やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
基本的にスマホで書いているのでこりゃ誤字脱字めっちゃ出てしまうかも…と思ったけどそれ、いつも通りな気が…。
ただ慣れるまで執筆は遅くなるかもです。
「こう考えると、戦車道やってても全国大会に参加してない学校って結構あるんだな」
全国大会にしては、やたらと出場校が少ないとは思ったが…なんせ普通、漫画とかでもこういう大会は地区予選からスタートするのがお約束というものだし。
それをすっ飛ばしていきなり全国大会出場だ。甲子園や花園、国立に行きたくても行けないスポーツ学生にとっては文句の一つでも言いたくなる話である。
考えてみるとこれ、就活で便利だよなー。「全国大会出場経験があります!!」とか面接で堂々と言えるんだし。
「仕方ありません、戦車を用意するのは大変ですから…」
「それな…」
まぁそこに尽きる。黒森峰とかプラウダとかサンダースで感覚が麻痺しそうだが、戦車って普通にお高いし。
「戦車は拾った」な大洗は、一応過去に戦車道が盛んだったので、まだなんとか売れ残った戦車を手に入れる事が出来たが、他所の学園艦ではこうもいかないのだろう。
きっと戦車道という武道が廃れた理由もそこら辺にあるのだろう。戦車道連盟はプロリーグやら世界大会の準備を進めるより、さっさと各学校に給付金を送るべき。
「となると、やっぱ全国大会に出場してる学校から選ぶか…」
現副隊長さんの言葉を借りる訳でもないが、全国大会に参加してない学校は地雷の可能性が高い。戦車不足な学校はもちろん、強い戦車を持っていても参加しない理由はあるのだろう。
荒れているベルウォール学園はヤンキー学校だし、過去に何かやらかした可能性もあるんだろう。西グロは…まぁ、パクってるのバレちゃうしね。
「えぇ!?でもまだ中立高校に伯爵高校やギルバート高校、ケバブハイスクールと紹介したい学校が沢山あるのに!!」
「ここ、本当に日本なの?」
秋山ちゃんは語りたい、と残念そうだがさすがに大会に出場してない全ての高校を語られてはキリがない。いや、こいつなら延々紹介できそうではあるが。
というかいまさらだけど聖グロリアーナとかプラウダ、ベルウォールとかギルバート、おまけにケバブと学校名おかしくない?
あらためて戦車道全国大会のトーナメント表を見てみる。
【ワッフル学院】
【ヨーグルト学園】
【コアラの森学園】
「………」
デザート学校揃い踏みだった、ワッフルとヨーグルトがマーチしている。
「どうかしましたか、比企谷殿?」
「いや、大洗学園ってまともだったんだなーと」
良かったー、うちがあんこう学園とかじゃなくて。…とりあえず名前から見てもこの3つは無いな、ギャグ時空の匂いしかしない。
「…ん?」
ふと目についたのは【青師団高校】。まとも…とは言えないかもしれないが、他のと比較すればまともな学校名だ。
「この青師団高校ってあれか、ブラウ(青)師団がモチーフなのか?」
第二次世界大戦にてナチスドイツ国防軍陸軍のスペイン人による義勇軍、ブラウ(青)師団。
その名前まんまの高校だ。戦車道にも当然、力を入れているはず。
「あぁ…ええっと。そこはですね…」
聞くとどうにも秋山の返答が戸惑う。ふむ…戦車道関係で秋山が即答しないのも珍しい。
「なに?ここもなんかやらかしてんのか?」
「いえ、その…制服が特徴的と言いますか…」
…よくわからんので仕方ない、とスマホで検索を入れてみる。さすがスマホ、異世界にも持っていきたい便利アイテムだ。
『青師団高校 制服』と入れて検索をかけると胸元をぱっくりと開けたえっっっろ…もとい、セクシー巨乳女生徒の画像が大量ヒットした。
「よし、ここにするか」
「何を基準で決めたんですか!比企谷殿!!」
はっ!と気付いて我に返る。…危ねぇ、秒で答えていたわ。いや、それくらい男子高校生には刺激が強すぎたのだ。
人は重力には逆らえず、男はおっぱいには逆らえない。これぞ万乳引力の法則。さすが乳トン先生だ。
いや…これが学校指定の制服なの?こんなの着るの不二子ちゃんくらいかと思ったんだけど。
「いや、ほら…なんかこの学校人気あるみたいだし」
画像検索のついでに出てきた言葉を適当に並べる。実際、【大人気!青師団高校!!】の文字が見える。
「…男性人気はすごいですよ、皆さん戦車を見てほしいですが」
【大人気】の前にあった【男性に】の部分を見逃していた…。いや、まぁ…そりゃ人気出ますよこれは、だって(おっぱい)重戦車だらけだもん。
これには『戦車とおっぱいはデカイほど強い』の信念のドイツもニッコリ…あれ?なんか違ったっけ?
