千雨からロマンス   作:IronWorks

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第6話

――0――

 

 

 

 私のクラスメートは、変だ。

 それは、ロボがクラスにいるとか、留学生が多すぎるとかそんなものではない。

 

 正確には、そう――私のクラスメートの“ツボーズ”は、変だ。

 

 これが、正しいと思う。

 個性的というよりは、特殊なのだ。

 

 ――例えば、龍宮は巫女服ガンナーという妙な格好で、時折目を押さえて周囲を鋭く見回している。もちろん、ツボーズが、だ。

 

 中二病というやつなのだろうか?

 しかし、邪気眼は本当に目に妙な疲労が溜まるものなのだろうか。

 以前、一度ツボーズの様子について聞いてみたことがあるのだが、要領を得ない答えだった。

 

 ――例えば、桜咲のツボーズは、何故か翼が生えている。

 本当に翼が生えている、なんてこともないだろう。

 

 意外と乙女趣味なのかも知れない……とは思っても気になるので、よく背中を凝視しているのだが、怯えられるばかりで真相はわからない。

 

 ――例えば……そう、私の斜め後ろの席。

 金髪の少女、マクダウェルもその一人だ。

 

 マクダウェルは、いつもロボットである絡繰を従えている。

 ゴーレムと戦ってから、何故か絡繰のツボーズが見えるようになったのだが、それについては今は割愛しておく。

 

 マクダウェルのツボーズは、妙だ。

 小学生ぐらいの体格でも、十四歳、十五歳にもなればツボーズは見える。

 だが、マクダウェルは本当に小学生程度、十歳前後の女の子程度にしかツボーズが居ない。

 

 子供のうちはそんなに身体が凝りはしない。

 本当に十歳だというのなら納得できるが、年齢詐称でもしていない限り、中学生なはずなのだ。

 

「どうなってんだ、あれ」

 

 思わず、小さく呟いた。

 妙な点はこれだけではない。

 実は、十五日周期で、マクダウェルのツボーズが“薄く”なっている。

 

 正確には、既存のツボーズの他に、薄いツボーズが増えるのだ。

 

 だが、もちろんそんなのは今に始まったことではない。

 ゴーレムと戦ったすぐ次の授業の時から、気になっていたことだ。

 

 それならば、何故今になって首をかしげているのか?

 

 簡単な話だ。

 何故かマクダウェルが、私のことを鬼のような形相で睨み付けているからだ。

 

 視線の意図が解らず首をかしげていたら、思考がマクダウェルのツボーズのことに移っていたのだ。新学期早々、何故私はこんなに睨まれているんだろう?

 

 ……わからん。

 

 最近変わったこと、その中でマクダウェルの機嫌を損ねるような事があったか、考えてみる。逆恨みかそれとも本当に私が悪いのか、それで解るはずだ。

 

 そう、最近変わったことと言えば、一つ思い至った。

 まぁ、最近といっても、つい昨晩のことなのだが。

 

 私は、ネギ先生を待つ間、扉側の一番前の席ではしゃぐ“佐々木の姿”を見ながら、その時のことを思い出してみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千雨からロマンス 第六話 ~桜に映える、黒い影的ツボーズ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1――

 

 

 

 ――その日私は、部活帰りに桜通りを歩いていた。

 

 

 植物のツボーズなんてものが見えるようになってから、桜の木の下ではツボーズが連日連夜宴会をしている風景を見るハメになった。

 

 これが非常に目障りで、ツボーズにツボの効能を聞いて樹をマッサージするという奇行に及ばざるを得ない事態になっていた。

 

 そうすれば落ち着くのだが、いかんせん周囲の目が痛い。

 

 

 ――そうして歩いていたら、そう、確か悲鳴が聞こえたのだ。

 

 

 なんだ、と考える暇はない。

 まずは駆けつけて、それからだ。

 

 夜の桜通を疾走する。

 走って、走って、走って。

 ……辿り着いたその先では、佐々木が倒れていたのだ。

 

「おいっ、大丈夫かっ!?」

 

 駆け寄って見てみると、佐々木は寝ているだけだった。

 

「はぁっ……たく。こんなところで寝るなよ」

 

 そう、息を吐く。

 だが、それはそれで不自然だと言うことに思い至った。

 

