やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
しばらくは無理でしょうが例のウイルス騒動が収まったらまた行きたいなぁ…。
おそらく、今回の一連の番外編が劇場版に向けての最後の話になる…はずです。
大洗町は茨城県の海岸線のほぼ中央に位置する港町であり、苫小牧港との間には定期的にフェリーが運航してたりする。
なので海上交通において首都圏と北海道を繋ぐ役割もしており、案外北海道からの観光客も多い。
近隣には水戸市やひたちなか市もあるので大洗を拠点として、それら市街へと繰り出す事もできる。交通の上で大変便利な町なのだ。
というより、そもそも大洗町が茨城県でも有数の観光地なのだ。北関東では最大級な大洗サンビーチ海水浴場をはじめ、全国でもトップクラスの水族館、ゴルフ場、めんたいこパークと、観光や商業施設には事欠かない。
ただ、見る物が多いという事は場合によっては見たくても見れなかった、に繋がる事もある。時間は有限であり、無限ではない。
千葉県に存在する…可能性のある某有名テーマパーク、【デスティニーランド】だって1日で全ての乗り物、施設を制覇するのは不可能に近い。
立ち回りをミスれば一つ二つのアトラクションにしか乗れずに気付けばパレードの時間になり、パレードはパレードでろくに場所も取れないまま破局を迎えたカップルも0ではないだろう。
ここ、大洗においても大なり小なり観光スポットは多い。その全てを1日で制覇するのなら、いっそ流れ作業で施設には入らず「こちら~~~になります」とかで事務的に紹介していくのも手だろう。
「…いや、さすがにねぇか」
それもう大洗旅るーるぶ渡せば十分だし、俺いらなくなっちゃう。そもそも今回の話も大洗るーるぶあれば解決する気がしないでもない。
『…大洗の町、歩いた事あるか?』
『…そういえばあんまりないかも、大洗に行く時っていつもバタバタしてるから』
『…なら、決勝戦が終わったら、その、案内…するか?』
あの日、決勝前夜に西住と交わした大洗の町を案内する。という約束。
決勝戦の後は無名校の大洗の優勝という事でなにかと忙しく、終わったら終わったで今度は夏休みのエキシビションマッチでなにかと忙しく。こいつ、てか俺、いつも忙しいな。
とにかく、そのエキシビションマッチもようやく大洗、知波単、聖グロリアーナ、プラウダと参加校が決まり、後は細かい調整を残すのみ。
その調整も兼ねて大洗の学園艦は近々大洗町に帰港する事になっている。目的はエキシビションマッチの最終確認だが、確認だけなのでそう時間は取らないだろう。
確認作業には隊長として西住も参加するのだから…まぁ、約束を果たす、という意味ならこれ以上に都合の良い日は他にない。
それでもあの決勝戦の後からずっと、ここまで時間がかかった事には申し訳なく思うが。
しかし大洗を案内っていっても…どうしたもんか?
「お兄ちゃん、何さっきから唸ってるの、気持ち悪いよ?」
唸ってる場所がリビングだったのが悪かったのか、小町が「そのうーうー言うの止めなさい!!」と痛い物を見るような視線を向けてきた。
「小町、今度大洗に帰港する日あるだろ?どっか行きたい場所とかあるか?」
とはいえせっかくの機会だ、小町の意見を参考にしてみるのも手だろうし、なんなら小町も連れて三人で回るのも悪くない、むしろ最善なまである。
「んー…、せっかくの帰港なんだし、行きたい場所はいろいろあるけど、お兄ちゃんと行きたい場所はないかなぁ」
「俺が混ざると行きたくなくなるとか、お兄ちゃんへのマイナスポイントちょっと多くない?」
そんなにっこり微笑んじゃってとんでもない事をさらりと言っちゃうのね…。
「なになに?なにか買いたいものでもあるの?」
「いや、そういうのじゃなくてだな。その、観光…的な感じで」
「うーん…地元民が地元を見て回るのを観光って言うのかな?」
「それな」
東京都民は東京タワーを見に行かないというのは有名な話ではあるが、大洗が母港の大洗学園生徒にとって大洗は庭のようなものだ。
それもあってか大洗を案内するといってもいまいちピンと来ない、水族館とか小さい頃に家族で数回行ったくらいだろうし。
