茨木童子、哪吒の実装祈願作

台詞や文法、宗教絡みの違和感はスルーでオナシャス



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真っ昼間から酒盛りやる新参英霊達の図

 

「へぇ、旦那はん料理もできるん? 流石やわぁ……」

 

 マスターが厨房で調理していると、物珍しそうに手元を覗き見てきたのは酒呑童子。彼が「危ないから…」と席で待つよう伝えると──「あんっ、いけずやわぁ」なんて溢しながらも、彼女は踵を返し厨房から出て行ってくれた。

 

 というのも、とある日の昼下がり。普段のマスターはダ・ヴィンチの工房でパンでも買って、簡単に昼食を済ませるのだが──ふと米を食べたくなったので炒飯でも、と思い彼が食堂を訪れたのが数十分ほど前の話。

 

 香辛料の匂いに釣られたワケではないだろうが、酒呑童子が食堂へやって来たのを皮切りにサーヴァント達が来るわ来るわ──ひょんなコトから一人前では済まなくなり、結果的にマスターは"四人前"も作る羽目になってしまったというワケだ。

 

(われ)が人間に施しを受けることになろうとはのぉ──」

 

 その時、ふと厨房から最も近い席へ座っていた鬼の少女、茨木童子が机に頬杖を突きながら苦言を溢した。というのも鬼とは本来、人間から奪う立場にある。マスターとサーヴァントという間柄でも、その理念を持つ彼女には食事を振る舞われるという感覚に違和感があるのだろう。

 

 しかし、不満げに頬を膨らませていた彼女へと近付く影が──

 

「うん? 茨木、よぉ聞こえんかったわぁ。なんぞ、言うたやろ?」

 

 その人影は、厨房を後にした酒呑童子だ。

 

「……っ……めめめ、滅相もない……ッ!!」

 

 酒呑童子が腰掛けると、茨木童子は威圧を感じさせる一言に体を強張らせた。それと同時に不満そうな表情は戦慄に変わり、丸まっていた背中はぴしっ、と伸ばされ、口を引き結ぶ。

 

 見れば、茨木童子の目尻には涙の玉が見て取れた。どうやら、本気で怯えているらしい。そんな二人の様子を見ていた人物、ちょうど二人の対面へ腰掛ける形となっていた女性が話に割って入った。

 

「やはり (あやかし)は (あやかし)か」

 

 蔑みにも聞こえる、どこか含みある呟きは酒呑童子と茨木童子の対面へ座るツインテール。いや、どこぞの八戒の言葉を借りるならばピッグテールの少女──その出で立ちは、赤いチャイナ服。そう、彼女の真名は哪吒。西遊記、封神演義等の伝記で語られる"人の形をしながら人あらざる者"。

 

「ほぉ、人間の真似事をするだけの人形風情が言うではないか──」

 

 そんなトゲのある哪吒の言葉へ反応を見せたのは、意外にも茨木童子だった。数瞬前までの怯えた様子は微塵もない、怒りと殺意の籠った紅蓮の瞳が哪吒を射抜く──

 

「あわわっ、なに言っちゃってるの哪吒──めっ!!」

 

 だが、哪吒の隣へ腰掛けていた女性が彼女を諌めた。法衣に身を包む彼女の真名は玄奘三蔵、哪吒とは縁深い英霊の一人である──だが、時すでに遅し。その雰囲気は剣呑、いきなりクライマックスな哪吒と茨木童子は視線を混じらせ火花を散らす。

 

 もはや衝突は不可避と思われた時、ふと笑い声が聞こえた。その場に居合わせた面々が笑い声に反応し視線を向けると、そこには瓢箪(ひょうたん)から盃へ液体を注ぐ酒呑童子の姿。

 

「ふふっ、堪忍なぁ。そこの可愛らしいお人形はんの言う通り、これが"鬼"いうモノや。やりたいことをして、言いたいことを言うて、人間から忌避され、最後は討たれる。嫌われて、蔑まれてなんぼ──いちいち指摘されたかて頭に血ぃ上らすようなことやない、そうや思わへん、茨木?」

 

「…………ぅ……っ……」

 

 酒呑童子が言葉と共に、酒らしき液体が波々と注がれた盃を茨木童子へと差し出す。二人の話題を遮り、哪吒の指摘を笑い飛ばす酒呑童子の言葉。本人は口にしていないが、居合わせた面々は"この話はここまで"という彼女の意思、威圧を感じられた。

 

 それを隣で感じた茨木童子は、まだ不満そうに哪吒を見つめるも、再び口を引き結び酒呑童子から差し出された盃を受け取った。諌められた、というよりは酒呑童子への恐怖のせいで怒るに怒れなかったのだろうが──ともあれ茨木童子は先ほどまでの怒気や殺気は鞘に収め、バツが悪そうに視線を逸らす。

 

