リヴィラの街を後にした七郎治達は、大量のモンスターの
「無駄口叩いてんじゃねえぞ」
ベートがレフィーヤに注意すると同時に、複数のデッドリー・ホーネットを空中で撃墜。
進路に立ち塞がるリザードマンの群と対峙する七郎治は、いつの間にか通り過ぎていた。だが、モンスターは現存のまま。背後に抜けた七郎治を食い殺そうと、その背に狙いを定める…。
「鼻唄三丁 矢筈切り」
チンと鯉口が鳴る音と共に、リザードマンは鮮血を噴き出し全滅した。
すれ違い様に放たれた高速の斬撃に、切られた者は気付くことが出来ない。【抜刀斎】の名を得てから必死こいて練習した居合抜刀術の一つである。
前衛のベートと七郎治の後を追随する、レフィーヤの周りの壁が音を出し割れる。新たなモンスターが生み落とされた。
「ッ⁉︎」
「下がれ、ウィリディス!」
フィルヴィスは短剣を抜き放ち、レフィーヤの前に踊り出てリザードマンを切り伏せる。そのまま生れ落ちたモンスターへと走り、腰から短杖を引き抜く。
「【一掃せよ、破邪の
モンスターとの戦闘を続けながら、呪文を紡ぐ。『並行詠唱』で魔法が完成すると共に、目の前のリザードマンにとどめを刺し、後方に控えていたダーク・ファンガスに狙いを定めた。
「【ディオ・ティルソス】」
短文詠唱の魔法を発動させ、ダーク・ファンガスへと一条の雷が駆け抜け一瞬にして焼き尽くした。
そんなフィルヴィスの戦いぶりに、レフィーヤは言葉を発する事が出来なかった。自分の憧れる戦闘スタイルを目の当たりにし、自分もあれぐらいできればアイズに近づけるのに、と劣等感を感じてしまった。
「テメーもあれぐらい出来るようになればな」
「うぅ…」
周りのモンスターを全て片付けた七郎治達が合流し、ベートがレフィーヤへと言い放った。その言葉に肩を縮こませる。
「火力特化の魔道士にそこまで求める必要はないだろう。ウィリディスの力は真の局面で必要になる」
ベートの物言いに反論したのは、フィルヴィスだった。大切な同胞の為に。
リヴィラの街までの彼女からは想像もつかないだろう。同じエルフであるレフィーヤさえ突き離し、距離を取っていた。だが、今は少しだけ憑き物が取れたようだ。
「へっ、随分仲良くなったな。エルフども」
いつもの人を嘲る言葉とは、少しだけ違うベートの言葉にレフィーヤとフィルヴィスは顔を見合わせた後、照れ臭そうに視線を逸らした。
「ほんと、毛玉のせいでパーティーが崩壊しかけとったのにな」
七郎治の余計な一言に、ベートはああ?と胸ぐらを掴み上げた。いつものやり取りを終えると再びレフィーヤに向き直る。
「…お前はそれでいいのか。テメー自身も守れねぇで」
レフィーヤは目を見開いた。
「バカゾネスどもに甘やかされてるみてえだが、魔法だけが取り柄だの抜かしているうちは、一生お荷物だ」
「ッ‼︎」
レフィーヤの中に衝撃が走る。図星だった。分かっていた事なのだ。だけど周りの優しさに…
「お前は甘い」
甘えていた。
それだけ言うとベートはサッサと進み始めた。いつもの人を蔑み、嘲笑うような物言いでは無く、ただ現実を突きつける言葉。だからこそ真に響く。
…間違っちゃないけど、コレばっかりは本人次第やしな。
「…まぁ、レフィーヤはなりたいものになれば良いっちゃない?誰かに決められるもんじゃなかろう」
七郎治もベートの後を追う。残されたフィルヴィスはレフィーヤに何と声を掛けていいか分からず、ただ見つめることしか出来なかった。
フィルヴィスの視線を感じながらも、ベートに何も反論する事も出来ずに悔しさが募る。
前回の遠征で感じた無力感。
先程の七郎治の言葉が駆け巡る。ベートのフォローと共に彼なりの考え。
誰に強要されるでもなく、自分で決めろ。
ベートに対して悔しさを感じるが、七郎治に対しては劣等感が沸き起こる。
憧れの人の相棒。相棒である事を許された人。それは本人だけじゃなく、最高幹部からも…。なにより主神にも認められている。
自分が立ちたい場所に居続ける七郎治。妬ましい彼に言われた言葉に理不尽に腹がたつ。
(このままでいいはずがない‼︎)
手に持つ杖をギュッと握りしめ、前へと歩き出す。
「…なあ、毛玉よぅ」
「んだよ?」
後に続き始めたレフィーヤ達を、肩越しに見てから七郎治はベートに話しかけた。
「もし、今回のことがリヴィラの街の事件と関係しとったら、わしは役に立たんけん。後のことはよろしくな?」
「…チッ!雑魚どもの事なんか俺が知るかよ」
心無い言葉だ。だが、これはベートなりの了承の言葉。子供の頃からの付き合いだ、そんな事簡単に分かる。分かるのだが…。
一歩前に出た七郎治は振り返らずに問い掛けた。
「…男のツンデレとか誰得なん?わし全然萌えんばい?やっぱそういうキャラが誰とは言わんけど、あの娘にウケると思うちょるん?」
「殺すぞ⁉︎」
第1級冒険者のベートが繰り出す攻撃を、高速反復横跳びで躱す。
言わなければ良いものを、一言多いぞとファミリアの仲間から言われるが、ベートに対してはどうしても我慢出来ない。そもそも我慢出来るなら、『毛玉』なんて呼ばない。
ベートはからかうと必ず良い反応をする。
「うがー‼︎」
「フッ、残像だ」
姿がブレて見える七郎治に、後ろから見ているレフィーヤ達は何も言わなかった。そんなスピードで反復横跳びをしながら進む姿が、スゴイを通り越して何か気持ち悪かったから。
『……』
七郎治達が去った後、静まり返るダンジョン。聞こえて来るのは遠くにいるモンスターの咆哮。
紫の外套から覗くは、不気味な仮面。音も無く彼らの後を追った。
えー、長らく時間が空き過ぎました。
ごめんなさい‼︎
感想欄にも続きの要望を頂いて感激です。出来る事なら完結まで持っていきたいです。