やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
しかしそこはやはり劇場版をお楽しみに(なお、完結がいつになるかは不明である)。
後付け?いえ、もちろん伏線でしたよ。例えその時は劇場版を書く想定すらなかってもこうして日の目を見ればそれは立派な伏線になるって偉い人が言ってました。
「なぁ、聞いたか?あの噂」
「あぁ…ここが閉館するって話か?それいつも言ってるよな」
「そりゃ夏休みだってのにこれだけ人居ないとなぁ…、今日なんて大洗の学園艦が帰港してんのにこんなだし」
それは私にとって、天地がひっくり返るくらいの話だった。
白ネコと青ネコの二人が話しているのを偶然耳にしてしまった私はその場からしばらく動けなかった。
今までもボコミュージアムに来たとき、私以外のお客さんを見る事は少なかった。…正直、騒がしいのは苦手だし、ボコを一人占め出来て嬉しいと思っていたけど。
でも…ここが閉館になったら?もうボコには会えなくなるのかな…?
『おう!よく来やがったなお前たち!オイラが相手をしてやろう!!』
「ボコ…」
いつものように私を出迎えてくれるボコ、他のボコに比べてちょっぴり細めなそのボコは勇敢にファイテングポーズを私に見せてくれる。
「…ボコは、どんな相手でも絶対に立ち向かうよね」
でも、ここがもし無くなっちゃったら…ボコはもう戦えなくなるの?
「………」
ふと、涙が込み上げてきそうになる。…そんな事ない、ボコはどんな時でも立ち上がる、だって…それがボコなんだから。
「早く入ろう!!」
「お、おう…」
「!?」
ふと、声が聞こえて慌てて隠れてしまった。…泣いている所を見られたくなかったのもあったんだと思う。
「…お客さんだ」
男の人と女の人、女の人はとても嬉しそうにボコに駆け寄り、男の人は少し気だるげにそれに付いていく。
「生ボコだぁ…可愛い!!」
女の人の方はボコに笑顔を向けてくれる。…良かった、私以外にもボコが好きな人はちゃんと居る。
そう思ったら少しだけ心が落ち着いた。…そういえば、あの男の人には見覚えがある。
立場上、人の顔は覚える事を心掛けている事もあるけど、あの男の人の事はよく覚えている。
ーーー
ーー
ー
それは少し前の話。ボコのグッズが当たるクジがコンビニに出た、しかもA賞はボコパジャマ。…着てみたい。
でも調べてみたらボコのクジをしているコンビニはとても少なくて、ようやく見つけたのは大洗という学園艦の中のコンビニだった。
…中高校生は学園艦と呼ばれる船の上での生活が主になるらしい、私にはまだ経験のない事だった。
でも…ボコのクジがあるなら。と…チームのメンバーに無理を言って大洗の学園艦に連れていって貰った事がある。
慣れない船の上に少し酔ってしまいそうになって、でも…ボコの為に頑張ってそのコンビニを見つけて。
ドキドキする心を必死に抑えつつ、ボコのクジの購入券を買ってレジに並んだ。
ボコ、今迎えに行くからね!!
「おめっとーございまーす、A賞のアニマルパジャマッスwww」
私の一つ前、先にレジに居た人がクジを引くとコンビニの店員さんはボコのパジャマをその男の人に渡した。
「…あっ!」
「…ん?」
思わず声が出てしまって、持っていたクジの券も落としてしまって、男の人がこちらを振り返っていた。
少し目付きの鋭い人で、普段の私だったらたぶん、怖くて逃げ出していた…と思う。
「ボコが…盗られた」
でもそれ以上にショックな出来事だったからそんな事考えている暇もなかったんだと思う。
「完全にしてやられた…、私の負けだ」
だって、A賞の景品は一つだけ。ボコパジャマはもう無くなってしまったのだ。
…でも、ボコのクジを引いたって事は、この人もきっとボコの事が好き、だと思うから。
「その子を大切にして欲しい…」
同じボコが好きな仲間なら…きっと大切にしてくれるはず。
「え?お、おぅ…」
大丈夫、他にもボコのクジをやっているコンビニはあるはずだし、きっと今度はボコを迎えに行けるんだ。
…ボコのクジをやっているコンビニのメーカー自体がなくなっちゃたのは、それからすぐだった。
ーーー
ーー
ー
「やっぱり、あの人もボコ好きだったんだ…」
良かった。あの子…元気にしてるかな?
…聞いてみたい。けど、話しかけるのはやっぱりちょっと恥ずかしい。
二人はそのままボコミュージアムを見て回るみたいで、私はなるべく二人に見つからないように。
そして始まった、ボコのショー。
「ボコ!頑張れー!!」
「頑張れ!ボコ!!」
「がんばえー!!」
『きたきたきたー、みんなの応援がオイラのパワーになったぜ、ありがとよ!!』
もちろん私と、そして、やっぱりあの二人もショーを見に来てくれていた。
『さぁ、お前らまとめてボコボコにやっつけてやる』
私達三人の応援で立ち上がったボコは戦っていた相手に向かう、でも…やっぱりやられちゃう。
『また負けた…、次は頑張るぞ!!
