俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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本編がまったく書けないのでIFはやてEND。
設定はフェイトENDと同じでなのはを助けられなかったルートです。


IF2.君は私の大切な

 

 

 

私にとっての彼は、

 

 

そういう風に考えたことが無かったのは彼に負い目があったから。

 

 

でも、彼は、

 

隣にいると幸せで、

 

声を聞くと落ち着いて、

 

触れ合うと安心する。

 

 

たぶんそれは皆が言うような気持ちじゃない。

 

 

私と彼が、家族だから。

 

 

血が繋がってるわけじゃない。

 

 

書類の上でもそうじゃない。

 

 

ただ、私と彼は繋がっている。

 

 

だから私と彼は家族で、

 

 

 

心と心で繋がった、大切な、大切な存在。

 

 

 

それが、私の家族。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

久しぶりに帰宅する。

六課の解体からさほど時はたってないとはいえ最近の忙しさには流石の私でも思うところはある。

まだまだ若いとはいえ、いや、若いからこそこんな仕事仕事の生活でいいのか、なんていう風に。

でも、まあ、満足はそれなりにしているし遣り甲斐もある。

折角の帰宅なんだ、ゆっくりと休もう。

そんな風に物々と我ながら小さい考えを打ち切ると目の前に小さな人影が飛んできた。

 

「おかえりなさいです、はやてちゃん!」

 

「ただいま、リイン」

 

飛んできた人影、リインフォースツヴァイの頭を一撫で、するとリインに続いてもう一人がこちらに歩いてくる。

 

「お帰り、はやて」

 

「ん、紅助君もただいま」

 

七峰紅助君。

彼が魔導師をやめてもう何年もたつけど最近になってミッドに渡ってこちらで暮らすようになった。

それも六課の解体されるくらいの時やったっけ?

理由は聞いてないしようわからんけどそれからはちょくちょくお世話になったりしていて優しい男の子。

 

「夕飯はできてるよ、ついでに風呂も。どっちを先にする?」

 

「んー、皆は?」

 

「全員帰宅済み、はやてが最後」

 

「おぉ、皆集まるんは久しぶりやね。じゃあ、ご飯を先にしよか」

 

「了解、じゃあ行きますか」

 

さり気無く紅助君は私から荷物とコートを奪うと笑って家の奥へ歩き出す。

本当に彼にはお世話になっているな、ふとそう思った。

ミッドへ彼が渡って少しして彼を自宅に呼んだのが初めだったか。

仕事が大変で料理をするのも億劫だ、なんて昔では考えられないようなことを口にしたのが始まり。

それを聞いた紅助君がだったら、なんて風によく家に来て今日みたいに色々としてくれるようになった。

おかげで家族みんなの笑顔も増えたと思うし私も嬉しい。紅助君には本当に頭が上がらない。

 

仕事着から着替えリビングへ向かうと料理を囲んで待っていた家族達が私を迎えてくれた。

皆笑顔で、幸せってこういうのなんやな、なんて私も笑顔になった。

 

「ん、これ美味しい」

 

「それはどうも」

 

口に運んだ料理に思わずそんな言葉が零れ紅助君がにこりと笑う。

なんか、悔しい。料理と言えば私の得意分野のはずだったのだが最近では完全に紅助くん任せにしているし下手したら追い抜かれる事だって……

そんな考えが顔に出ていたのか紅助君がこちらを見て微笑んでいる。

 

「そろそろ師匠を越える時ですかね?」

 

「むぅ、まだまだや。私だってこれくらい……」

 

出来る。まだ、出来るはず?

