やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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じつはまだ大洗に行った事が一度も無いんだよなぁ…、遠いんだよこんちくしょうッ!!(血の涙)
皆さんやっぱりゴールデンウィークに行ったりするんですかね!楽しそうで良いですね!!(嫉妬)。

大洗の町並みはネットの画像くらいしか知らないので一度は行ってみたいなぁ…。


圧倒的に、オンラインゲームチームには腕力が足りない。

「ティーガーⅡ…どうしたんだろ、整備不良かな?」

 

「ゲームなのでそれはないと思いますが」

 

ようやく旋回を終えたマップ上のティーガーⅡだが、前進する姿がどうにもぎくしゃくしている。

 

いったいどうしたものかと俺も先ほどからメッセージを送っているが返事がない。

 

「…ちょっとトイレ行ってくる」

 

「ちょっと!もう試合始まってるのよ!!」

 

「まだ始まったばかりだからお互い様子見だろ、すぐ戻るから安心しろ、一応隠れとくがアリサ、敵が来たら頼む」

 

「仕方ないわね…」

 

パソコンルームから出るとすぐに携帯で電話をかける、西住達の手前堂々と連絡を入れるのもなんだが、あいつ何やってんだ?

 

『今忙しいんだから邪魔しないで』

 

思いの外すぐに相手は出てくれた、電話に出るなりそんな言葉を告げるのはブラックフォレストのプレイヤー、黒森峰の現副隊長さんだ。

 

「いや、お前が急に何かよくわからん行動するからだろ」

 

『今は隊長が動かしてるのよ』

 

「…は?」

 

…現副隊長さんが言う隊長って黒森峰の隊長の事だよね?つまり姉住さん、え?あの人ゲームとかするの?

 

いや、先ほどのティーガーⅡの行動を見るにそれはないだろう、初心者の西住と同じミスをしてたし。

 

『隊長自らが助っ人に来ているのよ、もっと感謝しなさい』

 

なんという親切の押し売り、確かにこれが戦車道の試合で姉住さんが助っ人に来てくれたならこれ以上ない強力な味方だろうが、これはあくまでもゲームである。

 

「…なんで姉妹揃って同じ動きすんの?シンクロしてんの?」

 

あるいはカテゴリーF、西住も戦車道の試合でニュータイプ張りの感の良さを発揮してるし。

 

『そんなの知らないわよ!隊長は今日が初めてなんだから仕方ないじゃない!!』

 

その言葉、さっきあわあわしていた西住にも言ってやれよ、現副隊長さん、姉住さんの事好き過ぎない?

 

『エリカ、正面より敵を確認した』

 

電話越しに姉住さんの声が聞こえる、どうやら相手チームの連中もやって来たみたいだ、チッ…俺も戻らないと。

 

『照準を合わせろ、撃てッ!!』

 

いや、撃てって…、姉住さんは誰に指示出してるんだろう?

 

『あ、あの…隊長、砲撃はここを操作して下さい』

 

『砲手は居ないのか…、装填は自動装填装置のようだが、だとすると車長が操縦手と砲手と通信手を兼任しているのか?』

 

いや、だからゲームですからね?西住もそうだけどなんで姉妹揃ってそんな驚いてんだよ、これが西住流なの?

 

『すまないエリカ、いろいろ教えて欲しい』

 

『はい!もちろんです!!』

 

あぁ、なんていきいきとした良い返事なんだ、電話越しでも嬉しそうに姉住さんにぶんぶんとしっぽを振る現副隊長さんの姿が想像できる。

 

今度うちの秋山と忠犬勝負とかしてみたら?現副隊長さんの場合姉住さん以外には噛みついてくる狂犬だけど。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…負けちゃったね」

 

画面に映し出されている敗北の文字、圧倒的に弱いじゃないか…我が軍は。

 

まぁそりゃそうだ、頼みの綱であったうちのチームの最大戦力であるティーガーⅡが戦力にならなかったし。

 

とはいえ現副隊長さんが必死に操作を教えたおかげか、ティーガーⅡのもともとのスペックの高さもあって何気に後半まで生き残っていたのには驚いた。

 

戦車戦における姉住さんの持ち前の感の良さなのか、ゲーム初心者がいきなり出た試合なのを考えれば上々とも思える。

 

「すいません西住殿、わざわざ来ていただいたのに…」

 

「ううん、私も楽しかったよ、今度は沙織さん達も誘ってみんなでやりたいね」

 

「良いですね!オンラインゲームでもあんこうチーム結成です!!」

 

このゲームのランキング戦は五人で一つのチームを編成するので、ちょうど五人居るあんこうチームはそのままチームが組めるのか。

 

あれ?俺の唯一のフレンドだった秋山が取られちゃったんだけど、今まで秋山のフレンド頼りにチーム組んでた俺はこの先どうすればいいんだろう?

