やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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ナオミがファイアフライを駆る時にかかるジャンカジャンカジャンカジャンカって軽快なBGM、好き。
サンダース戦って他の二次創作では結構呆気なく終わる作品多いですが自分は好きなんでじっくり書かせて貰います、というか漫画!カットは無いでしょカットは!!


比企谷八幡と西住みほは、作戦名で相反する。

「西住殿、やりましたね!!」

 

「まさか、私達が先に相手を撃破出来るなんて…」

 

作戦も無事に成功して、サンダース側のシャーマンを一両撃破する事が出来ました。

 

これも短い時間で木材を集めてくれたアヒルさんチームの皆さんと、きっちり待ち伏せを成功させてくれたカバさんチームの皆さんのおかげです。

 

…八幡君、作戦会議でロンメル戦術の話する時なんだかノリノリだったなぁ、エルヴィンさんともたまに話してるし、ファンなのかな?

 

「でも、この戦いはフラッグ車を叩かないとダメなんだよね?」

 

「次はどうする?」

 

「…次は」

 

…相手側が通信傍受機を利用されている事に気付いてない今がチャンス、とにかくフラッグ車を見つけないと。

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「いい気になるなよ…」

 

森の中、サンダース高校副隊長であるアリサは通信傍受機を再び調整し直していた。

 

ーさっきのはきっと何かの間違いよ、たまたまフラッグ車の近くにⅢ突が居たにすぎないわ。

 

ー今度こそあんた達の作戦を完璧に把握して殲滅してあげる!こんな試合、さっさと終わりよ!!

 

『全車、128高地に集合して下さい、ファイアフライが居る限り、こちらに勝ち目はありません、危険ではありますが128高地に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます』

 

アリサの無線が大洗側の通信を傍受し、彼女はそれを聞いて大きな笑い声を上げた。

 

「あっはっはっは!捨て身の作戦に出たわね!!でも…丘に上がったらいい標的になるだけよ」

 

ー大洗の全車両が集結するのなら尚更…、これで試合は決まったわね。

 

「128高地へ向かって下さい」

 

アリサはすぐに隊長であるケイに連絡を入れる。

 

『どういう事?』

 

「敵の全車両が集まる模様です」

 

『ちょっとアリサ、それ本当?…どうしてわかっちゃう訳?』

 

「…私の情報は確実です」

 

『…、OK!全車、Goahead!!』

 

ふぅ…と隊長のケイが自分の言葉を疑わなかった事にアリサは安堵した、それと同時に自分が今、明らかにケイの掲げるフェアプレイに反した事をしている罪悪感も生まれてくる。

 

ーやっぱり隊長は人が良すぎるわ、だからこそ戦車道選択者の多い我がサンダース校の隊長なんだろうけど。

 

ー私が…必ず勝たせます、たとえ、どんな手を使ってでもね!!

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『なにもないよお~!!』

 

モニターにて、128高地の中心でケイさんが叫ぶ、可愛い。

 

とまぁ、シャーマン軍団を率いて128高地へとやって来たケイさんだったがそこはもぬけの殻である、見事に西住の嘘情報に釣られてくれたようだ。

 

「…サンダース側はいったい何をしているのかしらね」

 

「急に128高地に移動しましたからね」

 

これ、事情を知らない人がモニターで見ているだけだと結構まぬけだな、謎の采配もいいところだ。

 

「ですが…、これでサンダースのフラッグ車は完全に孤立したわね」

 

ここからは時間との勝負になるだろう、サンダースの本隊が戻ってくるまでにフラッグ車を見つけて叩かねばならないのだから。

 

西住達大洗側もフラッグ車を見つけるべく、各車両が偵察に出ている。

 

モニターが切り替わり、そこに映るは森の中、サンダース側のフラッグ車である。

 

…あれ?あのフラッグ車から顔出してるの、例のヒステリックアリサじゃないか?

