やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
八幡が乗る戦車が思い浮かばない!!
…いやね、どっかの前書きにも書いたけど戦車知識ゼロですいません、ちょっと活動報告でアドバイス募集しようかと思いますんで協力してくれれば嬉しいです。
「の、ノンナ副隊長、本当に良かったんだべか!?」
俺達は今、簡易的に設営された本部テントにいる。
「わたすらもカチューシャ隊長を手伝った方がいいべ」
俺達…といっても俺とノンナさん、クラーラ、そしてニーナアリーナのコンビでカチューシャさんが居ない。
「ニーナ、アリーナ、二人の粛清はすでに済んでいますよ」
詰め寄る二人にノンナさんが答える。プラウダ流でいうなら、あの雪像は粛清の罰として作られたもので二人はすでに粛清を終えている理屈になる。
「わたすらなら問題ありません」
「一度作ったもんですから、作り直すのも早いはずだべ」
それでもこうやって心配しているのはカチューシャさんを慕っての事だろう。暴君ではあってもしっかり人を惹き付けるのは、あの人のカリスマ性によるものか。
「それに、きっと一人で寂しがっているはずだべ」
「んだんだ、風邪でもひいたら大変だ」
それともチビッ子故の母性本能をくすぐる魅力か。…ここは前者だと信じたいなぁ。
「雪像を壊したのはカチューシャですから、カチューシャ自身で直すべきです」
そんな二人の意見をノンナさんが否定する。正直意外ではある、この人ならプラウダの総力をあげてカチューシャさんを手伝うくらいしそうだと思っていた。
「それに、ここで手を貸してはカチューシャの為にはなりません」
そう答えるノンナさんだが、その拳はぎゅっと強く握りしめられていた。…お母さんかな?
確かにあれは事故みたいなものだが、発端はカチューシャさんの負けず嫌いが爆発した事にある。
ただ甘やかすだけでなく、厳しい時は厳しいのがノンナさんの教育方針なのだろうか。…やっぱりお母さんじゃねーか!!
結局、カチューシャさんを一人残して俺達は本部テントに戻ってきてしまった。後で見に来ると言っていた秋山達には上手く誤魔化しておいたが…。
「………」
それでも、どうにも落ち着きが悪いのは一人残された時のカチューシャさんの表情を見たせいだろう。
小町に鍛えられた【兄スキル】のパッシブが発動して思わず「どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!!」とか言ってしまいそうになる。…いや、あの人年上なんですけどね。
「あなたもカチューシャが心配ですか?」
「…プラウダの問題に首を突っ込むつもりはないですよ」
だがこれはプラウダの問題だ。カチューシャさんが気にならないといえば嘘になるが、俺が自分から率先して手伝うのは違うのだろう。
「おかしな事を言いますね」
だが、ノンナさんはまるで俺がそう答えるのを予想していたようにさらりと答える。
「あの雪像は粛清の対象だった生徒を集めて作ったものだと、何度も言っているはずですが」
いや、だからそれはもう何度も聞いている。ニーナとアリーナの二人が何をやらかしたかは知らんけど、この二人もそれで雪像作りに参加したらしいし。
今回で言えばあえて口には出していないが雪像を壊してしまったカチューシャさん自身が粛清の対象にはなるのだろう。
ただ、それでどうして俺に関係が出てくるというのか。
「あー…」
そういえば一人居ましたね、粛清の対象になっていながら雪像作りをサボっていた奴が。
そいつが雪像作りを手伝うという話なら道理としても頷ける。カチューシャさんを甘やかす訳ではなく、罰を受けさせる為だからだ。
ただ問題はそいつ、プラウダの生徒じゃないんですが?