 よく身体を見てみると、焦って走ったような緊張の疲労が見て取れた。

 心配になってツボーズを見てみると、首筋から妙なツボーズが生えていた。

 それに寝ているだけでは悲鳴の理由が、解らない。

 

「なんだ?おまえ」

『ひゃっはー!僕吸血鬼っ』

 

 コスプレが趣味なのか?佐々木。

 今流行のネットアイドルというヤツだろうか……痛々しいな。

 

 きっとストレスだろう。

 ストレスで吸血鬼ごっこまでしてしまったのだろう。

 バカレンジャーとか呼ばれていたのが、予想以上に負担だったのかも知れない。

 ……となると、想像の中の敵に悲鳴を上げたのか? 佐々木。

 

「よし、せめて目が覚めたら楽になっているように、マッサージをしておいてやろう」

 

 そう思った私は、佐々木にマッサージをした。

 なんだか、ツボーズが不思議な感じで昇天した気がしたが、気にせずマッサージをした。

 

 もう、とにかく全力でマッサージをしたのだ――。

 

 

 

 

 

 と、そんな経緯を得て、佐々木はそれから数分後には目を覚ました。

 何も覚えていないという佐々木を寮まで――なるべく優しく接しつつ――送った。

 

 そして、翌日、つまり今日には元気に登校してきたのだ。

 コスプレツボーズも居ないし、心にため込んでいたものは晴れたのだろう。

 

 己の本性をひた隠し、パソコンの前でニヤニヤする佐々木は見たくない。

 

 

 

 ……そこまで思い返してみたのだが、マクダウェルと繋がる要素は見あたらない。

 では何が悪かったのだろうか?

 

 私の思考はネギ先生の登場と共にかき消えて、もうマクダウェルの視線も気にならなくなっていった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2――

 

 

 

 ――この日を、いったいどれほど待ちわびたことだろうか。

 

 千の呪文の男……ナギ・スプリングフィールドが、私にあの忌々しき呪い“登校地獄”をかけて、早十五年。

 

 三年で解くと約束したこの呪い。

 それを信じて待ち続けた私は、ヤツの“死”という形で裏切られた。

 人間の死など、別れなど慣れていた……これも、そのうちの一つにすぎない。

 

 だが、これは“仕方がない”で諦められることではない。

 何せ私は、未だにこの麻帆良学園に囚われているのだから。

 

 それでも諦めるしかないのかと、日々を無為に生きてきた。

 そんな時だった……ヤツの息子が、この麻帆良学園に修行をしに来ると聞いたのは。

 

「そう、だから準備をした……準備をした、のに」

 

 適当な人間の血を吸い魔力を補充し、ヤツの息子が来てからは囮の意味も込めてクラスメートを狙う。自分の担当するクラスから犠牲者を出させて、更に傀儡になった自分の生徒と戦わなければならない状況を作る。

 

 そんな私の計画は……初期から頓挫することになった。

 

 最初に襲ったクラスメート、佐々木まき絵。

 それが何故か、翌日には元気に登校していたのだ。

 ぼーやへの宣戦布告にするために、まだ昏睡させておくはずだったのに。

 

「どういうことだ……茶々丸」

「はい、昨晩倒れていたところを千雨さんに介抱され、良くなったとのことです」

「ソースは?」

「本人が先ほど話していました」

 

 長谷川千雨。

 この女は、本当によくわからない。

 

 私がこの六百年の間で出会ってきたマッサージ師は、決して多いものではない。

 確かに、針灸を生業とする者の中には、ツボの位置が点となって見えるという者はいた。

 

 だが、ツボが具現化して語りかけるなどというトンデモマッサージ師は、見たことがない。

 

「まさか、新手の魔法使いなのか?」

「いえ、魔力も気も無いようです」

「ならば潜在的な力……超能力者、異能者か?」

「その可能性が、一番近いかと」

 

 茶々丸は人形……超鈴音に言わせるところの“ガイノイド”というやつだ。

 科学によって作られた思考回路は、常にyesかnoで答えを示す。

 

 解らなかったら解らない。

 ……そう答えを出すはずなのだが、今の茶々丸の言葉は曖昧なものだった。

 それはつまり、長谷川千雨がどの位置に“立つ”者なのか、判断しきれないということだろう。

 

