし、単純に甘いのでデザートにもなる。なんだ…干し芋って最強なのか。
「今ってさつまいもが美味しいんですよね!!」
「秋の旬だもんね」
まぁ一年共も嬉しそうだし良しとしたい所だが…一点間違っているな、それは違うよ。
「これは茨城のさつまいもだから旬でいえばちょっと早いけどな」
「そうなんですかー?」
遭難ですよ…じゃなかった、そうなんですよ。さつまいもは採れる地域によって旬が変わってくるのである。
「さつまいもの生産量が一番多い地域は知ってるだろ?」
「比企谷、何を今さら言うのかと思ったら…」
話を聞いていたのか、やれやれという顔で河嶋さんが話に入ってくる。その机の上に置かれた勉強道具はやらなくて良いのだろうか?
「そんなの茨城に決まっているだろう。会長がよく食べているのだ、当たり前だろう」
さも当然のように答える河嶋さんに絶句…。
「桃ちゃん…」
「あの河嶋さん、さつまいもですよ。薩摩って名前出てますけど?」
「ん?だからなんなのだ?」
おいマジかこの人、もしこの場に歴女グループのおりょうが居ようもんなら説教案件もあり得るぞ…。
「一位は鹿児島です、茨城は二位ですよ」
とはいえ焼き芋や干し芋用の品種なら茨城も負けちゃいない、二位じゃダメなんですか?
「ちなみに三位は千葉だ、これマメな」
「…比企谷先輩ってちょくちょく千葉のアピールしますよね?」
言われてみれば…はて?千葉という言葉にはやけに親近感を覚える。知波単学園の母校があるが、俺にも突撃精神が備わっているのだろうか。
「な、なんだお前達その顔は!ちょっと間違えただけだろうが!!」
「あの…その、河嶋先輩、もうすぐ受験ですよね?」
「上手くは言えませんが、頑張って下さい!!」
「学歴だけが人生じゃありませんから!!」
そして地雷原でタップダンスを決める一年生達、もうめっちゃブレイクダンス、レボリューションしちゃってる。
「大きなお世話だ!用が済んだならさっさと帰れ!!」
「「「「「ご、ごめんなさい~!!」」」」」
河嶋さんの一睨みで蜘蛛の子を散らすように退室する一年生達。正直一年生の気持ちもわかるんだが、こんな調子でこの人、受験大丈夫なのかよ?
会長と小山さんについては問題ないだろうが…。
「まったく…あいつらときたら」
「まーまーかーしま、あの子らも心配してんだから」
一年共が退室後、ぶつぶつと文句をごちる河嶋さんを会長が宥める。
「会長はウサギさんチームの連中に甘過ぎます!!」
あー…それは確かに。というか会長に限らずうちの戦車道メンバーはどうにも一年共に甘いイメージがある。
今回のハロウィンお菓子強奪作戦もあんこうチームはもちろんだが、各チームを回りなかなかの成果を上げちゃっているのだ。
歴女グループからは信玄餅、バレー部からはバレーボール型のチョコ、ネトゲチームからはプロテイン。いや、突っ込み所は多いんだけどそこら辺までやるとマジできりがないから…。
なにより恐ろしいのはバレー部連中がふと閃いたように「バレー・オア・バレー…と言うのはどうだろう!!」と宣言し始めた事だ、もはやバレー一択である。小町に連絡を入れて「ハロウィンお断り」の張り紙を家に貼らなきゃ…。
ちなみに風紀委員からは戦車を私用で乗り回してたせいか追いかけられた…当然向こうも戦車で。街中をルノーとM3リーが駆けるデッドヒート。
そしてこんな日にも戦車整備に勤しむ自動車部の面々には…差し入れにお菓子を置いてきた。さすがの一年共もあの彼女達を見てお菓子を寄越せとは言えないよね…。
そんな訳で、この波乱万丈なハロウィン騒動もこのカメチームでラストとなる。貰えたお菓子の数で言うなら上々の成果といえる。
…これに味をしめた一年共が来年は他所の学園艦まで進出しそうで恐ろしい。
「いーじゃん、可愛いし。ね?比企谷ちゃん」
「いや、そこで俺に同意を求められても…、俺もむしろ甘いと思いますけど」
こうしてお菓子の収集に成功しているし、うちの戦車道チームちょっと一年共を甘やかしてるよな。