紅助君に料理を教えたのは成功だったのか失敗だったのか。

 

とは言え教えたのも十年近く前になるんだし師匠なんて呼ばれるのもおかしい話だ。

なのはちゃんが入院していた頃の事だったかな。

目に見えて落ち込んでいた紅助君をどうにか元通りになってほしいって教えたんだったか。

趣味の一つにでもなって気を紛らわせてくれればとでも思っていたが、これ程とは……ぐぬぬ。

 

微笑む彼に目を向けて少しだけ、昔のことを思い出した。

 

料理を教えたこと。

 

何故彼のことが気になるのか。

 

ズキリと胸が痛む。

 

ああ、思い出さなければよかったのに。

 

 

そもそも私が紅助君を気にしていたのは夜天の書での事件で負い目からだ。

彼がなのはちゃんを守って意識不明の重体に陥ったのは聞いた。

私はそれを事件が終わるまで知らなかった。自分が中心となった事件での犠牲者だったのに。

彼が目を覚ましたのは事件が収束しリインフォースが消える数日前。

その間私は何度も彼の眠る姿を目にした。頭に過ったのは良くない考えばかり。

このまま目を覚まさなかったら、なんて風に。

私が背負うと決めた罪の形が目の前にある。

なのに私は罪悪感にかられるでもなく、ただただ恐怖していた。

 

怖かった。

 

怖くて、どうしようもなくて。

 

背負うと口にして目に見える形でそれと向き合った時、私は何も出来ず、ただの矮小な存在で。

 

それが私の負い目。

 

彼に私は何もしてあげられなかった。

 

無力だった罪悪感。

 

だから、時々考える。

 

彼は私を怨んでいないのか。

 

私は彼に対してこれでいいのか。

 

 

でも、怖くて聞けない。

 

 

私は、まだ無力で彼に何もしてあげられない。

 

 

 

 

 

 

「それでな、紅助君が――――――」

 

「へー……」

 

翌日、私はこれまた久しぶりの休暇に運良くそれが重なったフェイトちゃん、なのはちゃんとお茶をしとるわけなんやけど。

 

「む、なのはちゃん聞いとる?」

 

「うんうん、聞いてる聞いてる」

 

これは聞いてないな。思わず頬を膨らませ抗議を口にしようとした時、なのはちゃんが指を立てて私をさした。

 

「そういえば」

 

「うん?」

 

タイミングをずらされた私は言葉を飲み込んでなのはちゃんを見る。

彼女は何処かニヤニヤした顔でこちらを伺い、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「はやてちゃんっていつになったらコウ君と籍を入れるの?」

 

 

…………………ん?

 

 

「…………セキ?」

 

セキ、席、咳……?

 

「あ、私も気になるな。それ」

 

えと、フェイトちゃんまでなんや?

 

セキ、って……うん?

 

 

 

「はやてとコースケはいつ結婚するの?」

 

 

 

…………け?

 

 

………………ケッ!?

 

 

「け、結婚!?な、なんやそれ!!誰が、誰と、何っ!?」

 

「え、だから……はやてちゃんが、コウ君と、結婚、でしょ?」

 

な、なんや、なんやなんや!?

どういうこと!?

 

私が!?

 

紅助君と!?

 

け、結婚!?

 

「ど、どこの話なんそれ!?なんで私と紅助君が!!」

 

思わず身を乗り出して詰め寄る。

そない話一度もしてないやん。だいたい私と紅助君は付き合ってす無いのに、結婚て、結婚て!!

 

そんな私に目の前の二人はぽかんと口をあけて驚いている。

 

「わ、私おかしな事言ったかな?」

 

「言うとるやろ!?」

 

「お、落ち着いてはやて!」

 

私を宥めようとするフェイトちゃんを押しのける。

つまり、つまり、どういうことや!?

 

「二人は私と紅助君がそういう関係やとでも思っとるん!?」

 

「え、そうじゃないの?」

 

「はやてとコースケは付き合ってるんでしょ?」

 

なっ、なぁっ!?

 

「ちっ、がぁう!!私と紅助君の関係は清く正しくやなぁ!!」

 

「で、でもコースケってはやてと同居してるんでしょ?」

 

「そうやけど!?一緒の家に住んでますけど!?」

 

「ご飯とかも用意してもらたりして、尽くしてもらってるんだよね?」

 

「用意してもらってますけど!?尽くしてもらってますけど!?」

 

それが何!?

