やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
四人の会話のやり取りを書くのが新鮮で楽しすぎて話中々進まない…。
「そうなるとまずは地形の把握を最優先にするべきだな、ただ闇雲に動いても時間を無駄にするだけだろう」
「いや、だから戦車道じゃないですからね、これ」
しかし姉住さんの言いたい事はわかる。アウトレットモールには多くの店舗があるのでそれをただ闇雲にまわっていては時間が足りないだろう。
動くのならある程度的を絞って行動した方が良い、なので俺達はフロアマップを見て作戦会議中という訳だ。
まぁ、ここは黒森峰なんだから正確には時間制限があるのは俺だけで姉住さん達は後日からもゆっくり見て回れるんだろうけど。
「比企谷さん、みほさんが欲しい物になにか心当たりとかありませんか?」
君…かな。とニヒルに決め台詞をキメ顔でキメそうになっちゃった俺マジキメぇ。もうキメッキメでキメッの刃ともなる。
「…そうだな」
とはいえ西住は普段からそんなあれが欲しいとかこれも欲しいとかもっと欲しいとかもっともっと欲しいとか主張する奴じゃないからなぁ…。
「戦車…かなぁ」
「ふざけてんの?」
いや、わりと真面目に「新しい戦車欲しいよなー、強いのー」とか聞いたらたぶん苦笑しながらも絶対否定しないよ、あの子。だって根が西住流だもん。
黒森峰とかこれだけ大きくて戦車道に力を入れているんだし、余っている戦車の一つや二つでもあるだろう、ティガーⅡとか余ってない?
「戦車となれば郵送方法も限られる…あまり現実的ではないな」
いや、郵送方法以外に戦車自体現実的ではないんですがね…。それにあのでかぶつのマウスを決勝戦会場に運んだ黒森峰ならいけそうじゃないですか?
「やっぱり…ここ、ですかね?」
「そうだな…私もここが一番の要所だとは思う」
そんな中フロアマップで姉住さんと赤星が示したのは…『ボコショップ:黒森峰店』だった。
あー…まぁ、そこだよなぁ。
西住へのプレゼントでまず最初に思い付くとするならこれだろう。西住=ボコマニアの公式は黒森峰の頃からなのか。
たぶん…てか絶対と言えるくらいにこれは彼女を知っている者なら誰だって連想するだろう。
専門ショップがあるくらいには人気なのね、大洗じゃいまいち人気無さそうなボコシリーズだけど黒森峰では売れてるのか。
「あの子、まだこんなの集めてるの?」
「集めてるんだよなぁ…」
いや、十四ツ見 エリカの表情を見るにそれはないな、姉住さんと赤星の表情を見ても微妙な顔だし。
「みほはこの負傷した熊のグッズをよく集めていた」
「いや、ボコですよボコ、こういうキャラクターです」
なにその身も蓋もない言い方。負傷した熊のグッズを集めてる女子高生とか字面だけ見ると闇が深いから止めたげて。
「詳しいな、君も集めているのか?」
「小町が集めてるんですよ、大洗じゃすっかり西住とボコ友達って奴です」
なお、ボコ友達のグループ内訳は西住と小町だけであるが、二人で負傷した熊のグッズについて熱く語る…闇魔術の儀式かな?
「そうか…、みほが楽しそうなら良かった」
お姉さん、そこは止めるべきだと思いますよ。まぁ黒森峰に西住と趣味を共有できるボコ友達が居なかったんだろう。
「えーと、小町さんって?」
「俺の妹だ、後で紹介するんで楽しみにしてくれ、可愛いから」
「は、はぁ…お願いします」
なんなら両親にも会って行く?いや…親父はダメだな、俺のイメージダウンに繋がりかねない。
「まっ、確かにあんたと血が繋がっているとは思えない程似てないものね」
「はぁ?小町と血が繋がってないとかふざけんな?そんな事実あったらどうなるかわからんぞ、主に俺が!!」
「ある意味血が繋がってて良かったわね、あんたの妹も…」
「…エリカも小町と会った事があるのか?」
「え!?あ、その…」
ドン引きしてる十五ツ見 エリカだが、姉住さんの指摘に慌てて表情を変える。
「あなたの写真が欲しくて送って貰った写真に写ってました」とかさすがに言えないもんね、うん。
「と、とにかくこのキャラクターにしましょう!はっ、やられたキャラクターとかあの子にはお似合いね」
「それ、本人が聞いたらむしろ喜ぶかもしれんぞ…」
誤魔化すにしても下手くそすぎるが、ボコがお似合いとか言われて素で喜ぶ西住の顔が想像できる。うーん…ちょっと闇が深すぎませんかね?
だが、西住へのプレゼントにボコグッズ…というのは実際の所どうだろうか?