「いや、まぁその…、西住がまだ大洗の町をちゃんと歩いた事ないって言うから、良い機会だし案内するって話になってな」
西住が大洗に転校して来てから今日まで、わりと時間こそたってはいるが学園艦の性質上、どうしても学園艦での生活が大半になる。
実際、西住が来てから数えるくらいしか大洗には帰港していないし、その帰港した時も聖グロリアーナとの初練習試合の時だったり、冷泉の婆ちゃんのお見舞いだったり、生徒会主催の謎クイズ大会だったり、ホテルでアルバイト(意味深)だったり。
…よくよく考えると大洗に帰港する機会自体はわりとあるのに、マジで毎回バタバタしてんな。これはもう呪いでは?主に生徒会という名の。
「ほほ~う、ほうほーう」
「急に鳴くんじゃねぇよ、フクロウかよ」
「いやいや、これは嬉しくってこうなってるだけだよ!いやーあのお兄ちゃんがねー、小町は嬉しいよ!!」
【うちの妹は嬉しくなるとフクロウになるらしい】まーた新しいラノベ作っちゃったな。
「お兄ちゃんのデートを記念して今日はお赤飯だね!!」
「デートじゃなくて町の案内な。ほら、エキシビションマッチも大洗でやるんだし地形に詳しい方が戦いやすいだろ?」
「うーん、なんか訂正の仕方が恥ずかしがってる中学生みたいだなぁ…」
え?むしろ今の中学生ってそういう誘い文句でデートとかしてるの?小町にもそういう誘いあったりするなら、そいつを地獄へ案内してやるんだけど。
「いいお兄ちゃん、みほさんは小町的お姉ちゃん候補の中でもランキング上位なんだから、言ってみればランカーだよ!!」
「そういう本人に許可しない勝手なランキング付けは止めなさい、だいたい何を競ってのランキングだよ」
「お姉ちゃんポイントに決まってるでしょ。小町の小町による、小町の為のお姉ちゃんランキングなんだから」
「そこはせめてお兄ちゃんの為と言って欲しかったなぁ…」
小町の幸せは俺の幸せでもあるが、ご本人どころかお兄ちゃんもかっ飛ばしたランキングである。
「まぁ確かに…西住なら小町の事も幸せにしてくれるか、二人共、幸せにな」
どこぞの男子よりよっぽど任せられる、なんなら今から結婚式の祝辞を考えてもいい。
「お兄ちゃん、今小町は真面目な話をしてるんだけど」
うへー…とうんざりした顔の小町だが、事前にお姉ちゃんランキングなんて言い出している分、説得力がないんだが。
「みほさんなら優しいし、お兄ちゃんのクズさ加減もきっと受け入れてくれるよ!!」
「完全にダメ男にひっかかっちゃったパターンじゃねぇか。あと西住ナメんな、ダメ男を諦めてダメなまま受け入れるとかまずしないから、あいつ」
戦車道の試合とか見ててもわかるでしょ?あぁ見えてかなり容赦ない所あるから、逃げ場とか徹底的に無くしてくるまである。
「お兄ちゃんのみほさんへの信頼が重い…」
話を聞いた小町がドン引きしていたが、これは西住の容赦の無さっぷりに関してだな、うん。
「それにみほさんは実家が戦車道の家元だから玉の輿にも乗れるし、お兄ちゃんも夢のニート生活ができるよ、やったね!!」
「ちょっと小町ちゃん、一応言っとくけどニートじゃなくて専業主夫希望だからね、俺」
とはいえ、西住家にはお手伝いさんの菊代さんも居る訳だから、たぶん専業主夫は必要ないだろう。…不承不承ながらニート生活も了承せねばなるまいか。
「それになんと、まほさんも小町のお姉ちゃんになる!みほさんとまほさんのダブルお姉ちゃんだよ、お姉ちゃんに囲まれて小町的にも最強の布陣だね」
「お兄ちゃんは?ねぇ、お兄ちゃんはその布陣にいれてくれないの?」
あと小町は知らないだろうが、そうなるともれなく母住さんであるしほさんも付いてくる。ますます最強の布陣なんだよなぁ…。
てか、よくよく考えたら母住さんが居る時点でニート生活なんて無理に決まっている。【威圧】スキルのプレッシャーが半端ないからあの人。
「それでいうとまほさんもお姉ちゃんランキング上位だし、みほさんも小町のお姉ちゃんになるしで、さすが西住流だよ!!」
「とりあえず西住流って言っとけば、それっぽく聞こえると思ってない?」
まほさんもランキング上位とはやはり西住流強すぎでは?というか西住姉妹が強すぎるのでは?西住しか勝たんと?
