やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

22 / 205
今回の最後の方の展開はこのクロスで書きたかった展開の一つだったりします、その為に俺ガイル原作とほぼ同じ展開ですが麻子さんの説得にも八幡を活躍させました。
でも、あれって誰が撮ってるんでしょうね?沙織さんが怒るのも珍しいですし。


そして、大洗学園あんこうチームが結成される。

ーさて、翌日である。

 

校内の模擬戦も終え、戦車訓練に励む彼女達から一人離れ、俺は目的の場所へと向かった、まぁ本格的に戦車訓練が始まってしまえば俺に出番はないしな。

 

「…ZZZ」

 

やはりというか、冷泉は今日も変わらず、その場所で眠りこけていた、なんと羨ましい、こちとら今から仕事をせねばならんというのに。

 

今回も西住の時と同じく、下調べはばっちりだ、事前にある程度冷泉の事は武部に聞いている。

 

冷泉 麻子、成績はなんと学年主席、普段の授業態度がこれで学年主席とは、やはり天才か…。

 

ただ低血圧で朝に弱いらしく、特に午前中とか酷いらしい、さしずめ午後からの天才と言った所か。

 

余談だが、俺は国語の成績だけで言えば学年2位である、うん、ずっと2位だったけど一位は冷泉だった訳ね、こりゃ敵わんわ、数学?何それ美味しいの?

 

「…む?」

 

俺が近付いた事に気付いたのか、冷泉が目を覚ましてアイマスクの変わりにしていたのか、顔に乗っけていた本を取る。

 

良かった、起きてくれて、あのまま寝られてたら起こすのも何だし無駄な時間をとる所だった。

 

「…何だ?サボりか」

 

「あいにくと仕事だよ、そっちと違ってな」

 

いや、本当にこの格差は何?早く冷泉にも社畜ライフを堪能させねば(使命感)。

 

「…戦車道ならもう断ったぞ」

 

「察しが良くて助かるな」

 

まぁ昨日西住や武部達に声をかけられていての今日だしな、そこに俺が出てくればそりゃ察するか。

 

「一応聞いとくけど、理由は?」

 

「もう書道を選択しているからな」

 

「違うな」

 

それは違うよ!と思わず弾丸を論破するっぽく反論を返してやる。

 

「本当に書道がやりたいなら、授業中、こんな場所で堂々とサボらんだろ?」

 

「…面倒だからな、何よりも寝る時間がなくなる」

 

…自分の欲望に忠実で大変よろしい、まぁうちの戦車道は出来たばっかなのもあって選択授業の中じゃ一番アクティブに活動してるだろう。

 

書道かぁ、俺は去年は仙道選んだけど冷泉の様子を見てると相当緩そうだな、よし、来年は書道を選択しよう、そうしよう、あの会長が許してくれるなら。

 

「そういう訳で私は寝る、私の眠りを妨げるな」

 

「どこのラスボスだお前は、今日は交渉に来たんだよ」

 

「交渉…?」

 

このままほっておくと本当にさっさと眠りかねないのでこっちは早速カードを切る事にした、つーかよく男子の前で無防備で寝ようとするよね、相手が俺で良かったと思えよ。

 

ヘタレ?違っげーよ、紳士だよ!!

 

「必修選択科目の説明会の時に説明があったろ?戦車道受講して好成績をおさめたら素敵な特典がついてくるって奴だ」

 

「…ほとんど寝ていた、というかあの映像、砲撃の音がうるさかったぞ」

 

本当にどこまでもマイペースな奴だな。

 

「私にとって特典は寝る事だ、成績がいくら上がった所で興味がない」

 

話はそれだけか、とでも言うように冷泉は俺から顔を背けると横になる。

 

ふっ…、甘く見ないでもらおうか、学年主席様にそんなバレバレの釣りエサをこちらが用意する訳がないだろ。

 

大物釣りをするなら、相手に合わせてエサだって変えるのは当然だ、今回は冷泉に合わせた極上の物を用意してある。

 

「…今までの遅刻の精算、つまりチャラ、と言ったら?」

 

「…何?」

 

予想通り、冷泉は再び起き上がると俺の顔を覗きこんでくる。

 

「今までの遅刻を全部なかった事に出来るんだよ、生徒会長の許可はもう取り付けてある」

 

