やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

178 / 205
延期してたやはり俺の青春ラブコメは間違っている。のアニメ三期もそろそろ、ずっと俺ガイル成分が足らない…。
それをいうならガルパン成分ももっと足らない、最終章三話まだー?

俺ガイルのアンソロジー小説も読んでたけどいろはすの出番が無さすぎて泣いた、やっぱ書くの難しいキャラなんかな?

個人的にリレー小説の話が面白くて好きです。


『黒森峰女学園から、西住みほへ』

「おぉ…ティガー、マジティガー」

 

まさに鋼鉄の虎にふさわしい格好良さ、やっぱりドイツ戦車なんだよなぁ…。

 

「ヤークト、エレファント、パンター…そしてマウス」

 

改めて見ると黒森峰の戦車倉庫マジヤバいな、強力なドイツ戦車揃い踏みじゃないか…、よくこんな学園艦野晒しにしてるよねってレベル。

 

「気に入って貰えたようでなによりだ」

 

黒森峰生徒でもないのに俺をここに案内してくれた姉住さんには感謝だな、秋山には悪いがこんな間近で数々のドイツ戦車を見られるのは眼福眼福。

 

そう、俺達はアウトレットからここ、黒森峰の本校、その戦車倉庫にやってきたのだ。

 

「…案内はありがたいですけど、まほさんはいいんですか?その…西住に」

 

ちなみに赤星とは別れた…。いや、別れたってそういう意味の別れたじゃねぇから、まだ希望はあるから(震え声)。

 

え?三十二ツ見 エリカ?そもそもそんな名字の人居ないよ?

 

そんな訳で赤星と三十三ツ見 エリカは西住のプレゼントを用意するべく大忙しだ、この二人が動いているのに姉住さんはここで俺なんかの相手をしていて良いのだろうか?

 

「エリカと小梅に任せておけば問題はない」

 

「…そっすか」

 

そう答えた姉住さんの表情はとても柔らかく、嬉しそうだった、それほど、三十四ツ見 エリカの提案が姉住さんにとって納得のいく答えだったのだろう。

 

それはきっと…俺だってそうなんだろう。だから俺と姉住さんは二人してプレゼント選びのお役御免を頂戴し、フリーとなった、ぶっちゃけやる事もない。

 

「比企谷、これを君に」

 

ふと姉住さんが手に持っていたそれをこちらに向けてくる。

 

「…いや、これ」

 

「せっかく黒森峰に来たんだ。それに、決勝戦の後も君は飲んでなかっただろう?」

 

確かに、決勝戦後の祝勝会はあちこちの学園艦の人達総出だったもんで、黒森峰の用意したこれもさっさと売り切れてしまったので飲む機会はなかった。

 

「だからって、未成年にビール進めますか?」

 

「ノンアルコールビールだ、黒森峰の生徒も普段から飲んでいる、問題はない」

 

と言われましても、倫理的にはどうなのか?…まぁノンアルだし、ジュースみたいなもんだと思うけど。

 

「白ビールと黒ビールがあるが、どちらが良いのだろうか?」

 

「本当にノンアルなんですかねぇ…」

 

ちょっと本格的すぎて黒森峰の闇の深さが出ちゃってる気がする…、本当にこの学園艦野放しにしてて大丈夫なの?

 

「そもそも違いもわかりませんし」

 

「なら、両方飲めばいい、そうだな…まずは飲みやすい白の方からいってみるといい」

 

そう言って姉住さんが白ビールの缶を渡してくる、表記はきちんとノンアルコールだし、まぁ問題ないよね?うん。

 

プルタブを開けるとプッシュっとビール缶特有の音が聞こえる、うちの親父の晩酌時によく聞く音だ。

 

あぁ、今日1日の仕事の終わりを感じさせる音とはよく言ったものだ。俺も後々は親父のように、日々の仕事の疲れをビールで誤魔化す、清く正しい健全な社畜へとなるのだろう。…働きたくねぇ。

 

そんな後の将来を不安視していると隣では姉住さんが同じように缶を開けてスッと俺に差し出してきた。

 

あー、そうか、こういう時はとりあえず…。

 

「えぇと…その、乾杯?」

 

「あぁ、乾杯」

 