 

…引退か(諦め)。

 

「…全く、なんて試合よ」

 

「あぁアリサか、お前もわざわざ来てもらったのに悪かったな」

 

「本当よ、次はちゃんとした試合がしたいものね」

 

「…次?」

 

はて、どういう意味かと考えているとアリサの方からフレンド申請が送られて来た。

 

「ふ、フレンドの居ないあんたが可哀想だから私がなってあげるって言ってるのよ!!」

 

…今の台詞、幼なじみが照れ隠しで怒ってる感じで頼む、まぁチャットの会話なんだけど。

 

「あぁ、まぁ…すまん」

 

どうやら引退まで首の皮一枚繋がったようだ、しかしいいのかな?俺よりもたかし君にフレンド申請した方がいいと思うんだけど。

 

「今日はありがとうございます、アリサさん」

 

「…ふん、二回戦、負けたら許さないわよ」

 

「応援してくれるのですか!?」

 

「違うわよ!あなた達はうちに勝ったんだから、ここですぐ負けたらサンダースが弱いみたいじゃないの!!」

 

そんな台詞を残して照れているのかアリサはさっさとログアウトしていった、やっぱりツンデレなのか?

 

「えっと…、ブラックフォレストさんも、今日はありがとうございます」

 

西住がたどたどしくパソコンを操作してブラックフォレストさん宛にメッセージを送る、たぶんその正体には気付いていないだろうが。

 

そもそもなんであの人、急にゲームなんてやってんだろ、西住がやってるの見て自分もやりたくなったのかな?

 

いや、それはそれですぐ西住だと気付けた所が驚きなんだが…。

 

西住のパソコン画面には『気にするな』と短いメッセージが返って来た、いや、やっぱり西住だと気づいてるっぽいな。

 

…あのシスコンさんめ。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…ふっ」

 

パソコンの前で西住まほはメッセージを返すと一息ついた、その口元に少しだけ微笑みを浮かべているのは後ろに居るエリカにもわからないだろう。

 

「…隊長、今メッセージを送った相手なんですが」

 

「今日は久しぶりに良い気分転換になった、エリカ、また休みの日にでも付き合ってもらえないか?」

 

「も、もちろんです!私で良ければいつでもお付き合いします!!」

 

パアッと表情を明るくさせてエリカは答える、憧れの隊長と一緒にゲームが出来る、それが嬉しいのはもちろんだが。

 

「まずは隊長のアカウントを作りましょう」

 

「…アカウント?」

 

「隊長のプレイヤーキャラです、私が教えますから」

 

彼女が何よりも嬉しいのは、彼女が西住まほの隣で常にその激務を見てきたからである。

 

強豪校の黒森峰の隊長として、西住流の娘として、日頃の戦車訓練はもちろんだが、それ以外においても西住まほはとにかく休まないのだ。

 

今日のような休日でも、まずはロードワークや次の試合に向けての作戦を考える事に当てる、それは自分の憧れている隊長であるのと同時に見ていて少し不安でもあった。

 

例えゲームでも、普段の息抜きができるのなら、そしてそれに自分が役立てるのなら、彼女からすればこれ以上の喜びはないだろう。

 

「………」

 

エリカは携帯を取り出すと苦々しい表情を見せる、彼女にとっては癪だが、このきっかけを与えてくれたのは誰か?

 

「どうしたエリカ?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

憎い相手ではあるが、一応は、そう考えてエリカはメールを一つ送ると頬を緩めながらまほと並んでパソコンに向き合った。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『今日は悪かったわね、この借りはいつかまとめて返すから』

 

…現副隊長さんからそんなメールが来た、え?やだこれ怖いんだけど。

 

たぶん俺の事をそうとう嫌ってるであろうあいつの口から謝罪の言葉が出てくるとかあり得ないだろ。

 

いや、メールだしな、きっとウイルスかなんかだろ、…これ、比企谷菌の仕業じゃないよね?

