やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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沙織「お気に入り1000人突破記念リクエストで私を選んでくれたみんなーありがとう!!わたしって細かい事はあんまり気にしない、おおらかな性格だから、ずっと一緒に居ても全然負担にならないよ!お料理もお裁縫も一通りこなせるし、苦手な物だって貴方の為なら合わせるし、母性愛豊かなかに座だから…、結婚するには最適だと思うな!!」

八幡「重い長い重い長い重い重い…」


【番外編】どこまでも、武部沙織は恋に戦車に一直線。その1。

「皆、一回戦はご苦労だった、今回の我々の活躍ぶりにファンレターが届いている、各自目を通すように」

 

戦車道全国大会も無事に一回戦を突破し、勢いに乗る我等が大洗学園戦車道チーム。

 

それもただ単に一回戦に勝った、という訳ではない。何しろ相手は4強の一角とも言えるサンダース大学付属高校なのだ。

 

初出場の無名高が強豪校に勝利した、こういう大物食いというのは誰もが好むものなのか、大洗学園の生徒会に戦車道チーム宛のファンレターが届く程だ。

 

「では比企谷、配ってくれ」

 

「…へいへい」

 

…それはいいんだけどさ、なんでそのファンレターの仕分け作業が俺の仕事なのよ?絶対これ生徒会の仕事の範疇だよね?

 

「ファンレターですか、私も華道の作品で似た様な物を頂いた事がありますが…」

 

「きゃー!ついに来たよ!やっぱり戦車道やってるとモテモテになっちゃうね!!」

 

ファンレターと聞くや否や武部のテンションの上がり具合がヤバい、ぴょんぴょん跳び跳ねてなんかもう鬱陶しいくらい。

 

「西住殿ならきっと沢山貰ってたんですよね?」

 

「んーん、全然だよ、前の学校じゃお姉ちゃん宛にはいっぱい来てたけど」

 

まぁあの姉ちゃんならそうだろうな、西住流の娘にして高校生MVPで国際強化選手とか、肩書きいろいろ乗っけた有名人なんだし。

 

「とりあえずあんこうチーム…、特に西住宛のファンレターがこれだ」

 

西住宛に届いた束になったファンレターをまとめて渡す。

 

「…え?わわっ!こ、こんなに来てるの!?」

 

「すごい!さすがは西住殿です!!」

 

「何かの間違いじゃないかな…?お姉ちゃんと間違えてるとか?」

 

西住本人はえらく驚いているが戦車道チームの隊長なんだし、一番多くファンレターが届くのはそりゃ当然だろ。

 

「ど、どうしたらいいんだろ?」

 

「やったねみぽりん、これを機会に素敵な男の人のファンと知り合いになれるかも…、あれ?このファンレターの名前、もしかして隣のクラスの男子かも」

 

まぁファンレターと言ってもうちの戦車道チームは一回戦を突破したくらいだし、全国的な知名度で言えばまだまだ全然だ。

 

なのでその多くは大洗学園の生徒から届いている、いや、あいつらマジで戦車道復活した時は『また生徒会が何かやってる』程度の認識だった癖に、一回戦で強豪校倒したとなったらこれだよ。

 

どんだけ手のひらぐるんぐるん返してるの?ドリルなの?まぁ…別にいいけどね。

 

「こっちも男子だな、…この名前も見覚えがあるぞ」

 

「こちらも男性の方ですね、私のクラスの人のもあります」

 

…いや、違うな、こりゃ戦車道チームへのファンレターってより全員西住目当ての出会い厨かよ。

 

西住の戦車に乗るスタイルが基本、戦車から顔を出しているのがほとんどだしな、そりゃ目立つに決まっている。…本人の容姿も含めて。

 

大洗に転校したての西住とかちょっとぼっちだったんだけど、目立つようになったらこれかよ。こいつらどんだけ手のひらぐるんぐるんなんだよ、いっそもげればいいんじゃね?まぁ…別にいいけどね。

 

「是非とも練習の手伝いをさせて下さい…、と書いてありますね」

 

あぁ、そりゃいい、是非とも手伝ってもらおう。ちょうど砲撃用の的が足りないと思っていた所だし。

 

まぁ…別にいいけどね、西住も友達欲しがってたし、これを機会に男友達とかも沢山出来るんじゃね?別にいいけどね、俺には関係ないし。

 

「で、どうするの?みぽりん、会ってみる?」

 

「そ、そんな…、知らない男の人とか、む、無理だよ、その、ちょっと怖いし…」

 

「えー!もったいないよ!!」

 

「………」

 

まぁ…いいけどね。うん。

 

「ねぇねぇ比企谷!私は?私宛のファンレターは?」

 

武部が食い気味に俺に近寄ってくる、ちょっと!近いんですけど!!飯を前にした犬じゃないんだからちょっとは落ち着け。

 

「んながっつかんでも…、ほら」

 