というかこれ、本当は許可されるか心配だったんだけどうちの会長は「んー、いいんじゃない?」と二つ返事でOKを出した、いいのかよ、うちの学園こんなんで。

 

「いや…、そど子が認める訳がない」

 

そど子…?あぁ、うちの風紀委員の園みどり子さんか、遅刻ばかりしている冷泉とは犬猿の仲といったところだろう。

 

「あいつは規則にうるさいからな」

 

「その事なら問題ない、もちろん風紀委員も了承済みだ」

 

「…あのそど子がか?よく認めたな」

 

「簡単だ、会長が決めた以上、これも立派な規則だ、規則を守るのが風紀委員だろ?って理由つけて納得させた」

 

「何て屁理屈だ…」

 

冷泉は少し呆れたように言うが、俺から言わせてもらえば屁理屈も立派な理屈だ。

 

「さて、ここからが本番だ、冷泉、お前はこのままじゃ留年だ、いくら成績が良くても間違いなくな」

 

「うぐぬ…」

 

いや、そこで俺に睨まれても、これ、間違いなくお前の自業自得だからな。

 

勉強は学年主席、戦車に乗らせればマニュアルをざっと見たくらいで乗り回す、一見チートクラスの冷泉だが、その弱点は先にも述べた通り、低血圧で朝に弱い。

 

簡単に言えば遅刻の常習犯なのである、それも留年が視野に入るほどの。

 

「それを戦車道で好成績を納めればチャラに出来る、悪い話じゃないだろ?」

 

「うぐぬぬ…」

 

冷泉の唸り具合を見るにもう一押しだな。

 

「武部とは幼馴染だったな?いいのか、このままじゃあいつの事、沙織先輩って呼ぶ羽目になるぞ」

 

「沙織…せん、ぱ」

 

露骨に嫌な顔をする、まぁ幼馴染をそう呼ぶなんて屈辱でしかないだろうな、しかも武部を。

 

「んで、戦車道には一年の奴らも居るが、そいつらは同じクラスに居るお前を腫れ物に触るような扱いで先輩呼びしてくるまである」

 

やったね!もう1回遊べるドン!!いや、俺からすれば高校生活繰り返すとか本当に無理だわ。

 

いや…待てよ、発想を転換すれば留年して高校生活を延長出来ればその分社会に出て社畜生活を送るまでの生活も延長される訳か、あれ?もしかしてちょっと悪くないかも?

 

「…仕方ない、その口車に乗ってやるとするか」

 

冷泉は諦めたように溜め息を一つつくと無表情のまま、俺と向き合った。

 

「やろう、戦車道」

 

「こちらとしても助かる」

 

冷泉は留年の危機を回避し、俺は無事に仕事を終えられる、ウィンウィンだね♪

 

「それに…、比企谷さんには借りがあったからな」

 

借り?何か貸してたっけ?昔からぼっちの俺は誰かに物を貸す事なんて滅多にないのだ、たまに貸せば借りパクくらうし。

 

逆に恨みの方の借りを返したいやつならいっぱい居る、もし俺が本気で借りを返そうと思ったら学園艦一つ消えるレベルだからな、俺の寛大さに感謝して欲しいものだ。

 

「…昨日の朝の話だ」

 

「ん?あぁ、あれか…、変な所で義理堅い奴だな」

 

確かにこいつのせいで反省文書かされる羽目になったが、覚えていたのか。

 

「…おばぁにしつけられたからな」

 

「おばぁ…?」

 

「…なんでもない」

 

そういや武部にちらりと聞いたくらいだが、冷泉の家族構成は…、いや、冷泉が戦車道やるって言ってるならもうそこはいいか。

 

「さっさと…ゆくぞ」

 

冷泉は立ち上がると本をさっさと片付けて俺にそう促してくる。

 

「…どこに?」

 

「…戦車道、やるんだろ?」

 

あらら、やるとなれば意外とやる気満々なんだな、俺としてはもうちょっとここでサボってもいいんじゃないかと思うんだけど駄目ですか?

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…という訳で今日からよろしく頼む」

 

冷泉を西住達Aチームの所まで連れてくる、彼女達四人は驚いた顔をしているが俺は今回は楽勝だと言ったはずだ。

 

「麻子ー!!」

 

「暑苦しいぞ、沙織」

 

武部が感極まって冷泉に抱きつく、五十鈴は華道の家元で花の匂いとかに敏感らしいけどここら辺で百合の花の香りしない?

