やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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いけると思ったが全然いけなかった…、最近本編の進行スピードがこれで良いのかなーと不安になってくる。
で、でも重要な話しだし!やっぱり書きたいものを書きたいじゃんかー!!
あえて具体的に言おう、八幡と西住殿のラブコメだ!!


彼女は西住流を否定し、自分だけの道を探す。

さて、秋山家での一悶着もようやく終えて、小町にお小言をいただきながらも無事にお土産も渡した俺はといえば…。

 

「えっと…、八幡君、話って何かな?」

 

「………」

 

現在、西住と二人きりで会ってたりしてる、どうしてこうなった?

 

どうしても何も…家に帰った後、西住に連絡いれただけなんだけどね、というか何気に西住を自分から呼び出すとか初めてだな…、大丈夫かな?わざわざ呼び出して何様なんだよとかで怒ってないよね?

 

明日、サンダース戦に向けての作戦会議があるのならばどうしても伝えなければいけない事がある。サンダース校に潜入した時に発見したあの通信傍受機についてだ。

 

「沙織さん達と一緒の時じゃ出来ない大事な話…なんだよね?」

 

「あぁ、あいつらの前じゃちょっとな…」

 

この情報に関しては慎重に扱う必要がある、下手に皆に伝えても混乱させるだけだろうしな。

 

「西住」

 

「う、うん…」

 

だが、だからといって何も伝えないまま試合に進めば、それこそ情報が筒抜けのまま一方的にやられるという最悪の展開さえ有り得る、隊長の西住には伝えた方がいいだろう。

 

「サンダースの試合についてなんだが…」

 

「……え?」

 

「え?って…明日、サンダース戦に向けての作戦会議やるんだろ?それについての話だ」

 

「………」

 

西住の奴…いったい何を呆けているのか、やっぱり戦車に乗らないとちょっと抜けた天然っ子か?

 

「…西住、どーした?」

 

「…なんでもないよ、お兄ちゃん」

 

「ぐはっ!?」

 

不意討ちはやめたげて!俺の脳裏にあの凄惨な状況が思い浮かんでくるから!!というか何でちょっと不機嫌なの?

 

「…それで話って何かな?」

 

「あ、あぁ…、その前に一つ確認だが、正直、勝てると思うか?」

 

これは個人的に確認しておきたかった事だが、ついでに聞いてしまおう、戦車道家元の娘から見た、現状の正直な意見を。

 

「難しい戦いだとは思う、…相手は私達より練度も戦車の強さも上だし、でも、そこは戦術と腕…かな?」

 

…決して勝てない、とは言わないか、西住らしいといえばらしいな。

 

なら、この情報も伝える価値はあるな。

 

「サンダース校に潜入偵察した時、通信傍受機を見つけた」

 

「えっ!? 八幡君、それ…優花里さんは?」

 

「安心しろ、知らないはずだ、下手に伝えても混乱させるだけだしな」

 

「…よかった」

 

西住のホッとした表情を見て、自分の考えが間違ってなかった事に少し安堵した。

 

「んで、実際どうなんだ?戦車道の試合で使っていいものなのか?」

 

「…確かに、ルールには使ってはいけないとは書いてないけど」

 

ルールで規制されていない以上、使っても審判側は咎める事が出来ない。要するに…ルールの裏をついた訳か、誰だか知らんけど敵さんもなかなかやるな。

 

「あくまでも俺は通信傍受機を見つけただけだ、相手がそれを俺達との試合で使ってくるかは分からない、でも…もし使われたら」

 

「うん、こっちの行動が筒抜けになっちゃう…、でも、だったら」

 

西住の表情が変わる、どうやら考えている事は俺と同じようだ。

 

「こっちもそれを利用して、相手に偽の情報を掴ませる事も出来るな、難しいのはその判断だが…」

 

言うだけなら簡単だが、実際に成功させるとなるとクリアしなければいけない条件は多い。

 

まず大前提に相手が通信傍受機を打ち上げるかどうか、そして打ち上げたとして、その偽の情報を相手の隊長であるケイさんが信じるかどうかだ。

 

相手がこっちの無線を傍受しても、隊長のケイさんがその情報を信じて動いてくれないと失敗する、そこら辺の見極めは難しいところだ。

 

