やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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…【やはり俺の戦車道は間違っている。】も読んで貰えたら嬉しいなー。


雄弁に、秋山優花里は戦車道知識を振るう。

こんな格言を知っていて?【俺は八百屋にサンマは注文しねえよ】。マジこれ、良いシーンだから是非見てくれ。

 

そのシーンと意味こそ違えど古人曰く。何事も餅は餅屋、マッ缶はコッカ・コーラと相場が決まっている。

 

ようは素人があれこれ悩むより、専門的な事は専門家に任せるべきなのだ。その一辺で言うなら、今回の仕事に対して俺は素人以下といっていい。

 

そもそもの問題が相方探し。「はい、二人組作ってー」の一言に、常日頃余り者になる俺に相方を探せとはダージリンさんもかなりの悪役令嬢っぷり、破滅フラグのない悪役令嬢とか勝てる気がしないんだよなぁ…。

 

「えぇと…比企谷殿、今日はどういった御用ですか?大事な話、とは聞いてますが」

 

そんな訳で戦車道関連には戦車道の専門家、うちの学校なら秋山が一番適任だろう。

 

「あぁその…、夏休みのエキシビションだけど、ちょっと問題があってな」

 

当然、大洗の戦車道チームもエキシビションの件については了承済みだ。…じゃなきゃ俺が勝手に聖グロリアーナと試合組んだみたいになっちゃうでしょ?

 

「!! 了解しました!不肖秋山優花里、全力で任務に当たらせて頂きます!!」

 

何かを察してビシッと敬礼を決める秋山。ふむ、その姿こそなんとも頼もしいがちょっと待て。

 

「いや、まだ何も言ってねぇけど…」

 

「聖グロリアーナへの潜入偵察ですよね!戦いは始まる前から始まっている…、先手を打つとはさすが比企谷殿です」

 

「いや、違うから。てか、俺が呼んでまず思い付くのがそれってどうなの?」

 

いや、確かに聖グロリアーナの情報も欲しい所ではあるけど。なんなら潜入して戦車内の湯沸し器を破壊すれば聖グロリアーナの戦力は半減するかもしれん。…それで良いの?聖グロリアーナ。

 

え?反則?別に戦車を壊す訳じゃないんだし…ルールブックに湯沸し器を破壊してはいけない。とかあるのかね?

 

「というか比企谷殿はプラウダに行って戦車見たり、黒森峰に行って戦車見たり、あんまりだと思います!!」

 

「偵察はどこいったんだよ…」

 

ほんと、ごめんね。ロシア戦車もドイツ戦車も充分堪能しちゃって、別に秋山の株を奪おうって訳じゃなかったのよ。

 

「せっかくプラウダと黒森峰の制服も用意していたのに着る機会がないなんて…」

 

…それ本当に潜入用だったの?単なる趣味じゃなくて?

 

「まぁ話にも出たから言うけどな、そのプラウダもエキシビションマッチに参加する事になった、聖グロリアーナとコンビでな」

 

「なるほど…英露協商、という事ですか」

 

「それな」

 

ここに歴女グループが居ないので代わりに「それだっ!!」と答えておく。ここにフランスを加えると第一次世界大戦で世界がヤバい。

 

「つまりエキシビションマッチの対戦相手は聖グロリアーナとプラウダのタッグチームとなった訳だが」

 

「高校戦車道でも強豪校の二校が組む夢のタッグじゃないですか!それは是非とも見てみたいです!!」

 

「いや、見るんだよ…。てか戦うんだからね?」

 

むしろ嫌って程思い知らされるまである。やだ…マジ無理、尊い…きゅん死しそう。とか言ってる場合じゃない、ヘタすりゃ戦死する。

 

秋山は嬉しそうだが…。まぁ、生粋の戦車道ファンのこいつからしたら聖グロリアーナとプラウダの組み合わせはまさに夢の超人タッグ、マッスル・兄弟みたいなものだろう。だが、実際戦うとなると極悪同盟もいい所だ。

