やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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*前話の選択肢で【慣れている秋山が一番だな…】を選択した方のルートです、秋山殿と八幡のアンツィオ潜入偵察。

せっかく二人とも自宅が学園戦艦内にあるので、生まれは置いといて育ちは結構昔から学園艦内に居た感じにしました、ほら、アニメでも冷泉さん起こす時小さい子供も居ましたし。小学校うんぬんはとりあえず今は置いといて下さい。

ちなみに八幡の自宅が学園艦内にある理由は単純です、だって実家に寄生する気満々な彼に一人暮らしは似合わないから(笑)


アンツィオ校秋山√『秋山優花里と比企谷八幡は、学園艦在住である。』

そしてアンツィオ校への潜入偵察決行日、前回と同じく、アンツィオ行きのコンビニの定期船に乗り込む事になった。

 

…なんで観光客に成り済ます予定なのに、またコンビニ店員の格好して潜入してんだよ。生徒会の全面協力とはなんだったのか?きっと予算無かったんだなぁ…。

 

「風が気持ち良いですね~」

 

さて、俺の隣には転落防止用の柵に手を置いて風を感じている秋山がいる。

 

「海の上を吹く風って気持ち良いと思いませんか?」

 

「まぁわからんでもないな」

 

なんせ俺が昼飯を教室じゃなくて外のベストプレイスで食べているのも、その風の気持ち良さを感じたいから、だったりする。

 

別に教室に居場所がない訳ではない、断じてない!!

 

「でもよかったんですか?私で」

 

「? 何がだ?」

 

「えと…いえ、てっきり他の皆さんを選ぶと思っていたので」

 

「遊びに行く訳じゃないしな…、秋山なら知識も経験もある、選ばん理由がない」

 

「ありがとうございます!選ばれたからには誠心誠意、努力してこの任務を成功させます!!」

 

ビシィッと敬礼するビシィさん…じゃなくて秋山。いや…そこまで気負わんでもいいけど。

 

「でも…嬉しいです、皆さん私の事を心配してくれて」

 

「中には目的が若干私利私欲な奴も居たけどな…」

 

デート場所の下見目的だったり、料理目当てだったり、あと冷泉はパスしてたか…。

 

「それでも嬉しいです、私、ずっと友達も居ませんでしたから、戦車道を始めて皆さんと出会えて良かったです」

 

「………」

 

あぁ…そういや前にそんな話をした事があったな。

 

秋山も俺と同じで、昔からずっと戦車が好きな奴だったのだろう。だが戦車道がなくなっていた大洗では例え女子でもそれは異質だったんだろう。

 

「だからこの前皆さんがうちに来た時なんか大変だったんですよ、父と母が大喜びしてて…、嬉しかったんですが、ちょっと恥ずかしくて」

 

「サンダースに偵察に行った日の事か?」

 

やべっ…よくよく考えたら俺、あのまま秋山の親父にマークされっぱなしじゃないか?学園艦は広いし会う事はないと願いたい、会えばパンチパーマにされそう。

 

「はい、…そういえば比企谷殿の事もすごく聞かれて困りました、とくにお母さんの方が」

 

…ん?あれ?そこは親父さんの方じゃないのね、いや、それはそれで何か裏がありそうで怖いけど。

 

「そういえば比企谷殿も大洗の学園艦がご実家なんですよね?」

 

「まぁな」

 

学園艦は基本的に中、高の学生の為の船なので住民の多くはやはり生徒だ、大半の生徒は陸に実家があるから、ここでは基本的に親とは離れて寮生活をしている。

 

なので俺や秋山みたいに学園艦内で家族と一緒に暮らしている生徒ってのは案外少ない、それが当たり前だったので考えた事もなかったが。

 

「住所とか書く時ちょっと戸惑うよな」

 

「あ、それ私もわかります、あるあるですね」

 

やっぱりわかる?だって学園艦って常に海の上だしさ、ある意味で住所不定なんだよね。

 

「いきなり雨が降りだしたり、夏場なのに雪ふったりしますもんね」

 

「季節感もなにもないよな…」

 

ここら辺の学園艦あるある苦労トークは長く住んでないとわからないだろう。

 

「比企谷殿のご両親は仕事は何をされているんですか?」

 

「社畜」

 

「…えと、いや、いいんですけど」

 

実家が床屋の個人店な秋山に対してうちはバリバリの社畜である、仕事は…なんだったっけ?いやほら、今はまだ来るべき未来の社畜生活からは極力目をそらしておきたいから。

 