「…はぁ。んじゃ、ちょっくら粛清受けて来ます」
ただまぁ、シベリア送りになるよりもまだ雪像作りの方がマシではあるだろうし、ここで俺も無罪放免を勝ち取ろう。
「えぇ、カチューシャを寂しくさせたのですから当然です」
…うーん。俺からカチューシャさんに連絡とっても、それはそれでこの人的に良い表情はしなさそうなんだけどなぁ。
「あれ?比企谷さんも何かやらかしたんだか?」
「きっと目だ、カチューシャ隊長をあの目で怯えさせたんだべ」
「おっかねぇもんなぁ…」
こそこそと小声で話をするニーナとアリーナだが残念ながらばっちり聞こえている。
「…ノンナさん」
「はい、カチューシャが戻ってきたら二人の事は伝えておきます」
「「ひぃぃいっ!!」」
…なんとなくこの二人が粛清対象に選ばれてた理由がわかった気がする。一言多いんだろなぁ。
ーーー
ーー
ー
「うぅ…本当にみんな戻ってカチューシャを一人にするなんて」
そんな訳で戻ってみるとバラバラのままの雪像の前でカチューシャさんが泣きそうになっていた。わりと急いで来たのは正解だったか。
「…カチューシャさん」
「!? ハチューシャ」
声をかけるとカチューシャさんは一度こちらを振り返るが、すぐに顔をそらすと目元をぐしぐしと擦る。
「…あー、その」
「こっち見たらしょくせいしてやるんだから!!」
一度は離れた手前、カチューシャさんも意地にもなっているのか。おそらく手伝いに来たと言えば話は余計拗れるだろう。…あと粛清ね、しゅくせい。
「その粛清を受けに来たんだよなぁ…」
だが俺だって別に手伝いに来た訳じゃない。粛清に粛清を重ねるとか、延々に終わらない粛清ループだけは避けたいところだ。
「…なによそれ?」
「忘れましたか?カチューシャさんを称える雪像を作るように、でしょ?」
そう言ってわざとらしく持ってきたスコップを見せる。…秋山は本当にいつもどこにこの手の物を収納してるのか?
「それは…ノンナが」
「えぇ、ノンナさんが、です」
本当にあの人、ここまで予想して物事を進めていたなら本当に背筋が凍えるものがある。ブリザードの二つ名は伊達ではない。
「てな訳で、粛清対象同士、ちゃちゃっと作り直しましょう」
「カチューシャは別に粛清なんてされてないわよ!!」
ぶーっと文句を言いながらもカチューシャさんはぶかぶか気味な帽子を被り直した。
「でも…仕方ないわね。ハチューシャがどうしても手伝って欲しいって言うなら手伝ってあげるわ」
そして彼女もスコップを手に取る。
「どうせなら大洗もノンナ達だって驚くようなすごいのを作ってやるのよ!!」
「…へいへい、頼りにしてますよ」
…あぁ、これで昨日の頑張りは全て水の泡へと消えてしまった。
西住達どころか完成した雪像を見回る中で戦車道メンバー全員から『ズルい』と文句を言われてましたけど、企画書作るのもそれはそれで結構大変なんですからね?
「当然よ!このカチューシャに任せなさい!!」
ただ、今のカチューシャさんの表情を見れたなら、それも悪くないと、そう思えてしまう。
比企谷 八幡は、全力でお兄ちゃんを遂行する!!
「っても、時間あんまりないですよ?」
とはいえ今から雪像を作り直しても時間は足りない。大洗の生徒は短時間であのクオリティの雪像を作ったが、何故か同じ事をできる気がしない。
それを俺とカチューシャさんの二人でやるとなると…かなりキツい。…いや、とてもキツい。
「一から作る必要なんてないわよ」
だがカチューシャさんはバラバラに崩れた雪像を見直すとしゃがみこんだ。
「見なさい、まだ組み合わせれば使えそうな所は残っているわ」
「…なるほど」
雪像はバラバラに崩れただけであって、粉々に砕け散った訳ではない、パーツ単位で見れば使えそうな物は多く残っている。
これが石像ならお手上げだが、雪像なら上手く組み合わせれば直すのにそこまで時間はかからないだろう。
…さっきまで冷静じゃなかったからあれだが、冷静になればこの人もやはり隊長格。そういやそれで準決勝もやられかけたんだった。
「…とりあえずハチューシャ、使えそうな部分を仕分けするのよ」
「…俺がですか」
「当たり前よ!カチューシャのバラバラな雪像なんて見たくないもの!!」
…うん、気持ちはわかる。自分のバラバラ雪像とか見たくないもんね。ここまでも余程我慢してくれたんだろう。
ーーー
ーー
ー
『まもなく雪像コンテストの審査を始めます!さぁ!第一回大洗雪像コンテストの優勝は誰になるのか!とても興味深い!!』
放送部、王 大河のアナウンスが聞こえる、これが聞こえるという事は雪像作りはこれで終了の合図だ。
俺とカチューシャさんでせっせとパーツを組み合わせ、雪で接合し、仕上げたその雪像は。
「…小さいわね」
と、やや不服そうに呟いたカチューシャさん。だが、彼女は決して雪像を見下ろしてはいない、そしてもちろん見上げてもいない。
「いや…まぁ、そうですかね?」
だいたい同じ目線、ほぼ等身大の1/1スケールのカチューシャさんの雪像が出来上がった。…別に狙った訳じゃなかったんだが、これもう呪いかなんかかな?