 

サンダース側の本隊が9両全てフルで動いていたから通信傍受機を使ってるとしたら唯一姿を見せてないフラッグ車だろうと思ってはいたが…、まさかその車長がこいつだったとは。

 

たかしの通信も傍受してたりしてないよね?アリサさん。

 

だが…良かった、そんなフラッグ車に向かう我が大洗学園の戦車がモニターには映っているのだ。

 

サンダース校のフラッグ車を発見するという大金星を得たその戦車は…なんとアヒルチームの八九式である、…八九式かよ。

 

両戦車は森の中、ばったりと遭遇、偵察の為か外に顔を出していた磯辺とアリサもお互いに茫然としていた。

 

…しばしの沈黙、そりゃそうだ、お互い完全に不意の遭遇だもんね。ちなみに実際の戦争中、こんな感じでばったり遭遇し、お互い敬礼して別れたケースがあったりとか。

 

しかし今回に限ってはそんな爽やかな話は一切無く…。

 

『右に転換!急げ!!』

 

『蹂躙してあげなさい!!』

 

急ぎ、進路を右に逃げる八九式とそれに向けて一発砲撃を放つアリサのシャーマンA1。

 

砲撃はなんとか外れてくれたが、アリサはそのまま八九式を追いかけ始めた。

 

「ふん…、フラッグ車にあそこまで接近しておめおめと逃げるなんてね」

 

「いや、八九式ではあの距離でもシャーマンの装甲は抜けない、八九式の車長はいい判断をした」

 

良かったなぁ磯辺、姉住さんが誉めてるぞ、ついでにうちの八九式がディスられてるけど。

 

「それはわかってますが…、うちなら今ので終わってます」

 

「確かに、絶好の機会ではあったがな」

 

あー、あー、全く、強戦車持ちはこれだから、うちはもう八九式使ってる時点でお察し下さい。

 

「それに比べて…、サンダースのフラッグ車の車長は失態ですわね、フラッグ車の立場を考えずに八九式を追うなんて」

 

「確かに、フラッグ車が一両で他戦車を追い回すなんてあまりない話ですね、やっぱり相手が八九式だからでしょうか?」

 

もうやめて!はっきゅんのライフは0よ!!

 

「得意の絶頂は油断の崖端であった、という言葉があるわ」

 

「徳富蘆花か」

 

「あら意外、知ってるのね?まほさん」

 

「休日はよくロードワークと読書をして過ごす」

 

そこで友達と遊ぶとか言わない辺り、この人やっぱりぼっちなんじゃないの?俺も休日は大体家でゴロゴロしながら本読んでるし。

 

「そう、私達は休日はいつもティータイムを頂いてますの」

 

対するダージリンさんの方は、まぁ予想通りといえば予想通り、あれ?でもこの人達、今もティータイムしながら試合見てますよね?24時間ティータイムなの?ならサイゼのドリンクバーとかどうですかね?紅茶もあるよ。

 

「そういえばマックス、あなた、休日は何をしているのかしら?」

 

「何をって言われても…、本読んでるかゲームしてるくらいですね、基本的に家から出ませんし」

 

いや、マジで実家最高!最近じゃ日曜日でさえ戦車道の授業に駆り出されてるんだ、たまの休日となればそりゃ引きこもっちゃうよ。

 

「はっ、ずいぶん堕落してるのね、まぁあなたにはお似合いかしら?」

 

「あぁ、あとネットとか見てますか」

 

「………」

 

「…え?何?現副隊長、その微妙な顔」

 

「うるさいわね!あと私の名前は逸見エリカよ!!」

 

いや、知ってるけど…、何?名前で呼んで欲しいの?えっと…副見、だっけ?