「でもそうなると比企谷殿と私って大洗の学園艦で育ったんですよね、なんか…不思議な感じがします」

 

「何がだ?」

 

「だってずっと同じ学園艦に居たのに、話すようになったのがこの年になってからですよ、不思議じゃありません?」

 

言われてみれば確かに…、この年になるまでお互い話したこともなかったが。

 

「…っても学園艦だって広いしな、そんなもんだろ」

 

お互い特に接点がある訳でもないし。…いや、あるか。

 

「…戦車倶楽部でたまに見かけたくらいか」

 

「そうですね、お互い声はかけませんでしたけど」

 

そりゃいくら趣味が同じでも知らない異性に普通声はかけんだろう。ナンパとか、俺も秋山もやらないし。

 

「んで、それがどうかしたか?」

 

「いえ、もっと早く、比企谷殿に出会っていたらよかったなって、ちょっと思ってます。きっと楽しかったかなと」

 

「………」

 

…ん、まぁ、どうなんだろうな。

 

今はさておき、例えば中学時代、あの頃の俺はまだ純真で希望に満ちていて、そんでひたすら馬鹿だった。

 

女子にちょっと優しくされたくらいで勘違いを拗らせるし、メールを送った返事が返ってこなくてもあれこれ理由をつけて自分を納得させていた。

 

そして拗らせた結果があの告白からの惨敗、そして翌日からクラスの笑い者の日々。

 

考えてみれば自業自得、全部自分で蒔いた種である。それは今になってようやくわかった事だ…ずいぶん遅いが。

 

まぁそんな馬鹿な俺のことだ、もし中学時代、もしくはそれよりも前に秋山に出会っていたとして。

 

一緒に戦車倶楽部とか行って、同じ趣味を語り合い、そしてたぶん…、いや、絶対俺は拗らせる、きっと勘違いして、秋山に告白してただろう。

 

…それに対して、そんな俺の勝手な勘違いに対して、秋山はどう答えたのだろうか?

 

「? どうしました?比企谷殿」

 

「…いや」

 

…そんなどうしようもない、『もしも』の話を考えたって、答えなんて出てくる訳がない。

 

「甘いな秋山、あまり俺をなめるな、例え中学時代に出会っていても俺はぼっちになってた自信がある」

 

「そんな事ありません!私も比企谷殿も戦車について語り合える友達が居ませんでしたし、きっと仲良くなれたはずです」

 

戦車について語り合うどころか日常会話すらできる友達居なかったんだけどね…。

 

…ん?いや、まてよ、そういやーーー。

 

「小学生の時なら一人だけ居たな、たまに一緒に戦車ごっこやったやつが」

 

「あ!戦車ごっこなら小学生の頃私もやった事あります、懐かしいですね」

 

ふむ…秋山にもそういう仲の友人が居たのか、まぁ小学生って戦車とかそういうのに憧れるんだよね。そんで中学になって少し大人になるとみんな、大人ぶって卒業するんだよ。

 

「なんて名前の方なんですか?」

 

「さぁ…、覚えてないかそもそも聞いてないか、まぁ小学生の頃なんてそんなもんだろ?」

 

漫画みたいに小学生の頃の事を鮮明に覚えている、なんてこと普通はない。

 

あれ?普通はないなら、もしかしたら俺にも忘れてるだけで小学生の頃、将来結婚するとか約束して鍵穴のついたペンダントをプレゼントしてくれた女子とか居るかもしれんな、よし、帰ったら探そう。

 

「あー…、確かに私も覚えてないですね、でも、そんな友達が比企谷殿にも居たんですね」

 

うーん…、あれを友達とカウントしていいもんなのかね?遊んだっていっても本当に数えるくらいだし。

 

「友達ってほどじゃねぇだろ、だいたい中学入ったら急に見かけなくなったし」

 

他の学園艦に引っ越したのか、陸に上がったのか、中学に上がると不思議とそいつの姿を見なくなった、もしかしてあまりの寂しさに俺が見ていた幻だったのか。…寂しすぎるぞ、それ。

 

「それならまだいいですよ、私の相手は中学に入って話しかけたら無視されましたよ、…あれはショックでした」

 

おぅ…、まさか俺がぼっち自慢で負けるとは、やるな秋山、あれ?嬉しくない?

