やはり俺の戦車道は間違っている。【本編完結済み】   作:ボッチボール

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UA100000突破して小躍りしてたらお気に入り800越えて中踊りしてたらランキングに一時的にだけどランクインしててあんこう踊り踊りましたわ、皆さん、ありがとうございます!!

ラブコメの話しにおいて八幡って主人公であり、ラスボスでもあると思うんだ、まさに難攻不落の要塞。
そんなひねくれ続けた少年に挑む彼女達のお話しです。

しかし今回は難産だった…、こういう話しをキチンと文にまとめれる文才が欲しい。


友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である。

「…え?」

 

「比企谷さん、今のはどういう意味ですか?」

 

「どういう意味って?何?あんこう音頭の事?そのまんまなんだけど。良かったな、大衆の面々に羞恥プレイ晒さなくてすむぞ」

 

「いえ、問題はそこではなくてですね…」

 

「やめる気か?戦車道」

 

…やっぱりAチームの奴らが食いついて来るのか、俺からすればまったくもって意味がわからん、君らはとりあえずあんこう音頭を回避した事を喜んどこう。

 

「比企谷君、冗談…だよね?」

 

「…西住」

 

「ほら、この前の時みたいに、きっと冗談で言ってるんだよ…、ね?」

 

「…んで会長、もういいでしょ?戦車道やめても」

 

懇願するように上目使いで見てくる西住を無視して会長に話を振る事にする。

 

「比企谷ッ!貴様、そんな勝手が通ると思ってーーー」

 

「悪いけど河嶋さん、俺…今、会長に聞いてるんで」

 

「ひっ…、ゆ、柚子ちゃぁん…」

 

あれれ?可笑しいなぁ、なんで河嶋さん、そんな急に怯えてるの?ちょっと睨んだだけじゃん、俺の目ってそんなに腐ってる?

 

「…訳を聞こうか、比企谷ちゃん」

 

「経験者の西住が隊長になり、戦車も出揃った、練習試合で一応の経験も得た、あとはもう、戦車道全国大会に備えて練習するだけ、ここまで来たらもう、俺必要ないでしょ?違います?」

 

大会には出ない、かと言って戦車の整備が出来る訳でもない、雑用なんて俺以外の誰でも出来る。

 

「おまけにこの練習試合の戦犯だ、この試合に向けて真面目に訓練に励んだ奴らの努力を全部パーにした、となればここで俺を切ればみんな納得、円満解決」

 

彼女達はより結束を固め、戦車道全国大会へ向けて練習に励むのであった、まる。

 

「もう!比企谷は深く考え過ぎなんだよ…、これ、練習試合なんだよ?」

 

「わかってないな武部、練習試合でやらかしたからこそ、本番になる前に切る必要があるんだよ」

 

「チームの為に、ご自分が犠牲になるというのですか?一人であんこう音頭を踊るのも私達に恥ずかしい思いをさせない為に?」

 

「犠牲?アホか…規律の問題だ、秋山、お前戦車に詳しいなら軍隊がどんだけ責任の所在について重要なのかもわかるだろ、あんこう音頭だってそうだ」

 

自己犠牲?冗談じゃない…、誰が好き好んであんこう音頭なんてやりたがるというのか。しかも一人で、いや、一人は好きだけどさ。

 

「先程から規律とか罰とか、比企谷さん自身はどう考えてるんですか?」

 

「お前らが感情で物事を語り過ぎなんだよ…」

 

まったく、そんな感情論でマトモに討論出来ると思ってんの?生まれてこのかた俺が今までどんだけ感情論に振り回されて来たと思ってんだよ、対処なんか慣れたもんだ。

 

「なら、望み通り規律で話してやろう」

 

…冷泉か、厄介なのが出てきたな。

 

「私達は隊長車同士の一騎討ちに負けたからな、あの時点で比企谷さんが動こうが動かまいが大洗は負けだ、それを自分の責任と言い張るのは少し自意識過剰じゃないか?」

 

…さすがに痛い所をつくなぁ、しかも自意識過剰とか然り気無くディスってくるし。

 

まぁ問題ない、あと俺は自意識過剰じゃなくて自意識高いだけだから。

 

「俺が一年チームに接触したのはⅣ号とチャーチルの一騎討ちの前、つまり大洗の反則負けはその時点で決まったんだよ、仮にあの時Ⅳ号が勝っても結果は同じだ」

 