「判断は試合中の西住に任せるしかないが、どうだ?これでちっとは突破口でも見えそうか?」

 

「うん!八幡君…ありがとう」

 

「いや、こんなん情報とも言えないレベルのネタだ、秋山と違って確実性が全くないからな」

 

本当に、場合によってはむしろマイナスになりかねないレベルの酷いネタだ。

 

「だから優花里さん達には黙ってたんだね」

 

「あぁ、それにサンダースに偽の情報掴ませるなら、なるべく自然体の方がいいだろ?うちの戦車道チームはそこら辺の演技下手そうだし」

 

「…私も不安かも」

 

不安そうな表情の西住だが、一度試合が始まって戦車道補正のかかった彼女なら大丈夫だろう。

 

「あとは…そうだな、もし試合中、相手の戦車が減っても気にするな」

 

「えぇっと…よくわかんないんだけど?」

 

「気にするな、頭の隅っこの方にでも入れといてくれればいい」

 

これに至っては本当に確実性は何一つ無い、あのサンダース校の戦車倉庫でそれこそ冗談めいた会話の一つなのだし。

 

フェアプレイを重んじるケイさんなら本当にやりかねんが、ただ西住側からすればいきなり相手の戦車の数が減れば伏兵の可能性も考えるだろうし、一応伝えた方がいい。

 

「俺から伝えれるのはそんな所だ、悪いがどれもソースはない」

 

情報があっても、どれもこれも信頼性が何一つ無いのがどうにも俺らしいといえばらしい、本当に何しに行ってたんだか。

 

「それじゃあな西住、悪いな、わざわざ呼び出して」

 

それでも情報は情報だ、あとは西住に任せるしかないだろう。

 

「…え?ちょっと待って、八幡君!!」

 

と、帰ろうとしたら何故か西住に呼び止められた、え?まだ何かあるの?

 

「その…ね、私、会長に試合の作戦考えてって言われてて」

 

「まぁ隊長だしな、妥当だろ」

 

いや、本当にお願いします、じゃないとまた河嶋さんがアップを始めちゃうよ?

 

「だからね、その…、聖グロリアーナの時みたいに二人で作戦考えたいなって」

 

「…俺みたいな素人の意見なんか参考にならないだろ、西住流の戦い方とかがあるんじゃないのか?」

 

聖グロリアーナとの練習試合の時は会長の発案とあんこう音頭回避の為に成り行きでやったが、今回はどうだろうか?西住には西住の作戦があるはずだ。

 

「…西住流だけじゃ勝てないよ、八幡君ならわかると思うけど」

 

「………」

 

なんというか…素直に驚いた、まさか当の本人からその言葉を口にされるとは思ってもいなかったからだ。

 

「西住流の戦い方は統制された陣形と圧倒的な火力による短期決戦だから…」

 

「…見事に今の大洗とは何一つ合致してないな」

 

統制された陣形?素人ばっかりです。

圧倒的な火力?戦車弱いです。

 

薄々わかってはいた…、西住流は確かに単純かつ強力な戦術ではあるが、そもそもそれは人材も戦車も豊富な黒森峰だからこそ出来る戦術であって、大洗で同じ真似は出来ない。

 

「うん…、だからね、私がずっと学んできた西住流の戦術は使えないと思う」

 

「話はわかったが…、それでどうして俺が出てくるんだ?」

 

「…八幡君だから出てくるんだよ、学校で模擬戦した時も、聖グロリアーナと練習試合した時も、八幡君の作戦には驚いちゃったから」

 

「あんなもんはどれも初見殺しだけどな、それに…結果的に全部負けてんだぞ」

 

いや、本当にジンクス的に最悪じゃないですか?ちなみに負かした一人は君なんですよー?