 

大方中学になってまで女子と遊ぶのが恥ずかしくなったのか、気持ちはわからんでもないけど、そいつはもったいない事をしたもんだ。

 

ちなみに俺の相手は普通に男子だったので、別にそこまで寂しくはない。…ないな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

「…ついたな、ここがアンツィオ校か」

 

さて、船での一悶着もようやく終えていよいよアンツィオ校にやって来た。

 

「しかし人が多いな…」

 

結婚情報誌の効果がよっぽどなのか、俺達以外にも観光客を多く見かける、それもカップルがやたらと多い、こいつらみんな爆発しないかな?

 

そんな多くの観光客が居る中、俺は一人でポツンと突っ立っている、秋山はなんかここに着くなり急にトイレに行ってしまったのだ。

 

前回のサンダースの時は別行動だったし、今回もそれでいくつもりなのかな?俺としてもその方がありがたいのかもしれんが。

 

「お待たせしました、比企谷殿!!」

 

「ん、あぁ…、あきや…ま?」

 

トイレから戻って来た秋山に声をかけられて振り向く、…同時に言葉も失った。

 

「じゃんじゃーん、どうですか比企谷殿?今回はアンツィオ校の制服を用意しました!!」

 

秋山がアンツィオ校の制服姿で登場した、あぁ…トイレに行ったのはそれに着替える為だったのね、いや、そうじゃなくてさ。

 

「これで、どこからどう見てもアンツィオ校の生徒です!!」

 

「おい、今回は観光客に紛れるんじゃなかったのかよ…」

 

あとサンダースの時も散々言ったけど、その制服とかどっから手に入れたの?女子校の制服とか、いろいろヤバい経緯がありそうなんだけど。

 

「すいません、事前に用意はしていたのでつい…、着たくなっちゃいまして」

 

まぁあんこうチームが各々偵察を買って出たからあぁなったけど、本来偵察は秋山が行く予定だったもんな。

 

でも着たくなったって…、サンダースの時もそうだけど女子って他の学校の制服に憧れているもんなのかな。それとも秋山がコスプレ好きなのか。

 

「その格好で潜入するんなら俺と居ると目立つだろ、また別行動か?」

 

「ご安心を!私に考えがありますから、ついてきて下さい」

 

「まぁ…いいけど」

 

キョロキョロと辺りを見回しながら先を歩く秋山の後ろを歩く、何を探してるんだ?

 

「しかし…いくら観光客が多いからってこの屋台の数はなんだ?今日って学園祭なのか?」

 

屋台街なる所は平日だというのに多くの食べ物屋台が並んでいて活気に満ちている、…いや、授業はどうしたのよ?

 

「そうですね、それも聞いてみましょうか…、あ!見つけましたよ、比企谷殿」

 

そう言って秋山はCV33に寄りかかって談笑しているアンツィオ校の生徒二人の所に向かった。

 

「…って、おい」

 

CV33の所に居るって事はたぶん戦車道チームだぞ、いきなり本命に行くつもりか?さすがに俺みたいなの連れて行くと怪しいだろ。

 

「大丈夫です、比企谷殿は上手く話を合わせて下さい」

 

だが秋山は自信たっぷりのようだ、何か作戦があるのだろう。

 

「あのー、ちょっとよろしいですか?」

 

うわ、普通に話しかけたよ、サンダースのビデオでもそうだったけど本当に元ぼっちかよ。

 

「私、転校してきたばっかりでよくわからないんですけど今日って何かイベントの日なんですか?」

 

あぁ、転校生って設定なのね、なるほど、それなら怪しくないか、いや、俺が居る時点で怪しいけど。

 

「今日?別に普通の日だよ」

 

「それにしてはずいぶんとお店が多いですね」

 

「うちはいつもこんなもんだって、いろいろな部とか委員会が店出してるの、うちの学校貧乏だから、少しは予算の足しにしないとねー」

 

半信半疑だったけどマジで屋台で予算稼いでるのか…、大洗もたぶんお金ない方だと思うけどここは相当だな。

 

働いて稼いでも自分の懐に入ってくる訳じゃないだろうに、こいつらもよくやるなぁ。

 

「? そっちの男は何?観光客?」

 

「あぁ、この人は私の彼氏です」

 

「…は?」

 

心の中でアンツィオ校の生徒のたくましさに感心していると…、秋山がなにやらとんでもない事を言い出した。…は?

 

「学園艦に遊びに来てくれたんですよ、それでいろいろ案内してるんです、ねー?」

 

「あ!いや!?…まぁ、うん」

 

秋山が俺と腕を組んでくる。なにこれ初耳、初感触、話合わせてくれってこの事なの?こんな作戦バレバレに決まってるじゃねーか。つーか腕!腕!!