そういえば小町もボコは好きだが、俺が小町にそれ関係のグッズを買う事は少ない、だがそれには理由がある。
「ボコグッズだと、下手すりゃ西住が今持ってる物と被りません?」
「…あー、確かに、それはあるかもしれませんね」
そう。別にこれは西住とボコに限った話ではない。
相手がマニアなら、それ関係のグッズは当然集めているだろうし、そんな相手に簡単に買えるようなショップ売りの品物を渡してもダブる可能性の方が高いだろう。
実際、俺が入院中にお見舞い品として小町が買ってきた戦車プラモがダブった事がある。いや、あれはあれでいろんなシチュエーション作れて楽しいんだけどね。
「比企谷、みほが今所持しているボコグッズはどれくらいある?」
「いや、知るわけないでしょ…」
「まったく、使えないわね」
当たり前でしょ、むしろ知ってたら知ってたで絶対こいつの場合それで何か言ってくるのは目に見えている。
もしここで俺が任せろ!と西住の持っているボコグッズをスラスラ述べてみろ、普通にホラーだからね?
とはいえサプライズプレゼントにはこれがあるのだ、相手の希望がわからないので、下手を打てばもう持っている物だったり、最悪いらない物を送るはめになる可能性もある。
「贈り物する相手にわざわざ気を使わせるのもなんだし、ボコ関連は逆に地雷な気がするな」
元々マニア相手に素人が付け焼き刃で選んでもサプライズできる気がしない。そんな気がしないレベルまでのボコマニアである西住がむしろ恐ろしい。
「…変な所で真面目ね」
「別にそんなんじゃねぇよ、サプライズプレゼントとか経験がない分、頭使ってるだけだ」
「り、理由が悲しいですね…」
そんな悲しそうな表情をする赤星がいつか俺にサプライズプレゼントをしてくれる日を信じて、今は西住か。
「…そうなると難しいな」
話が振り出しに戻った事で姉住さんが仕切り直す。
「他にみほが好きなものといえば…、コンビニか」
「いや、それ思いついちゃってどうするつもりですか…?」
まさかコンビニプレゼントする、とか言いませんよね?それなら戦車の方がずっと安くすみますぜ!旦那!!
「いざプレゼントを考えるとすぐに出てこないとは…情けないな、私は」
「…隊長」
少し寂しそうな表情を見せる姉住さんだが、情けない…というより、この人は本当にただただ不器用なのだ。
だからこそ、西住姉妹がこうして贈り物を送る関係に戻るまでに戦車道全国大会まで経由した訳で。
ーーー
ーー
ー
それから数店舗をまわってみるがどうにもこれといった商品は見つからないままである。
アクセサリーや日常品等の雑貨類に目星を付けてみるがどうにも西住へのプレゼントとしてはしっくり来ないのだ。
というかなんかもうぶっちゃけどれも同じに見える、どの店も、並んでる商品も同じに見えてくる。でも値段はしっかり違うんだよねー。
「…意外と見付かりませんね」
「あぁ…、こうして店先の商品を見てはいるが…」
と、姉住さんは唐突に立ち止まるとふむ、と腕を組み考える。
「…隊長?」
「いや…少し考えたんだが、私達は今遊んでいる、のだろうか?」
そういやさっき姉住さんが宣言した作戦は西住へのプレゼントを探しつつ全力で遊ぶ、でしたね、それが本当に遊んでいるのか気になったと。
「え?それは…」
「確かに…、やってる事はただひたすら歩いて店まわってるだけですしね、これ、遊んでいるってなるの?」
姉住さんの疑問は尤もで、つーか俺もそう思っていた。これ遊んでるの?さっきからただただ歩いてるだけでいい加減疲れてきた、主に絡んでくる店員と十六ツ見 エリカにだが。
「うわ、この男めんどくさ…」
いや、そうは言うが十七ツ見 エリカ、あんたの所の隊長も俺と同じ考えですからね?
「せっかく比企谷も居るんだ、少しなにか…遊べないだろうか?」
「いや、別にそこまで気を使わなくても…」
「そうですよ隊長、こんな男に気を使うなんて勿体無いです!!」
気を使わなくていいじゃなくて勿体無いって言い方に逆に悪意を感じるんだが…、ドラゴンボールかな?
「私は構いませんよ、良い気分転換になるかもしれませんし」
「決まりだな、しかし遊ぶと行っても…」
さてどうしたものかと考える姉住さん、自分が言い出したのは良いが具体的になにをするかは思い浮かばないご様子。
こと戦車道では即時決断であろう姉住さんも遊びとなれば勝手がわからないのだろう。
このいかにもな遊びなれていない感は良くわかる。わかりすぎてやはりぼっちシンパシーを感じる。
一言に遊ぶと行ってもその意味は多種多様、「お遊びはここまでだ!!」や「私との関係は遊びだったのね!!」とか「ゲームであっても遊びではない」等々だ。
「では隊長、ゲームセンターなんてどうでしょう?」
「げーむせんたー?」
…おばあちゃんかな?この発音の言い慣れてない感。西住もそうだったしゲーム自体、そんなにやった事ないんだろう、西住流って厳しいな。
「ちょっと小梅、隊長にゲームセンターなんて…」
「…いや、私も少し興味がある、少しだが行ってみよう」
そんな訳で姉住さんのゲームセンターデビューが決まったらしい、まぁ…少しくらいならいいか?