 

「どうやって冷泉殿を説得したんですか?」

 

「…比企谷さんに借りがあったからな」

 

「まぁ、簡単にいえば遅刻のチャラをエサに釣った」

 

「…ぐぬぬ」

 

冷泉が抗議の視線を向けてくるが知ったこっちゃないな、自業自得だ。

 

「ねぇ!これで皆揃ったんだし、せっかくだから記念に写真撮ろう!!」

 

「いいですねぇ、撮りましょう、みほさん」

 

「…え?写真?」

 

「わ、私もいいんですか?」

 

「もちろんだよ、ゆかりん、一緒に撮ろ!!」

 

「私は面倒だからパス…」

 

「駄目、麻子も撮るよー!確か戦車の中にカメラ持ってきてたからちょっと待ってて」

 

はぁ…、どうして女子って何かに託つけて写真撮りたがるんだろうな?クラスの酷い奴は昼飯の度に弁当を撮ってる奴まで居る、サラダ記念日なの?

 

「はい、比企谷」

 

「…はい?」

 

戦車の中から元々持ち込んでたらしいデジカメを持ってきた武部はそれを俺に渡してくる。

 

「はい?って…、写真、撮ってよね」

 

いつの間にかカメラマンにされてた訳だが…。

 

「はいはい…」

 

もうさっさと撮って終わらせようとカメラを掲げるが、武部はむっとした表情をした。

 

「ちょっと待ってよ、女の子には色々と準備があるの!!」

 

そう言いながらコンパクトミラーを持ち出すと自分の髪をいじり始める、えー、マジかよ。

 

「〜♪」

 

これは時間がかかりそうだなぁ、もう帰ろうかと思ってるとやけに上機嫌で鼻唄混じりの笑顔を見せる西住と目が合った。

 

「嬉しそうだな…」

 

「うん!戦車のチームで写真なんて撮るの初めてだから、なんか新鮮で…ちょっと嬉しいな」

 

「まぁ黒森峰があんな感じじゃそうだろうな」

 

黒森峰で写真撮るってなったら戦車の前で並んで皆敬礼してるような写真しか想像出来ない、記念…、というか記録に残す為の写真だろう。

 

「…んで、武部はまだ準備終わんないの?」

 

「えー?だってやっぱかわいく写りたいじゃん?」

 

今もまだコンパクトミラーで髪をセットしている武部にさすがにげんなりしてくる、そんな気合い入れてもセットした髪なんてすぐ崩れるだろうに。

 

「あーはいはい、もう充分かわいいから心配すんな」

 

…撮るならさっさと撮らせてくれ、帰れないだろ。

 

「…何だよ?」

 

見ると武部は髪セットの手を止めて、ぼーっとした表情で動かない。

 

「な、何でもない!じ、じゃあ撮ろう!!」

 

コンパクトミラーを片付けるとやっと五十鈴と秋山と冷泉の居る所まで行ってくれた。

 

「みぽりーん!みぽりんも早く!!」

 

「うん!…あ、あの、比企谷君」

 

武部が手を振りながら西住を呼び、西住もそれに答え、四人の所に行こうとする前にくるりと反転して声をかけられた。

 

「私はどうかな?…変じゃない?」

 

「…変な所があれば言うし、ないからさっさと撮りたいんだよ」

 

心配そうな表情でそう聞いてくるが、生憎、洒落た返しも思い付かない、そもそも特に指摘する所なんてないし。

 

「あはは…、じゃあ、お願い」

 

軽く笑いながら西住も皆の所に行き、五人が並んだ、やれやれ…ようやく写真が撮れる。

 

「…武部」

 

「どうしたの?」

 

「…使い方がわかんないんだけど?」

 

普段写真とか撮らないぼっちにはちょっとハードルが高かった…、悲しい。

 

「…もう、それなら先に言ってよ」

 

いや、有無を言わさずカメラを渡して来たのはそっちなんだけど…。

 

武部が近付いてきてカメラを色々といじってくれる、何故かレンズの所までばっちりと覗いて。

 

「はい、バッチリ、あとはここを押すだけだよ」

 

「あいよ」

 

カメラのセットを完了した武部は小走りに四人の元に戻って…、道中、派手にずっこけた。

 

「だ、大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫、ちょっと比企谷!今の撮ってないよね!!」

 