 

そんなやり取りもそこそこにモニターではいまだに八九式とシャーマンA1の追いかけっこが続いている。

 

敵のシャーマンA1から放たれる容赦ない砲撃に八九式から身を乗り出している磯辺は発煙筒を取り出した。

 

…ここで一個使っちゃうか、まぁ緊急事態だしな、仕方ない。

 

磯辺はその発煙筒をバレーボールのサーブの要領でシャーマン目掛けて放つ、放たれた発煙筒は煙幕となり人力スモークの出来上がりだ。

 

「面白い発想だな…」

 

「えぇ、これが大洗学園の魅力ですわ」

 

モニターの画面が切り替わる、逃げる八九式の前方には我が大洗学園の全車両が集結済みだ。アリサのシャーマンA1は誘い出されたという訳だ。

 

前方には最大火力のⅢ突とM3リー、そして38(t)の三両、しかしこれは単なる囮だ。

 

本命はすぐ真横で待機しているⅣ号、相手が前方に気を取られた瞬間を狙うって訳か。

 

…来た!!

 

アヒルチームの八九式の誘き出されたシャーマンA1は真横のⅣ号の砲撃を察知したのか、すぐさま停車し、後退していく。

 

…失敗か、囮に気付いたのかすぐにⅣ号を見付けた辺り、なんだかんだいってもサンダースの副隊長なだけはある。

 

「大洗学園、今ので決められなかったのは痛いですね…」

 

「そろそろサンダースの本隊も動き出すわね」

 

そのまま逃げようとするシャーマンA1を大洗学園が全車両で追う、この状況だけで見るなら大洗学園側は優勢と言えるだろう。

 

だが…、サンダース側の本隊はまだ8両のシャーマン軍団が控えている、フラッグ車のアリサもさすがにケイさんに救援を求めている頃だし、こんな優勢、すぐにひっくり返るだろう。

 

…そう、8両で来たのなら、だ、ここはケイさんのフェアプレイ魂に祈るしかない。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『大洗学園、残り全車両こちらに向かって来ます!!』

 

「ちょっとちょっと、話が違うじゃない、何で?」

 

フラッグ車であるアリサからいきなり来た通信にケイは驚いた。

 

そもそも…、今日のアリサの情報はどこかおかしい、序盤は正にドンピシャで大洗の行動を予測していたが、中盤以降はさっぱりだ。

 

ーアリサも来年には隊長になるんだし、ちょっとは好きなようにやらせてたけど…、さすがに変ね。

 

これがケイの本音である、彼女とて、今日のアリサの指示の的確さとその後の失態については疑問があったが、彼女の自信と次期隊長としての期待に素直に信じる事にしていた。

 

『はい、お、おそらく…無線傍受を、逆手に取られたのかと』

 

アリサの返答でケイは現状を理解した、序盤の優勢も、その後、自分達が128高地に誘導された理由も。

 

となれば…、まず最初にやる事は。

 

「ばっかもーん!!戦いはフェアプレイでって、いつも言ってるでしょ!!」

 

『も、申し訳ありません…』

 

「いいからさっさと逃げなさい!ハリアップ!!」

 

とにかく、フラッグ車のアリサに指示を飛ばす、通信傍受はフェアプレイではないが、さすがに相手に勝利を譲るほどケイもお人好しではない。

 

…とはいえ。

 

「…うーん、エイトボールの言っていたのはこれかぁ」

 

『大洗はアンフェアな事はしませんよ、向こうは…ね』

 

戦車格納庫で出会った彼はそう言っていた、思えば、あの時から彼は通信傍受機の存在に気付いていたのかもしれない。

 

「エイトボールにあれだけフェアプレイの話してて、うちが通信傍受なんかやってたなんて…、カッコ悪いわねー」

 

大洗のアンフェアを疑っておいて、じつは通信傍受してたなんて、しかもここから全車両で反撃なんてしてしまえばそれこそアンフェアもいいところだ。

 

ーそういえば、エイトボールはもう1つ面白そうな事を言っていたわね。

 

