やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
世の中いろいろと大変ですが、少しでも早く多くの人が普通に生活できる日が戻る事を祈ります。
ハロウィン、それは恐怖のイベントである。
ここ大洗では無縁かと思えたその恐怖のイベント事が今日俺に振りかかり、貴重(ここ大事)な休日が潰れたのはこの際、目を瞑るとして…。
「トリック・オア・トリート…、え?俺に?」
「ふふ、そーですよ、比企谷先輩」
「大人しくお菓子を渡して下さい」
「じゃないと悪戯しちゃいますよ~」
…との事らしい、ひどい裏切りを見た。最後の最後に裏切りとかこいつらバトロア適性高くない?
あとどうでもいい事だがイタズラと悪戯って同じ意味なのに漢字だと妙にエロく感じるのは何故だろう?戯か?戯の文字がいかんのか?お戯れを…。
と、予想外の展開に思考が明後日の方を向いていくのをなんとか抑える。
「…お菓子ならそこにもうあるだろ、好きなの選べば?」
そこにお菓子があるじゃろ?と視線でM3リーに積み込まれた今日1日の成果を指す。
赤青緑の御三家どころか選り取り見取り、大きな博士も太っ腹である。
あれだけあちこちを廻ったんだし、数も充分…というか俺も一緒に居たよね?なにナチュラルに省いてんの?
「でもこれ、比企谷先輩から貰ったものじゃないよね?」
「うんうん、ノーカンノーカン」
…駄目らしい。というか今の主張だとそのお菓子はもう君らの物で俺の分け前は一切ないって事になるんだが?
「というか菓子ならやっただろ、小町の作ったクッキー食っただろが」
小町の手作りクッキー、こまクッキーを忘れるとは度しがたい、俺だってまだ食べてないのに。…あれ?なんで俺だけまだ食べてないの?お兄ちゃんちょっと傷付いたよ…。
「えぇと…、それは、あの、比企谷先輩から貰った訳じゃないですし…」
「そうそう!それも小町ちゃんから貰ったクッキーですし!!」
「ノーカンでーす!!」
阪口がぶっぶーと大きくばつマークを作る、こいつら、ノーカンノーカンってどこのハンチョウだよ。
つまりだ。今日1日のハロウィンで、俺の得たお菓子は無し、小町のクッキーはカウントされず何も得ず、実に空虚じゃありゃせんか?1日空虚じゃありゃせんか?
「という事で、お菓子をくれない比企谷先輩にはイタズラをして良いって事ですね」
「ふっふっふ、覚悟ー!!」
どうやってもイタズラしたいのか一年共がジリジリと俺に近寄ってくる、狭い戦車の中では逃げようにも分が悪い。
「逃げようとしたら大声出しちゃいますよ~?」
あと宇津木さんが最高にあざとい、にこにこしてっけどこの子絶対わかってて言ってるでしょ…。
「…イタズラって何すんの?靴にゴミでも仕込むのか?」
「え?いや…そんな事しませんけど」
「一応言っとくが椅子とか机は学校の備品だからな、手を出したら生徒会がうるさいぞ」
「比企谷先輩、それ以上は止めて下さい!なんか悲しくなってきますから!!」
「その…元気出して下さい!!」
…なんでこれからイタズラしようって人間に同情されているのだろうか?一般的なイタズラの紹介を軽くしただけなのに。
そう、全てはイタズラであり、本学園艦にいじめはありません。いいね?
そんな訳で多くのイタズラを知る俺からすればこいつら一年共のイタズラなんぞたかが知れてる、どうせ痛くも痒くもない可愛らしいものだろう。
そんな訳でたかをくくっていると。
「そーれ!」
…目隠しされた。え?目隠し?
「おい…」
「動いちゃ駄目ですよ」
いやいや、なにこれ?え?イタズラってそっち?やめて!八幡に乱暴するつもりでしょ!!