「でも、比企谷君もわざわざ休みの日にウサギさんチームのみんなを手伝ってあげてるのよね?」
いや、全ては小町の手作りクッキー、こまクッキーの為であるんだが…。
「いや…ほら、世話のかかる後輩ですし」
ほら、ほっとくとハロウィンのテンションでトラックとか横転させそうだしね!何事にも監視役は必要なのだ。
「まぁ比企谷よりはマシだろうが」
「そだね」
「…え?いや、それはないでしょ?」
何を言うかと思ったら…え?俺?いやいや、それはないだろう。
俺の世話のかからなさと言ったら断トツである自信がある。正しくは世話のかからなさというより、世話を"させない"という点ではあるが。
「まったく、一年の頃のお前には苦労させられたぞ…、船底の連中でもそんな腐った目をした奴は居なかったからな」
「船底…?」
深くため息をつく河嶋さん。船底といえば学園艦の内部も内部、船舶科のテリトリーだ。
生活面が船の上がメインとなる普通科の俺からすれば縁も程遠いのでいまいちピンとこない。
「この学園艦の最深部には通称『大洗のヨハネスブルグ』と呼ばれる場所があってね、そこは生徒会の管理も受け付けない無法地帯なの」
…え?大洗にそんなスラム街的な危険地帯があったの?なにそのモヒカンで肩パット付けた人達がヒャッハーしてそうな世紀末地帯。
風紀委員の人達も取り締まるならそこら辺取り締まれば…いや、生徒会の管理も受け付けないってレベルだしな。
…そんなのがこの大洗学園の学園艦を運航する船舶科とか、うちの学園大丈夫なのかよ?
「そんな連中よりも腐った目をしていたからな、最初は学園の最深部の更に下から来たのかと思ったぞ」
「人を深海魚みたいに言わんで下さい…」
そんな無法地帯の連中よりひどいとか言われる俺ってむしろ世紀末覇者なんじゃないだろうか?天はこの八幡を選んだの?辞退したいんだけど。
「そいつらとお前ではタイプが違うが手のかかるという意味では同じだからな、案外仲良くなれるかもしれんぞ?」
「いやいや、ないですよ…」
絶対会いたくない。会えば「顔は止めな、ボディにしとけボディに」とか「おら、ちょっとそこでジャンプしてみろよ」とか言われるに決まっている。
「つーか会長達も人のこと散々こき使って…」
このまま話の流れが続くとそのヒャッハーな人達を紹介されかねないので文句の一つでも重ねて話題を変える。いや、実際こき使われてきたのだ、ここは言ってやらないとな。
「比企谷ちゃん」
「…はい?」
「もう会長じゃないよ」
「…そうっすね」
季節はハロウィン、もうすっかり秋だ。
当然、二学期に入り生徒会も代替わりが行われた、この人達はもう生徒会ではないのだ。
河嶋さんが今だにこの人を会長呼びしているのでどうにも俺も引っ張られる…。というか俺が大洗学園に来た時から…いや、それよりも前から大洗の生徒会といえばこの人達だった。
だから…いまいちなんと呼べばいいのか戸惑ってしまう。
「そんなんじゃ、また生徒会長が拗ねちゃうぞ~」
「いや、まぁ…あいつもハロウィンでなんかイベント考えてるっぽいですよ」
冗談っぽく笑いながら言うのでそう返しておく。あの時は言わなかったがあの大量のジャックオーランタンは何かのイベント用なのだろう。
「それは頼もしいねぇ~」
つまりこれは、別段今の新生徒会に文句があるって話ではなく…。いや、俺に対する扱いという点での文句はあるんだけどね。そこはまぁ…別の話に置いといてだ。
一年生の時から生徒会を続けてきたこの三人が引退し、来年には卒業する。この大洗学園から巣立つのだ。
それがもう半年もしない内に起こる事にいまいち実感がわかない、というのが正直な所だ。
長いと思っていたこの人達との付き合いだって期間で言えば二年…いや、俺が一年の頃は今より会う事も少なかったからそれ以下ともいえる。
学生の頃の関係なんてしょせんそんなもので、人生なんて社会に出てからの方がずっと長いのだ。言い換えれば人生の大半は社会に出て働く事になる。…怖っ!!
