やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
ハロウィンとの時系列?時系列は歪むものですし、ガルパン本編でさえ歪んでいる事もあるので問題無し!!(笑)
個人的にまほさんが八幡を君と呼ぶのがお気に入り、ぶっちゃけ八幡には年上が似合うと思いますよ、平塚先生。
『比企谷、今週の日曜日は空いているだろうか?』
「………」
戦車道全国大会も終わり、事後処理のドタバタもようやく落ち着いた今日この頃、俺の携帯に一通のメールが届いた。
差出人は西住 まほ、黒森峰女学園戦車道チームの隊長にして戦車道西住流後継者、通称(俺の中では)姉住さん。
高校戦車道においての有名人であり、【超高校級の戦車乗り】と言えるこの人から届いたメールにーーー。
『すいません、今週の日曜日はちょっと…アレがアレしてアレがあるんで予定があります』
ほい送信と送りつける…、いや、だってね、怖いじゃん?
勘違いして貰っては困るが。これは別に姉住さんがどうとかそういう話ではない。
こういう『○○の日って暇?』みたいなメッセージが個人的に苦手なのだ。だが、それは決して俺だけではないはずである。
なぜ主語を書かないのか?その日に何をやりたいのか意図がわからないとこちらだって対応にも困るというものだ。
姉住さんからすればはっきりとした目的があるだろうがこちら側からすればその意図が読めない。なんなの?なんか試されてるのこれ?
迂闊にOKと伝えて録でもない要件でしたとなる可能性もある訳で、この手のメッセージにはNOとサインを送るのが一番だろう。
え?予定?予定とは計画のようなものだ。俺は一人で行動する時は入念に計画を立てるタイプなので逆説的に一人で居るときは常に予定がある事になる。
『そうか』
三文字の返信が返ってきた、一見淡白にも思えるが姉住さんのメールは基本的にこんなものである。
いや、姉住さんが他の奴に送ったメールとか見たことないけどね、西住宛には超長文のメールとか送ったりして。
しかし、先ほどの意図が見えないメールといいどうにも業務連絡感を感じるんだよな。
『では、来週の日曜日はどうだ?』
「………」
だから主語!なんで目的書かないのこの人?
『来週はソレをアレする予定があって…』
『なら再来週はどうだ?』
「………」
なんなのこの人?日曜日常に暇なの?ひょっとして友達居ないの?いや、俺も大概暇だけどね。
しかしこの諦めの悪さには覚えがある…というか、西住もそうである。母住さん、西住流は最後まで諦めないという教えをこの姉妹、きちんと守ってますよ。
『えと…何かあったんですか?』
どうせこのまま続けてもいたちごっこになるだろうし、とりあえず返事の前に姉住さんの意図を探ろうとメールを送る。
『この前約束していた私とエリカと小梅で遊びに行く話だが、こちらも大会が終わり落ち着いた、比企谷と予定が合えばと思ったが…そちらはまだ忙しそうだな』
『今週あいてます、予定からっからなんで!!』
その瞬間ならば武部のメールスピードにだって勝てた気さえする、それほど俺の指先は唸っていた。
夏休みの計画なんて基本的に守られないのが世の常だ、予定は壊すもの。さーて、カレンダーに赤ペンで星のマークを付けなきゃね!赤星だけに!!
ーーー
ーー
ー
学園艦といえば海上を進む船である。…何度目だ、この台詞?
その特性上、他所の学園艦に遊びに行く…なんて行為をしようとするなら基本的に面倒である、何しろ船から船への移動が必要になるのだから。
だから、ある程度予想はついていた。『迎えを送る』と言っていた姉住さんがどうやって俺を大洗から黒森峰へと移動させるのかの方法だが。
「………」
「………」
目の前には黒森峰の保有するヘリ、Fa223、これまでも何度か見かけてはいたが…そうぽんぽん持ってこられるとか、黒森峰どうなってんの?
いや、まぁ…問題はそれよりも、だ。
「…なんで、隊長の命令とはいえ、私がこいつをーーー」
俺本人を目の前にぶつぶつと文句を言っているこいつ、黒森峰の現副隊長、名前は…二ツ見 エリカ、だったか。うん…あんまりよく覚えてないけど、確か数字っぽい名字だったはず。
「なにぐずぐずしてるの?さっさと乗んなさい!!」
そして初っぱなからこの喧嘩腰である、決勝戦を終わりしばらく会う事もないとは思ったが…、100日後どころか思いの外すぐに会う事になったとは。
「…お前が運転するのか?」
大丈夫?このヘリ、カプコン製じゃない?
