やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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「僕はね、フミカネ先生絵鯖が欲しかったんだ」

「欲しかったってなんだよ、諦めたのかよ?」

「うん、今回は残念ながらね、フミカネ先生絵鯖は期間限定じゃないから、そのうちすり抜けてくるのを信じてるよ」

ガルパン最終章3章ついに来ましたね、見た人もとりあえずしばらくはネタバレ等は自粛をお願いします。

ちなみに自分も見ました。一言だけ感想言うなら『素晴らしい』、毎回待たされたらだけ待たされた分の高クオリティで出してくるんだよなぁ…。


降雪・ウォー3

さて、雪像作りでくたくたになってるだろうニーナとアリーナのコンビを本部テントに送り届けてマックスコーヒーで労った所でそろそろ俺も仕事に移らねばならない。

 

まぁ仕事といっても適当にぶらついて完成している雪像を写真に撮る記録とそのついでにカチューシャさん達プラウダメンバーの案内をする雑務くらいだ。

 

そもそもどこからどの範囲までを雑務と呼べるのかも怪しいところだが生徒会的には他所様の学園艦のお客様の相手は雑務らしい。…いいのかそれ?

 

てな訳で俺とカチューシャさん、それとノンナさんと…。

 

「ーーー」

 

生粋のロシアっ子クラーラである、相変わらず話す言葉がロシア語なので通訳はノンナさん任せになるが、この四人でとりあえず雪まつりを回る事になった。

 

何度も言うが茨城県は元々そんなに雪の降らない地域だ、なので茨城県大洗町が母港のこの学園艦も雪に不慣れな生徒が多い。

 

そんな不慣れな生徒達を集めていきなり雪像を作れと言われて大したクオリティの雪像が作れるはずもなく、出来上がる物も雪像祭りというより雪だるま祭りくらいのクオリティに収まる。

 

…になるはずだったんだがなぁ。

 

「ちょっとハチューシャ!どういう事よこれ!!」

 

「どういう事なんですかねぇ…」

 

普通に高クオリティの雪像だらけだった、しかも雪まつりが始まってまだそこまで時間もたっていないはずなのにだ。

 

…ひょっとして大洗ってとんでも集団の集まりなのでは?こんな最強集団の集まる学園艦を廃校にしようとしてた無能な文科省があったらしい。

 

「あれ?カチューシャさん」

 

「ノンナさんとクラーラさんまで」

 

「ついでに比企谷さんもいるな」

 

「俺はついでかよ…」

 

いや、いいんだけどね。

 

「ミホーシャ、今日は勝負に来たわよ!!」

 

「えっと、勝負…ですか?」

 

突然の宣戦布告に西住がチラリと俺の方を見る、視線が「何の事だろう?」と訴えてきているが正直俺だってついさっきこの二人が来た事を知ったのだ。

 

「プラウダも雪まつりに参加する、もうコンテストに出す作品の雪像も持ってきてるしな」

 

「カチューシャの雪像よ!ちゃんと名前で言いなさい!!」

 

だってよシャンクス…じゃなかった、カチューシャさん…身長が!!

 

「おぉ!雪中戦最強とも名高いプラウダの雪像ですか!それは是非とも見てみたいです!!」

 

秋山は笑顔で嬉しそうだがあれを見た後だと同じ笑顔ではいられないだろう、たぶん苦笑いになるぞ。

 

「そ、そうね、後で見に来るといいわ」

 

だが今はカチューシャさんが苦笑いだ。…それもそのはず。

 

「…で、これがお前らの作品か」

 

「うん、みんなでアイデアを出しあってみんなで作ってみたんだけど」

 

「…だろうなぁ」

 

Ⅳ号戦車とそれに乗る例の包帯熊のボコ、そしてボコの手には花束と串カツが各々握られていた。

 

一言で言えばカオス、混沌とした何かである。

 

ただ付け加えるなら…なにこの超クオリティ?これをこの短期間で作り上げたの?

 

「…よくここまで作ったな」

 

「うん、頑張ったから!!」

 

頑張った…そっか、頑張ったのか。頑張ったなら仕方ない、仕方ないよね?だって頑張ったんだもん。そこを否定しちゃダメだよ。いいね?

 

「えーと、Ⅳ号が優花里さんでボコが私で…」

 

「いや、いいから、説明せんでも誰がどの案かなんて見ればわかる」

 

「えっへへ、そう?」

 

いや、そこでなんで嬉しそうなの?完全キメラだからねこれ?

 

まぁこいつららしいといえばらしい、お互いの意見を組み合わせて上手く合体させたのだろう。

 

…武部は何故串カツ?いや、串カツに罪はないんだけどね。あるとすれば怪文書の方だから。…怪文書?はて?