 

「それにしてもあの三人はやっぱり強いですね、結局また半分以上やられちゃいましたよ」

 

「あぁ、ねこにゃー、ももがー、ぴよたんか」

 

うちのチームもなんだかんだ終盤まで結構粘ってたけど、その三人が戦場に出てきた瞬間あっという間に壊滅させられた。

 

「いったい何者なんですかね、あのプレイヤースキルはただ者じゃありませんよ」

 

「そりゃネット廃人だろ、時間が余ってるニートとかな、羨ましい」

 

このゲーム、戦車をモチーフにしているオンラインゲームなのでユーザーは女性も多いんだけどね、その女性ユーザーを狙った出会い厨な男も結構居ると聞く。

 

「…あれ?ゆ、優花里さん、八幡君」

 

「どうしましたか西住殿、そんなに慌てて」

 

「今、そのねこにゃーさんからメッセージが届いたんだけど…」

 

「…は?」

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

翌日、戦車格納庫には俺と西住、そしてーーー。

 

「あ、あの…西住さん、比企谷君、ね、ねこにゃーです」

 

金髪長身に昭和を思わせるぐるぐるとした渦巻きメガネをかけ、頭には何故かネコミミをつけた女生徒。

 

そんな目立つ見た目なので俺も見覚えはある、つーか同じクラスだし、名前は…。

 

「猫田さんがねこにゃーさんだったんだ…」

 

そう、猫田だ、あのランキング戦が終了した後、西住宛にメッセージを送ったねこにゃーこそ彼女らしい。

 

ネット上位プレイヤーがまさかの同じクラスだったとは…世間は狭いとはよく言ったものだ。

 

「僕も今から戦車道、とれないかな?」

 

そして猫田がわざわざオンラインゲームのメッセージを使ってまで声をかけたのは彼女もどうやら戦車道の授業を取りたかったらしい。

 

そこ、同じクラスなんだし普通に声かければ良いじゃん、とか言わない、彼女の気持ちは俺には充分にわかる。

 

最初こそぼっちだった西住も今では武部や五十鈴とクラス内でも大の仲良し、そして大洗が一回戦を勝ち抜いた事で隊長の西住もクラス内ではなかなか人気者だ、本人はそのせいでたまにおろおろしてるけど。

 

対する猫田は休み時間でも携帯ゲームなんかやっているのでどうにも声をかけづらかったのだろう。

 

俺はといえば最近じゃ休み時間は極力教室には居ないようにしてる、前までは机に突っ伏して音楽を聞きながら寝たふりしたり、本を読んだりしてたんだが、空気を読まない西住達がちょくちょくやって来るので先に予防線を張らせてもらった。

 

いや、本当に勘弁して下さい、君ら三人と話してる時の周りの、特に男子生徒の目が怖いんで、だからそんな時は寂しそうな表情を見せるより空気を読んでくれと言いたい。

 

西住もせっかく人気者になったんだ、戦車道以外であまり接点を持つのも三人に悪いしな。

 

…俺の事はどうでもいいな、それよりも今は猫田だ。

 

「もう仲間も呼んでるから」

 

「仲間?」

 

普段クラス内での猫田の様子を見てるとあまり親しい奴は居なかったと思うけど…、誰を呼んだんだ?

 

「リアル戦車なり!!」

 

「かっこいいっちゃ…」

 

戦車格納庫に置いてあるⅣ号戦車を見て感激の声をあげる二人の女生徒に猫田が手を上げる。

 

「あ、僕ねこにゃーです」

 

「あ、あなたが!ももがーです」

 

「私ぴよたんです」

 

ん?んん?ねこにゃーの連れて来た仲間ってのがももがーとぴよたんって…あのネトゲ強プレイヤー三銃士じゃないか!!

 

つーか、え?三人共大洗の生徒だったの?