「でもお兄ちゃん、将来は置いといてもちゃんとエスコートしないとダメだよ、みほさんも楽しみにしてると思うし」
「…わかってる」
てか、だからこうして悩んでいる訳で。
「ふふっ…」
小町がそんな「うーうー」と悩む俺の顔を見て頬杖ながらも微笑む、さっきの痛い物を見る視線とは違い、どこか楽しそうに。
「…なんだよ?」
「んーん、お兄ちゃんが幸せで小町はなによりなのです」
そのままにぱー☆とでも言いたげだ。苦しむお兄ちゃんが幸せそうとか、ここが雛見沢なら疑心暗鬼になりそう。
「そんな悩めるお兄ちゃんに小町が取って置きのデートスポットを紹介してあげちゃうよ!抑える要所はきちんと抑えるのが戦車戦の基本!!みたいな?」
「いや、町案内が目的なんだが…」
とりあえず適当に戦車道に結び付けたいのはよくわかったが、今回の目的はそもそも町案内な訳で…。
「あぁうん、そういう言い訳もういいから。てか、お兄ちゃんの町案内とか事務的でつまんなそうだし、旅るーるぶで充分じゃない?」
バッサリだった、バッサリのマジトーンだ。いや、確かにそのやり方も一度考えてた手前何も言えないんだけど。
「とにかく、小町がおすすめするのはボコミュージアムだよ!お兄ちゃん!!」
「…なにそれ?」
大洗に住んで十六年強になるが一度も聞いたことのない施設名が出てきた。…マジでそれなに?
「ボコミュをご存じないの?」
「ご存じねぇもんを勝手に略すな。ボコってあれだろ、お前の好きな包帯熊のキャラクター…」
「ボコだよ、包帯バージョンだけじゃなくて松葉杖バージョンとかいろいろあるんだから」
二度と間違えんな殺すぞ?とでも言わんばかりの剣幕である。そもそも別に名前間違ってないのに…。
「いや、西住がボコ好きなのも知ってるが…なんでそこでボコなんだよ?」
「大洗にはボコミュージアムがあるんだよ!!」
え?なにそれ初耳、そもそもあの包帯熊にミュージアムがある事も知らなかったが、大洗にそんな施設あったの?
いや、地球にはモンストがあるんだし、大洗にボコミュージアムがあっても不思議じゃ…いや、不思議だけどね。なんで大洗に?ここボコの聖地だったの?
「まぁ、小町も最近知ったんだけど」
「お前もご存知なかったんじゃねぇか…」
そりゃそうだ。小町だってボコ好きだし、近場でそんな施設があると知っていたら行かない訳がない。
「それ、西住も知らなかったんだろ?どこ情報だよ」
加えて、西住の口からもボコミュージアムなんて名前は聞いたことがないので知らないはずだ。西住も小町も相当なボコマニアのはずだが、その二人が知らなかった施設というだけでもう胡散臭い。
「小町とみほさんは今、ネットでボコ仲間を募集してグループを作ってるから、そこで知り合った人だよ」
「情報ソースがネットかよ、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫、ボコが好きな人に悪い人は居ないから」
毎回ぼこぼこにされる熊のキャラクターが好きな人に悪い人は居ないとか、ちょっとよくわからない理論だなぁ…。
「ちなみにハンドルネームは『アリス』ちゃん、みほさんと小町とアリスちゃんの最強ボコグループだよ!!」
むしろネットでボコ仲間を募集して三人しか集まってない悲しさに、しかも内二人が顔見知りという虚しさに気付いて?小町ちゃん。
「…小町、ネットでやり取りする分には目を瞑るが、向こうがもし会いたいとか言い出したら絶対止めとけよ」
いや、顔見知りならいい。西住と小町がボコトークでイチャイチャするのも見ていて微笑ましいだろう。
だが、『アリス』とかいう謎のメンバーが胡散臭さすぎる、いかにも狙ったハンドルネームだ。
「えー…でも貴重なボコ仲間だよ。アリスなんてハンドルネーム付けるくらいだし、きっと可愛い女の子だよ!!」
いや、『アリス』なんていかにも可愛らしいハンドルネーム付ける奴は中身おっさんな気がしてならない。オフ会とかにホイホイ付いてっちゃうと小町と西住が危険だ。
「ボコのライブチケットが欲しい?ちょっと取りに行こうか?」とか甘い言葉に引っ掛かってハイエースとかに乗っちゃう事態は避けなければ。
普段はそうでもないのにボコが絡むと西住も小町もちょくちょくテンションがおかしい…やはりあの包帯熊のコンテンツを放置するのは危険なのでは?
「まぁ、参考にしとくわ…」
「あっ、そうそう、アリスちゃんもボコミュージアムにはよく行ってるって書いてあったし、もしかして会えちゃうかも知れないよ?」
「小町、お前絶対一人でボコミュージアム行くなよ。誰かと行くにしても防犯ブザー携帯しとけ」
…とりあえず、怪しいおっさんが居ないか警戒する意味も込めて、ボコミュージアムとやらには行った方が良さそうだ。
生徒会主催の謎クイズ大会やホテルでアルバイト(意味深)が気になる人はガルパンドラマCDを聞こう!!