…冷静に考えたらあの時Ⅳ号戦車の方が勝ったらそれこそ暴動でも起きそうだな。いや、危なかった。

 

「さて五十鈴、なら望み通り感情の方で話をしてやろう、ずっと前から言ってるだろ、俺はな、戦車道が大嫌いなんだよ」

 

「そんな…比企谷さん、私達の為にいろいろと頑張ってくれていたではないですか、みんな、比企谷さんが居ないと悲しみます」

 

「みんな?みんなって誰だよ?ずっとぼっちだったからみんなとか言われてもわかんねーんだけど?」

 

みんなが言うから、みんなやってるから、みんながそう考えてるから、よく聞く言葉だがぼっちの俺からすれば正体不明のおぞましい何かであり、集団の作り上げた幻想だ。

 

「それにどれもこれもやらされていただけだ、正直嫌気が差してたし、今回のは更に負けたらあんこう音頭ときた」

 

…そろそろ良いだろ、この無意味なやり取りにはさっさと決着を付けたい。それが俺の為であり、彼女達の為でもあるだろう。

 

「俺はそれが嫌だったからな、大洗が負けると思ってたし、単刀直入に言ってやろう、俺はお前達をまったく信用してなかった、だから動いた」

 

別にこれは西住達が悪い訳じゃないけどな、そもそも強豪校を練習試合の相手に選んだ俺が悪かったのだし。

 

「「「「「……………」」」」」

 

…さすがにこれ以上は誰も何も言ってこないな。

 

「…もういいだろ、会長、早いとこあんこう音頭やらないとあんまり時間、ないですよ?」

 

「あー…、うん、そうだねー」

 

…くくく、会長、困ってんなぁ、まぁ当たり前か。

 

何故なら、あんこう音頭には何故か、男用の衣裳が無いのだ!!

 

大洗に古くからある伝統的な文化のあんこう音頭、しかし、衣裳は女物しかない、何故か知らんけどたぶん男が着たらもっこりしてはいけない所がもっこりするからだろう。

 

どうにか回避出来ないかとこれを調べた時、俺は震えたね、夜中ニヤニヤしっぱなしで小町にキモがられたくらいだ。

 

「困りましたね、会長…、もうあんこう音頭のステージは抑えてしまいました」

 

「住民の皆さんにも宣伝してしまいました、衣裳の無いあんこう音頭となると…」

 

え?もうステージも宣伝も完了したの?ちょっと生徒会準備良すぎるでしょ?

 

「んー…、困ったねぇ」

 

よーしよし、やめる前に憎っくき生徒会にも一矢報いてやったぜ。さて、会長の困り顔を堪能してやろうかねぇ。

 

「んー、よし、決めた」

 

…あれ?おかしいな、あんまり困ってないっぽいぞ、というかちょっと、いや、かなーり怒ってる?

 

「んじゃ、比企谷ちゃんには歌ってもらおう、あんこう音頭」

 

「…へ?歌うんですか?あのあんこう音頭を?」

 

「そー、歌うの、あんこう音頭を、大勢の観客の前で一人でね」

 

…絶対怒ってるよね、うん、マジか…。

 

「はぁ…、会場はどこで何時からです?」

 

「ありゃ、意外と素直だねぇ」

 

「まぁ、元々責任は取るつもりでしたから…、でも忘れないで下さいね、戦車道やめる話」

 

さっさと終わらせて、それでおしまい。もう戦車道とも関わる事もないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ!?本当にさっさと行っちゃった!!」

 

「比企谷殿、本当にやめるつもりなんですかね…」

 

「ありゃ本気だね…、比企谷ちゃんも強情だなぁ」

 

「…どうする?このまま放っておくのか?」

 

「………」

 

「…みぽりん?」

 

「西住さん、どうしました?」

 

「会長、一つお願いがあります」

 

「…良いねぇ、なんでも聞くよ、西住ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

ー。

 

約束の時間に教えられた場所に行くと、会場は満員御礼、ちょっとあんたら、日曜日ですよ?あんこう音頭見るよりもっと有意義な過ごし方が他にいっぱいあるでしょ?

 

あー、やだなぁ、おそらく練習試合終了から勢いそのままに来てやがるな…。

 

あの中で一人であんこう音頭歌えっていうの?そりゃあの衣裳着て踊るよりはずっとマシだけどさぁ。もしかしてこいつらみんな女子高生のあんこうスーツ目当てじゃないだろうな?残念、八幡ちゃんでした!!