「吸血鬼化を解除するほどの異能者か……マッサージ師などという皮を被って、大人しくしていたということか」

「マスター、千雨さんは大人しくはなかったと思います」

 

 ふふ、私の目を欺くとは……。

 だが、佐々木まき絵を助けたのが運の尽きだ。

 

 佐々木まき絵には、まだ私の魔力の気配が残っている。

 今晩にでも、長谷川千雨とネギ・スプリングフィールド……二人を、同時に釣り上げてやろう……。

 

「くくっ……貴様の命運もここまでだ……長谷川千雨ッ」

 

 私は周囲に殺気が漏れないよう調整しながら、長谷川千雨の背中を睨み付けた。

 

 そうしてノーテンキにしていられるのも、今日までだ……ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――3――

 

 

 

 教室前の札が、三年A組のものに替えられる。

 今日から僕も、正式な先生となるのだ。頑張らないと!

 

「三年!A組!――――ネギ先生ーっ!!」

 

 みんなは、いつものように元気だ。

 僕も、みんなに負けていられない。

 ここで気圧されるようでは、立派な魔法使いになるなんて、夢のまた夢だからだ。

 

「えと……改めまして。三年A組担任になりました、ネギ・スプリングフィールドです」

 

 そう言うと、みんなは声を出すのを止めて耳を傾けてくれた。

 なんだか、嬉しい。

 

「これから来年の三月までの一年間、よろしくお願いします」

「はーいっ!よろしくーっ」

 

 みんな、すごく良い返事だ。

 ここで調子に乗っていてはいけないのは解っているけれど、それでも胸が高鳴る。

 歓迎されているんだって、思える。

 

 こうして見回すと、まだまだ話しをしていない人が何人もいることが解る。

 全員と仲良くなれるかは解らないけれど、頑張ってみたい。

 

 いや、頑張るんだ。

 ……諦められる夢では、ないんだから。

 

 出席簿を開きながら、出席を確認する。

 そうして僕は、気になる気配を感じて視線を止めた。

 

 ――その先にいたのは、まき絵さんだった。

 

 魔法の気配だろうか?

 ほんの少しだが、魔力の残滓がまき絵さんについていた。

 

 ……何かあったのかな?

 心配だし、それに少し気になる。

 後で誰かに、話を聞いてみよう。

 

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。三ーAのみんなも、すぐに準備してくださいね」

「あ、そうでした……ここでですかっ!? わかりました、しずな先生っ」

 

 わ、忘れてた。

 新学期初日である今日は、一時間目を使って身体測定をするんだった。

 

「で、では皆さん、身体測定ですので……今すぐ脱いで準備してくださいっ」

 

 僕の言葉により、教室が静まりかえる。

 ま、まずいっ! これじゃあセクハラ先生になっちゃう!

 

「み、みなさん、これは――」

「――きゃーっ!ネギ先生のえっちーっ!」

 

 みんなの甲高い声を聞いて、僕は慌てて教室の外へ飛び出た。

 

「うぅ、初日から」

「あ、ネギ先生」

 

 教室から出てすぐ、廊下にいたしずな先生に呼び止められた。

 連絡しておくことが、まだ残っていたようだ。

 

「怪我もなく健康に異常はなかったのですが、佐々木さんが昨日、桜通りで気を失っていたようなんです。それで、体調が優れないようでしたら、すぐに保健室に運んでください」

「佐々木さんが、桜通りで……はい、わかりました。ありがとうございます、しずな先生」

 

 佐々木さんに纏わり付く、魔法の残滓。

 桜通りでの、昏睡。

 

 何か繋がりがあるとしか、思えない。

 ……調べてみた方が、いいかもしれない。

 

 よし、今日は桜通りをパトロールしよう。

 僕の生徒には、指一本触れさせるもんか!

