やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
知らない人も多いとは思いますが愛里寿ウォーでは阪口ちゃんが一番可愛かったです、まる。
「皆、今日の訓練もご苦労であった、急ではあるが、今度の日曜日に練習試合を行う事になった、相手は聖グロリアーナ女学院!!」
夕方、戦車訓練を終えた彼女等大洗戦車道メンバーと俺は戦車倉庫に集められ、河嶋さんよりそう伝えられた。
なん…だと?その後の細かいやり取りは全部河嶋さんに任せていたが、まさか…こんな事になろうとは。
「日曜は学園に朝6時に集合である、皆、遅れないように、以上!!」
「…やめる」
「…はい?」
「やっぱり…戦車道、やめる」
河嶋さんのその伝令に冷泉が苦虫を噛み潰したかのようにそう話す。
「麻子は低血圧で朝に弱いんだよ…」
「6時は無理だ」
「ま、待って下さい!麻子さん!!」
西住達Aチームのメンバーがその場から去ろうとする冷泉を必死に止めようとしている、冷泉、戦車道やめるってよ。
だが俺から言わせてもらえば、そんな事態はどうでもいい。
「…俺も戦車道やめるわ、皆、世話になったな」
八幡、戦車道やめるってよ、…もともとやってないみたいなもんだけど。
「えぇ!?」
「比企谷殿まで!?な、何故です、一体どうして!?」
「ふ、二人共、ちょっと落ち着いて下さい、えと…まずは麻子さんから」
「私、モーニングコールしますから!!」
「うちまで迎えにいきます」
「…朝だぞ、人間が朝の6時に起きれるか!!」
彼女にしては珍しく声を荒げてそう反論してきた、残念だったな冷泉、将来社会に出れば仕事前に仕事の段取りの為に早めに会社に出勤して準備するという朝の無料奉仕タイムというものがあるのだ、仕事の段取りの為に仕事をするという悲しい社畜式ループシステムである、しかもタダで。
つまり、6時に起きるのではない、集合するのが6時なら、起きるのはその更に前でなければならないのだ、これから社会に出る君たち、会社の出勤時間に騙されてはいけないぞ。
「…人には出来る事と出来ない事がある、短い間だが世話になった」
冷泉は下手すれば本当にそのままその場から去ってしまいそうな勢いだ、仕方ない、やめる前に一仕事しておくか。
「悪いが冷泉、お前は無理だ、ここで戦車道を止めたら留年確定だぞ?」
「そうだよ麻子!それに…ちゃんと進級しないと、おばあちゃん、めちゃめちゃ怒るよ?」
「おばぁ…」
冷泉の顔がみるみる青ざめていく、そんなに怖いおばあちゃんなの?豪血一族なの?
「…わかった」
がっくりと肩を落とし、諦めたように呟く冷泉、まぁ自業自得だ、この子、将来社会でやってけるのだろうか?
え?人の心配する前に自分の心配しろ?安心しろ、俺は社会に出ないから、目指せ専業主夫。
「これで麻子は大丈夫だけど、あとは…」
「ひょっとして…比企谷さんも朝に弱いんですか?」
「私、朝起こしにいくから、ね?比企谷君」
冷泉の事が片付いてホッとしたAチーム面々はそのままほっとけば良いのに俺の所にまで来た。
あと…ちょっと西住さん、軽はずみに男子にそんな事言わない、寝顔とか見られたら恥ずかしいでしょ?思春期男子は女子に朝起こしに来るとか言われたらもう前日の夜からドキドキして寝れずに待機するレベルなんだから。
「そうだ!小町ちゃんも居るんだし、起こしてもらえば良いじゃん!!」
「…お前らさっきから勘違いしてないか?別に朝起きられないとか、そんなんじゃねーよ、つか、俺の日曜日は誰よりも早い、何故なら日曜朝のアニメタイムがあるからな」
「日曜日の朝って…、比企谷、まだそんなの見てたの?」
え?何?逆に聞くけど皆見てないの?プリップリでキュアキュアなやつにハートキャッチされてないの?