 

あーぁ、もうバッくれ…るのはさすがにないか、そこら辺のけじめくらい、キチンと着けないとな。

 

うんざりとしながら観客達を横目に見つつ、ひっそりと横を通り抜けてステージの控えに向かうとーーー。

 

「………………は?」

 

ピンク色のピッタリスーツを着た5人組がそこに居た。

 

…うん、こんな珍妙な集団に見覚えはない、一切ない、まったく、祭りになると変なのが湧くよなー、と、5人組の横を黙って通り過ぎようとする。

 

「って!さすがにそれはないからね!?ノーコメントは一番酷いよ!!」

 

…やっぱ無理があったか、武部に声をかけられた。

 

「…比企谷君、待って下さい!!」

 

武部の声に一度足を止めてしまったのが悪かった、西住が俺の服の袖をぎゅっと掴んでくる。

 

「…お前ら何やってんの?あんこう音頭の罰を受けるのは俺だけだぞ」

 

西住、武部、五十鈴、秋山、冷泉、Aチームの5人組があんこうの珍妙な被り物にピンク色のピッタリスーツを着ているのだ。

 

あれこそがあんこう音頭における正装、羞恥プレイの固まりであるあんこうスーツだ。

 

「西住、それがあんこう音頭の衣裳だ、恥ずかしいだろ?」

 

「…うん、すっごく恥ずかしい、あの時もっと比企谷君にどんなのか聞いとけば良かったかも」

 

「ならさっさと脱いじまえ、元々西住達が着る必要はなかったものだ」

 

「ううん、だって私達、比企谷君とあんこう音頭、躍りに来たから」

 

「…だから、その必要がないって言ってるだろ、罰を受けるのは俺だけだぞ」

 

「罰とかそんなの関係ないよ、最初、私があんこう音頭踊るかもって話になったら、沙織さん達はすぐに私が踊るなら自分も踊るって言ってくれたの」

 

武部達は本当に友達想いの良い奴らだな…、まぁ俺には関係ないけど。

 

「友達が恥ずかしい思いをするならって…、だから、私達が今ここに居るのも同じ気持ち」

 

真っ直ぐに迷いのない視線をぶつけられる、…こんな視線をぶつけられたのはいつ以来だろう?

 

やっぱり西住 みほは優しい女の子だ、今回もこのまま放っておけばよかったものを、自分からわざわざ恥ずかしい思いをしにやってくるとは。

 

…だけど俺は優しい女の子が嫌いだ、この同情は俺の考えの全否定に繋がる、愚弄されたも同義だ、これ以上向かってくるならこちらだって容赦はしない。

 

「勘違いするな西住、いつから俺とお前が友達になったんだ?とりあえず、俺がお前を友達だと思った事は一度もない」

 

確信を持って言える。間違いなく、西住にはこれが一番効く。

 

曲がりなりにも生徒会から戦車道復活の話をされて以来、ここまでずっと関わってきたんだ、これが彼女を突き放す、単純かつ、効果的な言葉の牙だ。

 

さて、西住の方を見るとその表情はーーー。

 

 

 

 

 

 

ーーーまったく折れていない、変わらず、真っ直ぐに迷いのない視線をぶつけて来ている。

 

「…西住?」

 

「友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である」

 

「…は?えと、ダージリンさんの物真似か?」

 

…確かこれは、ドイツの劇作家、コッツェブーの言葉だったか。妙だな、自分とは正反対と思えるもの程、印象に残ってるもんだな。

 

「ううん、これは私の座右の名、私の一番好きな言葉」

 

そう言いながら、彼女はそっと手をこちらに差し出してくる、少し照れているのか、恥ずかしそうに微笑んで。

 

なんとも彼女らしい座右の名だ、自分のやつが恥ずかしくなるじゃないか、なんだよ、押して駄目なら諦めろって、素晴らしいじゃないか。

 

「比企谷君、ううん…、違うかな、八幡君。私と…、私達と、友達になろう?」

 

「………」

 

呆気に取られて声が出てこなかった。

 

西住 みほは優しい女の子だ、そして彼女は、とても強い女の子でもあったのだ。

 

「駄目…かな?」

 

「あー、いや、その…」

 

いや!いやいや!!そんな事、女子に面と向かって言われるとか思春期全開のぼっちにゃハードルが高過ぎるんだよ、言葉が出てこないの!!ちょっと察して?