『ただ…フェアプレイに行くなら大洗と同じ車両数で戦ってみるとかどうかなーって?』

 

ーうん、よし、決めた。

 

「こっちも同じ数でいこっか?」

 

あっさりとケイはそう告げた、それに異議を唱える者が出てこないのは日頃の彼女のカリスマ性を物語るようだ。

 

「敵は五両、三両だけ私について来て、ナオミ、出番よ」

 

『イエス、マム』

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

「サンダースの本隊が動き出しましたが…変ですね、四両しか動きがありません」

 

「フラッグ車を合わせて…大洗と同じ台数か」

 

…やっぱりケイさんは良い人だわ、まさか本当にあの戦車格納庫での話にノッてきてくれるなんてな。

 

通信傍受機だってフェアプレイか?と聞かれればそりゃ反してると言えるが、それでわざわざ自分達と同じ数に戦車を合わせてくれるなんて。

 

でもファイアフライはしっかり連れてくるんですよねー、うん、勝ちを譲る気はないって事だけはわかります。

 

「通信傍受機の詫びのつもりかしらね…、全く、甘っちょろいわ」

 

「あら、騎士道精神に溢れてて宜しいんじゃなくて?私達聖グロリアーナのようにね」

 

…あれれー?確か前の練習試合の時にマチルダ三両率いてうちのⅣ号囲んだどっかのチャーチルの車長が居た気がするんですけど?気のせいですかね?

 

思わず抗議の目線でダージリンさんの方を見るとオレンジペコは苦笑いをしているが彼女自身は涼しい顔。

 

「恋と戦いはあらゆる事が正当化されるの、覚えておくといいわよ、マックス」

 

…さすが英国流、二枚舌にも程がある。

 

「…数が減ってもサンダース側の有利には変わりないですね、本隊の合流前にフラッグ車を倒さないと大洗は厳しいです」

 

オレンジペコが話をなんとかそらそうと依然として続く、逃げるアリサのフラッグ車とそれを追う大洗の全車両が映るモニターを見て呟く。

 

大洗学園の戦車は次々に砲撃を放ち、フラッグ車はなんとか逃げながらそれを避けている。

 

「ふふっ…まるで鬼ごっこね、こんな試合初めて見るわ」

 

「…そんなに珍しいんですか?」

 

「基本的に戦車道の試合は小隊、または中隊規模での撃ち合いが多い、エリカ、珍しいケースだ、今後の参考の為にもよく見ておけ」

 

「…了解しました」

 

確かに通信傍受機とかあったりそれを利用したりイレギュラーもいいところなんだろう、普通の戦車道の試合はよくわからんが。

 

つーか…こんな試合展開が参考になるのだろうか?やっぱり姉住さんは戦車道馬鹿だな。

 

「…ですが、このままじゃ決め手に欠けるわね」

 

…走りながらの砲撃、行進間射撃なんてよほど運がない限りまず当たらない、とはいえ、逃げるシャーマンA1相手に止まって撃つ事は困難だ。

 

モニターには大洗の後方から迫るサンダースの本隊が映る、…ついに来たか。

 

最初の囮作戦も、今の鬼ごっこでも、サンダースのフラッグ車を落とす事は出来なかった、チャンスはそう何度も続くものじゃない。

 

観客席にも砲音が届いた、追い付いたサンダース校、それを知らせるかのようにファイアフライが一発砲撃を放ったのだ。

 

それはまるでチャンスタイムは終了とでも大洗学園に告げるかのように。

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…今のは」

 

「ファイアフライ、17ポンド砲です」

 

砲撃を聞いた私はすぐにキューポラから顔を出して後方を確認します。

 

そこには四両のサンダース校の戦車がこちらに向けて前進してくるのが見えました。

 

「…四両だけ」

 

残りは…どこかに待ち伏せてる?

 

…もしかして、八幡君が試合中に敵の戦車の数が減っても気にするなって言ってたのはこれの事なのかな?