「不満ですか?」
「当たり前よ!これじゃカチューシャのすごさが伝わらないじゃない!!」
うーん、作り直す前のあれで伝わるのはひたすら身長に対するコンプレックスだと思うんだが。
「でも…いいわ、これで許してあげる。ハチューシャも頑張ったし、誉めてあげてもいいわ」
「そりゃどーも…、頑張ったのはカチューシャさんもですけどね」
俺でもくたくたになったのだ、俺よりずっと身長の小さいカチューシャさんはもっと疲れているだろう。
「…でも、ノンナ達はこれで許してくれるかしら」
不安気に呟くカチューシャさんには雪像を壊してしまった罪悪感があるのだろう。おそらく、一人残された時からずっと。
「カチューシャ」
「!? ノンナ!!」
そんな話をしているとノンナさんがやって来た、完成した雪像を見つめるその表情はとても優しい。
「ノンナ、その…」
「素晴らしい雪像です、同志カチューシャ」
「ほ、本当に?」
「えぇ、これぞまさに【カチューシャの雪像】に相応しいと思いますよ」
…ここに来て、ノンナさんはその雪像を【カチューシャの雪像】と答えた。それはきっと身長だけでなく、彼女が作り上げたものとしての答えになるのだろう。
「でもノンナ、カチューシャの事、嫌いになったり…」
「私がカチューシャの事を嫌いになるはずがありません、プラウダのみんな、カチューシャが大好きなのですから」
「…ノンナ」
…まぁ、これで一件落着。という事になるのだろう。
「…それでノンナさん、いつから見ていたんですか?」
とはいえ、ここが気になるのは当然だ。雪像作り終了のアナウンスと同時に現れるなんて、いくらなんでもタイミングが良すぎる。
「はて、いつから…とはどういう意味でしょう」
「とぼけなくて良いですよ、カチューシャさんには内緒にしときますし」
ニーナとアリーナ、クラーラを呼んで自慢気に雪像を見せるカチューシャさんにチラリと目線を送る。
「いえ、とぼけていませんよ。私はいつだってカチューシャを見ていますから」
「…そっすか」
…怖ぇよ。そこは普通、最初からじゃねーか!!とかそういうオチの着く所じゃない?
「それより比企谷さん、あなたがにはまだ仕事が残っているはずですよ」
「あぁ…そうですね。っと待って下さい、カメラ取ってきますんで」
カチューシャさん的には不満があるんだろうが、これでプラウダの作品が出来上がった。
ならば記録雑務として写真撮影する必要がある。…結局、雪像作って運営もやってとただただ仕事を増やしたイベントになってしまった。
「カメラならもう私が用意しています、それに…あなたの仕事は写真を撮る事ではありません」
「…はい?」
「作品と作者を写真に残すなら、カチューシャとあなたが写る必要があるはずです」
「いや、一応運営側ですし、手伝ったのバレるとアレがアレなんで都合が悪いというか…」
「それでもあなたの写っている写真が一枚くらいあってもいい、それが記念というものですよ」
「………」
まぁ、生徒会の皆さんとか運営側の癖して毎度毎度めちゃくちゃ写真残ってますけどね、むしろ一般生徒より多い気がしてそれはそれでどうなんだろうと思う。
「カチューシャ、比企谷さんと雪像の前に、写真を撮りますよ」
「え?ち、ちょっと待ちなさいノンナ!!」
ノンナさんに言われて慌てて服についた雪をぽんぽんと払うとカチューシャさんは自身の雪像の前に。
「ほら!さっさと来なさい、ハチューシャ!早く来ないと粛清してやるんだから!!」
そしてすっかりいつもの調子を取り戻して俺に声をかけてくる。
「プラウダ艦内にある全てのじゃがいも掘りと麦踏みを一ヶ月ですね、どうします?比企谷さん」
「粛清の罪重くないですかねぇ…」
溜め息を一つ吐いてカチューシャさんの隣へ。ただ写すものが等身大のカチューシャさん雪像なのでなんかカチューシャさんが二人に見えるまである。
「…ハチューシャ!!」
カチューシャさんもそれが気になったのだろう。その掛け声から彼女が何を言いたいのか、おおよそ想像もつくというものだ。
「…はいはい」
ノンナさんがカチューシャ検定一級なら俺もそろそろ二級くらいにはなれたのかもしれない、すっと腰を降ろして彼女を肩車する。
「いいわノンナ、ちゃんと撮るのよ」
顔は見えなくても上機嫌なのは伝わってくるが、危ないのであんまり動かないで欲しい。…いやね、ちょっと振動がね?