 

 そう意気込んで、僕は職員室へと戻った。

 今日はまだ終わりではないし、何より正式な先生は大変なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――4――

 

 

 

 学校帰りの桜通りは、賑やかで静かだ。

 ツボーズが賑やかなだけで、空間そのものは静か、という意味だ。

 

 桜通りを歩きながら思い出すのは、昼間の身体測定の時に出てきた“噂話”のことだ。

 

 柿崎から“吸血鬼”の噂を聞いた時、私は思わず目頭を押さえた。

 佐々木が無意識のうちにコスプレをして、徘徊していたのだろう。

 ……今度からは、もっと優しくしてやらないとな。

 

 ちなみに、宮崎も隣にいるのだが、宮崎は妙に静かだ。

 よく見れば震えている。吸血鬼の噂が、予想以上に怖かったようだ。

 佐々木のコスプレだというのは気が引けるが……まぁ、少しぼかして伝えるか。

 

「なぁ、宮崎」

「は、はいっ、な、なんですか?」

「実は、あの吸血鬼の正体なんだが……」

 

 私が吸血鬼の正体のことについて言おうとすると、宮崎は足を止めて耳を傾けた。

 

「これは黙っていて欲しいんだが――――実は、私たちのクラスメートが、ストレスからコスプレして深夜徘徊しているってだけなんだよ。だから、あんまり怖がってやらないでくれ」

「コスプレ……そんな……」

 

 私が真剣な眼差しでそう言うと、宮崎は少し考えてから神妙に頷いた。

 解ってくれたようだ。

 

 ――誰にでも、人には言えない秘密があるということが。

 

「はぁせぇがぅわぁちぃさぁめぇぇぇえええぇぇぇッッッッッ!!!!」

「ひっ」

「な、なんだッ!?」

 

 地獄のそこから響くような、暗い声。

 その重低音に周囲を見ますと、街灯の上に立つ小柄な影があった。

 何をそんなに怒っているんだろう?

 

 ……あぁ、吸血鬼プレイの一環か。

 

「佐々木のツボーズじゃない? ……マクダウェルかッ」

「コ、コスプレしてた人って、エヴァンジェリンさんのことだったんですかっ!?」

 

 宮崎の驚いたような声が響く。

 ……先に呟いた佐々木の名前には気がつかなかったようだ。

 

 犠牲は、マクダウェルだけですんだということか。

 すまない、マクダウェル。おまえまでやっているとは知らなかったんだ。

 

「マクダウェルは私がなだめる。宮崎は、見なかったことにして走って先に行ってくれ」

「そう、ですね……わかりました、長谷川さんっ! 私は、何も見ていませんっ」

 

 宮崎はそう叫びながら、校舎の方へフェードアウトしていった。

 

 宮崎を見送った後、私は先ほどから反応のないマクダウェルの様子を見るために、振り向いた。静かだが、大丈夫だろうか?

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふふ」

「良い病院紹介しようか?……いや、私がマッサージした方が早いか」

 

 俯いて笑いだしたマクダウェルの姿は、何とも哀愁漂うものだった。

 ストレスがあるのなら、解消する手伝いをしたいんだが……家庭の事情とかだったら難しいな。

 

 そういえば、あまり人と話しているのも見ないな。

 照れ屋で友達がおらず、それが切っ掛けでストレスが溜まった、かな?

 誰か、マクダウェルの悩みを聞けそうなヤツはいないのか。

 

 あぁ……そういえば、一人いたな。

 

「まぁいい、貴様だけは、ゆっくりと、この手で、嬲り――」

「――絡繰に連絡しなくても、いいのか?」

 

 すればいいのに。

 それとも、恥ずかしいのだろうか?

 

「貴様――やはり、そうか」

 

 マクダウェルは私の言葉に反応して、顔を上げた。

 その表情は硬く、警戒心に覆われている。

 なんだか、手なずける前の子猫みたいだな……。

 

「――子猫か」

「私をそう呼ぶか……よほど命が要らないようだな。長谷川千雨」

 

 子猫呼ばわりされたと思ったのか、顔を赤くして恥ずかしげだ。

 マクダウェルはもう少し人の話を聞くべきだ。誰も、子猫の話しなどしていない。

 

 マクダウェルはぼろぼろのマントから試験管を取り出した。

 試験管を持ち歩くとは……ダメだ、元ネタがわからない。

 

「【リク・ラク・ラ・ラック・ライラック】」

 

 マクダウェルは試験管を指の間に挟むと、何かを唱えた。

 吸血鬼プレイがしたいのか魔法少女プレイがしたいのか科学者ごっこがしたいのか。

 

 なんにせよ、統一するべきだと思う。

 