 

「んで、そうなると当然大洗も相方が必要なんだが…」

 

「おぉ!もしかして黒森峰ですか!黒森峰と一緒に戦えるなんて夢のようです!!」

 

あぁ…うん、ひゃっほぉぉおぅっ!!してるところで悪いんだけど本当に夢だったんだよ…そうはならなかったんだ、ロック。

 

「黒森峰、サンダース、アンツィオ…全部用事やらなんやらで参加は無理って話だ」

 

だからこの話はこれでおしまいなんだ。と現実を秋山に告げる。アンツィオに関しては…うん、悲しすぎて何も言えねぇ。

 

「…それは、えぇっと」

 

「ちなみにこれ、俺が知ってる数少ない他校の連絡先だから、もう他に伝は残ってない」

 

つーかこれが限界。俺の縁ではこれ以上他校をサーチ出来ないのだ。

 

いや、前の練習試合の時に聖グロリアーナを引いたみたいに手当たり次第に連絡をするやり方ももちろんある。

 

だがリセマラしまくってSSRをようやく引けたあの時とは違い、今回は相手も相手だ。相方選びは慎重にせねばなるまい。

 

「…多くありませんか?」

 

だが秋山はなんかちょっと拗ねたような表情で呟く。

 

「え?何がだよ?」

 

…秋山のそういう表情は珍しいので少しドキリとした。「何が?」と聞いといてなんだが、秋山の言いたい事はわかってしまう。

 

…まぁ、どうなんですかね。数、多いんですかね?

 

「まぁ、その…とにかくだ。そこで秋山、お前の力を借りたい」

 

誤魔化しの意味も込めて…と言うのはこれから頼る相手には失礼だろうが、話を戻す。

 

餅は餅屋に習えば戦車道をやっている高校に関しては秋山に聞くのが一番だろう、西住も戦車道の知識はあるだろうが各高校となると秋山の方が詳しそうだ。

 

俺がそう聞くと秋山は先ほどの拗ねた表情は吹っ飛んで目をぱちぱちとさせていた。

 

「えーと…それはつまり、比企谷殿が私を頼ってくれている、という事ですか?」

 

「正直、俺だけじゃどうにもなんねぇしな…」

 

そういや考えてなかったけど…普通に断られたらどうしよう?もう手当たり次第のローラー作戦になったら名も知らぬ学園とタッグって展開も有り得るんだが。

 

「…ひ、比企谷殿に頼られました」

 

だが秋山はぽしゅぽしゅ呟きながらなにやらご自分の髪の毛をいじいじと弄っている。癖っ毛を気にしてる、との事だが今それを気にするの?俺も真似してアホ毛いじいじした方が良い?

 

しかし、秋山の癖っ毛いじいじと俺のアホ毛いじいじでは絵面的に圧倒的に差があるので仕方ないが止めておく。というかアホ毛じゃないし、小町にもなにやら一本生えてる気がするけどあれも癖っ毛の一種だから。

 

「えーと、秋山?」

 

「え?あぁ!すいません、比企谷殿!!」

 

いい加減その癖っ毛いじいじ止めないとアホ毛一本生やしちゃうぞ?と秋山に声をかけると彼女は慌てて敬礼の形をとる。

 

「了解しました!不肖秋山優花里、全力で比企谷殿をサポートしますね」

 

「お、おう…助かる」

 

こっちとしては助かるんだけど、仕事が回ってきたというのになんでこんなに嬉しそうなのか。逆にちょっと罪悪感が沸くまであるんだが…。

 

「ですが私で力になれるといいんですが…」

 

秋山のその言葉に俺は「!!」シュバババッ!と素早く反応する、俺でなけりゃ見逃しちゃうね。

 

「安心しろ、俺は八百屋にサンマは注文しねえよ」

 