缶同士の乾杯ではグラスの合わさる音は当然聞こえず、どこか無機質で寂しい印象を受ける。

 

それでも、初めてのビール(ノンアルコール)の乾杯をまさかこの人とするとは思わなかった。

 

とりあえず一口飲んでみる。ふむ…感想に困る、というのが正直な気持ちだ。

 

これは別に美味いや不味いの話ではなく、単純に飲み慣れていないのでビールの味の違いがよくわからん。

 

「ふぅ…」

 

なにより俺の横で余った黒ビールの方を飲む姉住さんが気になって仕方ない、お酒を飲む女の人ってなんか絵になるんだよなぁ…。

 

重ねて言うけどノンアルコールビールなので問題はない(ここ大事)。

 

「今日はありがとう、おかげでみほにも良いプレゼントが送れるだろう」

 

「…いえ、特に役立ってた訳でもありませんし」

 

これがわりとガチで、結局プレゼントは三十五ツ見 エリカが提案したし、その為に赤星も動いてくれている。

 

今日俺がやった事なんてちょっとゲーセンで西住流に(また)ボコられて小町のお土産買って赤星を愛でたくらいだろう、なんだ!充分じゃないか!!

 

「礼なら現副隊長さんにでも言って下さい、あいつの提案ですし、絶対喜びますよ」

 

とはいえ、誉められた中身が西住関連の話となると微妙な表情をしそうでもある。

 

尊敬する姉の方に誉められた喜びと妹の方に対する思いに揺れ動く…なるほど、これが西住サンドか。奥が深…いや、業が深いな、深すぎる。

 

「もちろん、エリカにも感謝している、副隊長としてではなく、一人の友人としてだがな」

 

俺が現副隊長と呼んだ事が少し気になったのか、姉住さんはそう訂正を入れてくる。もちろん深い意味で言ったつもりはなく、ただ単に現副隊長さんの名前覚えてなかっただけなんだが。

 

一人の友人…思えば一回戦、サンダースとの試合を前に姉住さんに友達が居ないのか聞いて真っ先に名前が上がったのも現副隊長さんだったか。

 

「それに…もう副隊長ではない、まだ正式ではないがエリカは黒森峰の隊長になる」

 

…ま、そうでしょうね。

 

戦車道全国大会は終わり、大きな大会はもうこれでないはずだ、姉住さんは三年生、となれば当然世代交代の話となってくる。

 

なら、次期隊長は誰かとなれば…まぁ、候補は一人しか居ない。

 

「エリカなら、来年再び黒森峰を勝利させるだろう」

 

どこか確信したような力強い言葉、この人が言うと説得力が段違いで恐ろしい。

 

「西住の居る大洗は応援してあげないんですか?」

 

…ちょっと抵抗というか、意地悪というか、自分でもわりと意地の悪いと思う質問をしてみる。

 

「みほも、大洗も、黒森峰にとっては倒すべき相手になる、もちろん…君もだ」

 

「…なんで俺まで付け加えるんですか?」

 

とんでもないやぶ蛇だった、黒森峰抹殺ファイルに名前載っちゃってるの俺?なんで?

 

「あれから履帯修理の訓練を増やし、試合でもすぐに戦線復帰は可能になった、もう同じ手は通用しないだろう」

 

…恨まれる理由はたっぷりだった、うん、ごめんなさい。

 

「…ま、こっちも最初っから前と同じやり方でやるつもりはありませんけど」

 

下手したら黒森峰の生徒さんから砲撃の一つでもぶちこまれかねない事がよくわかったし。

 

「大切なのは相手が同じやり方で来るか来ないか、ではない、同じ手段が二度と通じない…という事だ」

 

さすがは西住流、基本に忠実なこって…、うちの戦車道メンバーとか履帯交換の訓練やれって言ったら愚痴しか返って来ないぞ、アリクイチームとかやる気満々かもしれんが。

 

「来年は黒森峰が大洗を倒し、優勝する」

 

「まほさんが居なくて…でもですか?」

 

「エリカならやってくれるさ、彼女の戦車道で…な」

 

「…そりゃ恐ろしい、まぁ…わかってる事でしたけど」

 