 

「諦めた方がいいよ比企谷、こうなるとみぽりん、スゴく頑固だと思うから」

 

はぁと溜め息をついて武部が間に入ってくる。

 

「…武部、お前はいいのか?あんこう音頭踊る羽目になるんだぞ?」

 

「いいわけないじゃん!お嫁に行けなくなるよー!やだもー!!…でも、まっ、友達の為だしね」

 

「なら、お前からも西住を説得してやれよ…、友達ならこんな羞恥プレイに付き合う必要はないって教えてやれ」

 

「何言ってんの?みぽりんはもちろんだけど、比企谷も、でしょ?」

 

「…はぁ?」

 

「メアドも交換して一緒に買い物もしたし、ご飯も食べたじゃん、それにドライブだってしたし、普通に考えたらそんなの友達でしょ?」

 

ドライブって…、今朝のアレの事言ってるの?戦車なんだけど。

 

「友達の為に何とかしたいって思うのって当たり前じゃない」

 

「…武部、お前ってすげぇ良い女だよな、俺が女だったらとっくに惚れて告白してるわ」

 

「男のままで告白してよね!?」

 

「…え?」

 

「…え?」

 

お互いに顔を見合わせて固まってしまった…。

 

「えと、今のはその…、言葉のあやだからね!!」

 

…いや、うん、わかってる。わかってるからもその真っ赤な顔やめよう?俺も何かすげぇ顔が熱くなってる気がするし。

 

…武部の方をちょっとマトモに見られないので、そのさ迷う視線は五十鈴で止まった。

 

「お前は良いのか?五十鈴」

 

「そういえば…私、比企谷さんに実家が華道の家元だというお話、前にしましたね」

 

「え?あぁ…、そういやそうだな」

 

「生け花というのは一つの花では決して完成しません、一つの花器に色々な花を生けて初めて完成いたします」

 

まぁ、俺は生け花の知識とかはまったくないが、一輪の花だけではい完成、なんて作品は聞いたことない。

 

「例え戦車道をやっていても日々の生け花の日課を欠かした事はありません、私、花を生けるのが得意ですから」

 

…華道、生け花に関しては五十鈴の独壇場だな、こちらとしてもそれを例えに使われちゃ事の返し方が思い付かない。

 

「秋山、お前はどうなんだ?」

 

「私ですか?私、昔から戦車が大好きでして、戦車になるとつい我を忘れて夢中になって、おかげで友達も出来ませんでした…」

 

あぁ、何となくそれはわかっていた、というか俺の実体験でさえある。俺も同じだ、戦車が原因かどうかは知らんけど、それでも昔からぼっちだった事に違いはない。

 

「ですから今、こうして西住殿やAチームの皆さん、大洗の戦車道メンバー、そして、比企谷殿に出会えて本当に楽しいんですよ」

 

そう言いながら屈託のない笑顔を見せてくる、前々から思ってたけど秋山ってどこか犬っぽいよな、西住の事大好きっぽいし忠犬みたい。

 

「比企谷殿、戦車は一人では動かせません、あぁ…いえ、一人乗りの戦車もあることにはありますが。それでも、やっぱり私は比企谷殿に戦車道を続けて欲しいです」

 

「…俺は」

 

「いい加減諦めたらどうだ?私だって巻き込まれたんだ」

 

「…冷泉、つーか、お前が来たのが正直、一番意外だったわ」

 

もっと冷めてる奴だと思っていた、こういう時でも周りに流されるような奴ではないと。

 

「あぁ、面倒だ、早くおばぁに顔見せないと怒られるしな」

 

「なら、付き合う必要はないだろ…」

 

「しかしまぁ、比企谷さんに借りを作っておくのは悪くない、また朝迎えに来てもらって学校まで自転車に乗せてもらうか、寝てる間に学校に着く事の何と素晴らしい事か」

 

「おい…そこは起きろよ」

 

やっぱり冷泉の奴はブレないな…、というか横着過ぎるでしょ、この子。

 

「八幡君、みんな、八幡君とあんこう音頭踊りに来たんだよ」

 

「西住…、いや、みんなって、その…」

 

「みんなはみんなだよ、八幡君、さっきみんなって誰だよって言ったよね?」

 

「おーい、西住ちゃん、準備出来たよー!!」

 

「…会長?つーか生徒会の、あんたらまで」

 

生徒会の三人がやってくる、彼女達も例によってあんこう音頭の衣裳に着替えている。

 

「ん?あぁ、こういうのは連帯責任だからね、それにみんなで踊った方が楽しいじゃん?」

 