 

「距離!およそ5000メートル!!」

 

「…ファイアフライの有効射程は3000メートル、まだ大丈夫です」

 

でも…これで前方はフラッグ車とはいえ囲まれた…、サンダースも距離はまだあるけどすぐに追い付いてくるだろうし。

 

「どうする?みぽりん!!」

 

「…カメさんチームは中央へ、ウサギさんは後方をお願いします、カバさんと我々あんこうは引き続き、フラッグ車を攻撃します」

 

…問題はファイアフライ、ナオミさんなら有効射程に入ったらすぐにこちらを撃破する為に撃ってくる。

 

「アヒルさんチームの皆さん」

 

『はい!西住隊長』

 

八幡君は負けて不満そうだったけど…、模擬戦でのアヒルさんチームの動きには本当に驚きました。彼女達の練度ならきっと大丈夫。

 

「…ファイアフライをお願いします」

 

『了解です!!リベロ並のフットワークで食らい付いてみせます!!』

 

「これより【ちょっかい作戦】を開始します!!」

 

八幡君はこの作戦名より自分の作戦名を推してましたけど、とりあえずそれは却下しました、…個人的に。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…サンダースの隊長、ケイさんもやってくれますね」

 

「今のファイアフライの砲撃の事かしら?」

 

「えぇ、これで孤立無援だったフラッグ車に味方の応援を告げ士気を高め、逆にうちは敵の増援に若干ですが動揺してますし」

 

「戦いにおいて士気は重要だ、サンダースのケイはそれを良く理解している」

 

どんなに強力な戦車でも、乗っているのは人間だ、そして人間というのは精神的に左右される要素が多すぎる。

 

あのファイアフライの砲撃はその精神的要素に勢いをつけさせるには充分過ぎる。

 

「とはいえ…、俺ならファイアフライは隠しといて狙撃させますけどね、スナイパーこそファイアフライの真骨頂だと思いますし」

 

「ふふっ、マックスらしいわね」

 

「それもまた選択肢の一つだ、一概にどちらが優れているか、とは言えないがな」

 

「どちらにせよ、大洗学園はサンダースの車両に挟まれてピンチですね…」

 

前方にはフラッグ車のシャーマンA1、後方にはファイアフライを含む四両のM4シャーマン。

 

なまじ目の前のシャーマンA1がフラッグ車なのもあり、今さらこの追いかけっこを中断する訳にもいかない。

 

「サンドイッチはね、パンよりも…中のきゅうりが一番美味しいの」

 

「…はい?」

 

…はい?

 

「挟まれた方がいい味だすのよ」

 

えと…すんません、もうどう反応していいものやら。

 

「えと…、きゅうり、好きなんですか?」

 

「えぇ、我が聖グロリアーナの学園艦では一年中、美味しいきゅうりが取れますのよ、我が校の自慢ですの」

 

…なぜここでドヤ顔?

 

知っていて?ダージリンさん、きゅうりって栄養価ないらしいわよ。

 

なのでたいして栄養価ないくせに料理の味を侵食するきゅうりを俺はあまり好きになれない、一本漬けとかなら食べるけど。

 

という事はダージリンさんももろきゅうとかきゅうりの一本漬けとかかじってるのかしら、なにそれ優雅。

 

「どうかしら?聖グロリアーナの学園艦の素晴らしさ、少しはわかりまして?」

 

…ひょっとしてこの人、今のがとんでもないセールスポイントだとでも思っているのだろうか?