ふっ…決まった。格言決めるってのは思った以上に気持ちいいもんだ、そりゃダージリンさんも癖になって格言キメちゃう訳だわ。

 

「えーと、そもそも八百屋にサンマは置いていないと思いますけど」

 

「あぁ、うん。そうね…」

 

そして伝わらないこの空しさ…。ダージリンさんはもっとペコのありがたみを噛み締めた方が良いと思う。

 

「それで比企谷殿、何について知りたいんですか?」

 

「相手が聖グロリアーナ、プラウダのタッグだからな、とりあえず強い戦車持ってる学校を知りたい」

 

戦車性能だけで見ればポルシェティーガーも加わり初期装備からは大幅に戦力強化されたとはいえ、大洗の戦車ではまだ心許ない。

 

そもそも黒森峰やプラウダを見ればわかるが強い戦車を持ってる学校は普通に強いのが戦車道なのだ。…この武道、ひょっとしてクソゲーでは?

 

「強い戦車というとやっぱりドイツ戦車ですかねー」

 

「黒森峰には断られたけどな…」

 

とはいえ秋山のいう通り、有名なティーガーを始めドイツ戦車は強戦車が多い。『戦車はデカイほど強い』の信念の元、マウスなんてとんでも兵器作っちゃうくらいなのだ。

 

「黒森峰以外にもドイツ戦車を使う学校はあります、もちろん黒森峰程保有車両は多くないですが」

 

「え?マジ?」

 

「はい、ベルウォール学園なんてどうでしょう?」

 

ベルウォール学園…?はて、聞いた事はないと資料がてら広げていた戦車道全国大会のトーナメント表に目をやる。

 

…そんな学校の名前ないんだが、全国大会に出てこない学校って時点で怪しい。

 

「まぁドイツ戦車もピンきりだし…、ドイツ戦車持ってるイコール強いって事もないか」

 

「いえ、保有戦車はティーガーⅠにヤークトパンター、エレファント!あとドイツ戦車ではないんですがT-44なんかも持ってます」

 

「いやそれ、普通に強戦車だらけじゃねぇか。なんでそんな強い学校が全国大会出てきてないんだよ?」

 

大洗を遥かに凌ぐスペックの戦車ラインナップだ、これならいかに相手が極悪同盟であろうとも十二分に戦える。

 

「それは…その、ちょっと問題もありまして」

 

「…問題?」

 

「その、学校が少し荒れているというか…工業科は特に」

 

「うん、パスな」

 

俺レベルともなれば【工業科】と【荒れている】の2つのキーワードだけでもう無理と判断できる。話を聞くだけでよっぽどのヤンキー集団なのは目に見えた。

 

バイクに乗っているだけでも恐ろしいヤンキー集団が戦車に乗ってやってくるとか、絶対混ぜちゃ駄目な奴だろそれ。

 

余談だが、茨城県もヤンキーは多い。茨城県で金髪を見たらだいたいヤンキーか元ヤンと思った方がいい。町を歩いてすれ違う人はだいたいヤンキーだから。

 

そんなヤンキーの多い地域にヤンキー呼ぶとか抗争が始まってマジ卍会の展開は却下したい。俺にタイムリープする力は無いのだ。

 

「ではそこの地域にあるもう一つの学校はどうでしょう?先ほど紹介したベルウォール学園とはよく試合をする間柄なので強さも申し分ありませんし」

 

「いや、どうせそこも荒れてんだろ?」

 

同じ地域でよく試合してるとかそれ本当に試合で済んでる?ヤンキー同士の抗争みたくなってない?血で血を洗う展開しか見えないんだが。

 

「安心して下さい、お嬢様学校として有名な所ですから」

 

「へー…、お嬢様学校」

 

ヤンキー学校とお嬢様学校がよく試合してる謎についてはこの際置いといて。お嬢様学校となれば聖グロリアーナとキャラが被るな。いや、この際別にキャラ被りはどうでもいいんだけど。

 

「はい、その名もせいグロです」

 

「いや、ちょい待った、秋山、ステイ」

 

「はい?」

 

言うと秋山はきょとんと不思議そうにしながらも本当に待ったをしてくれる。うーん…この忠犬感には思わず頭を撫でたくなる。ついでに癖っ毛をわしゃわしゃしたくなる。ついでのついでに君もアホ毛生やさない?

