やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
んで…、なんで劇場版の4D見てBlu-ray持ってるし何度も見たはずなのに俺はまた映画館で劇場版のガルパン見たのかなぁ、継続無双はいつ見てもかっけぇなぁ…。
「いい?あなた達は他校の生徒なの、それなのに大洗の学園艦に、しかも平日に来るなんて規則に違反してるわ!!」
「規則っていうのは…そんなにも大切なものなのかな?」
はい、そんな訳で風紀委員総力をあげて捕まえた件の戦車泥棒三人組を、ただ今生徒会室で風紀委員長のそど子さんが絶賛尋問中である。
ちなみにその大捕物に関しては詳しく説明すると長くなるので省略、ただ一言だけ説明するなら、『こいつらルパンかよ』、である。
「大切な事に決まっているじゃない、私達は規則を守る事で規則に守られているのよ!!」
「人は誰でも自分の中にルールを持っているものだよ、自分の身を守るなら、それで充分じゃないかな?」
尋問中…なのだが、さっきからこんな調子で話が全く進まない、出会ってまだ数分だがそど子さんとミカさんの相性が悪すぎる。
かたや規則にうるさい鬼の風紀委員長、そしてもう一方は規則?何それ美味しいの?とでも言わんばかりの人である、まさに水と油だ。
そど子さんにとっては冷泉以上の難敵だろうな。
「ちょっと!いちいちカンテレ弾きながら会話するの止めなさいよ!!」
うん、それは俺も思ってた、なんだよさっきからポロン、ポロロンッて、このままならポロリもあるの?
「これも私の中で決めたルールの一つなのさ」
「それ以上続けるなら没収するわよ!あんまり風紀委員をなめてもらっちゃ困るわ!!」
「………」
あ、そこは止めるのね…、この人何?カンテレ依存性なの?
「まぁまぁ、そど子ちゃん、これは戦車道チームの問題だからね、あとは私らでやっとくから」
「ちょっと!会長までそど子って呼ばないでよ!!」
会長がそど子さんをなんとかなだめて落ち着かせる、このままじゃ話も進みそうにないしね。
「学園艦同士の話にもなるかもしれないからさぁ、あとは任せてよ」
「…わかったわよ、でもちゃんと規律は守らせてよね」
会長は笑顔のままそど子さんを生徒会室の外まで誘導し。
「あと、見つかったルノーの搭乗、よろしくー」
「え?あっ!ちょっと…聞いてないわよ!!」
去り際にそれだけ一方的に告げると、生徒会室の扉を閉めてそど子さんの追及を一切スルーした、鬼か!!
会長、ルノーの搭乗員をそど子さん率いる風紀委員で確保するつもりなのか、口うるさそうだし嫌だなぁ…。
「んじゃ、話を聞こうか、継続ちゃん達」
会長が改めて戦車泥棒三人組に向き合う、そう、この三人組は継続高校という所からやって来たらしい、ジャージの『継』はその学校のものだろう。
「そうだ貴様ら!勝手に他所の学園艦に上がり込んで戦車を盗むとは良い度胸だな!!」
「戦車がね…話しかけて来たんだよ、私を連れて行って、ってね」
…等と犯人は意味不明な供述をしており、こりゃそど子さんの気持ちもわかるな。
「仲間になりたそうな目でこちらを見ていたのさ」
どこのモンスターズだよ、ちゃんと『しもふり肉』たんまりあげたんだろうな?
「ちょっとミカは黙ってて…、あの私達、継続高校の戦車道チームなんですけど」
ミカさんに変わってアキが答える、まぁ戦車を盗もうとしてたんだし、そりゃ戦車道やってる奴らだろう。…つーか普通の女子高生が戦車盗もうとしてたらそっちのがよっぽど恐ろしいしな。
「私達の学校貧乏であんまり戦車なくて、次の相手も黒森峰だし、それで戦車を探してて…」
トーナメント表を見ると二回戦に黒森峰と継続高校の対戦カードがある、なるほど、それでうちと同じく戦力の向上を狙った訳か。
なんか他人とは思えないなぁ…、そうや!みんな貧乏が悪いんや!!