 

「おぉ!ももがーにぴよたんさん、リアルでははじめまして」

 

しかも三人共初対面かよ…、どんな確率だそれ?なんか軽いネットのオフ会みたいになってんな…。

 

どうやらももがーが一年、猫田ことねこにゃーが俺達と同じ二年、そして三年のぴよたんさんだ。

 

ももがーは桃のアイパッチをつけて制服も改造している、これまた結構派手な女子生徒だ、風紀委員のそど子さんに見つかったらなんか言われそうだな。

 

それよりもぴよたんさんがヤバい、何がヤバいかって胸がヤバすぎる、これは生徒会副会長の小山さん以上の大型兵器が大洗戦車道チームに爆誕したな。

 

「…八幡君、どこ見てるのかな?」

 

「よかったな西住!新たなチームメンバーだぞ」

 

「う、うん、でも…もう乗る戦車が」

 

必殺、即効話題転化、しかし確かにメンバーは増えても乗る戦車が無いな、ルノーもまだレストア終わってないし。

 

「あの戦車は試合には出さないの?」

 

「あの戦車?」

 

え?もしかして俺達の知らない所でまだ眠っている戦車があったのか?

 

ねこにゃーに連れられて来た所は何の代わり映えのしない学校内の普通の駐車場だった、俺が普段自転車を止めている駐輪場とは違う所だ。

 

確かに二度行われた戦車探しでもこんな普通の場所は探した事はなかったが、まさかこんな所に戦車はないだろう。

 

だってこんな場所に堂々と置いてある戦車を見つけられてなかったのだとしたら大洗の戦車道チームはマヌケ過ぎるし。

 

「…あれ?」

 

案の定、猫田も首を傾げていた。

 

「猫田さん、やっぱり無いかな?」

 

「確かにここにあったはずなんだけど…、無くなってるのかな?」

 

「そんな盗まれた訳でもあるまいし…」

 

…盗まれた?

 

俺と西住はお互いに顔を見合わせてしばらく無言のまま見つめ合う。

 

「…まさか、なぁ」

 

「流石にないと…思うけど」

 

だよねー!ないよね!でも一応、念には念を入れないとね!!

 

「西住、継続高校、ミカさん達の連絡先とかって知ってるか?」

 

「ごめん八幡君…、あの人達、たぶん携帯持ってないと思う」

 

…携帯持ってないとかどんな高校生だよ、今時ぼっちでも持ってるよ、暇潰しくらいにしか使わないけど。

 

いやー、うん、流石にない、流石にないとは信じたいけど、やっぱりあるかも、つーか…あるんじゃね?

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「とりあえず一度、Ⅳ号戦車に乗ってみますか?」

 

「任せて、戦車の扱いはね、慣れてるから」

 

さて、そんな訳でネトゲ三銃士の実力である。

 

三人共オンラインの戦車ゲームでは無類の強さを発揮していた訳だが、リアルでの実力はというと…。

 

「砲弾重いっちゃ…」

 

「操縦レバーが固くて動かないなり!!」

 

…駄目だった、つーか駄目過ぎた。

 

普段オンラインゲームばかりやっているせいか、基礎体力が足りていない、そしてなにより圧倒的に腕力が足りない。

 

操縦はもちろんだが、単純な装填作業も見ていてものすごく危なっかしい。

 

カエサルが装填練習をしていたのもそうだが、砲弾の重量というのはなかなかに重い、秋山も日頃から装填の為に鍛えているらしいが。

 

…そういえば聖グロリアーナはオレンジペコが装填手らしいけど、あの小さな見た目で彼女も結構力持ちなのかな?なにそれ怖い、俺、腕相撲で負けるかも。

 

「…西住、どうする?」

 

「さすがにちょっと危険かも…」

 

「だよな…」

 

そんな装填も危なっかしい彼女達だ、このまま試合に出れば活躍云々より前に怪我の危険性が高い。

 

過去に黒森峰での出来事があった西住から見ればそこは譲れない所だろう。

 

こりゃ猫田の言う戦車があったとしても三人は乗せられなかったな…。

 

「…ごめんね、西住さん」

 

「ううん、こちらこそわざわざありがとう、声をかけてもらえて嬉しかった」

 

「これを機に身体を鍛え直すなり!!」

 

「頑張るっちゃ!!」

 

「私達もいつか絶対戦車に乗るから、それまで…待っててくれないかな?」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

…自動車部も大洗が二回戦を突破すると信じてルノーや武部達の見つけた戦車のレストアを進めている。

 

猫田達オンラインゲーム三銃士も試合に出る為に筋トレを始めるという。

 

みんな大洗がこの先も勝ち抜くと信じているのだ。

 

「…八幡君、私、頑張るね!!」

 

西住もそれがわかっているのだろう、両手をぎゅっと力強く握ってそう決意した。

 

「…おう」

 

…そろそろ二回戦が始まる、か。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

後日談、という名の今回のオチ。

 

「…フレンド申請、だと?」

 

なんと驚いた事にいつものように家に帰ってSAOにログインすると俺宛にフレンド申請が来ていた。

 

いったいどんなユーザーからだろう、珍しい奴も居たもんだとフレンド申請のユーザー名を見ると。

 

【西住 まほ】

 

「………」

 

いや、これは無い、さすがに別人だろうとしばらく放置していると俺の携帯が着信を知らせる、…誰だ?