黒森峰の脅威はなにも、西住流が強いってだけの話ではない。

 

「君のその言葉の方こそ、エリカが聞いたら喜ぶだろうな」

 

「嫌ですよ、たぶんしかめっ面してきますね、あいつの場合」

 

きっと苦虫を噛み潰したような表情をしてくるだろう、人を苦虫扱いするのはさすがに止めて欲しいが。

 

俺のそんな気持ちが伝わったのか、それとも表情に出ていたのか、姉住さんは少し微笑ましい顔をする。

 

「そろそろビールが飲み終えるな、次は黒ビールを飲んでみないか?」

 

「え?あぁ…じゃあ頂きます」

 

ビールは最初の一杯こそ至高らしいがまだビールの味もわからない未成年だ、せっかくだし二杯目の黒ビールも飲んでみるか。

 

「そうか、では」

 

スッと姉住さんが自分の飲んでいた黒ビールをこちらに差し出してくる。

 

「…えぇっと、なんですか?」

 

「黒ビールも飲んでみるのだろう?飲みかけで悪いがまだぬるくはないはずだ」

 

そうだった!この人も結構天然な性格してるんだよね!!

 

「えっと…いや、さすがにそれは…」

 

「?」

 

いや、そこで不思議ってちょこんと顔を傾けられましても…やっぱりあざといじゃないか、この姉妹!!

 

…これが西住流か。これで良いのか?西住流。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「では!本日の訓練はこれまでとする!!」

 

「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」

 

決勝戦が終わり、廃校問題も解決したが今日も今日とて大洗にて戦車訓練は続いているのは当然である。

 

意外と勘違いしている人も多いだろうがそもそもこれ、部活動じゃなくて授業だしね、そこ勘違いされるとバレー部の連中も泣いちゃうぞ。

 

というかうちの戦車道メンバー、戦車道全国大会で数々の強敵と戦ってきた経験も加わわったおかげか、春先から戦車道を始めたとは思えない上達っぷりである、こいつら全員戦闘民族だったの?

 

「西住ちゃん、ちょっといい?」

 

「はい?なんですか会長」

 

そんな惑星ベジタブルならぬ惑星大洗に今日、一つの荷物が届いたそうで。

 

「黒森峰から…プレゼント、ですか?」

 

「そ、西住ちゃん宛にね」

 

会長が西住に丁寧に包装紙でラッピングされたプレゼント用の箱を手渡す。

 

『ではプレゼントは後日、黒森峰から大洗の学園艦に届けよう』

 

『そんな事しなくても直接西住に渡せばいいんじゃないですか?』

 

『いや、もう私からのプレゼント…という訳にもいかないからな、これは黒森峰戦車道チームからの贈り物だ』

 

とは姉住さんの弁である、あの人らしい融通の効かなさではあるが、気持ちはわかる。

 

「…黒森峰から、なんだろう?」

 

西住が驚きと戸惑いを見せる、そりゃ姉住さんや赤星から…ではなく。黒森峰から、と聞けば身構えてしまうのは彼女からすれば当然か。

 

「心配する事はないと思いますよ」

 

「そうそう、私達も付いてるから!!」

 

そんな西住の様子に心配したのか、あんこうチームの面々もひょっこりと集まってくる。

 

「とりあえず、開けてみたらいいんじゃないか」

 

「兵は拙速を尊ぶ、ですね!それにもしかしたら黒森峰の戦車関連のプレゼントの可能性も…」

 

秋山、それはない。ないんだよ…(血涙)。

 

「ま、開けた瞬間爆弾とか毒ガスとか、その手の可能性もたぶんないだろうし、そこまで心配しなくていいだろ」

 

「そんな心配はしてないけど…、うん、開けてみるね」

 

ぺりぺりと丁寧に包装紙を破り、箱を開ける。

 

「…あ」

 

西住が小さく呟いた、それほど言葉に出来ない思いが彼女にはあるのだろう。

 

箱の中にアウトレットの店先に並んでいた数多くの品物があった訳ではない、一枚の色紙と、多くの手紙。

 

寄せ書きと、かつて共に戦った黒森峰メンバー、その一人一人の西住宛の手紙である。

 

「…みんな」

 