「…そんなに青師団高校の制服が見たいんでしたら、えぇっと、その…今度私が着ます、よ?」
「…え?」
もじもじと恥ずかしそうにしながら呟く秋山により、俺はあっさりと万乳引力の呪縛から解き放たれた。いや、さすがにそれは…。
「いや、そんなつもりじゃ…」
「いえ、こういう機会でもないとなかなか着る機会がないので、黒森峰やプラウダの制服もちゃんと着てみたかったんで是非とも見て下さい!!」
「コスプレする気満々じゃねぇか…」
というか青師団高校の制服も持っているのね…もはや何用だよ。
「だから…約束ですよ?今度は私に付き合って下さいね、比企谷殿」
「いや、まぁ…時間あればな」
今こうして付き合って貰ってる身としてはなんとも断りづらい。
というか…秋山は他の学園艦の服を何着持ってるんだろうか?それはもう、ランウェイで笑うくらいのファッションショーになりそうな気がする。
「とりあえず青師団高校は無しにするか…」
残念だけど!本当に残念だけど!!仕方ないのだ、青師団高校については後で個人的にじっくり調べる事にしよう。
しかし、どんどん候補が減っていくなぁ…。次はこのボンプル高校ってのについて聞いてみるか。
「あの…比企谷殿」
「ん?」
だが秋山は俺が聞くより先に何やら言いづらそうにもじもじしている、まだ青師団高校を引きずっているのか?
「少し言いにくいのですが…エキシビションマッチの参加校を決めるのに、問題が一つあると思います」
「あぁ、それな」
秋山の言いたい事がなんなのか、実は俺はもうわかっていた。だからもうすでに条件からそれは省いている。
「安心しろ、エキシビションには俺は出ないから」
黒森峰、サンダース、アンツィオの3校とは知らない仲じゃない。男の俺の戦車道試合参加も、エキシビションマッチという非公式という形ならば大目に見てくれるだろう。
だが、全く知らない学校を巻き込むのであれば話は別だ。向こうからすれば俺という存在は異質すぎるだろう。
他の学園艦の参加高校を決める時点で俺の参加は無し、それは当然の話だ。
「それは駄目です!!」
だが、秋山は真正面から俺の言い分を却下した。その力強い言葉に思わず驚いてしまう。
「いや、駄目もなにも…わかってると思うが、そもそも男の俺が試合に出る方がおかしいからな」
「その為のエキシビションですよ?比企谷殿」
「エキシビション万能すぎんだろ…非公式だからって、何やっても許されるって訳じゃないからね?」
むしろ非公式だからこそ、きちんと節度を守る必要がある。そこらかしこでうまぴょいうまぴょいしてれば、馬主さんも黙ってはいないのだ。同人ゴロは自重して欲しい。
みんなも節度を守って正しい同人活動をね!え?ハーメルン?クロスオーバー?はい、ごめんなさいね。
「まぁ、エキシビションは言い訳ですから…」
「ぶっちゃけたな…」
「はい!ダージリン殿も西住殿も、その…私だって楽しみにしているんですから、今更敵前逃亡は出来ませんよ?」
まずダージリンさんが絡んでる時点で逃げられる気がしないんだよなぁ…。
「って言っても…じゃあどうすんだよ?」
「継続さん達ならどうでしょう?継続高校は戦車道大会においても強豪チームですし、比企谷殿とも知らない仲じゃありません」
「継続高校なぁ…」
もちろん考えてなかった訳じゃない。強さだって先の戦車道全国大会で黒森峰相手に善戦した経歴もある。
「プラウダ高校が居るし、ちょっと厳しいんじゃねぇか?」
だが継続高校とプラウダ高校には何やら問題というか…因縁めいたものがあるらしい。凖決勝の後KV-1がどうこう言ってたアレだ。
「…まぁ、そこはカチューシャ殿に我慢してもらうしか」
戦車道知識も豊富な秋山もそこら辺は知っているのか、少し苦笑いを浮かべる。いや、本当に継続高校呼んでいいの?最悪うちの戦車無くならない?