 

【姉住さん】

 

「………」

 

どうしよう、ものすっごく取りたくない、なんかもう面倒臭い出来事が起こる予感しかしない。

 

「…もしもし」

 

とはいえ、電話に出なければあの人、このまま延々とかけ続けて来そうだし、渋々電話を受けてみる事にした。

 

『比企谷か、フレンド申請は届いたか?』

 

「あぁ…、まぁ、はい、"たった今"届きました」

 

『送ったのはずいぶん前なのだが…、まぁ良い』

 

よっぽどサーバーが混雑してたのかな?不思議な事もあるもんだなー。

 

つーかこの人、その為にわざわざ電話かけてきたのね…、相変わらず生真面目な性格してるなぁ。

 

「つーか俺がこのゲームやってるってよくわかりましたね」

 

『エリカから聞いた』

 

ちょっと現副隊長さん、なんで人のユーザー勝手に教えてるのよ…、いや、それより。

 

「オンラインゲームとか…やるんですか?」

 

『…濃密な訓練の中にも適度なリフレッシュは必要だ、こういう気分転換も試してみたくなった』

 

なんかもっともらしい事を言ってるけど、実は妹がやってるからとかじゃないよね?違うよね?

 

「あとユーザー名に本名は駄目でしょう…、身元バレますよ」

 

たぶんこのゲームのアカウントの作り方教えたのは現副隊長さんだろうけど、そこら辺教えなかったのか?

 

『エリカにもそれは言われたが…、そういったものを今まで考えた事もなかったから良い案が思いつかない』

 

案って…、そこまで真剣に考える事でもないでしょうに。

 

『みほは確か…みぽりん、だったな』

 

「ぶっ!」

 

『どうした?』

 

「…いや」

 

まさかこの人からみぽりんなんて言葉が出てくるとは、しかも普段の淡々とした口調で言うものだから余計におかしく感じる。

 

「それ、西住の大洗でのあだ名ですよ、まぁ言ってる奴は一人だけですけど」

 

最初武部に言われていた俺のヒッキーといい、武部って他人にあだ名をよくつけるけどそんなに上手くないよね、秋山も名前のまんまゆかりんだし、とりあえず後ろに~りんって付ければ良いとか思ってるんじゃないだろうか。

 

あぁでも五十鈴の事をはなりんとは言わないな、うん、さすがにはなりんはないな、冷泉の場合はまこりん、これは流行る(断言)。

 

『…そうか』

 

「まさか…ユーザー名をまぽりんにしようとか思ってますか?」

 

姉住さんのあのキリッとした見た目でまぽりんって、違和感ハンパねぇな…。

 

『…ユーザー名の事は後で考える、それよりも比企谷、君のフレンドは何人居る?』

 

「このゲームやってるので考えたら三人ですかね」

 

俺の唯一無二のフレンドだった秋山に前回のランキング戦でアリサと西住が加わった、西住がこのゲーム続けるかは知らないけど。

 

『そうか、私は五人居る』

 

「はぁ…、そうですか」

 

『…私は五人居る』

 

なんで二回言ったの?ちゃんと聞こえてるよ。

 

もしかしてまだ前に『友達居ないんですか?』って聞いたの根に持っているのだろうか…。

 

そもそも三人も五人もそう変わらないと思うけど、スカウターで『コミュ力たったの5か、ゴミめ』とか言われても仕方ないと思う。

 

『そういう訳でこれからよろしく頼む、後でエリカからもフレンドを送るよう言っておこう』

 

「いやー、まぁ…、はぁ」

 

こりゃまた現副隊長さんからお小言を頂きそうだ…。

 

しかし、動機はよくわからんが姉住さんがオンラインゲームとは、普段堅物なこの人からしたら良い傾向なのかもしれんけど。

 

果たしてこれが大洗にとってプラスとなるかマイナスになるか…ではあるが。


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