それはかつて、黙って黒森峰を去った西住には得る事のできなかった物。

 

そして彼女達黒森峰のメンバーが西住に伝える事のできなかった思いが詰まった箱でもある。

 

「ーーーありがとう」

 

思いの色紙を西住はぎゅっと、優しく抱きしめた。

 

「…ねぇみぽりん、今度黒森峰に遊びに行ってみよう?」

 

「いいですね!是非行きましょう!黒森峰の戦車も間近で見てみたいです!!」

 

秋山の判断が早い。ふっ…悪いな秋山、黒森峰ドイツ戦車なら一足先に充分堪能させてもらった。

 

「うん!みんなの事も紹介するね」

 

「はい、黒森峰の皆さんとも仲良くなりたいです」

 

「美味しいデザートのある店も教えて欲しい」

 

やー、それにしてもやっぱり君達仲良いよね…もう旅行の計画立てちゃってるよ。

 

学園艦間の移動となれば困難だろうがそこはそれ、現副隊長さんがまたヘリを飛ばして来てくれるだろう、アッシーエリカの本領発揮だ、やったね!!

 

「…あれ?他にも何か入ってる」

 

「あ、これプリクラだね、そういえば最近とってないなー」

 

「それなら、今日の帰りにでも皆さんでとりに行きましょうか?」

 

…プリクラ?はて、なにやら嫌な思い出と嫌な予感が。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…あれはなんだろう?」

 

それはゲーセンでのメダルゲーム勝負が終わってそろそろ西住へのプレゼント選びを再開するかという手前だった。

 

「えと…あれはプリクラ、プリント倶楽部っていう機械です」

 

「ぷりくら」

 

まーたこの人おばあちゃんみたいな発音で、ゲーム機の事ふぁみこんって認識してそう。

 

ま、気持ちはわかる、俺だってプリクラとは無縁の人生をここまで送ってきた男だ。前に一度小町と撮りたいと言った時のあいつのとんでもない渋い表情がトラウマになってるまである。

 

そもそもプリクラとかとっくの昔に衰退したと思ってたのに、意外としぶといよね、写真なんてスマホで簡単に撮れる時代だというのに。

 

「友達同士で写真をとってシールにできる機械…だったはずです、まったく…浮わついてるわね」

 

「よし、やってみよう」

 

「え?隊長!?」 

 

だから現副隊長さん、この手の『友人同士ならやってる』系の発言は天然ぼっちのこの人には特攻なんだって…いい加減わかってやってね?

 

「どうした?…もしかして、嫌だったのか?」

 

「いえ!いえいえ!はい、ぜひやりましょう!!」

 

そして姉住さんのその発言もまた、現副隊長さんにとっては特攻所か即死級の破壊力ともなる。前に姉住さんの写真目当てにわざわざ俺と連絡交換したくらいだからな、こいつ。

 

「ではみんなで中に入ってみるか」

 

「…それ、俺も含まれてます?」

 

いやー…さすがにそれは、ちょっと…てか、かなりこっ恥ずかしいと言いますか。そんな辱しめ、ちょっと薄い本が厚くなりますから遠慮したいです。

 

「もちろんだ、友人同士でとるものだろう?」

 

「いや、待ってますんで三人でどうぞ」

 

「…そうか、嫌なら無理強いはできないな」

 

ふぅ…良かった、赤星とのプリクラとか一生の宝物になるだろうがさすがにプリクラとかハードルが高い。

 

「そうだ隊長!隊長はさっきのメダルゲームで勝ちましたから、何か一つ、賞品があった方が良いと思いますよ」

 

ふと、赤星が何か思い付いたように声を上げる。え?あれって罰ゲームとかあったの?

 

「…賞品とはいうが、私はただみんなでこのぷりくらをやってみたいだけで」

 

「…ですって、どうします?比企谷さん」

 

なにこの可愛い小悪魔感ある笑顔、俺と一緒にプリクラとらない?