それでもボコは諦めない。いつも前を向いていて、次に向かって頑張っている。だって、それがボコだから。
「…私も頑張らないと」
そんなボコに勇気を貰ったから、だから私も、恥ずかしいけど頑張ってみようって思えた。
「…あの子が元気か、聞いてみよう」
二人はそのままボコショップへ、私もチラチラとその機会を伺っていたら。
「…激レアのボコだ」
たまたま、残り一つしかない限定の激レアなボコを見つけた。
自然と手が限定ボコに伸びる、そして…。
「あっ…」
女の人の方が、私と同じ激レアボコを手に取ろうとしていた。
…どうしよう、また…ボコが盗られちゃうのかな?
「いいのいいの、私はまた来るから」
でもその女の人は笑顔でそう言って、私に激レアのボコを渡してくれた。
お礼を言いたくて、でも、また…逃げちゃった。
…だって。
『あぁ、ここが閉館するって話か?』
白ネコと青ネコの言っていた事…本当なのかな?
笑顔でまた来るって言って、私に激レアボコを渡してくれたお姉さんに申し訳なくって。
やっぱりボコはすごい…だって、何があっても逃げないもん。
…だから、私だって今度は!!
ちょうど、お姉さんと別れた男の人が椅子に座って何か読んでいる、良かった…一人ならまだ声をかけやすい。
「あの…」
「あ?」
私が話しかけると男の人は読んでいた本を慌てて閉じる。…やっぱり、目付きが鋭くて怖い。
「えっと…」
…怖いけど、でも、この人もボコが好きな人だ。あの子も大切にしてくれているはず。
そしたら、これをきっかけにさっきのお姉さんと、三人で一緒にボコのお話ができるかもしれない。
もしかしたら…友達になれたり、するのかな?
「あの子…元気にしてる?」
「…悪い、あの子って誰?」
でも、聞こえてきた返事は私が思っていたものとは全然違うもので、ショックで何も言えなくなって、また逃げてしまった。
ボコ…大丈夫だよね?ちゃんと元気でやってるよね?
「そうだ、午後のショー…もうすぐ始まる」
ボコの立ち上がる姿を見れば、きっとまた勇気を貰える。
ショーのステージに行くと…さっきのお姉さんだけで、男の人の方は居なくなっていた。
「ボコー!!」
また不安になりながら、それでもボコのショーが始まるのでボコの応援の為にステージに集中する。
でも…。
「ボコ…どうしたの?」
ボコの様子がおかしかった、喧嘩の売り方もいつもと違って、ファイテングポーズもシャドーボクシングもどこかぎこちなくて。
…いつものボコじゃない。
「ボコ…」
閉館、私に激レアのボコを譲ってくれたお姉さん、ボコパジャマ、様子のおかしいボコ。
いろいろな考えがぐるぐる回って。
「ボコ、頑張れー!!」
私はそれを全部忘れる為に、必死になって応援した。…ちょっと泣いていたかもしれない。
「頑張れ!ボコ!!」
お姉さんも応援してくれる。私達の応援で復活したボコはいつも通り…。ううん、いつもよりなんだか強く見えた。
『また負けた…、次は頑張るぞ!!』
…それでも、やっぱり報われない。だって、それがボコだから。
「ボコー!きっと明日は勝てるよ!!頑張って!!」
でも、今日が駄目でも明日がある!戦える場所があるなら、ボコは何度だった立ち上がる!!
だって、それがボコだから。
…結局、男の人の方は最後までショーを見に来る事がなかった。
ーーー
ーー
ー
「ボコ、大丈夫かな?」
ショーが終わった後、様子のおかしかったボコが不安になった私はステージ会場の近くをうろうろとしていた。
もしかしたら、どこかでボコに会えるかも、そんな期待もあったんだと思う。
…そして、聞こえてきた。
「これ、今日のバイト代、ここだけの話だけど…少し多めにね」
「…いや、それは」
「駄目よ、仕事をした分のお金はきちんと貰わないとね」
…よくわからないけど、お金のやり取りをしてるのかな?
「今日は本当に助かりました、また機会があればよろしくね」
「…どうも」
お金を渡していたのは…さっきボコと戦っていた相手の牛。
そして、そのお金を受け取っていた人は、私にとって信じられない人だった。
「…なんで」
思わず声が出てしまい、二人は私に気付いたみたいでこっちを見ている。
「…なんで、ボコをいじめていた相手からお金を貰ってるの?」
そのお金を受け取っていたのは、あの男の人。
あの時のボコを知らないと言って。結局、ショーにも見に来る事がなかった、あの男の人だ。
『お、お嬢ちゃん、これはな…』
「………」
また、男の人が鋭い目で私を見てくる。…怖い、けど、今度は逃げちゃ駄目だ。
「もしかして、さっきボコの様子がおかしかったのって…」
さっきのショー、男の人が居なくなって、そしたらボコもいつもとちょっと様子が違ってた。
だとしたら…。
「…はっ」
男の人は少し微笑む、なんだか寂しそうに見えたけど、それはきっと気のせいだ。
「あの熊の様子がおかしかったって?そりゃそうだ、俺が事前にちょっと痛め付けてやったからな」
「…なん、で?」
だって…この人もボコが好きなはずなのに、なんで?なんでなんでなんで?