「もちろんです。カチューシャと比企谷さん、二人の記念になるものですから」
そんな戸惑う俺と上機嫌なカチューシャさんに向け、ノンナさんは写真をぱしゃりと撮った。
ーーー
ーー
ー
それは比企谷が運営として雪像コンテストの結果発表の準備に戻った後のプラウダ陣営の話である
「ーーー(ノンナさん、比企谷さんとカチューシャ様の事、本当に良かったんですか)」
クラーラが少し不安気な表情でノンナに声をかける、もちろんロシア語である。
「ーーー(なにか問題がありますか?クラーラ)」
「ーーー(ですが、このままではカチューシャ様を取られてしまう事も…)」
「ーーー(クラーラ、これを見なさい)」
ノンナはそういって先ほどの写真をクラーラに見せる。
「ーーー(カチューシャ様!とても愛らしい!!こんな表情を見せるなんて…)」
「ーーー(えぇ、残念ですが、私達ではカチューシャのこの表情を引き出す事は出来ないでしょう)」
「ーーー(これが恋するカチューシャ様の…、なるほど、これは確かに)」
「ーーー(本人に自覚はまだないようですが)」
「ーーー(そんなカチューシャ様も素敵です)」
「あんた達!ちゃんと日本語で話しなさいっていつも言ってるでしょ!!」
ロシア語トークを続けるノンナとクラーラに向けてカチューシャが怒鳴り。
「…なんの話してるかわかんねっけど」
「とにかく…なんかおっかねぇだ」
そして二人の会話の意味がわからなくても、それとなく恐怖を察するニーナとアリーナのコンビなのだった。
ーーー
ーー
ー
『優勝は生徒会チームだぁぁぁぁああ!!』
だよね知ってた。
まぁ予定調和でも出来レースでもなく、わりと実力で優勝したのだから文句も言えない。不正は無かった、いいね?
『優勝した生徒会チームには賞品として三ヶ月分の干し芋が送られます!!』
いや、だから知ってたって。
…文句が出てこないのは賞品が賞品だからってのもあるんだろうなぁ、三ヶ月分の干し芋送り付けられてもどうしろっていうのよ?
まぁ俺にとっても雪像コンテストの勝敗はどうでもいい。元々は積もった雪をどうやって一般生徒にも雪かきさせるかを考えた結果のイベントなのだから。
「…カチューシャのプラウダが負けるなんて」
だけど、プラウダに…というか、カチューシャさんにとってはそうではないのだろう。
「まぁ、惜しかったと思いますよ」
実際、一度崩れた雪像を作り直してのハプニングを考えれば充分健闘した方だと思う。
「優勝しないと意味がないじゃない!!」
だが、やはりカチューシャさんは納得いかないのか。しかしなんでそこまで…、優勝しないと廃校にでもなっちゃうの?
「比企谷さん、カチューシャは優勝してあなたにお願いをしたかったんですよ」
あぁ、そういえば。いろいろとハプニングがあったせいですっかり忘れていたけど、そんな事を言っていた気がする。
…結局、なんだかんだとプラウダには世話になったし、今回のイベントはこの人達が居なかったらそもそも出来ていなかった。
そうなると今日だけじゃなく、明日も明後日も俺達は雪かきに追われていただろう。
だったら…まぁ、返せる借りは利子がつく前に返すのが正解なのだろう。
「で、お願いってなんだったんですか?」
「…カチューシャのお願い、聞いてくれるの?」
「まぁその、参加賞というか、俺が出来る事ならですけど。…ちなみに金ならありませんよ」
「お金なんていらないわよ!!」
「というかまず思い付くのがお金な辺りがあなたらしいですね…」
いやほら、金の管理は専業主夫の必須科目ですから。一応言っとかないとね。
「まっ…とにかく言ってみて下さい」
「カチューシャ、比企谷さんもあぁ言ってますよ」
「うん…」
ノンナさんにも優しく声をかけられ、カチューシャさんはこくりと頷くと俺を見つめる。
「…大洗は今度、ダージリンと試合するのよね?」
「…はい?あぁ、エキシビションマッチの事ですか」
一応は大洗の優勝記念…という名目にはなるが、近々予定している聖グロリアーナと大洗の試合の事を言っているんだろう。
「それにプラウダも参加するわ!いいわねハチューシャ!!」
……………………………………………………………………え"っ?