「大丈夫です、事情を話せばカチューシャ殿もわかってくれますよ」
「ま、やるだけやってみるか…」
「はい!何事も突撃ですよ、比企谷殿!!」
…突撃?はて、何やらそのキーワードには少し思い当たる節があるような、ないような?
ーーー
ーー
ー
結論から言うなら…駄目だった。
まず俺も秋山も隊長であるミカさんの連絡先を知らないのだ。…そもそもあの人達が携帯電話を持っているかも怪しいんだけど。
それで仕方なく継続高校の学園艦に直接連絡を入れた訳だが、どうにもミカさん達は不在らしい。
「一応帰ってきたら連絡してくれとは伝えたが…エキシビションまでに帰ってくるかも怪しいな」
「参りましたね…」
てか継続高校が自由すぎる…マジで授業はいいの?このままだとミカさん、留年しちゃわない?
放浪癖というか、神出鬼没というか、凖決勝もいつの間にか現れていつの間にか帰っていたくらいだし。
「…あー」
凖決勝と継続、そして先ほど秋山が言った妙に引っ掛かる【突撃】のキーワード。
そこから導き出される結論は…。
「そういえば、まだ当たってない奴が居たな」
ポンとわざとらしく手を叩く。別に忘れていた訳ではないが会ったのは凖決勝の会場くらいだし、知り合いというより顔見知りに近い間柄だが。
「…まだお知り合いが居たんですか」
だが秋山の方はどこか呆れた風に「主さま、また女の子のお知り合いですか?ほんといい加減にして下さいね、世界中全ての女の子とお知り合いなんですか?」と、どこぞの幼女エルフママを思わせる表情をしてくる。
「いや、知り合いって程親しくはないし、連絡先も知らないんだが…知波単学園の隊長でな。凖決勝の時に応援に来てた」
「おぉ!知波単学園といえばかつてベスト4まで勝ち進んだ学校じゃないですか!!」
「え?もしかして結構強い所なのか?」
一回戦の黒森峰との試合を見ても、凖決勝の言動を見ても、突撃のイメージしかない。
「チームの士気も隊員の錬度も高いのですが…その、作戦が突撃しかないので大体は対策を取られて負けちゃってますね」
「…駄目じゃねぇか」
というかイメージ通りだった。そりゃ相手が突撃しかしてこないってんなら、いくらでも対策の取りようはあるわな。
「でもでも!その全車両による突撃がベスト4まで勝ち進んだ要因にもなった訳ですし!!」
むしろ、それが上手くいっちゃったせいで突撃癖がついた可能性もあるんじゃないの?
…とはいえ、もう他に選択肢も残ってないし連絡を入れてみるか。
「しかし、相手が聖グロリアーナとプラウダってなると引き受けてくれるかどうかもわからんな」
かの極悪同盟が相手だ。一応大洗学園にも【戦車道全国大会優勝校】という看板があるっちゃあるが、それもどこまで通用するか…。
「安心して下さい、そこは問題ありません」
「いや、普通に考えたら戦いたくない相手だろ?」
「大丈夫です。知波単学園といえば全国大会の一回戦が黒森峰と決まった時に万歳三唱した、というのは有名な話ですから」
「…なんで?」
むしろ、全然大丈夫に聞こえないまであるんだが?一回戦でいきなり姉住さん率いる黒森峰と戦うとか、くじ運を呪うまである。
「なんでもそれが知波単魂、なんだそうです」
「…連絡、止めていい?」
ちょっと俺のコミュニケーション能力じゃ厳しい気がするんで、一辺出直してきてもいいですか?
「比企谷殿、頑張って下さい。ここまで来たら突撃しかありません!!」
「移ってる移ってる、もう知波単魂乗り移っちゃってる…」
まぁ、確かにもう突撃しかないか。隊長である西の連絡先は知らないが知波単学園の連絡先なら調べればすぐにわかる。
『はい、こちら知波単学園戦車道チームであります!!』
連絡を入れると電話に出たのは…まぁ誰だか知らないが開幕から非常にテンションが高い、てかうるさい。
「あー…えっと、すいません。こちら大洗学園の戦車道チームなんですがーーー」
『ふぁぁぁぁぁぁぁぁああ!男性!男性の方でありますか!?』
要件を言おうとする前に電話の相手は驚きの声をあげる。…み、耳鳴りが、もうちょい音量下げてくんない?