じゃあ…なんであの時、ボコのクジを引いたの?あの時のボコは…どうなったの?
「…だからこうして、バイト代貰ってんだよ。しかしあの熊も毎回懲りないな、何度ボコボコにしても立ち上がってくる」
「ボコだよ!!」
私は声を張り上げた、自分でも他人の前でこれだけ大声が出せた事に驚いた、きっとそれだけ怒っていたんだ。
「あの熊じゃない…ボコだよ!ボコはあなたなんかには絶対負けない…。ううん、例え何度やられたって絶対に立ち向かう!だって…それがボコだから!!」
溢れでてくる言葉を抑える事なく伝えると、私はその場から走り出した。
…ボコが好きだと思っていたのに。
お友達になれるかもって思ってたのに。
「わっ!」
走っていて、途中…私に激レアボコを譲ってくれたお姉さんとすれ違った。
「…あ」
…この人も、あの男の人と一緒なのかな?でも、この人は今日、とても楽しそうだったし、ショーだってあんなに一生懸命応援してくれた。
それに、激レアのボコを譲ってくれた優しい人だ。
「…あの男の人に騙されちゃ、駄目」
「えぇ!?」
いきなりで驚いたお姉さんの返事も聞かず、また走り出す。
ボコミュージアムを飛び出した私は、入り口で立ち止まり建物を見る。
ボロボロの建物はボコみたいで、私はそれも気に入っていたけど。
「もう…無くなっちゃうのかな、会えなくなっちゃうのかな」
もう、立ち上がれないのかな…ボコ。
「…違う、弱気になっちゃ駄目だ」
ボコだったら…絶対諦めたりしない。だってボコは、どんな困難でも、いつも勇敢に立ち向かう姿を私に見せてくれる。
だったら…私に出来る事は。
「…ボコが何度でも立ち上がれる為に、私が守ってあげるんだ!!」
閉館からも、あの男の人からも、絶対に…。
「私が、守ってあげるからね」
ーーー
ーー
ー
「ほら、今日港についてた学園艦、あれ大洗学園よ」
「あぁ、そういえば今年の高校生戦車道大会の優勝校だっけ?」
「私の母校に勝っちゃうくらいだもの、それくらいして貰わないと、それにしてもあの一回戦、言いたい事は山ほどあったわ」
ボコミュージアムから少し離れた場所で三人の女性が談笑をしていた。
年は大学生。三人の話は大洗学園、その戦車道チームの話題だった。
「サンダースに勝った時も驚いたけど、その後プラウダ、黒森峰にまで勝っちゃうくらいだもの」
「まぁ、あの戦力でよくやるよなぁ、そういえば…大洗の隊長って」
「えぇ、あの西住流の娘さんね。さすがは西住流…といった所かしら」
「ま、それでもうちの隊長には及ばないわ」
「えぇ、もちろん」
「当たり前よ、だって私達の隊長は…」
「西住流と双璧とも呼ばれる」
「変幻自在なニンジャ戦術」
「日本戦車道ここに在り、と知らしめた。島田流戦車道の後継者…」
「アズミ、メグミ、ルミ、さっきからなんの話をしてるの?」
「「「愛里寿隊長!?」」」
三人が驚いて声をかけてきた少女を見る。
この少女こそ、戦車道の流派の中でも西住流と双璧をなす戦車道流派。
【島田流後継者、『島田 愛里寿』】
「今日は三人共、わざわざ付き合ってくれてありがとう」
「いえ、私達は隊長の為ならいつでもお付き合いします」
「隊長、ボコミュージアムはいかがでした?」
「ボコさん、元気にしてましたか?」
「…ボコは」
それだけ言うと愛里寿は暗い表情になり、言葉をなくす。
「えっ?ちょっと…隊長どうしちゃったのよ?」
「し、知らないわよ。行く時はあれだけ楽しそうにしてたのに…」
「…何かあったのかしら?」
そんな愛里寿の様子にひそひそと話ながら慌てる三人組。
「…大丈夫、私が守ってあげるから」
そんな三人の様子も知らず、島田 愛里寿は先ほどボコミュージアムで譲って貰った激レアのボコに向けて決意を込めてそう言葉にした。
ちなみにボコのクジをソシャゲで例えるならガチャでどれだけ回しても出なかったキャラを他人が一発で引き当てて「いや、使わんし」って売却するようなもの。…こりゃ戦争ですわ。
ボコのクジをしていた、無くなってしまったコンビニ?そりゃサークル○サンクスですよ。