武部宛に届けられたファンレターの束を渡す、意外な事に、その数はなかなか多い。

 

「わぁ!武部殿もさすがですね!!」

 

「ふふん♪当然よ、ほら、私ってモテちゃうから、みぽりんにだって負けないよ」

 

「うんうん、沙織さんの明るい性格と親しみやすさ、皆わかってるんだと思うな」

 

和やかなムードの三人だが、事前にファンレターの仕分け作業をした俺にはもうオチがわかってるのでここは比較的武部に厳しいお二人にバッサリ言ってもらおう。

 

「これは商店街の魚屋の親父さんからだな…」

 

「こちらは八百屋さんからのようですね」

 

「…え?ちょっとちょっと、どういう事なの?」

 

「たぶん、沙織さんの馴染みの商店街の方々が送ってくれたファンレターだと思いますけど」

 

「モテモテだな、沙織」

 

うん、知ってた、武部さんマジモテモテおめでとう、しかしこの二人も容赦ないね。

 

「いや、応援してもらってるのは嬉しいんだけど…、男の子からのは無いの?」

 

「あるぞ」

 

「もう、もったいぶっちゃって!やっぱりあるんじゃない、誰から?やっぱりクラスの男子から!?」

 

「沙織が昔からよく面倒見ている近所の小さい男の子からだ、喜べ、将来結婚したいとまで書いてあるぞ」

 

容赦どころかなんというオーバーキル、とりあえず武部、嫁の貰い手は確保したな、おめでとう。

 

「何か私の求めてたモテ方と全然違う!みぽりんばっかりズルい!!」

 

「えぇっ!?私?」

 

「あ、あの…武部殿、試合の中継では基本的に戦車しか映りませんので、皆さんが武部殿の事を知らないのも当然かと」

 

「まぁ西住は試合中でもⅣ号から顔出してるしな、目立つんだろ」

 

「そんな…、私、全然そんなつもりじゃなかったんだけどな」

 

「じゃあ私も次の試合!Ⅳ号から顔出す!!」

 

「おい、仕事しろ、通信手」

 

そもそも砲弾飛び交う戦場で常に身体乗り出す西住が普通に考えておかしいから、戦車自体は特殊な謎カーボンで守られてるが本人はそうじゃないのは当たり前だし。

 

西住曰く、「滅多に当たるものじゃないから大丈夫」らしい、いや、滅多にって言ってる時点で当たる可能性もあるって事だから。

 

しかも本人がそんな状況でも顔色一つ変えないって、どんだけ強固なメンタルしてるんだよ。

 

「そうだよ!通信手!これなんて通信手って何するかわからないけどとりあえず頑張って、みたいに書いてあるし…」

 

「確かに戦車について詳しくない人からすれば車長や砲手、操縦手はわかると思いますけど、私の装填手や武部殿の通信手はあまりピンとこないのかもしれませんね…」

 

「そんなー!私達だって頑張ってたのに!!」

 

「まったくだ…、装填は戦車の生命線とまで言われてるし、通信手が機能してなかったら戦車部隊として成り立たないのにな、この2つを蔑ろにする奴は戦車の事を何もわかってない」

 

「比企谷殿…、まさか私達の事をそれほど評価して下さっていたなんて!!」

 

「え?あ、いや…」

 

今のは武部や秋山を誉めてたんじゃなくて装填手や通信手の重要性をだな…。

 

「…そっか、ありがとね、比企谷!!」

 

「…おう」

 

…まぁいいか、これで武部が自分のポジションの重要性について、わかってくれたのなら。

 

隊長車の通信手となれば常に各車両の位置を把握して西住に伝え、西住の作戦を各車両に伝える、当然、ここが機能してなければ戦車部隊は成り立たない。

 

特にサンダース戦は通信傍受機のおかげで無線も使えず、武部はメールにてその全てをやってのけたのだ、終盤のあの試合展開まで持っていけたのは彼女のおかげと言うしかない、本人には言わんけどね。

 

「でもこれだけあるんだし…、探せばきっと同世代の男の子のファンレターも来てるよね?」

 

諦めが悪いと言うか、武部は自分宛に届いたファンレターを物色し始めた、マジで必死だなコイツ…、どんだけモテたいのだろう。

 

「…ん?あっ!!これ!これ見てよ!!」

 

あぁ、ついに見つけてしまったか、事前にファンレターを仕分けしてた俺は当然知ってたけど面倒な事になりそうだったからあえて言わなかったんだけどね。

 

「これ!手紙がハートマークで封がしてある!これ、絶対私宛のラブレターだよ!!」

 

…いつの間にやら武部の中でファンレター=ラブレターになってるし。

 

しかしそうなのだ、ファンレターの仕分け中にあったのだ、この武部宛のハートマークの封がしてあるファンレターが。

 

男でハートマークの封とかなんか気持ち悪いと思うのは俺だけだろうか…、昔俺宛に届いた偽ラブレターでもハートマークなんて無かったのに。…なんで騙されたんだよ、昔の俺は。

 

「まさか…本当に沙織さん宛にラブレターが?」

 

五十鈴さんが普通に驚いてて普通に失礼である、基本的に仲が良いけど、容赦ないよね、五十鈴さん。

 

「残念だったね華、やっぱり私のモテオーラ、わかる人にはわかるんだよ」

 

どや顔で早速武部は封を開ける、どうでもいいが、わかる人にはわかるって、それ、モテてると言えるの?