 

「あぁ、でも冷泉はサボりか?」

 

あえていうなら冷泉の要素だけ見当たらない、まぁあいつの事だしサボってる可能性も否定できない。

 

「失礼な、比企谷さん、こっちだ」

 

そんな俺の言葉にむっとしたのか冷泉が袖を引っ張ってくる、Ⅳ号戦車の裏側まで連れてくるとそこにはベッドがあった。

 

こいつⅣ号戦車に無理矢理ベッドくっつけやがった。…にしても雪像で作るのがベッドって、冷泉なら魔王城でもスヤリスできるかもしれない。

 

「いや、せっかく作ってんならボコをベッドに乗せてやれよ」

 

「何を言う、これは私のベッドだぞ」

 

いや、そんな睨まなくても…。寝床に関しては冷泉なりのこだわりがあるらしい、まぁボコに占拠されたらベッド寝れないしね。

 

「ちゃんと寝れるようにもなっている。なかなか寝心地が良さそうだろう」

 

「見た目はな、っても雪だろ」

 

「このひんやりした感覚もそれはそれで心地よいものだ」

 

冷泉がそう言いながらゴロリと雪像ベッドに横になる。まぁわからんでもない、子供の頃は無意味に雪にダイブした事くらい誰にでもある経験の一つだ。

 

「ちょっとやってみたい…かも」

 

気持ち良さそうに目を細める冷泉を見てカチューシャさんが羨ましそうに呟いた。

 

「カチューシャもどうだ?」

 

それに気付いた冷泉がポンポンとベッドを叩いて声をかける。やだ…なにこの子イケメン!?

 

「いいの?」

 

「構わない、一緒に寝よう」

 

「し、仕方ないわね!そこまで言うなら一緒に寝てあげるわ」

 

冷泉の誘い文句が強いのかカチューシャさんがチョロいのか、二人はそのまま雪像ベッドで横になる。

 

「どうだ」

 

「悪くないわね、今度プラウダでも作ってみようかしら」

 

うーん……二人でベッドで横になる。という強シチュエーションがこれ程ほのぼのと聞こえるのは対象がカチューシャさんと冷泉の二人だからだろうな。お昼寝同好会かな?

 

「あとは沙織の膝枕が欲しい所だ」

 

…この雪像ベッドの上で?それなんのプレイ?

 

「そうね、私もノンナの歌が聞きたくなるわ」

 

こっちはこっちで子守唄を要求しているようにしか聞こえない。ノンナさん、カチューシャがお昼寝する度に歌ってるのだろうか。

 

「こら麻子!そんな所で寝ない!!」

 

「カチューシャもです、風邪を引いてしまいますよ」

 

そんな事をやってるとさすがに心配したのか、二人のお母さん…じゃなかったわ、武部とノンナさんが声をかけてくる。

 

しかし冷泉は当然としてカチューシャさんも昼寝好きだし、この二人はわりと相性良い気がする。まぁ相性というか、二人でお昼寝している姿が微笑ましい感じになるんだが。

 

「もういいならそろそろ写真撮るぞ、ほれ並べ」

 

二人が雪像ベッドから降りたのを見てそろそろ記録雑務のお仕事だ、作品と作者をとりあえず写真に撮っておく必要がある。

 

さすがにさっきの寝ている冷泉とカチューシャさんを撮る訳にもいかないし、むしろ撮ったら後でプラウダ勢の方が怖いんだが。

 

【ボコⅣ号戦車~串カツと花束とベッドを乗せて~(仮名)】の前にあんこうチームを集める。

 

「比企谷殿は写らないのですか?」

 

「いや、俺作ってないし…」

 

写真に残すのはあくまで作品と作者だ。このイベント以外の使い道は知らないけど卒業アルバムとかにも使うのかもしれない。

 

「それでは比企谷さんの写る写真は残らないのでは?」

 

「うん、せっかく八幡君が考えた企画なんだし…」

 

いや、そんな悲しそうな目で見られるとなんか罪悪感が…、そもそも雪かきも雪像作りもやりたくないからこのポジションを選んだんだし。

 

「俺はいいんだよ、そもそも写真撮られるのもそんな好きじゃない、魂をとられる」

 

「いつの時代の人間よあんた…」

 

「そんなのおばぁでも言わないぞ」

 

いや、今の時代だからこそ写真なんて撮られたら見知らぬ所で勝手にSNSにアップされて曝される可能性もある。ある意味迷信に時代が追い付いたといえる。

 

「いいから撮るぞ」

 

「う、うん…」

 

まだいまいち納得のいかない様子のあんこうチームメンバーに有無を言わさず。写真をパシャリ。

 

「んじゃ、俺は次を回りますけど、カチューシャさん達どうします?」

 

「し、仕方ないわねハチューシャがどうしてもついてきて欲しいって言うなら付き合ってあげるわ」

 

…ふむ、なんだか強がりにいつものキレが無い気がする。

 

「ーーー」

 

「クラーラもカチューシャに従うと言っています」

 

「当然よ!ほら、敵情視察にさっさと行くわよ!!」

 

「…案内じゃなかったんですか?」

 

強がりにキレが無いというか、なんか焦っているのだろうか?