「…うぅ、恥ずかしいよぉ」

 

「駄目だよ、元々戦車降りて逃げちゃった私達が悪いんだから」

 

一年生チーム。

 

「まったく、いつ見ても奇抜な格好だな…」

 

「この傾き具合は前田慶次だな」

 

歴女チーム。

 

「キャプテン、この格好、スゴく恥ずかしいです!!」

 

「根性でどうとでもなる!それにバレーの大会ではもっと多くの人に見られる事もある、緊張しない為の訓練だ!!」

 

バレーボール部。

 

…大洗学園、戦車道チームの全員が。あんこうスーツを着て集合していた。

 

「…お前ら、なんで?」

 

「水くさいぞ八幡!我等Cチーム、一度共に戦った仲ではないか!!」

 

「きのうの友は、今日も友、ぜよ」

 

「ふむ、押し掛け助っ人というやつだな」

 

「私達バレーボール部は、もう誰もやめる所は見たくないです」

 

「それに…、あんこう音頭の躍りがバレーに上手く使えるかも知れないよね?」

 

「あんこうバレー!!」

 

「比企谷先輩!辞めちゃ嫌です!!」

 

「元を正せば、私のせいだよねー」

 

「紗希からも何か言ってやって!!」

 

「………」

 

「ほら!紗希ちゃんも辞めちゃ駄目って言ってるよ!!」

 

わいわいとはしゃぐ大洗の戦車道メンバーの面々を茫然と眺めてると西住が隣にやってくる。

 

「私達大洗学園戦車道メンバー、八幡君のみんな、だよ」

 

「………」

 

なんかもう…完全にしてやられたな、こうして全員集合されてしまえば、こちらとしても、もう言い訳のしようもない。

 

逃げ道を完全に封鎖されたようなものだ、西住流、マジパない。

 

「よーし!じゃあみんな揃ったし、始めよっか?あんこう音頭、比企谷ちゃん、歌、よろしく〜」

 

「…マジで歌うんですか?」

 

「今更何言ってんの?つーか…あたしらの方が恥ずかしいに決まってんじゃん?」

 

「まぁ、そりゃそうだよな…、あとあれだな、お前ら全員、アホだな」

 

よくもまぁ…、俺なんかの為にみんな集まったものだ。

 

「は、八幡君!?」

 

「あと西住、さっきから良いこと言ってるけど、そのあんこうスーツで全部台無しだから」

 

というか、あんこうスーツを身にまとったこの集団は端から見たら異常だな、変な宗教に思われても仕方ない。

 

「…それは言わないで欲しかったなぁ」

 

「比企谷殿もブレませんね…」

 

「えぇ、比企谷さんらしいです」

 

「その…、ありがとう…な?」

 

「…うん!!」

 

「はいはーい、それじゃあみんな、位置について〜、比企谷ちゃん、よろしくね〜!!」

 

「…はぁ、はいはい」

 

あんこうスーツに身をまとった大洗戦車道メンバーがステージに上がる、あんこう音頭を踊るとなれば歌うだけの俺は邪魔にならぬよう、上がる必要もなくなった。

 

スピーカーからあんこう音頭のイントロが流れてくる、あ、やっぱりカラオケバージョンなのね、最悪、口パクでどうとでも切り抜けられるかなと思ってたけど、あの会長がそれを許す訳がなかったか。

 

マイクを手にして、ふぅ…と一息ついた。

 

とりあえず、言っておこう、諸君等の知っている比企谷 八幡は死んだ、今日この場に居るのは別人だ、と。

 

「アーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

はい、カットである。

 

いや、別にこれは俺が悪い訳じゃないよ?めんどくさい団体を回避する為のやむを得ない大人の事情というやつだ、いやー、残念だなー、せっかくの美声なのになー(棒)

 

たぶんBDの特典映像とかにはついてくるだろうから、気になる人はそっちを買ってね、ねーけど。

 

しかしまぁ…、ようやくこの羞恥プレイも終わった、観客席もざわざわと賑わっている、まるで怨霊の唸り声みたいだったと、ちょっと酷すぎるでしょ?それ。

 

「うぅ…やっと終わったよぉ」

 

そして大洗戦車道メンバーの皆さん、お疲れ様です。だから言っただろうに…、出てこなければ、羞恥プレイなんぞせずにすんだのに。

 

「さぁて、比企谷ちゃん、そういえば私に何か言いたいことあったんじゃなかったかなぁ?」

 

…ここでそれを聞いてきますか、この会長さんは。

 

それにしてもこの会長、あんこう音頭の最中は終始笑顔でノリノリだったな、これ会長は単純に踊りたかっただけじゃないの?