 

「なぁにぃ?彼氏だぁ?」

 

ほら見ろ、怪しまれてる。

 

「女子校で彼氏連れて来るとか…、やるなお前!」

 

思った以上に馬鹿だった!!

 

「ですが私もまだ転校したてで、案内するにしてもよくわからないんですよ」

 

「そういう事ならうちらに任せな!えと…なんだっけ?なんかそれっぽい名所の噴水あったよな?」

 

「あー、あったあった、名前なんだっけ?地味だし覚えてないけど、カップル向けの噴水とかあるらしいよ」

 

自分の学園艦の観光名所くらい覚えとけよ…。

 

「あぁいえ、戦車道チームの練習が見たいんですよ、彼が戦車好きなんで」

 

「はー、男で戦車好きなんて見る目あるなぁ!あんた!!」

 

「あはは…、どうも」

 

バンバンと笑いながらアンツィオ校生徒の一人が俺の肩を叩くのでちょっと痛い。俺?たぶん渇いた笑いしてんじゃない?死んだ魚の目しながら、あっ、それはいつもか。

 

「戦車道の授業ならコロッセオでやってるし、なんならうちらで案内しようか?」

 

なんとまぁ、すんなりいくもんだな、秋山の作戦勝ちか。…アンツィオ校生徒がアホなのかもしれんが。

 

つーかコロッセオって建物の中だよな?そんな所で戦車訓練やってるって、よっぽど広い建物なのか。

 

「あー…でも戦車道の授業までまだ時間あるし、コロッセオには入れないんじゃない?」

 

となると…どっかで時間を潰す必要があるな。

 

「戦車といえば、新型が入ったと聞きましたが?」

 

さすがは秋山、いや…さす秋、ナイスだ。ここで新型戦車について聞ければ潜入任務はほぼ成功したみたいなものだろう。

 

「あん?どこから聞いた!!」

 

「あ…いえ、その…」

 

…バレたか?ヤバい、質問がちょっと踏み込みすぎたかもしれん。

 

「戦車好きな彼氏の為に調べて来たんだな、良い彼女じゃねーか、大切にしなよ!!」

 

「…あぁ、まぁ、うん」

 

バンバンと笑いながら肩を叩かれる、だから痛いって…。

 

「新型戦車なら今日発表するから、楽しみにしてな」

 

ふむ、情報は得られなかったが…、タイミングは良かったか。

 

「新型戦車さえあれば大洗なんて一捻り!次の二回戦は楽勝だな!!」

 

…あ、これはまずいかも、ちゃんと堪えろよ秋山。

 

少し心配になって隣の秋山の顔を見ると。

 

「だよねー、楽勝ですよ!私達も応援してます!!」

 

にっこり笑ってそう返した。…心配する必要なかったか、つーか度胸あるなぁ。

 

「お!いいねー、気に入った!よーし、戦車好きならうちらの車貸してやるよ!!」

 

「車?」

 

「こいつだよ、せっかくだし、二人でドライブでも行って来な!!」

 

こいつって…CV33じゃねーか!もうアンツィオ校じゃ自動車みたいな扱いしてんのね、羨ましい、是非大洗でもやって欲しいな。

 

「え?いいんですか!!」

 

「彼氏さんのアンツィオ校初デート記念さ、恋人同士でドライブとかイケてるだろ?」

 

そう言って生徒の一人に鍵を渡された。…え?マジでいいの?

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…マジでいいんだ」

 

秋山と二人してCV33に乗り込む、大洗にある戦車以外に乗るのはなんか新鮮だな。

 

二人乗りなので中は狭いが、秋山がさっきからもう目をキラキラさせっぱなしだ。

 

「まさか快速と呼ばれるカルロベローチェを操縦できるなんて…、感激です!夢のようです!!」

 

うんうん、気持ちはよくわかるよ、なんたってカルロベローチェとは快速戦車の意味だし、豆戦車といえば軽快な動きが醍醐味だ。

 

だが待て、しばし待つのだ。

 

「おい待て秋山、なぜ当たり前のように操縦席に座る?」

 

「え?だって操縦するにはここに座らないとダメですよ?」

 

いや、そんなの知ってるよ、見ればわかるもん。

 

「いやいや、操縦は俺がやるから」

 

「いえ!ここは私にお任せ下さい!!前から一度操縦してみたかったんですよ!!」

 

俺だってしたいよ!つーかする!!