心配する西住達に顔を赤くしながら答えると最後は俺に向かってそう言って指をさしてくる。

 

「あ、安心しろ、撮ってないから」

 

…本当は派手にこけたせいで一瞬スカートの中が見えたけど事故だ事故、カメラには写らないが俺の心には焼き付けておこう。

 

「…いいから、もう撮るぞ」

 

西住を真ん中に横一列に並んだ彼女達を写真に納める。

 

さっきの失態からか、恥ずかしそうに顔を赤くしている武部。

 

相変わらず、眠そうな顔の冷泉。

 

彼女らしい柔らかい表情の五十鈴。

 

多分、あんまりこういう機会に慣れてないのだろう、少し照れている秋山。

 

そして…そんな彼女達に囲まれ、嬉しそうに微笑む西住。

 

俺にとってはなんでもない、ただの集合写真の一つであろうこれは、彼女達にとってはかけがえのない思い出の一つだったりするのだろうか。

 

たぶん、これが青春という奴なんだろう、まぁ青春が何なのかは俺にはわからんけどね。

 

「はいよ、終わったぞ」

 

写真を撮り終え、武部にカメラを渡す、さて、戦車訓練の邪魔しちゃ悪いし、とりあえず行くか。

 

「え?待って、比企谷君」

 

そう思って彼女達から背を向けると、腕を西住に掴まれた。

 

「…どーした?」

 

「えと、その…、写真、比企谷君も一緒に撮ろう?」

 

「いいですね、次は比企谷さんも一緒に写りましょう」

 

「は?いやいや、撮られる理由もないし、遠慮する」

 

「いちいち理由つけないと写真も写れないんだ…」

 

いや、武部だってさっきチームメンバーが揃った記念にっていってたろが。

 

「このメンバーが揃った記念だろ、だったら部外者の俺は写る必要がない」

 

「ううん…、比企谷君は部外者じゃないよ、だって…この戦車チームを集めたのは比企谷君だから」

 

俺の返事に西住は首を横に振ってそう答えた。

 

「…違うな、確かに冷泉を連れて来たのは俺だが、後のメンバーはお前だからこそ集まったんだよ」

 

武部や五十鈴はもちろん、秋山だってたぶんそうだ、西住が居るからこそ、このチームは始まったのだ。

 

「じゃあ…その私に戦車道を始めさせたのは?」

 

「………」

 

言葉に詰まる、西住のやつ、なかなか痛い所をついてくるな、少し前の引っ込み思案でおどおどしてた彼女とは別人のようだ。

 

いったい誰の影響だ?武部か?武部だろ、間違いないな。

 

つーか、あれ?じゃあAチームって総括すると比企谷八幡被害者の会だったりするの?大丈夫かな俺、後ろから刺されたりしない?

 

「様子が変だぞ、変な事でも考えてないか?」

 

「え?いや…別に」

 

冷泉のやつ、眠そうな顔して妙に鋭いな…。

 

「なので比企谷君も私達Aチームの一員です、そして、えと…車長は私なので、指示に従ってもらいます」

 

「…車長の指示なら、まぁ、仕方ないか」

 

仕方ない…のか?うん、仕方ないのだろう、日頃生徒会にこき使われていた社畜根性が上からの指示を拒まないのだ、おのれ生徒会。

 

観念し、潔く五人の所に入っていく、場所は…まぁ隅っこだな、ここが一番落ち着くし。

 

「それじゃあカメラをオートにしてっと…、改めて撮るよー!!」

 

カメラをセットした武部が戻ってくる、今度は派手にこけたりはしない。

 

「じゃあいきますよー、パンツァー…」

 

「「「「フォーッ!!」」」」

 

…何この掛け声、秋山流写真術なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…これもまた一つの青春なのだろうか?

 

俺にとってはよくわからんが、彼女達にとってはたぶん、きっと青春の一ページなんだろう。

 

確証が持てない俺は、せめてこう祈ろうか。

 

彼女達の戦車道がこの先も輝いていけるようにとでも。

 

 




やはり俺の戦車道は間違っている、第二部の終了といった感じです。

まるで最終回っぽいですがあとちょっとだけ続くのじゃ、です。

次回、ちょっと息抜きに番外編でも書いてそのあとは皆大好きダージリン様率いる聖グロ戦のスタートです。

ただ、プライベートが忙しくなってきてまたちょっと更新スピード遅れるかも…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。