 

「それ、聖グロリアーナの事だろ。わかってんのか?大洗の対戦相手がその聖グロだからな」

 

てかあの人達そんなヤンキー学校相手にしてたのか、ローズヒップが特攻隊長してんのかな。

 

しかし特服着たダージリンさんってのもいまいち想像…出来てしまうから困る、何着ても似合うとかあの人本当エレガント。

 

「いえ、聖グロではありません、西グロです」

 

「いや、わからんから…」

 

「西呉王子グローナ学園ですから、通称で西グロ…と呼ばれてますね」

 

「それもうにしグロでよくね?」

 

普通にややこしい…、お嬢様学校キャラ被り所か名前まで被ってるとか。

 

「ちなみに保有戦車は?」

 

「なんでも新しく隊長になった方が、これまでの保有戦車から一新してイギリス戦車で統一したらしいです」

 

戦車まで被せてきた!!

 

「てか戦車を一新って全部買い替えたって事だろ、なんでまたそんな(ムダな)事したんだよ」

 

「その隊長の方がダージリンさんのファンだとか、なのでパンツァージャケットも聖グロリアーナの物とよく似てるんですよねー」

 

パンツァージャケットまで被らせる必要はあるんだろうか…。てか隊長以外の戦車道メンバーはそれで納得してるの?

 

「なので私も間違えて西呉王子グローナの物を買ってしまった事もあって…」

 

「普通に詐欺じゃねぇか…、パクりで訴えられねぇの?」

 

「ま、まぁインスパイアやオマージュみたいなものですし!!」

 

もしくはパロディ、世の中こういう逃げ道が多すぎて困る。

 

「じゃあやっぱ戦車もチャーチル、マチルダ、クルセイダーの三種類か」

 

「いえ、ブラックプリンス等も持ってますね」

 

「そこはパクったげてよぉ…」

 

なんでちゃっかり戦車だけ上位互換持ち出しちゃってるの?そここそオマージュしたげて?ダージリンさん、あぁ見えてあれこれ口煩いOG相手に頑張ってるんだから。

 

「どうでしょう?ダージリンさんのファンという事であれば聖グロリアーナとの試合も了承して貰えると思いますが」

 

「いや、ダージリンさんの気持ち考えると無理だろ…」

 

同じような略式の名前の連中が同じようなパンツァージャケット着てるのに戦車は向こうのが強いとかなんの嫌がらせですか?

 

…あと、そこまで熱狂的なダージリンさんのファンが来るとなれば俺の存在はね。…いやほら、ね?いろいろと身の危険さえ感じる。

 

「………」

 

改めて戦車道全国大会のトーナメント表に目をやる。西グロ…西呉王子グローナとやらの名前は載っていない。

 

先ほどのベルウォール学園といい、夏の全国大会には二校共出場していないようだ。二校とも戦車だけ見れば普通に強戦車持ちだというのに。

 

『この大会はね、戦車道のイメージダウンになるような学校は参加しないのが暗黙のルールよ』

 

ふと、戦車喫茶【ルクレール】での現副隊長さんの言葉が脳裏に浮かんだ。

 

「どうしました?比企谷殿」

 

「…いや」

 

あいつの言ってた事ってわりと的を射ていたのね…。あの時はなにこいつ意識高い、とか思ちゃってごめんね。

 

いやでも、意識高いのは間違いないだろう。だって名前がほら、意識 エリカだったはずだし、もう名前から意識の高さが滲み出てんだよなぁ…。




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