ちょっと皆遅れてるんじゃない?今時幼稚園児でも見てるよ、あれ。
「あの…、私も見てますよ!日朝アニメというと…アレですよね!比企谷先輩!!」
俺達の会話を聞いていたのか、一年チームの阪口が会話に混じって来た、ほら、やっぱり大人気じゃん。
「まぁあれに限らずあの時間帯にやってるのは全部見てるけどな、戦隊シリーズからライダー的なもんまで」
「私も特撮とかも大好きなのでもちろん見てますよ!ちょっとHDDの残量が気になりますけど」
「あぁ、日朝アニメは1年やるからな、嬉しい反面、録画するのは一苦労だ」
「そうなんですよねー、もっと容量のあるやつが欲しいなー」
ふむ…阪口 桂利奈、なかなか有望な奴が居るじゃないか。
「今度一緒に見ましょうよ!比企谷先輩!!」
「え?お、おぅ…、まぁ、そのうち、適当にな」
「あ〜い!楽しみにしてます!!」
謎の返事と共に阪口はぶんぶんと手を振る、元気の良い奴だな、まぁ…そのうち、機会でもあればな、たぶんないけど。
「比企谷君?今ちょっと大事な話をしてると思ってたんだけどな?」
「そうですよ比企谷さん、…私達を差し置いてアニメのお話ですか?」
そして振り替えると…怖ッ!!Aチームの面々がなんかめっちゃ睨んで来てる、ヤバイ、女子にここまで睨まれるとか中学生の時以来だ。
「…てか、そんなの録画して後で見れば良いじゃん、それなら問題無いでしょ?」
「違うな、間違っているぞ、武部、根本的な理由はそれじゃない」
それでは比企谷検定の資格はやれないぞ、たぶんいらんって言われそうだけど。
「じゃあ…いったい何が原因なのでありますか?」
「日曜だぞ?休日だぞ?せっかくの休日に働いてたまるか!!」
休日出勤、駄目、絶対!!俺としては至極当たり前の事を伝えたつもりだが、Aチームの面々は唖然としていた。
「まさか、麻子より駄目な人が居るなんて…」
「沙織、それはどういう意味だ…」
「あの…、そもそも戦車道全国大会の試合は基本的に休日に行われるんですが?」
なん…だと?
秋山の言葉に俺の決意は確信に変わる、よし、やっぱり戦車道やめよう、俺には無理だったのだ。
「ほ、本当にやめちゃうの?比企谷君」
西住がまるで捨てられた子犬みたいな顔で俺の事を見てくる、どこぞの金融会社のCMかよ。
「…まぁ、やめないにしても日曜日だって試合だけなら俺が行く必要はないしな、どーせ出ないんだし」
…そんな目で見られたら邪険に扱えん、女子ってこういう時卑怯だよな。
「えー!比企谷も一緒に行こうよ!応援してくれれば良いからさ」
「はっ、悪いが俺は応援とかそんなんは大嫌いなんだよ、だって無責任だからな」
「応援する事が無責任…ですか?」
「あぁ、だって頑張れとか言っても大概、皆もう頑張ってんだよ、頑張ってる奴に頑張れとか、自分は特に何かをする訳でもないのに無責任だろ?」
自分はもう、充分頑張ってるのに、まだ頑張れというのか、それはただ単に相手の気持ちを無視した押し付けに過ぎない。
「…なんか変な説得力があって嫌になりますね」
「事実だからな、試合をやるのはお前等だ、そして俺は何も出来ない、つまり、行く必要がない」
「ううん、違うよ比企谷君、私達、比企谷君が居た方が頑張れると思うんだけどな?」
「いや、だから西住…」
「そうだ比企谷さん…、私に戦車道やらせておいて自分は家で寝てるのはよくない、私の士気に関わる」
「いや、それはお前の自業自得だからな」
どさくさ紛れに冷泉のやつ、俺を巻き込もうとしてやがるな。
「まぁ…その、なんだ、じゃあ…行けたら行くわ」
俺の13ある奥義の一つ、行けたら行くわを発動した、この奥義はとりあえずその場を切る抜ける事の出来る必殺奥義なのだ、行けたら行くわの行かない率はガチ。
「それ、絶対来ないパターンじゃん…」
そして武部にはあっさり看破された、こういう時だけ鋭いんだから、こいつは。
「…私、信じてるからね、比企谷君」
「お、おう…」
何か少し後ろめたい気持ちもあるが…、とりあえずは納得してくれたか。
「ここに居たか、西住、比企谷、貴様等!何油を売っている!!」
と、そんなやり取りをしていると河嶋さんがどこからかやって来た、いつも怒ってんなこの人。
「日曜日の対聖グロリアーナの作戦会議を今から始める、他の車長は全員集まってるぞ!貴様達も早く来い!!」
え?やだ、何それ初耳なんですけど、この期に及んで今から残業しろっていってるよこの人。
「…え?今からですか?」
西住がちらりと武部達を見る、たぶん、これから一緒に帰る約束でもしていたのだろう。
「じゃあ私達は待ってるから、ちゃっちゃと終わらせて来てね!!」
「えぇ、そうですね、お待ちしております」
武部達良い奴だなー、俺ならさっさと帰るんだけど。
あ、冷泉はどうも帰るっぽいな、本当にマイペースな奴だ。
というか俺は必要無いでしょ、帰って良い?…あ、駄目かそうですか、はい。
「フフフッ…、安心しろ、すぐに終わる、何しろ隊長である私には素晴らしい作戦があるからな」
自信満々で俺達の前を歩く河嶋さん、…いったい、いつからこの人が隊長になったのだろう?
あと、私に良い考えがある、とか、それ系の失敗率はガチ。