「よーし、桂利奈ちゃん!!」
「あいー!!」
と、号令と共に戦車が動き出す、可愛らしいイタズラというか普通に拉致だった、それもハイエースではなく戦車で。
「どこに行くんだよ…」
「すぐに着くんで待ってて下さいね」
可愛らしいイタズラでもそっちの悪戯でもないようで、戦車は何処かへと進んでいく。
目隠しされているので出荷されている気分だ。…このまま他の学園艦にでも売り飛ばされてしまうのか。
「とーちゃーく!!」
「よーし、みんな!準備して!!」
そう考えていると思いの外すぐに目的地らしい所と着いたようで、距離を考えるとまだ学園内っぽいが。
「…これ、もう外してもいいか?」
「駄目でーす!!」
駄目らしい…。え?そりゃ外せるよ、別に手足を拘束されている訳でもないのだし。
だからまぁ、一年共も本格的に俺をどうこうするつもりはないのだろうし、どうせたいした事じゃないだろう。
「比企谷先輩、もういいですよ」
「目隠し取って出てきて下さ~い」
と、お許しを頂いたので目隠しを取ると戦車内に一年共の姿はなく、のそのそとM3リーから顔を出すと。
「「「「「比企谷先輩、ハッピー・ハロウィン!!」」」」」
「………」
そこには6つのウサ耳がゆらゆらと揺れる、何を言っているのかわからない?安心しろ、俺もわからん。
ただ見たままの状況を言うなら。ハロウィンの仮装をウサギの仮装へと変えた一年生チームが俺を出迎えたのだ、丸山は無言だが。
「いや、…何やってんの?」
「ウサギになってます!!」
うん、しゅびっと元気に手を上げて答えてくれた阪口には悪いが、なんでウサギやってるか聞きたいんだよ。
「比企谷先輩、気付かないんですか?」
「だってほら、ここは…」
「…ここ?あぁーーー」
言われて気付いたというか、一年共のインパクトが強くて視界に入らなかったというか。一年共のウサギの仮装が似合いすぎてたのが悪いな、さすがウサギチームと名乗るだけはある。
「ウサギ小屋です、比企谷先輩が助けた…この子達の」
澤が一匹ひょいとウサギを手に取って俺に近付けてくる。
「…そうか」
それは俺が大洗学園の高等部に入学する日の話。
車に轢かれそうになったウサギをかばった俺は入学早々に入院生活を余儀なくされた。
そこには異世界転生のようなファンタジーなろう展開は一切無く。ただ一人のぼっちが一人で事故って入院した、ただそれだけのお話。
だから、そのウサギが大洗学園から逃げ出したウサギだと聞いても、退院した俺はこの場所に来た事はなかった。
M3リーがウサギ小屋から見つかったのは知っていたし、その縁か一年共がウサギの世話をしているとは聞いていたが、俺は軽く聞き流した。
別に避けていた訳じゃない、来る理由がなかっただけだ。
あれは一人のぼっちが一人で勝手に事故った話だと、そう結論付けていたからだ。
澤に抱えられたウサギがじっと俺を見つめている、そんな仲間になりたそうな目で見るなよ…。
はぁ…と少しため息をついて、手をウサギへと伸ばした。
「…もう逃げ出したりすんなよ」
軽く、少しだけ頭を撫でる、ウサギは目を細めると澤はウサギを地面へと戻した。
ぴょんぴょんと飛ぶウサギを見ると思わず心がぴょんぴょんしそうになってくる、ご注文はウサギですね。
「…ったく、この為にわざわざハロウィンに理由つけて、俺をここに連れて来たのか」
「だって比企谷先輩、一度もウサギ小屋に顔出してないって元生徒会の人達が言ってて」
またあの人達かよ、なんなの?生徒会引退してまで俺に関わりあるとかもう呪いかなんかなの?