 

「いやいや、ほら、秋山は装填手なんだし、装填に専念してくれ」

 

「CV33に装填手はいりませんよ!ここは私が操縦します、戦車技術の向上にもなりますし」

 

…ぐっ、こいつめ。

 

「大洗に帰ったらいつでも操縦できるだろ、ここは俺に譲れ、普段滅多に操縦とか出来ないんだから、な?」

 

「比企谷殿だって自動車の皆さんといろいろ戦車の試運転してるじゃないですか!わーたーしーがー操ー縦ーしーまーすー!!」

 

えぇいッ!!子供か!!

 

「俺が!」

 

「私が!」

 

…なんかこのやり取り、覚えがあるなと思ったらあれか、戦車倶楽部でレア物見つけた時と同じだ。

 

「…仕方ない、ここはいつも通りに決めるか」

 

「受けて立ちます!今回は絶対負けませんよ!!」

 

俺と秋山は狭いCV33内で静かに睨み合う、負けられない戦いがそこにはあるのだ。

 

「「じゃん、けん…」」

 

ここは神様に祈ろうか、じゃんけんの神様って誰だろ?ゴンさんかな?

 

「「ぽんっ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

CV33の車内なので外からの様子は分からないが、外から見ればさぞかし軽快に走っている事だろう。

 

秋山はあんこうチームの役割こそ装填手ではあるが、別に操縦が出来ないという訳ではない、まぁ操縦はもう冷泉がチート過ぎるんだが。

 

はい、そんな訳で負けたんですよ、俺の隣では秋山が楽しそうにCV33を操縦中である。

 

こんな事なら外から軽快に動くCV33を見てた方がずっと楽しいわ…、いや、中に居てもそれはそれで楽しいけどね。

 

「つーか普通に操縦上手いよな、お前」

 

「はい、私は遊園地に行くと少しでも戦車の腕前が上達するようにゴーカートで1日中練習してますから」

 

戦車とゴーカートを同じ扱いにするのはどうかと思うが…、それにしても1日中ゴーカートって。

 

昔から戦車大好きだろうこいつはたぶん、どこのポジションでもそれなりに活躍できそうだな、校内の模擬戦でもそうだったし。

 

「はぁ~…、堪能しました、感無量です」

 

ドライブがてらしばらく運転してからCV33を停めた、俺と秋山が外に出ると例のアンツィオ校戦車道チームの二人がぽかんと口を開けていた。

 

「…あ、まずいな」

 

「え?何がですか、比企谷殿」

 

いや、だってさ、向こうからすれば素人だと思ってた転校生がいきなり戦車ぶいぶい操縦してたんだぜ?

 

「あ、あんた!うちの戦車道チームに入らないか?」

 

まぁこうなるよね、アンツィオって貧乏らしいし、他に盗られる前に有望な新人は確保しないと。

 

「えぇっ!?そ、そんな…こ、困りますよ!!」

 

「その腕前なら即戦力にもなり得る!ドゥーチェにはうちらから話しておくから!!」

 

生徒二人は獲物を見つけたかのようにじりじりと秋山に近付いていく。

 

「あの…その、ひ、比企谷殿!助けて下さい!!」

 

慌てた秋山が俺を見る、ったく、仕方ないな…。

 

「まだまだこんなもんじゃないだろ?お前の力は」

 

「そんな!比企谷殿に裏切られました!!」

 

自業自得だ、せっかくCV33に乗れたのに、ただ座っていただけの俺の恨みを思いしれ。

 

「さぁ!是非とも私達アンツィオ校戦車道チームに!!」

 

「こ、困ります!勘弁して下さい!!」

 

迫りくるアンツィオ校生徒二人に耐えきれず、秋山はその場から駆け出した。

 

「あ!逃げたぞ!!」

 

「アンツィオの大型新人だ!追え!!」

 

そしてそれを追いかけていくアンツィオ校生徒二人。…しまったな、ちょっとやり過ぎたか。

 

まぁ秋山の事だし、上手く逃げてくれるだろう。…そろそろ戦車道チームの練習も始まるだろうしな。

 

確か場所は…コロッセオ、だったか、それが終わったら秋山を迎えに行ってやろう。…恨み言の一つでも言われそうだけど。

 

…そういや、さっきの秋山とのやり取りは小学生の頃の戦車ごっこを思い出すな、あいつともよく戦車のポジション決めで争ってたっけ。

 

しかし、本当にあいつはどこに行ったのか、小学生のくせにパンチパーマしてて目立つ奴だったし、見かけたらすぐわかると思ってたんだけどなぁ…。


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