「はぁ?他にだれが居るのよ?」
「てか、今さらだけどお前、ヘリの免許とか持ってんのかよ」
そういえば、現副隊長さんは西住と同じ年だと聞いた、なら俺とも同じ年だろう。
…ヘリの免許って高校二年でもうとれるの?女子高生が戦車乗っちゃってるし考えちゃ駄目な所なのそこ?
「当たり前でしょ、私は隊長の為にとったわ」
ふん、と自信満々に答える現副隊長。いや…ちょっと動機が不純すぎませんかね?
「あんたも戦車道に携わるならヘリの免許くらいとったらどうなのよ?」
「それ、何か関係あるのかよ…」
そもそも貧乏学校なうちにヘリなんて上等な代物があったかも怪しいんだか…、生徒会ならそこら辺知ってるだろうか。
まぁ俺がヘリの免許とか取った日には移動に良いように使わされる感まである、見事にアッシー君へのジョブチェンジだ。なにそれうれしくねぇ。
「そういや…乗るのは初めてだな」
黒森峰のヘリが飛び立つ所には何度か立ち会ってはいるが、こうして実際に乗るとなると初めての体験となる。
「シートベルトは…、まぁどっちでもいいわ、あんたがヘリから落ちようが私には関係ないもの」
「おい操縦士、仕事しろ」
「冗談よ、だいたい大洗の生徒ってみんな、ヘリも乗った事ないの?」
冗談には聞こえなかったんだよなぁ…、つーかヘリに乗った事あるのが当たり前、みたいな言い方止めろ。うちの貧乏っちゃま振りが浮き彫りになっちゃうだろ。
まぁ貧乏なんだろうがね…、他所の学園艦とか何かしらの航空手段があるのは当たり前なのか。
しかし大洗の生徒と言ったか、大洗でそんなヘリに乗った経験のある奴なんてそんなにーーー。…あぁ、そうか。
「…あの時は悪かった、急とはいえ無茶を言った」
「…別に」
あの時…戦車道全国大会一回戦。
冷泉のばぁさんの容体が悪くなった報を受け、急いで大洗に帰らないといけなくなったその時、姉住さんはヘリを使わせてくれた。
現副隊長さんは冷泉と武部をきちんと大洗まで届けてくれたのだ、状況が状況とはいえ、よく関係ない他校の生徒の為にヘリを動かしてくれたものだ。
「…あれも戦車道、よ」
小さく呟いたその言葉に俺は心の中でもう一度礼を告げる。ヘリを大洗から飛び立ち、黒森峰を目指して遥か上空へと飛び立った。
戦車道…ね。少なくとも今の現副隊長さんにはあの時見せた戸惑いはない。あの決勝戦を終え少しは落ち着いたというか、何か憑き物が落ちたような表情にも見える。
「…でもこれは戦車道じゃないわ!なんで私があんたの為にヘリを動かしてんのよ!!」
「俺に言うなよ…、隊長命令だろ」
「まったく、なんで隊長はこんな奴を…」
と思ったらそんな事は全然無かったぜ!さすが現副隊長さん、そもそもがヘリですしね、戦車道じゃないよね。
私、ヘリコプター道始めます!!うーむ…これはコトブキっぽい新作が出来ますね。
ーーー
ーー
ー
黒森峰女学園といえば戦車道でもとびきりの強豪高校、名門中の名門、第三戦車道部である。
保有する戦車は第二次世界大戦中でも最強をうたわれたドイツ戦車、その戦力は他校と比べても抜きん出ていると言わざるをえない。
要するに金持ち学園である。それは学園艦1つ見ても明らかでなんといっても艦全体が大洗よりデカイ。
そういえばまだ黒森峰と聖グロリアーナの学園艦には行った事がなかったな。いや、そう簡単に他所の学園艦に訪れる事がそもそもおかしいといえばおかしいが。
聖グロリアーナは練習試合だったし、黒森峰は決勝戦の相手とはいえ西住の元居た学園だ、偵察の必要もないと考えていた。
いや、実際偵察してれば決勝戦で黒森峰が出してきたあの反則チートンでもなろう兵器、【マウス】の情報が得られた可能性もあったがそれは終わった話、今さらそこを掘り返しても仕方ない。
そして黒森峰といえばドイツ戦車、そうドイツである。それを踏まえているのか、艦全体も基本的にドイツテイスト、ここら辺はアンツィオやサンダースに通ずるものがあるな。
しかし、ドイツならば千葉だって負けてない、何故なら千葉には東京ドイツ村があるのだ。…なぜ千葉なのに東京でドイツなのかと、そもそもここで千葉の宣伝を入れた事についてはツッコミは不要である。いいね?