 

「うん、だからね…、次は勝とう、私達みんなで!!」

 

「………」

 

あー…もう、全く、その言い方はちょっとズルくないですかね。

 

「あくまでも俺の意見だからな?参考になるかわからんぞ」

 

「八幡君の意見が聞きたいから、それでいいと思う」

 

「下手な作戦だったら遠慮なく却下してくれていいからな?」

 

「うん、そうする」

 

そうするんだ…、やっぱり戦車道になると西住さん、結構ガチですよね。

 

「はぁ…わかった、なら始めるか、作戦会議」

 

「うん!…えへへ」

 

「…なんだよ?」

 

俺の言葉を聞いた西住がなんとも嬉しそうに笑うので、ちょっと恥ずかしくなってくる。

 

「あ…えと、ごめんね、黒森峰に居た時はこうやって西住流を否定するなんて考えてもいなかったから…、これも八幡君の影響かな?」

 

「そ、そうか…?」

 

あー!もう!!なんだってこの娘はこういう事平気で言っちゃうのかね!?

 

しかも何が恐ろしいかって…、これ、西住は素でやっている、この天然っ子め、黒森峰が女子校でよかったな。

 

もしも黒森峰が共学だったらきっと多くの純真無垢な男子高校生が勘違いして西住に告白して撃沈されていただろうな、姉に物理的に。…姉かよ、しかも物理的にかよ。

 

下手すれば西住 みほ被害者の会とか出来そうなまである、これはちょっとお仕置き(意味深)が必要だな。

 

「だが…まぁ、そんな西住流とかけ離れた戦術使ったら、お前の姉ちゃん怒るかもな」

 

「…あ」

 

笑っていた西住が急に顔をうつむかせると…あれ?ちょっと震えてる?やべっ!?言い過ぎたか!!

 

「わ、悪い…、お前の姉ちゃんが怖かったからつい」

 

「…八幡君、どうしよう?私、お母さんに怒られるかも」

 

「…え?は?母ちゃん?」

 

…いったい今の話のどこから西住の母ちゃんが出てくるんだ?いや、会ったこともないけど。

 

「…お母さんはお姉ちゃんよりももっと怖いよ」

 

「…マジでか」

 

言われてみれば…西住姉妹の母親が西住流戦車道の家元でもあるんだよな、つーかあの姉の更に上とか、ドラゾンクエストのゾーマかよ。

 

姉住さんは人一人殺せるくらいの睨み付けるが使えたし、その母親の母住さんなら一睨みで戦車の方が勝手に爆発するレベルかも、うん、ないな。ない…よね?

 

「つーか、西住が大洗で戦車道再開したの母ちゃんは知ってるのか?」

 

「…わからない、お姉ちゃんが言ってなければいいけど」

 

つまり…西住本人からは伝えてない訳か、うん、詰んだなこれ。

 

「どど…どうしよう?八幡君」

 

「いや…、どうしようって言われても、どうしろと?」

 

「…そうだ!八幡君、今度家に帰る時、私と一緒に謝ってもらえないかな?」

 

「やだ、なにそれ怖い」

 

もう俺の中で母住さんのイメージがゾーマに固定されてるから。あと!西住さん!!そういう言動が健全な男子高校生には毒になるんですからねー!?

 

しかし…困った、西住の方がえらく怯えてしまっているし、これ、完全に俺のせいだよな。

 

西住流家元、西住の母親ね。

 

「…だったら、母親を納得させるしかないな」

 

「八幡君…、でもどうやって?」

 

「西住、西住流は確か…勝利至上主義、だよな?」

 

前に西住流について調べて際、そう本に書いてあった、西住流とは勝つ事であると。

 

ちなみにスローガンは突撃・突撃・また突撃だったりする、隣の晩御飯が常に狙われっぱなしである。

 

「う、うん…」

 

「だったら…勝てばよかろうだ、西住が自分のやり方でもって勝ちさえすれば、母親だって文句は言えんだろ」

 

「…私のやり方?」

 

「それがたぶん…西住の、自分だけの戦車道、だったりすんじゃねーの?わからんけどな」

 

「まだわからないけど…、うん!私、見つけてみる、私の戦車道!!」

 

それが一度は戦車道から離れた彼女の見つけたものなら、誰も文句は言えないだろうし、言わせない。

 

だってそれは…きっと、誰かから押し付けられた訳ではない、彼女が見つけた彼女だけの本物なのだから。

 

「…八幡君も、手伝ってくれる?」

 

「まぁ…その、なんだ、気が向いたらな」

 

それはそれとして…やっぱり西住殿にはちょっと教育(意味深)が必要ですね、そうやって安易に男子高校生に勘違いさせてはいけませんよ?


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