『騒がしいぞ福田ぁ!何があった!!』
と、続けて電話相手ではない、別の誰かの声が響いてきた。誰だか知らんがこいつも充分騒がしい…。
『一大事ぃー!一大事であります!!大洗学園がー!!男性の方がー!!』
『なんだと!』
『衛生兵ー!衛生兵をー!!』
なんか…向こうがとんでもない騒ぎになっているんだけど大丈夫なの?俺と会話するのに衛生兵が居るとか普通に傷付くんだけど…。
『みんな、いったい何を騒いでいるんだ?』
『西隊長!大変であります!!』
『大洗学園から連絡が、その…男性の方です!!』
『大洗…、男性、もしかしてそれは比企谷さんではないか?』
『なんと!西隊長は男性の方にお知り合いが居るのですか!?』
『さすがは西隊長!』
『もしかして相手は西隊長のお付き合いされている方なのでは!?』
『ふ、福田!ドキドキであります!!』
…なんか騒がしくてよく聞き取れなかったが、なんか見過ごせない、てより聞き過ごせない言葉が混じっていたような。
『比企谷さん!プラウダ戦以来ですね、改めて大洗学園の優勝おめでとうございます!!』
「あぁ…まぁその、久しぶりだな」
電話相手が隊長である【西 絹代】に代わる。ようやくまともに話せそうで安心した。
『決勝戦の素晴らしい突撃の数々!我々知波単もあの試合には多くの事を学ばせて貰いました!!』
「…そんなに突撃ばっかしてたっけ?」
『はい!ヘッツァーによるマウスへの突撃やⅣ号あんこうチームによる試合を決めたティーガーへの突撃!どれも素晴らしい突撃でした!!』
あぁ…うん、そうね。あれも突撃といえば突撃にはなるのか、参考にはしない方が良いと思うけど。
『それで今日はどういったご用件でしょう?』
「一応は大洗の優勝記念って名目で近々エキシビションマッチの試合をやるんだが、そこに知波単学園の参加を頼みたい」
『なんと!そのような名誉ある試合に我々知波単学園を指名してくれるのですか!!』
「あぁ、もちろんだ」
…決して消去法とか他に選択肢が無かったとかそんなんじゃないのよ?そんな嬉しそうにされると罪悪感がヤバい。
「ただ知波単学園は大洗と、相手が聖グロリアーナとプラウダのタッグ戦になるんだが…後、なんやかんや俺が試合に出る可能性もあってだな…」
『おぉ!比企谷さんも試合に出られるのですか?それは楽しみです!!みんな!試合が決まったぞ!!相手はあの聖グロリアーナとプラウダ高校だ!!』
そしてこの即決である。…うーん、今まで相手選びにあれこれ悩んでたのはなんだったのか?マジ時間返して。
『なんと!それは本当ですか、西隊長!?』
『黒森峰に続いて聖グロリアーナとプラウダにまで突撃できるなんて!!』
『知波単学園始まって以来の誉れであります!我々は幸せであります!!』
『西隊長!早く…早く突撃の許可を!!』
『福田!もう我慢出来ません!!』
怖い怖い怖い。何この人達?猪突猛進な猪なの?獣の呼吸の使い手なの?
『突撃して潔く散りましょうぞ!!』
いや、散っちゃ駄目だろ…大丈夫なの?完全に相方選びミスった感が否めないんだが。
『まぁ待て、今回は大洗さんとの合同試合になる。勝手な突撃をすれば大洗の皆さんにも迷惑がかかるだろう』
そんな騒ぎまくる知波単生徒を西が一言で静かにさせる。…こういう所はさすが隊長だな。
『なので突撃は大洗の隊長である西住さんの許可を得てからだ!我々の知波単魂を存分に発揮する時が来た!!』
…いや、やっぱ駄目な気しかしない。
『任せて下さい!西隊長!!』
『全国大会優勝校の大洗と共に突撃できるなんて…歓喜であります!大戦果であります!!』
『大洗に突撃いたしましょう!!』
『玉田!突撃ッ!!』
『細見、負けじと突撃ッ!!』
『ふーむ…なにか間違っている気がしないでもないが、まぁいいか、よし!合同試合に向けて我々も更なる突撃訓練に移る!各員奮励努力せよ!!』
『『『『『了解であります!!』』』』』
いや!間違ってるから!!明らかにおかしい所あったよ?こっち向けて突撃してくるって宣言あったからね?
てか、さっきから電話越しなのに会話が丸聞こえである。こいつら全ての言葉の最後に【!!】付いてない?