ーーー
ーー
ー
「…すごい音だな、まるで試合のようだ」
「いや、そこまでうるさくはないでしょう…。まぁすぐ慣れますよ」
確かにゲーセン内は喧しくはあるが戦車砲撃の音よりは全然マシだろう。
「意外ね、あんたはゲームセンターとか嫌いなタイプだと思ったけど」
「そうか?まぁ最近はあまり行かなくなったが」
ぼっちがゲームセンター苦手だと思ったら大間違いだ…と堂々的に主張するつもりはないが、わりと俺は嫌いじゃない。
この大音量のおかげでカップルやお友達同士のはしゃぎ声もそこまで気にならない、人は人の中に紛れ込む事で孤独を感じ、心を安らげる事ができるのだ。
「ほれ、パチンコ・スロットコーナーならそっちだぞ」
「なんでよ!?やんないわよそんなの!!」
え?やんないの?やってる姿すげぇ似合ってると思うんだけど、台叩いてる姿とか超似合う。
「そういうあんたこそ、あぁいうのが似合うんじゃないの?その腐った目でやってる姿は絵になるわ」
「まぁやってる奴らなんてだいたいみんな徐々に腐った目になってくだろうしな。だが逆説的に言えば最初から目が腐ってるって事はやる前からもう諦めてやらないって事だ」
「この二人仲良いなぁ…」
いやいや…赤星、今のやり取りのどこに仲の良いやり取りあったの?
「そもそもギャンブルはやらないって決めてるからな」
「…それは意外だな、君の考える戦術からどちらかといえば分の悪い賭けを好むと思っていた」
「むしろ戦術にもなってない、単なるギャンブルですよ、あんなのは」
そりゃ「分の悪い賭けは嫌いじゃない!!」とか一度は言ってみたい台詞にはありますけどね。そんなにギャンブル好きだと思われていたのは正直心外だ。
「金の管理は専業主婦の必須スキルですからね、ギャンブルなんてやる訳ないですよ」
ん?おや?三人の俺を見る目がなんか…ね?いつぞやのあんこうチームの連中を思い出すなぁ…、みんなして同じ目で見てくるんだよなぁ。
人の夢は…終わらねぇ!!(ドンッ!!)
「まぁそんな訳であんまり金使うゲームは無しにしようぜ」
「こういうのは基本的に100円で遊ぶのだろう?」
「いや、世の中ゲーセンのゲームに万単位の金つぎ込む連中も珍しくありませんし」
「そうか…奥が深いな」
いや、そういう連中はむしろ浅いとまで思えるんですが…。
何事も塵積でたかが100円といえど注ぎ込めば取り返しのつかない事になる、高校生には高校生の身の丈に合った遊びにするべきだ。
「あ、じゃあメダルゲームとかどうですか?ちょうど今セールしてるみたいですし」
赤星に言われて見てみるとメダルゲームコーナーでは【本日メダル2倍デー】と銘打ったキャンペーン中だった。
100円で200円分遊べるならコスパ的にもそこまで悪くはないだろう。
「めだるげーむ?」
はい、またおばあちゃんみたいな発音が出ました、本当にこの人女子高生なのかな…?
「そこでメダルを買って、そのメダルをいろんなゲームで増やしていくんですよ」
「なるほど、それならより多くのゲームを遊べるという事だな」
そんな訳で四人各々にメダルを購入する、とりあえず一人辺り150枚くらいからスタートだ。
「このメダルを増やしていけばいいんだな?」
「そうですね…と言ってもみほさんへのプレゼント選びもありますしね、制限時間を決めときますか」
まぁそうだよね。最後にメダルが余ったら適当な競馬ゲームにでも突っ込めば良いだろうし。
「言っとくけど…あんたには絶対負けないから、見てなさい、必ずあんたよりメダル増やしてあげる」
「なんでいつの間にか勝負みたくなってんだよ…」
ジャラジャラとカップに入ったメダルを揺らしながら十八ツ見 エリカが宣言してくる。本当に黒森峰は血気盛んで困る…。
「勝負…と聞いては私も逃げる訳にはいかないな、西住流に逃げるという選択肢はない」
あぁ、そもそも隊長である姉住さんが血気盛んですもんね…これが西住流か。…それで良いのか?西住流。
「そうですね、では制限時間までにどれだけメダルを増やせるか、勝負しましょう!!」
おいおい赤星、そんな可愛く言われちゃ俺までいろいろと血気盛んになっちゃうよ?