 

「そうですね、まぁ…勝者の特権となれば」

 

従わねばならないのは、敗者の、敗北者の定めじゃけぇのぉ…。

 

覚悟を受け入れてプリント倶楽部なる未知なる領域へと足を進める。

 

「ここに立てばいいのか?」

 

「ちょっとあんた…近いわよ、もう少し離れない!!」

 

「いや…狭いし、こうかよ?」

 

「それじゃ隊長に近付きすぎよ!半径10メートルは離れなさい!!」

 

うーん…つまり出ていけと?そりゃありがたい…、これは黒森峰の副隊長、神采配だ。

 

「あ、もう時間ですよ」

 

だが、残念ながらそんなお時間もないようで…、仕方ないもう少し赤星に近付いておくか。

 

『はい、チーズ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ふーん…これは」

 

「ずいぶんと楽しそう、ですね?比企谷さん」

 

「あはは…八幡君、黒森峰に行ってたんだ、そうなんだ…」

 

…そのプリクラ写真を手にあんこうチームがじとーっと俺を見つめてくる。

 

「いや…まぁ、その、ちょっと野暮用で…」

 

「他の学園艦まで行くとか…どんな野暮用なんだ?」

 

はい、仰る通りです…。

 

「ずるい!私より先に黒森峰のドイツ戦車を堪能してきたなんて!ずるいですよ比企谷殿!!」

 

あぁ、秋山、お前が唯一の癒しだよ…。てかなんであの時のプリクラが箱の中に?

 

…いや、まぁ、絶対あいつの仕組みだろうけど、あの現副隊長、いや…次期隊長?そこはなんだっていいが。

 

さて…うん、このなんとも言い難い居たたまれない状況をどうしようかと思っているとふと俺の携帯が着信をならす。

 

「あ!すまん電話だ、ちょっと出てくる!!」

 

これ幸いとさっさと電話に出る為にその場を立ち去ろう、そうしょう!比企谷 八幡は必死に去るぜ!!

 

「え?あっ…ちょっと比企谷!!」

 

後ろから聞こえてくる声に心の中で謝りながら。…後でまぁ、ちゃんと事情を説明しないとな、と思いつつ携帯の画面を見る。

 

『姉住さん』だった、うーん…タイミングが良いのやら、悪いのやら、本当にこの人のタイミングはいつもおかしい。

 

「…はい」

 

『比企谷、贈り物は届いただろうか?』

 

「…そうですね、はい」

 

とんでもない余計な爆弾付きではあったが…、西住にとって大切な物になったのは間違いないだろう。

 

『そうか、なら良かった、それでだが比企谷』

 

「えぇっと…はい?」

 

『みほがまた実家に気軽に帰ってこれるように…なにか案はないだろうか?』

 

「…いや、まぁ、その」

 

黒森峰の次は実家かよ。あの母ちゃんかよ、やっぱり裏ボスじゃねぇか…。

 

結局、まだまだ西住の問題は解決しそうにない…という事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「贈り物は大洗に無事届いたようだな」

 

通話を終え、西住まほはエリカと小梅に声をかける。

 

「二人共、改めて礼を言わせて欲しい、私のわがままに付き合わせてしまったからな」

 

「いえ、私もみほさんに渡せた物がありましたから、それに…これはエリカさんの提案ですし」

 

「別に…私はただ言いたい事を言わせる機会をみんなに作ってあげただけよ、黙って黒森峰から去っていったあの子に文句を言いたい人も多いでしょう?」

 

そう恥ずかしそうに憎まれ口を叩くエリカに小梅は少し苦笑した。

 

黒森峰のメンバーに連絡をいれ、西住みほへの手紙や色紙への寄せ書きを集めるエリカの姿を見ていればその憎まれ口も照れ隠しなのだと簡単にわかる。

 

「そういえばどうしてあの時のプリクラを入れたんですか?」

 

「嫌がらせよ、あいつの事だからどうせまたこそこそとするでしょ?」

 

即答だった、しかもそこには先ほどの照れ隠しに似た表情はないと来ている。

 

「うーん…あの後一緒に比企谷さんの妹さんへのお土産も買ってましたし、もうちょっとは仲良くなったと思ったんですけど」

 

「何言ってるの?小梅」

 

首を傾げる小梅に、逸見エリカは苦々しく答える。

 

「あいつと仲良くなる気なんてないわよ、私は」

 

その答えを聞いた西住まほと小梅はお互いに見つめ合うと、やがてどちらからでもなく優しく微笑みあった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。