 

「…あれ?」

 

「? どうしたんですか?武部殿」

 

…おや、武部の様子が、なんかラブレターを貰ったリアクションではなさそうだが、どうした?

 

「どうした沙織…、何て書いてあったんだ?」

 

「…一目見た時から好きでした、付き合って下さいって」

 

「一目惚れ…、沙織さん、すごい!」

 

「やっぱり武部殿、モテモテですね!!」

 

…いや、手紙を読む武部の様子はそんな感じじゃなさそうだけどな、いやでも、付き合ってくれって事はそういう事だと思うんだけどな。

 

「でもこれ…、この手紙、女の子から…なの」

 

「「「「「…………」」」」」

 

あぁ、うん…、もう、何と言っていいのやら。

 

「モテモテだな、沙織」

 

「違うの!私の希望するモテ方はこういうんじゃなくて…、って、そんな事より!!」

 

「それ…、どうするの?沙織さん」

 

「…どうしよう?」

 

「そうか、沙織はそっちの気があったのか」

 

「私は男の子にモテたいの!!」

 

え?そうなの?普段あまりにも女の子特有のゆりっゆりな空間作ってたからもしかしてとも思ってたんだけど。

 

「ならほっとけばいいんじゃねーの?」

 

「でも…、このままにしておくのも」

 

「…うん、この子、一年生みたいだけど、きっと勇気を出してこの手紙を書いてくれたんだと思うし」

 

俺から言わせてもらえば放置しとけばいいものを、きっとこういう優しい所が好まれるのだろう、本当に何でモテないんだコイツ。いずれ私がモテないのはお前らが悪いとか言い出さないよね?

 

「なら断るしかないな」

 

「うん…、そうだよね、でも…なるべく傷付けたくはないし」

 

「正直に私は男の人が大好きです、とか言えばいいんじゃね?」

 

「それだけだとなんか私が変態みたいじゃん!!」

 

…まぁ確かに、それだと私、ビッチですと発言してるように聞こえる、不思議!!

 

「私に妙案があります!!」

 

「何々ゆかりん?聞かせて!!」

 

「もうすでにお付き合いしている男性が居ると言って断ればどうでしょう?」

 

あぁ、ラノベとか漫画とかで使い古されてるやり方だけど確かに一番無難な方法ではあるな。

 

「ですが…、その方法ではすぐにバレてしまうのでは?実際に今お付き合いしている男性はいらっしゃいませんし」

 

「…あぅっ!?」

 

五十鈴の言葉のナイフがずかずか武部に突き刺さる、しかも効果は抜群だ。

 

「…駄目ですか、いい方法だと思ったんですが」

 

いや、秋山の作戦は悪くはないと思う。

 

「別に、フリでならいいんじゃないか?」

 

「…比企谷?」

 

「いや、実際に誰かと付き合わんでも、彼氏が居た事実さえあれば武部が女子と付き合うつもりがないのも伝わるだろ」

 

「そっか…、そうだよね!!」

 

これで問題解決っと、そもそも放置しとけばいいと俺は思うけどね、武部の性格を考えたらそうなるとズルズル引きづりそうだし。

 

よし、ファンレター配る続きするか、さっさと終らせよう、仕事はちゃっちゃとやって余った時間を有意義に堪能するに限る。

 

「次はバレー部、お前ら宛のだぞ」

 

「比企谷コーチ、もしかしてバレー部に入部希望の人とかから来てないか?」

 

いや、君達せっかくやって来た仮入部希望の人を初日で挫折させまくってるでしょ?もう少し練習メニュー考えた方がいいよ。

 

「そうなるとやっぱり問題は彼氏役の方ですね…」

 

「沙織さん、誰か知り合いに頼める人って居るの?」

 

「仲のいい男の子も少しは居るけど、この手紙をくれた子の事、あまり話すのもアレだよね…」

 

「確かに…、下手に話が広まれば今後のこの手紙の相手の学校生活に関わるな」

 

「事情を知ってて、口が固くて、信用出来る男子…か」

 

後ろの方であんこうチームが今だひそひそと何やら作戦会議中である、俺から言わせてもらえばそんな都合のいい男居るわけないと思うけど。

 

そういえば今週の日曜日は戦車をメンテナンスするから珍しく戦車訓練も休みになってたな、久しぶりの休日だし、思う存分引きこもろう、よっしゃ、今から楽しみである。


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