「殺気立ってもぉて、堪忍な──」

 

「いや 悪いのは 私だ すまなかった」

 

 「う"ぅ"」と唸り、半泣きになりながらも酒を呑もうと盃を傾ける茨木童子を尻目に苦笑し謝罪する酒呑童子。そして素直に自分の非を認め、鬼二人へ頭を下げる哪吒──その様子を玄奘三蔵は黙って、だが、どこか嬉しそうに微笑んでいた。

 

「三蔵はん、仲直りの印に一献、どないどす?」

 

 苦笑を意味深な笑みに変え、酒呑童子が瓢箪(ひょうたん)の口を向けてくる。酒と呼べば聞こえは良いが、その瓢箪(ひょうたん)に入っているのは鬼をも酔わせる千紫万紅・神便鬼毒(せんしばんこう・しんぺんきどく)。おおよそ人間に呑めるような代物ではない、もちろんサーヴァントも例外ではないだろう。

 

 加えて薦めているのは、かの酒呑童子。呑めない酒を断れない相手に薦められる、なんとも理不尽。だが、薦められた玄奘三蔵はと言えば、バツが悪そうに頭を掻きながら──

 

「ぎゃーてぇ、こう見えて御釈迦様に仕える身なのよね、あたし。俗世の酒類はノーサンキューで通してきたから、抵抗あるなぁ──ねぇ、"こっち"で乾杯しない。これから作られたお酒なら私達も呑めるし、あなた達でも大丈夫だと思うから」

 

 "こっち"と称して玄奘三蔵が懐から取り出したのは、ちょうど掌に収まるサイズの桃。その桃こそは仙人の主食とも嗜好品とも噂される、"水を酒に変える桃"。

 

 仙桃と呼ばれるソレを物珍しそうに見つめる酒呑童子は興味津々、差し出された仙桃へ鼻先を近付け匂いを嗅いでみたり、指で突いてみたり──

 

「ふぅん、よぉ分からんけど酒なんやろ、なら問題あらへんわ。うちらにとってソレが毒であろうが、酒や言いはるなら、むしろ呑みたいわぁ──ほなら、せっかくやし、ご馳走してもらいまひょ」

 

「決まりね……じゃあ哪吒、ちょっと水汲んできて」

 

「ああ 分かった 4人分で いいのか?」

 

「んぐっ、んぐっ……ぅ"ぇっ……っ……え、いや、(われ)は要らn「ええでぇ」……うぅぅ……」

 

 涙を浮かべながらも、ようやく千紫万紅・神便鬼毒(せんしばんこう・しんぺんきどく)を呑み干し盃を空にした茨木童子だったが、まさかの"おかわり"に絶望。とっさに遠慮しようとした茨木童子だったが、断りの言葉を吐く暇さえ与えられず酒呑童子に遮られ涙目。

 

 それにしても酒呑童子、無自覚なのか狙ってやっているのかは定かではないが──あまりにも茨木童子が不憫、パワハラも良いところである。

 

「もってきた 玄奘 仙桃を」

 

 さほど時間もかけず哪吒が席へ戻ってきた、その手には盆。そして盆の上には、水が注がれたコップが4つ。それを見た玄奘三蔵は「待ってました」とばかりに仙桃を片手に立ち上がると──仙桃から漏れ出た滴を、4つのコップへと垂らしていく。 

 

 見た目の変化はない、だが明らかに何かが変わった。ただの水であったはずの液体からは仄かな酒気と香りが漂いはじめ、かすかではあるが神性をも帯びているようだ。

 

「はい、どうぞーっ」

 

 玄奘三蔵が仙桃酒の注がれたコップを、酒呑童子と茨木童子へと差し出す。受け取った二人の反応は、まったくの真逆。酒呑童子は香りを嗅ぎ、どこか恍惚とした表情を浮かべたが──茨木童子はといえば、死んだ魚のような目をしていた。

 

「玄奘 何に 乾杯する?」

 

「ん? そりゃあ、もちろん──」

 

「"このような機会"を与えてくれた、清濁併せ呑む大器を持つうちらのマスター以外には考えられへん……やろ?」

 

「………………うぅぅ………」

 

 酒呑童子がコップを持つ手を掲げ、玄奘三蔵と哪吒がそれに習う。そんな中、涙目で震えながらコップを掲げる茨木童子の姿は何というか、とても痛々しい──がんばれ茨木童子、いつか報われる日が来るといいね(来るとは言ってない)。

 

 

 

──国も、時代も、種族も、属性も、すべてが違う彼女達

 

──本来ならば永遠に叶わなかった、起こり得るはずのなかった瞬間

 

──誰かが望んだ光景は、そこにあった

 

 

 






女子会とは何だったのか……(目逸らし)


あ、仙桃の性能(水を酒に変えるアレ的な話)は封神演義の知識を拝借、事実は知らん(投げやり)

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