ダンまちに転生したが、脇役でいいや   作:冬威

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劣等

 

 

 

リヴィラの街を後にした七郎治達は、大量のモンスターの死骸(はい)と魔石、ドロップアイテムを道しるべに階層の北に位置する食料庫(パントリー)を目指していた。

 

 

「無駄口叩いてんじゃねえぞ」

 

 

ベートがレフィーヤに注意すると同時に、複数のデッドリー・ホーネットを空中で撃墜。

 

進路に立ち塞がるリザードマンの群と対峙する七郎治は、いつの間にか通り過ぎていた。だが、モンスターは現存のまま。背後に抜けた七郎治を食い殺そうと、その背に狙いを定める…。

 

 

「鼻唄三丁 矢筈切り」

 

 

チンと鯉口が鳴る音と共に、リザードマンは鮮血を噴き出し全滅した。

 

すれ違い様に放たれた高速の斬撃に、切られた者は気付くことが出来ない。【抜刀斎】の名を得てから必死こいて練習した居合抜刀術の一つである。

 

前衛のベートと七郎治の後を追随する、レフィーヤの周りの壁が音を出し割れる。新たなモンスターが生み落とされた。

 

 

「ッ⁉︎」

 

「下がれ、ウィリディス!」

 

フィルヴィスは短剣を抜き放ち、レフィーヤの前に踊り出てリザードマンを切り伏せる。そのまま生れ落ちたモンスターへと走り、腰から短杖を引き抜く。

 

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)

 

モンスターとの戦闘を続けながら、呪文を紡ぐ。『並行詠唱』で魔法が完成すると共に、目の前のリザードマンにとどめを刺し、後方に控えていたダーク・ファンガスに狙いを定めた。

 

 

「【ディオ・ティルソス】」

 

 

短文詠唱の魔法を発動させ、ダーク・ファンガスへと一条の雷が駆け抜け一瞬にして焼き尽くした。

そんなフィルヴィスの戦いぶりに、レフィーヤは言葉を発する事が出来なかった。自分の憧れる戦闘スタイルを目の当たりにし、自分もあれぐらいできればアイズに近づけるのに、と劣等感を感じてしまった。

 

 

「テメーもあれぐらい出来るようになればな」

 

「うぅ…」

 

 

周りのモンスターを全て片付けた七郎治達が合流し、ベートがレフィーヤへと言い放った。その言葉に肩を縮こませる。

 

 

「火力特化の魔道士にそこまで求める必要はないだろう。ウィリディスの力は真の局面で必要になる」

 

 

ベートの物言いに反論したのは、フィルヴィスだった。大切な同胞の為に。

 

リヴィラの街までの彼女からは想像もつかないだろう。同じエルフであるレフィーヤさえ突き離し、距離を取っていた。だが、今は少しだけ憑き物が取れたようだ。

 

 

「へっ、随分仲良くなったな。エルフども」

 

 

いつもの人を嘲る言葉とは、少しだけ違うベートの言葉にレフィーヤとフィルヴィスは顔を見合わせた後、照れ臭そうに視線を逸らした。

 

 

「ほんと、毛玉のせいでパーティーが崩壊しかけとったのにな」

 

 

七郎治の余計な一言に、ベートはああ?と胸ぐらを掴み上げた。いつものやり取りを終えると再びレフィーヤに向き直る。

 

 

「…お前はそれでいいのか。テメー自身も守れねぇで」

 

 

レフィーヤは目を見開いた。

 

 

「バカゾネスどもに甘やかされてるみてえだが、魔法だけが取り柄だの抜かしているうちは、一生お荷物だ」

 

「ッ‼︎」

 

 

レフィーヤの中に衝撃が走る。図星だった。分かっていた事なのだ。だけど周りの優しさに…

 

 

「お前は甘い」

 

 

甘えていた。

 

それだけ言うとベートはサッサと進み始めた。いつもの人を蔑み、嘲笑うような物言いでは無く、ただ現実を突きつける言葉。だからこそ真に響く。

 

 

…間違っちゃないけど、コレばっかりは本人次第やしな。

 

「…まぁ、レフィーヤはなりたいものになれば良いっちゃない?誰かに決められるもんじゃなかろう」

 

 

七郎治もベートの後を追う。残されたフィルヴィスはレフィーヤに何と声を掛けていいか分からず、ただ見つめることしか出来なかった。

 

フィルヴィスの視線を感じながらも、ベートに何も反論する事も出来ずに悔しさが募る。

 

前回の遠征で感じた無力感。怪物祭(モンスター・フィリア)で少しだけ強くなれたと思った。リヴィラの街で強敵との戦いに参加する事も出来なかった。憧れの人が高みに登ろうとしている時に側にいる事を許されなかった。

 

先程の七郎治の言葉が駆け巡る。ベートのフォローと共に彼なりの考え。

 

誰に強要されるでもなく、自分で決めろ。

 

ベートに対して悔しさを感じるが、七郎治に対しては劣等感が沸き起こる。

 

憧れの人の相棒。相棒である事を許された人。それは本人だけじゃなく、最高幹部からも…。なにより主神にも認められている。

 

自分が立ちたい場所に居続ける七郎治。妬ましい彼に言われた言葉に理不尽に腹がたつ。

 

 

(このままでいいはずがない‼︎)

 

 

手に持つ杖をギュッと握りしめ、前へと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なあ、毛玉よぅ」

 

「んだよ?」

 

 

後に続き始めたレフィーヤ達を、肩越しに見てから七郎治はベートに話しかけた。

 

 

「もし、今回のことがリヴィラの街の事件と関係しとったら、わしは役に立たんけん。後のことはよろしくな?」

 

「…チッ!雑魚どもの事なんか俺が知るかよ」

 

 

心無い言葉だ。だが、これはベートなりの了承の言葉。子供の頃からの付き合いだ、そんな事簡単に分かる。分かるのだが…。

 

一歩前に出た七郎治は振り返らずに問い掛けた。

 

 

「…男のツンデレとか誰得なん?わし全然萌えんばい?やっぱそういうキャラが誰とは言わんけど、あの娘にウケると思うちょるん?」

 

「殺すぞ⁉︎」

 

 

第1級冒険者のベートが繰り出す攻撃を、高速反復横跳びで躱す。

 

言わなければ良いものを、一言多いぞとファミリアの仲間から言われるが、ベートに対してはどうしても我慢出来ない。そもそも我慢出来るなら、『毛玉』なんて呼ばない。

 

ベートはからかうと必ず良い反応をする。

愛しのあの娘(アイズ)が絡むと尚よろし!この面白さをファミリアの仲間にも分かってもらいたいのだが…。なかなか理解を得られない事が七郎治の悩みの一つだそうな。

 

 

「うがー‼︎」

 

「フッ、残像だ」

 

 

姿がブレて見える七郎治に、後ろから見ているレフィーヤ達は何も言わなかった。そんなスピードで反復横跳びをしながら進む姿が、スゴイを通り越して何か気持ち悪かったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

 

七郎治達が去った後、静まり返るダンジョン。聞こえて来るのは遠くにいるモンスターの咆哮。

 

紫の外套から覗くは、不気味な仮面。音も無く彼らの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






えー、長らく時間が空き過ぎました。
ごめんなさい‼︎
感想欄にも続きの要望を頂いて感激です。出来る事なら完結まで持っていきたいです。

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