 

「あぁ…、まぁ、その…」

 

俺の中でもう答えなんてほぼ出ているようなものだ、それでも、いざ口にして言うとなるとどうしても拒否反応が出てくる。

 

我ながら安いプライドだ、ワゴンセールで投げ売りされるくらいの下らないプライドではあるが、結局の所、俺は自分からそれを伝える事が出来ないのだ。

 

「会長〜!!」

 

と、そこで一人の見慣れない女子が会長に声をかけて来た、いや、本当に誰?大洗の制服は着てるけど。

 

「あ!どうもこんにちは、私は大洗学園二年、新聞部の王 大河です!!」

 

あぁ、そういやあったね、うちの学園にも新聞部とか、たまに掲示板に校内新聞とか貼り出されてたわ、気にも止めてなかったけど。

 

「なんだ、マスゴミか」

 

俺の中でこの手のやつら=マスゴミである、というかマスコミ=マスゴミまである、マスコミはマスコミュニケーションの略なので言い換えればコミュニケーション自体がもうゴミである。

 

「まさか初対面でいきなりディすられるとは思いませんでした!これが女子生徒だらけの戦車道に潜り込み、女の子をとっかえひっかえしていると噂の男子生徒なのでしょうか、非常に興味深いです!!」

 

「…やっぱマスゴミじゃねぇか」

 

つーか何なのその噂?捏造もいいところだろ。

 

「まーま、それで王ちゃん、例のやつは録れてる?」

 

「ばっちりです会長、これで今期の新聞部の予算拡大、お願いしますよ〜!大洗どころか他の学園艦に行けるくらいのを!!」

 

「おっけーおっけー、バッチリだよ」

 

「では私は次の取材があるのでこれで!また取材させて下さいねー!!」

 

王は会長に何やら手渡すとさっさと帰って行った、あれー?あれってICレコーダーじゃない?

 

「…会長、なんですか?それ?」

 

「んーこれ?ポチッとな」

 

会長がICレコーダーのスイッチを押すと流れてくるのは…あれ?これ俺の声じゃね?しかもさっきのあんこう音頭の歌詞じゃね?

 

「いや…何やってんですか?あんた」

 

「いやー、記念に録っときたいって思ってさぁ、ちょうど練習試合を取材に来てた王ちゃんにお願いしといたんだ、そんで比企谷ちゃん、何の話だっけ?」

 

うわー、清々しいまでの脅しっぷりだよこれ、ヘタにやらかそうものなら校内放送とかで流されるやつだよ。

 

「つーかもう、完全に横暴ですね」

 

「知らなかったのか比企谷、横暴は生徒会に許された特権だ」

 

やだ…、この河嶋さん超格好いいんだけど、いまだかつてここまで出来るオーラ全開の河嶋さんを見たことがあっただろうか、いや、ない(確信)。

 

こうして理由まで作ってもらえるとは、本当にうちの生徒会には敵わないな。

 

「…横暴なら仕方ないですね」

 

…そういえば、こうして口に出して言うのは初めてだな、西住とか、冷泉が言った場面には立ち会っては居たが。

 

「やりますよ、戦車道、この先も続けます」

 

まさか自分から社畜への道を歩もうとは…まったく俺らしくもない。

 

「最初から素直にそう言えば良いのに…、でも、やったね!みぽりん!!」

 

「うん!八幡君、これで私達も友達、だよね?」

 

「いや、友達じゃないけどな」

 

「えぇ!?」

 

いや、だって…、その、恥ずかしいでしょ?というか悲しそうな顔し過ぎでしょ、さっきの凛々しい顔はどこに行ったの?

 

「大洗学園の戦車道メンバー、だろ?」

 

「…うん!でも、私は諦めないよ、だって」

 

「友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である、か?」

 

「あはは…、言われちゃった」

 

「そして、最後には枯れ果てて落ちる葉っぱである」

 

「しかも変なの加えられてるし…」




戦車道全国大会編を開始する前に決着をつけたかった八幡VS大洗戦車道メンバーです、本当はもっと各チームとも絡ませたかったんですが糞長くなりそうだったので泣く泣くカットしました。

ちなみにあんこう音頭の件はガチで大人の事情です、聞くところによると歌詞とか載せるのはマズイらしいので。

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