 

「え、えと…、大洗は何が有名なんですか?」

 

なんとか話を上手く回そうとオレンジペコが必死に気遣ってるし…、この娘も苦労してんなぁ…。

 

「まぁ、普通に水産物じゃないか?あんこう料理とか有名だし、あと干し芋か?」

 

うちの会長なんか四六時中食ってるくらい好物だもんな、あれ。ちなみに個人的にはマックスコーヒーを押したいがあまり見かけない、ちくしょう。

 

「あんこう?干し芋?ふんっ…、やっぱり田舎学校の名物なんてそんなものね」

 

現副隊長さんがそう言って噛みついてくる、いや…こんな事で対抗意識燃やさんでもいいだろうに。

 

「じゃあ黒森峰は何が有名なんだよ、トマトとか抜かしたらぶっ飛ばすぞ」

 

「…何で急に強気なのよ?だいたい、あなたに教える義理はないわ」

 

「黒森峰は学園内の工場で作られるノンアルコールビールが有名だな、生徒も平均して一年辺り150Lは飲んでいる」

 

「た、隊長…」

 

「え?は?ノンアルコールビール?」

 

なんか意外な答えが来たぞ…、黒森峰ってもっとお堅いイメージだったんだけど。

 

てか、いいのか?学園艦って大人もそりゃ居るけど、あくまでも高校生達の学舎みたいなもんだろ。

 

「…それ、あんた達も飲んでるの?」

 

「そうだな…、家の集まりでは特に飲まされる」

 

「な、なによ…、別にいいでしょ!!」

 

なんだかこの二人が戦車道練習終わった後に家でキンキンに冷えたノンアルコールビール飲んでこの一杯の為に生きているとか言う姿を想像してしまった…、どこの疲れたOLだよ。

 

「なら…ひょっとして西住も飲んでたんですか?」

 

西住も元々は黒森峰の生徒なんだし…、黒森峰のある熊本の女性はお酒に強いらしい。

 

あらやだ西住さん、もしかして家ではノンアルコールビールの缶何本も開けてたりするの?あの顔でちょっと想像つかないんだけど…。

 

「あの子には飲ませない方がいいわよ…、酔うと面倒だから」

 

「そういえば酔ったみほの相手はいつもエリカがしていたな」

 

「ち、違います!あれはあの子が勝手に絡んで来て…、相手させられてたんですよ!!」

 

…なんだか姉住さんの目が少し優しいな、現副隊長さんも否定しながらも心から嫌がってはいなさそうだ。

 

ここら辺は俺達の知らない、彼女達だけが知る黒森峰の西住の話なのだろう。

 

…とはいえ。

 

「いや…、そもそもノンアルコールビールでどうやって酔うんだよ?本当にノンアルコールなの?脱法してないよね?」

 

「…こっちが知りたいわよ、酔いつぶれない分尚更面倒なんだから」

 

…西住にノンアルコールビールね、酔った西住とかなんだか見てみたい気がしないでもないけど。なんか怖い。

 

「ふふっ、お酒に酔ったみほさん…、興味がありますわね、ペコ、今度聖グロリアーナでノンアルコールジンをみほさん達を誘って頂きません?」

 

「それ…ダージリン様も飲むんですか?」

 

「もちろんですわ、相手だけ誘って自分は飲まないのは失礼でしょう?」

 

「…やめた方がいいと思いますよ」

 

…というか君達、とりあえず頭にノンアルコールと付ければ問題ないとか思ってないよね?

 

閑話休題、話が逸れすぎた、なんで急にうちの学園艦のここがすごい!選手権になってるんだよ、きゅうりか?きゅうりがいかんのか?

 

モニターを見るとファイアフライを含むサンダースのシャーマン本隊はどんどん大洗に接近している、もうすぐファイアフライの有効射程に入るだろう。

 

…対する大洗学園側は、アヒルチームの八九式がどうやらすでにスタンバってるようだ。

 

という事は、ついに実行するのか、あの作戦…【消しカス作戦】を!!

 

そりゃあいい、シチュエーションとしては最高だ。今まで散々馬鹿にされていた八九式の真の力をこの強豪校の方々に見せつけてやれ。

 

…ちなみにこの作戦名、西住には却下されたが俺は認めない、これはどう考えても消しカス作戦で間違いないだろ。


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