「………」
電話を切るとなんか猛烈な疲れに襲われた。いや…もう普通に疲れたわ。
「えーと、比企谷殿?」
心配そうな表情をする秋山にどう返事を返していいかと一瞬、対応に困った。これにて大洗の相方は知波単学園に決まった訳だが、あんな調子で大丈夫なんだろうか?
「安心しろ、秋山」
だが、俺はグッと親指を立てて力強く頷く。
「知波単学園の事は西住に任せる」
「それは全然安心出来ないのでは!?」
…だってもう仕方ない、世の中基本的になるようにしかならないのだ。
あとはもう、エキシビションマッチに突撃して潔く散るしかないね!俺の中にも知波単魂が宿っていたとは…。
「…つーか悪い、また戦力的にかなりの糞マッチングになっちまった」
別に知波単学園が悪い、という話ではないが。知波単学園の主力戦車は九七式中戦車の新旧、通称チハだ。
戦車性能だけでいえば聖グロリアーナ、プラウダと比べてかなり劣る、むしろ下手すりゃうちより弱いまである。
いや、チハが嫌いな訳じゃないのよ?だってチハよ、ほら、なんとなく千葉と名前が似てるでしょ?やっぱ千葉最高なんだよなぁ、いっそもう茨城もチバラギに改名すべきでは?
「比企谷殿、大事なのは試合を楽しむ事ですよ?」
だが、俺のそんな心配を一蹴するかのように秋山は微笑んでみせた。
「いや、でも…あれだぞ、負ける可能性だってある訳だしな」
「もちろん皆さんで勝てるのが一番ですが、…今回の試合は負けてもいいじゃないですか」
「…だったな」
廃校のかかっていた大洗にとっては聖グロリアーナとの練習試合以来になる。負けても問題のない試合、それがエキシビションマッチなのだ。
「この大洗で聖グロリアーナやプラウダといった強豪校を相手に、皆さんと共に戦える。私にとってはそれだけで正に夢のようです」
「そっか…まぁその、良かったな」
「はい!!やっぱり戦車道は楽しむ事が一番ですから!!」
秋山は別に戦車道ガチ勢という訳ではない。いや、知識だけならガチ勢なんだろうが、彼女が一番に望んだものはきっと違う。
それは【戦車道を楽しむ】という。ただそれだけの、エンジョイ勢もびっくりな単純な願い。
しかしそれは、戦車道の無かった大洗学園で気の合う友達も出来ないぼっち生活をずっと過ごし、それでも戦車道に憧れ続けていた少女が長く険しい道のりを超えてようやく手に入れたもの。
同じく戦車が好きだったが戦車道を嫌い、友人関係なんざ早々に諦めてしまった俺とは違い、彼女は何年過ぎようと諦めなかったのだ。
戦車道ガチ勢な秋山こそ、究極のエンジョイ勢でもある。「お前と戦車道やるの、息苦しいよ」とか言われた何処かのゴリには到底真似出来まい。
「それにですよ、西住殿も一緒なんですよ!西住殿もですよ!!」
「いや、わかったから、何で今二回言ったの?」
それにしても君、本当に西住大好きだよね…。そっち方面にはまさかのガチ勢だったりしないよね?
だが、秋山はそんな俺の心配に気付いたのか気付いてないのか…一歩こちらに近付いた。
ふわりと彼女の癖っ毛が揺れる。秋山は気にしているらしいが、俺は別にその癖っ毛は彼女に似合っていて良いと思う…当たり前だが、パンチパーマしてるよりはずっとこっちの方が可愛いらしい。
「それに今は比企谷殿も居ますから、私は幸せなんですよ」
それもきっと、彼女が望んだ事の一つなのだろうか?…戦車道について楽しそうに微笑む彼女に答えを聞く資格を俺はまだ持っていない。
練習試合こそすれど試合に出たことのない俺だ。そんな奴の「戦車道が楽しい」、「戦車道が好きだ」なんて言葉になんの根拠がある?それはきっと嘘にもなる。
大洗学園が全国大会優勝した今でも…俺の根っこは変わっていない。自分でも呆れるくらい拗れているのもわかっている。
それでも俺は、まだ一度も「戦車道が嫌い」という言葉を訂正した事がないのだから…。
なんだかんだここまで続けてきていまだに戦車道が嫌いな八幡に決着をつけていないという…。
いや、忘れてたり自然消滅を狙ってた訳じゃないんですよ(震え声)