「ぬ、盗むつもりはなかったんです!もともと私達、廃車同然の戦車を拾ったり貰ったりしてそれを直して使ってましたから!!」
「…見つかった戦車もあんな状態でしたし、あまり責めるのは可哀想かと思いますが?」
まぁぶっちゃけ五十鈴の言うとおり、ルノーは確かに捨ててあったんだけどね、それを拾おうとした彼女達を泥棒呼ばわりするのは微妙な所か。
「じゃあ、あのルノーも直して使うつもりだったのか?」
うちの自動車部も大概チートだが、継続高校にもそれクラスの整備技術をもった集団が居るのか?
「へっへ~、それだけじゃないさ、エンジンや主砲を改造してオリジナルより強化してやるんだからな!!」
「おぉ!そんな素晴らしい整備技術まで持っているとは、さすが継続高校ですね!!」
「知っているのか、秋山?」
そう言ってみたけど、たぶん秋山は知っているだろうなぁ…、というのを俺は知っているけどね、では秋ペディア先生、解説よろしく。
「はい、継続高校は石川県の金沢港を母校とした学校で、学園艦の規模は小さいですが戦車道は盛んな学校ですから!!」
でも貧乏なんですよね?聖グロリアーナ、サンダース大付属と金持ち学校が続いてたのに二回戦からアンツィオとか継続高校とか貧乏学校ばかり出てきたな。
「あ、あの…、なんか戦車が盗まれそうになったって聞いて呼ばれたんですが」
そうこうやってると生徒会室のドアをノックして西住が緊張した表情で顔を見せた。
「やーやー、西住ちゃん、彼女達だよ」
会長が呼んだのか、まぁ戦車道チームの隊長だし当然だな。
「…えぇっ!?み、ミカさん!!」
「やぁ、懐かしいね」
ミカさんの姿を見て驚く西住に、ミカさんは平然とした表情で返す。
「…戦車道は続けてるんだね」
「…あ、えと、はい」
「うん、この偶然は大切な事かな」
ただ少し、カンテレの奏でる音色が先ほどよりも弾んでいる。…そんな気がする。
「西住、知り合いか?」
「うん、前に黒森峰に居たときに練習試合した事があって、苦戦しちゃったからよく覚えてるよ」
「え?黒森峰なのにか?」
しかもそれ、つまり姉住さんも西住も現副隊長さんも居た時代ですよね、黄金時代じゃないのか?
「ミカさん、すごく優秀な隊長だから」
え?この人隊長なのかよ?しかも優秀って…、この人のまわりくどい言動からまともな指示が出せるとは思えないんだけど。
もしかしてカンテレの音で指示でも出してるのかな?
「私はただ必要な時に必要な事をしている、それだけだよ」
ほう、つまりわざわざ大洗に来て戦車を盗ろうとした事も必要な事だったと?
「んで、こうして捕まえたんだけど西住ちゃん、どうしよっか?」
「えと、急に言われても、戦車を盗られた訳でもないんですし、解放してあげても…」
まぁ西住ならそう言うだろうな。
「何を言う!せっかく捕まえたんだ!ここは捕虜として捕まえておくべきだろう!!」
まぁ河嶋さんならそう言うだろうなぁ…。
「んー、比企谷ちゃんは?どう思う?」
「…なんでそこで俺に聞くんですか?」
「だって見つけたの比企谷ちゃんだし」
それ、何か関係あるんだろうか?
「別に、解放すればいいんじゃないんですか?」
え?なんで継続高校三人や河嶋さんだけじゃなくてみんなしてそんな驚いた顔してるの?