「でも、さっきの子が比企谷先輩が助けたウサギかはわかんないよね」
「あ、それもそうか」
「いや、お前らな…」
それ言っちゃ台無しじゃん…いろいろと。
「まぁでも、私達も比企谷先輩に何かお礼しようかなって」
「今日はこのままここでパーティーですよ!お菓子も沢山ありますし!!」
そのお菓子ってさっきハロウィンで集めて回ったやつだよね?なんか…うん、ちゃっかりしてるなこいつら。
「…そもそも礼なんてされる理由がない、俺がウサギを助けたのとお前らは関係ないだろ」
俺の事故でいえばもう一年も前の話で、その時はこいつらはまだ大洗学園に入学すらしていない。
だから、それはなんの関係もない話で俺に礼をする必要はない、なのになぜわざわざウサ耳まで付けちゃうのか。…きっと付けたかっただけなんだろうなぁ。
「ほら、やっぱり始まったよ…」
「まぁ比企谷先輩だし、仕方ないよ」
「おい、その俺だから仕方ないって何だよ…?」
~だから仕方ないってそれもう思考放棄してない?もうめんどくさいって顔に出てるよ君達。
「じゃあ比企谷先輩はどうしてウサギを助けたんですか?」
「…どうしてって」
そう改めて聞かれても答えはない、そもそもあの時は考えている暇なんてなかったし、気付けば病院のベッドの上だったのだ。
「まぁ…その、たまたまだな」
だから、そう言い淀むしかなかった、考えてみると助ける理由もないし、助けない理由もない、ただの事故なのだから。
「じゃあ私達もそれ、たまたまって事で」
「…は?」
「たまたまM3リーがウサギ小屋にあって~」
「たまたま世話をする事になって」
「たまたま比企谷先輩が昔助けたウサギだったから、お礼をしよう!ってだけです」
こいつら本能で生きてんな…、さすがウサギ、でもあんまり女の子がたまたまとか言っちゃダメだぞ。
え?知らない?ウサギって可愛い外見しててわりと本能で生きてるからね、あれでけっこう生態エグいから調べる人は自己責任でね。
まぁアヒルだのカバだのあんこうまでいる大洗学園だ、…あれ?大洗学園だっけここ?実はシートンっぽい学園だったりするの?
「んで、本当にここでパーティーやると?ウサギ小屋だぞここ」
「えー、いいじゃないですか、ウサギ見ながらお菓子食べるのも可愛いですよ」
「ウサギカフェみたいな感じで良いよね」
ウサギを見ながらティータイムとか、本格的にご注文はウサギになってきたんだけど。こいつら、ウサギが自分のうん…、アレを食べるのとか知ってるんだろうか?
「…マッ缶はあるんだろな?」
とはいえ、帰るにしてもM3リーで送って貰いたいし…、まぁ、たまには良いだろう。
「そう言うと思ってちゃんと用意してますよ」
と、大野がマッ缶をM3リーから持ってくる。ほう、準備が良いじゃないか、砲弾は忘れてもマッ缶は忘れるなという事か。
渡されたマッ缶のプルタブに開けて1日の疲れを癒す為に少し飲む、ふと視界には数匹のウサギが跳び跳ねているのが見えた。
…そうだな、たまにはこうしてここに顔を出すのも良いのかもしれない。
「…それで、小町ちゃんに頼まれていた件なんだけど」
「…ん?」
パーティーの準備をしている一年生達からなにやらひそひそと声が聞こえた、なんか小町の名前が出てきたな?
いや、さすがにもうわかってるが今回の一年共の企みには小町が関わっている事はもうわかっている、だから今朝、俺に一年共の手伝いをするように促していたのだろう。
「みんな、結局誰かわかった?」
「私はやっぱり西住隊長だと思うけど…」
「でも、武部先輩じゃないと可哀想だよね?」
「うんうん」
…なんの話かわからんが、一年生達に可哀想と言われている武部が可哀想に思えてくる。
「一番楽しそうだったのは秋山先輩かなぁ」
「でも五十鈴先輩も良い感じだったし」
「冷泉先輩のアレは…うん、触れない方が良いよね?」
「………」
「もう戦車が恋人って事で良いじゃないかなぁ~」
「じゃあ比企谷先輩の本命は戦車って事で小町ちゃんに報告しとこう」
「「「「「異議無~し!!」」」」」
とりあえず…パーティーは反省会へと変更となるだろう。よし並べ、とりあえず説教だ。
という事で書きたかった八幡の事故とウサギの話でした、思った以上に完結まで時間がかかってオリジナル話ってやっぱり難しいと実感です。