 

「カチューシャ殿、プラウダの雪像、楽しみにしてます!!」

 

かと思えば秋山の声にピクッと身体を強張らせた。…あぁ、なるほど。

 

「え、えぇ!楽しみにするといいわ、カチューシャのプラウダはすっごいんだから!!」

 

…まーたそうやって自分からハードル上げちゃうんだからなぁ。

 

「…比企谷さん」

 

「はい?」

 

ふとノンナさんに声をかけられる、俺が気付いてるくらいだし、この人もカチューシャさんの違和感にはとっくに気付いていると思うが、その事だろうか?

 

「写真、私が撮っても良かったんですが」

 

と思っていたがノンナさんは先ほどの俺とあんこうチームのやり取りの方も気にしていたらしい。

 

「いや…まぁ、これが仕事ですし」

 

なのでここは最もらしい言い訳で"逃げ"ておく、仕事というキーワードはそれ単体では煩わしい事この上ないが、何かの言い訳に使うならこれ程扱いやすいものはない。

 

高校生から大人まで、【仕事だから仕方ない】の言い訳は幅広く通用してくれる。ソースはうちの親父。悲しいなぁ…。

 

「きっと、みほさん達はあなたとも写真を撮りたかったと思いますよ」

 

「………」

 

それでも…だ、何もしていないならそこに加わる権利は無い。と俺は考えている。

 

「…俺の事より、カチューシャさんの心配をした方が良いんじゃないですか?」

 

このまま話を続けていてはブリザードに凍えてしまうのでわざとらしく話題を変える事にする。

 

「カチューシャなら心配いりません」

 

ノンナさんはそう言うが、今のカチューシャさんを見ているととてもそうには見えないんだけどなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「雪像を作り直すわ!!」 

 

ほらー、やっぱりこうなっちゃうじゃないですかー!!

 

「か、カチューシャ様、今なんて?」

 

「だから、雪像を作り直すのよ!このままじゃ優勝できないじゃない!!」

 

「「ひ、ひぃーーー!!」」

 

ニーナ、アリーナコンビの絶叫が響く。ようやく雪像を作り終えてぬくぬくとマックスコーヒーで一息ついていた所を呼び出されてのこの仕打ち。心中を察するには充分すぎる。

 

あの後、あんこうチームからバレー部、歴女等戦車道チームはもちろん一般生徒に至るまでの雪像を回ってみたがどれもこれも普通にクオリティがぶっ飛んでいた。理由はひとつ、大洗は異常者の集まりなのだ。

 

『雪国育ちの俺が雪像で無双しようとしたら戦力外で追放されました』的な今流行りのパーティー追放ものである。…これもなんか普通にありそう。

 

要するにカチューシャさんの負けず嫌いに火がついちゃったのだ、確かに今のままで優勝は厳しいとは思うが。

 

「いや、今から作り直しても…だいたいどこを直すんですか?」

 

そもそも、別にプラウダの雪像のクオリティが低いとかそんな話でもない。ただカチューシャさんの雪像としてのクオリティが低くはあるが。

 

「決まってるじゃない!もっと大きくするのよ!!」

 

そこで一番に出てくるのが身長なのがなんかもう、聞いてて悲しくなってくるんだよなぁ…。ますますカチューシャさんの雪像クオリティが落ちていくんだが。

 

「カチューシャ」

 

「なによノンナ、文句あるの?」

 

「今、プラウダには粛清するべき生徒もいません、そうなると誰が雪像を作り直すのですか?」

 

…そういや、粛清する対象の生徒をこの雪像作りに総動員させたって話だったか。うーん、この独裁政治感。

 

だが、そんな粛清対象の生徒もこの雪像製作によって無罪放免となったのだろう、それをまた作り直させるのはさすがにどうかと思う。

 

「そんなの関係ないわ!とにかく全員集めて作り直すのよ!!」

 

だがカチューシャさんは納得していないようだ、負けず嫌いを爆発させて地団駄を踏んでいる。

 

「カチューシャの命令は絶対なんだから!カチューシャが優勝するって言ったら優勝するのよ!!」

 

…それは迂闊だったのだろう、カチューシャさんも負けず嫌い故の焦りで冷静ではなかった。

 

更に言えば、プラウダの雪像は完成してから時間もたっていたのだ、そして完成品を運ぶ時にどうしても出てくるであろう衝撃、昨日の大雪は嘘のように今日は天気も良かった事もある。

 

考えられる要因はいろいろとあるのだろう。どれが原因か、もしくはどれも原因なのかはわからない。

 

「だから、さっさとこれを作り直して……」

 

そう言ってカチューシャさんが雪像の足の部分に手を置いた瞬間だった。

 

「! カチューシャ!!」

 

「…え?」

 

雪像はぐらりと…その場で崩れ落ちる。

 

とりあえずカチューシャさんに怪我は無さそうだが、雪像の方は…。

 

「カチューシャの…雪像が」

 

バラバラに崩れた雪像を前に、カチューシャさんが座り込んだ。


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