「意外と優しいんだね、それとも甘いのかな?」
「そ、そうだぞ比企谷、貴様らしくもない!!」
…俺って普段どんな風に見られているのだろう?ちょっと悲しくなってきたぞ。
「いや、二回戦の相手って訳でもないですし、そもそも継続高校の相手は黒森峰なんですよね?」
「そうね、トーナメントでも私達とは反対側になってるわね」
「ならここで捕まえといても黒森峰にメリットがあるだけです。それならいっそ、この人達を解放して二回戦で黒森峰を倒してもらった方が後々楽でしょ?」
彼女達の実力は実際に戦った西住のお墨付きである、黒森峰に勝てる勝てないは別としても少しでも可能性があるなら賭けるべきだ。
それでもし今後戦うとなってもたぶん黒森峰を相手にするよりはマシだろう。
「それは…なんというか」
「八幡君らしい理由…だね」
…本当に俺って普段どんな風に見られているのだろう?かなり悲しくなってきたぞ。
「つー訳で黒森峰相手にするの嫌なんで大洗の為に勝って下さい、応援しますから」
「応援されれば勝てるとは限らない、けれど…私達も負けるつもりで勝負はしないさ」
わりと皮肉も交えて言ったつもりなんだけど、涼しい顔してるなぁこの人。
「なら、その応援はありがたく受け取ろう、どの戦車を持って帰っていいんだい?」
「どの戦車もダメに決まってるでしょう…」
涼しい顔ってか、ただ単に厚かましいだけじゃないか、とらえどころがなくてやりづらい人だな。
「あ!そういえば会長、私達も見つけた物があって…」
「お!いいねぇ、次はどの戦車かな?」
え、また見つかったの?大洗って戦車ありすぎじゃない?どこのマウンテン・サイクルだよ、いずれホワイトドールでも見つかるんじゃない?
「あ、いえ…、戦車じゃないんですが、物干し竿代わりにされてた長砲身を見付けて」
「長砲身かぁ、Ⅳ号に付けられるかもね」
「はい、後で自動車部に聞いてみます」
「おぉ!これでⅣ号戦車もD型からF2型へと強化できるかもしれませんね!!」
それがⅣ号に付けられるなら単純に火力アップに繋がるな、…つーか誰だか知らんけど物干し竿の代わりに使うなよ、気付けよ。
「…いいなぁ、大洗の皆さん、順調みたいで」
「あたしら結局くたびれ儲けかぁ、…腹も減ったなぁ」
「そういえば戦車探すのに夢中で何も食べてないもんね」
なんか継続達が可哀想になって来たな…、またマッ缶でも奢ってやるか。
「あとは武部さんと一年生のみんなね…」
「もう夕方なのに、まだ戻って来てませんね」
継続事件で思ったより時間とられたな、…つか、結局帰るの夕方になっちゃったよ。
「会長、少しいいか?」
窓の外の夕焼けを見ていると冷泉が生徒会室に入ってきた、その手に携帯を持っている。
「沙織達だか、遭難…したそうだ」
そうなんですか、…うん、ごめんね、ちょっと言ってみただけ、本当にごめんね。
「ど、どこでですか?」
「船の中だが…、どこに居るのかわからないそうだ」
この前は俺と西住が迷子になったけど今度は武部と一年共かよ、戦車探せば迷子になるフラグでもあるのか?
「何か表示があるはずだ、それを探して伝えろと言え」
河嶋さんに言われて冷泉は頷くと携帯で武部にメールを送る、なんか嫌な予感がするな。
「ほい、これ船の地図ね、捜索隊行って来てー」
そう思ってると会長から地図を渡される、なんというフラグ回収の早さ、てかなんで俺?こんな時も風紀委員さんにやってもらえばいいんでない?
「…はぁ、了解です」
「おや、素直だねぇ」
…一応前回助けてもらいましたしね、ぼっちは借りを作ったままではいけないのだ。
「冷泉、武部達は船の中なんだよな?」
「みたいだな、今目印になりそうなものが送られてきた」
なら思ったより早く見つかりそうだ。
「ミカさん、ちょっと手伝ってもらっていいですか?」
「…どうしたの、八幡君?」
「カンテレ弾きながら行けば向こうも気付くだろ、船内なら音も響くしな」
「なるほど…確かにそうですね」
「人は誰だって迷子になっているものだよ、でも、それが悪い事とは言えないんじゃないかな?」
あぁすいません、今ちょっとそういうのはいいんで。
「迷子になっている一人が武部って奴なんだけど、料理が得意だから助けたらお礼に何か作ってくれるかもしれませんよ?」
「行こうよミカ!久しぶりにおいしいご飯が食べられるかもしれないよ!!」
「あたし、あったかいのが食べたいかも!夏とはいえ夜は結構冷えるもんな」
「…風に吹かれて飛んで行くのは自由だからね、たまたま私達もそこに行くだけさ」
あぁ…、本当に継続高校の皆さんが可哀想になってきた、みんな貧乏が悪いんや!!
まぁ一歩遅ければ彼女達はルノーをそのまま持ち帰るつもりだっただろうし、これくらいは働いてもらおうか。