「着いたわ、黒森峰の学園艦に足を踏み入れる事を感謝して降りなさい」
「すげぇ自信だな…、ここ貴族街かなんかなの?」
「当然よ、ここは戦車道の名門、黒森峰女学園なのよ?本来あなたが来て良いような場所じゃないの、覚えておきなさい」
本当に自信たっぷりでどんだけ黒森峰大好きすぎんだろ、こいつ。
「安心しろ、覚えておくまでもなく、そもそも俺が居て良い場所が少ないんだよ」
基本的に人混みはNG、おしゃれなカフェとか、クラブとかゴメンこうむる。
「本当にあんた、よく生きてられるわね…」
「ふっ、まぁな」
「別に誉めてないわよ…」
しかしなんかもう…ちょっと帰りたくなってきたぞ。ただでさえ黒森峰は名前の通り女学園、周りを見れば女子ばかりだ。
現副隊長さんの話を抜きにしても…まぁ居心地が悪い。現副隊長さんは俺を黒森峰にいれたくないだろうし、俺は帰りたい。やだ…俺達超通じあってる!!
「なぁ、なんならもう帰ってーーー」
「比企谷さん、ようこそ黒森峰へ!!」
「あ、あああ赤星!?なんでここに?」
なぜ赤星がここに?まさか自力で脱出を?
「え?えと…エリカさんが比企谷さんを迎えに行くって聞いたので、お迎えしようかと」
THE 天使。殺伐とした黒森峰に降り立った一人の天使がここに居た。おぉ…翼が見えよる。
「…あんた、今帰ろうとしてなかった」
「え?比企谷さん帰っちゃうんですか?」
「安心しろ、なぜなら帰る理由はたった今消失した」
「は、はぁ…」
居場所があるなら八幡、もう少し戦える。やはり何事も重要なのはバフだよバフ、バフの重ね掛けは戦闘において最も大事なのだ。
「あら、帰らないの?残念ね」
ただし横の現副隊長さんがデバフをかけてくるので相殺される模様。つーか何か?帰るって言ったらまた大洗までちゃんと送ってくれるんだろうな?
「…そんで、お前らの隊長さんはどうしたんだよ?」
これで赤星と、そして…えと、三ツ見 エリカ?そして俺と三人揃った訳だが、肝心の姉住さんが見当たらない。
そもそも俺を黒森峰に呼びつけたのはあの人のはずだが…。
「隊長はーーー」
赤星が答えようとすると目前から1台の車が走って来るのが見えた、車はそのまま俺達の前で綺麗に停車する。
自動車部ならばここで何かしらリアクションを起こすのだろうが生憎と俺はそこまで車に知識はない。が、メーカー的にはポルシェ関連だというのは一目でわかった。
ティガーやマウスの開発にだって携わっていたドイツ自動車メーカーだ、見間違うはずがない。俺も将来車に乗るならばポルシェにしよう。ただし、高級自動車メーカーである。
しかし、なんで俺達の前に…と思っていると運転席のドアが開く。
「すまない、待たせてしまったな」
運転席から降りたのは…姉住さん。やだ…かっこよ!!
「隊長…」
横で四ッ見 エリカさんが恍惚とした表情を浮かべているのも無理はない、尊いとか言い出しそう。
…いろいろ残念な所もあるけど、やっぱ基本的に超かっこいいんだよなこの人、そりゃみんな憧れる訳だ。
「ん?どうした?私の顔に何かついているか?」
「…あ、いえ」
…と、危ない危ない。思わず見惚れててしまって尊い…マヂ無理とか言い出しそうになってしまっていた。
「あー、今日はわざわざお招き頂き、ありがとうございます」
「いや、こちらから頼んだ事だ、気にしなくていい」
「…本当に西住を連れて来なくて良かったんですか?」
さて、ここは黒森峰だ。先程現副隊長さんの五ツ見 エリカさんが俺なんかが来て良い場所じゃないと言ったのは…まぁ、間違っちゃいない。
本来、俺なんかよりよっぽど黒森峰に来るべきだろう西住だが今日は不在。当然、俺が黒森峰に行く事も伏せてある。
「あぁ、みほには内緒にして欲しい」
何故ならそれは姉住さんの要望だからである、西住には内緒で、今日俺はここに来たという事だ。
「すまないが比企谷、君には今日、みほに渡すプレゼントを選ぶのに付き合って欲しい」
んー…まぁ、そのね。それ、俺必要かなぁ…?
姉住さん、赤星、六ツ見 エリカさん、そして俺。
こうして俺の黒森峰1日体験コースは幕を開けたのだ。…不安しかねぇ。