「後悔しろ、長谷川千雨ッ!」

「僕の生徒に、何をするんですかッ!?」

 

 マクダウェルが試験管を投げようとした、丁度その時だった。

 杖に跨って空を飛んできたネギ先生が、私とマクダウェルの間に降り立ったのは。

 

「ちっ、遊びすぎたか」

「まぁ確かに、見るからに遊んでんな」

「貴様は黙れッ!」

 

 そうだった。

 ストレス解消のためなら、遊びじゃないな。

 うん、悪いことを言った。すまん、マクダウェル。

 

「千雨さん、これはいったい……」

「マクダウェルは、ストレスからこうして夜な夜なコスプレ徘徊を繰り返して……」

「いつまでもそれを引っ張るなッ!」

 

 マクダウェルはそう叫ぶと、地団駄を踏んだ。

 大丈夫なんだろうか?

 ……心配だ。

 

「そうだったんですか……なにか、僕に出来ることがあればっ!」

「そうだぞ、マクダウェル。私たちに出来ることがあれば、言ってくれ」

「いい加減にしろ貴様らッ!」

 

 むぅ、何が悪かったのだろうか?

 うーん……考えても、さっぱりわからん。

 

「まぁいい……纏めて仕留めてくれるッ――【リク・ラク・ラ・ラック・ライラック】」

「始動キーっ?! くっ――【ラス・テル・マ・スキル・マギステル】」

 

 流行なのだろうか、この歌。

 いや、ネギ先生の雰囲気的に、例の“魔法使い”特有の何か、か。

 

 なるほど、リアル魔法少女ならば、吸血鬼プレイのみに統一するのも無理があるか。

 どうしても、魔法少女の要素は入ってしまうからな。うん。

 

 だがとりあえず、ここでドンパチさせる訳には行かないだろう。

 怪我でもしたら、大変だ。

 

「【氷の精霊11柱・集い来たりて・敵を討て】」

「【光の精霊11柱・集い来たりて・敵を討て】」

 

 光が集まると、両者のツボーズが恍惚の表情を浮かべる。

 このまま観戦している訳にも行かないし、悪いが割って入らせて貰う。

 

「こほん。あー……【二人とも、落ち着け】」

「っ!?」

「っ!!」

 

 唱えるのをやめて、二人は崩れ落ちた。

 耳を押さえて、蹲っている。力入れすぎたか?

 要練習、だな。練習相手は……綾瀬にでも頼むか。

 

「こ、これは……」

「忘れていた……“ローレライ”とかいう、貴様の能力か……ッ」

 

 動けない二人を見て、考える。

 ネギ先生は私が連れて帰ればいいが……マクダウェルはどうしようか。

 

「二人ともっ大丈夫?! って、ネギ? なにやってんのよ」

「神楽坂……ちょうどいい時に来てくれた」

 

 宮崎と私が心配になったのか、神楽坂はわざわざ戻ってきてくれたようだ。

 

「マクダウェルとネギ先生が一悶着あってな。つい身動き封じちまったから絡繰にマクダウェルを迎えに来て欲しいんだが……連絡先、わかるか?」

「一悶着って……千雨ちゃん、なんでもありね。まぁ連絡網用のアドレスがあるから、連絡しておくわ――って、千雨ちゃんはなんで知らないのよ?」

 

 携帯電話、あんまり使わないからな。

 充電が切れていたのを忘れていたせいで、役立たずなんだ。

 

 しかし……神楽坂、様々だな。

 面倒見も良いし優しいし、こいつはけっこう良いやつだと思う。

 

「絡繰が来るまで、居た方が良いか?」

「情けは、受けんッ」

 

 マクダウェルがそう言うのならと、私はその意見を尊重する。

 もう少し、素直になっても良いと思うんだがな。

 

 神楽坂にネギ先生を抱えて貰い、私たちはその場を後にする。

 

 道中でマクダウェルのコスプレ事情を神楽坂に話すことも忘れない。

 あまり広めるのは感心しないが、神楽坂は約束は守るタイプだ。

 口止めだけで、充分だろう。

 

 なんとも波乱に満ちた新学期初日。

 その一日を終えたと実感できたのは、寮に帰ってシャワーを浴びた後だった。

 

 

 

 はぁ……まったく、これからどうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――了――

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