「………」
と考え始めると「あー、働きたくねぇなー、社会に出たくないなー」と、この先の人生を憂いてうんざりする。あまりのうんざり加減に開いた口が塞がらないまである。
「そりゃ」
その口を塞ぐかのように、この人は手に持っていた干し芋を俺の口に放り込んできた。
「…いや、何してんですか!?」
いや、突然でマジびっくりするから止めて!…あれ?この干し芋、今さっきあなたが食べていたやつじゃないの?いや、いやいやいや、勘違いだよね、うん。
「比企谷ちゃんにはまだお菓子、あげてなかったからね」
「いや…別に俺、トリック・オア・トリートとも言ってませんけど」
「いーのいーの、こうやって後輩を甘やかすのも先輩の特権みたいなもんだよ」
もぐもぐと口に入れられた干し芋を消化していく。…いつもより少し甘く感じるそれをなんとか飲み込んだ。
「…甘やかしてました?」
「うん」
…甘やかされてたかなぁ?わりとこき使われていた記憶しかないんだけど。
ちょっとの飴と多大な鞭はブラック企業のお約束、みんなも気を付けてね!!
「まっ、卒業までまだもう少しあるんだし、それまではね?」
「…うす」
…その頃には、少しは実感があるのだろうか?
数年先、社会に出てからの社蓄人生は容易に想像できるのに。それよりも先にある、たった半年もない内のこの人達の卒業が実感できないのは妙な話ではあるが。
「出来れば、卒業までには比企谷ちゃんが誰と一緒になるのか、見てみたいんだけどねぇ?」
「い、いや…、何言ってんですか、会長」
「だから、もう会長じゃないって」
ニヤニヤと笑う元会長に小山さんと河嶋さんに助けてくれと目で合図を送る。
「そうね、それは私達も」
「見てみたいものだな」
ここには敵しか居なかった。忘れてたわ、生徒会っていつも敵しか居ないんだよね。
「比企谷先輩、何ぼーっとしてるんですか!!」
「置いてっちゃいますよー!!」
と、長い間三人と話していると一年共が痺れを切らしたのか迎えにやってきた、グッジョブ。
「残念、時間切れだね。ほら比企谷ちゃん、呼ばれてるよ」
「…み、みたいですね」
…とはいえ、もう目ぼしい所はだいたい廻ったと思うんだが、まだどっか行く所あるのか?
「あー…それじゃ、受験勉強、頑張って下さい。小山さん、河嶋さん。えと、その…………角谷さん」
「うわ!慣れないなぁ」
いや、俺もそうなんだけど言ってた本人が言うってどうなのよ?
「心配しないで、私と杏は大丈夫だから」
…河嶋さんは?いや、本当に大丈夫かよあの人。
この人達の卒業を前に……か。
ーーー
ーー
ー
「つーかもうほとんど行ける所は行っただろ、まだ他に行く所あるのか?」
M3リーに積み込まれたお菓子もなかなかの量になったのでこれ以上は食べきれないだろう。
「あの、行く所はないんですが…」
「じゃあ解散か。いや、帰るならせめて家まで送ってって欲しいんだが?」
普段自転車で通学している距離なので歩いて帰るには少々ダルい。
「女の子に家まで送ってって言う男の人って…」
「そこは普通逆じゃないですか?」
「人を拉致しといてよく言えるな…」
呆れていると一年共がなにやらそわそわしている、この雰囲気はどうにも嫌な予感がする。
「や、やっぱりやるの?」
「だって、その為に小町ちゃんにも協力して貰ったし」
「そうだよ、今日やろうって言い出したのは梓じゃない」
「私、こんな大事にしようなんて思ってなかったのに…」
「ほら、そこはせっかくだから~、ね?」
いつぞやかこういう雰囲気でこいつらに『お兄ちゃん』呼びされた経験があるので自然と身構える。
「お前ら、何の…」
「よし、みんな、行くよ!!」
「「「「「せーの、比企谷先輩!トリック・オア・トリート!!」」」」」
「………」
一年共が声を揃えて…いや、相変わらず丸山は無言だが。
「…………は?」
最後の最後に、そう宣言して来た。