 

そら紅助君がこっちに住むとき一人暮らしは寂しそうやからって声をかけて家に住まわせてあげたりしとるけど。

 

そら最近の紅助君は甲斐甲斐しく私のお世話してくれたりしてなにかと助かっとるけど。

 

時々一緒に買い物に行ったり遊びに行ったり、なにかあったらプレゼントをもらったりあげたりしてますけど。

 

なんか最近よう手をつないだりしてますけど。距離感が近かったりしてますけど。

 

 

…………………あれ?

 

 

「わ、私って……紅助君と付き合ってないん、だよね?」

 

 

「…………えぇー」

 

 

そ、そんな冷たい目で見んでもええやん。

だって、そんなこと考えもせんかったもん。しょうがないやん。

 

「つまり、私は紅助君とは付き合ってなくて……でも、同居してて、よく二人で遊びに行ったりしてて……」

 

「やっぱりデートとかはしてたんだ?」

 

「で、でで、デート!?な、なんやそれ、美味しいん!?」

 

「いや、いやいや。ごめん、もう一回だけ落ち着こうか」

 

深呼吸深呼吸、となのはちゃんの言葉通り深呼吸を数回。

あかん、頭がどうにかなっとった。

 

「それで、コースケとは結婚しないの?」

 

「け、結婚!?コースケ君が!?」

 

「フェイトちゃん!?少し黙ろうか!?」

 

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

「えっと、私が話を進めちゃうんだけど……つまりははやてちゃんとコウ君は別に付き合ったり彼氏彼女の関係だったりはしないんだ?」

 

「うん、うん」

 

なのはちゃんの言葉にコクコクと何度も頷く。

確かにただの友達にしては近しい関係すぎるとはおもうが私と紅助くんは徹頭徹尾【友達】だ。

彼氏でもなければ婚約者でもない。

 

「てっきり付き合ってるものだと思ってたんだけどなぁ」

 

少し残念そうに言う二人。

 

「というかなんで私と紅助君が付き合っとる事になってるん?」

 

最もな疑問はそれだ。

なんで付き合う、を跳躍して結婚なんて話になったのか。

問うた私に対し二人は苦笑いを浮かべた。

 

「それは、ねぇ」

 

「……うん」

 

「なに、なんなん?」

 

「こうやってはやてと会うと大体ははやてってコースケの話をしてるし」

 

「コウ君と会ったら大体ははやてちゃんの話をしてるから……ね?」

 

「ね、って!勘違いやん!二人の勘違いやん!!」

 

「にゃはは、ごめんね、はやてちゃん」

 

「ごめん、はやて」

 

許して、と手を合わせる二人に頬を膨らませる。

こんな恥ずかしい思いをさせられてそう簡単に許せるもんか。

 

「でも、付き合ってないにしろ意識してるとは思うんだけどなぁ」

 

「うんうん。もう大分経つからね、一緒に暮らし始めて」

 

「…………許してもらうつもりあるん、二人とも?」

 

「まぁまぁ、そこは優しいはやてちゃんがね」

 

「そうそう」

 

「……むぅ」

 

「それで、だけど、実際のところどうなのかな?」

 

「どう、って?」

 

「はやてはコースケのこと好きじゃないのかなって」

 

「好きって、言われても……」

 

そんな事、考えたことは無いし。

紅助くんは紅助くんやし、彼氏とか付き合って欲しいとか……そんな。

 

「うーん、じゃあコースケはどう思ってるのかな?」

 

「それこそようわからん……」

 

紅助君が私の事、もしかしたら怨んでたり、しないかな?

私さえおらんければあの時、みたいに。

 

「じゃあ聞いてみたらどうかな?」

 

簡単に、本当に簡単になのはちゃんが言うた。

そんな風に聞けたら苦労せんというか、なんと言うか。

 

いじいじとしている私に痺れを切らしたのだろうなのはちゃんが口を開く。

 

「私から見たらチャンスだと思うけどな」

 

「チャンス?」

 

「二人の関係を改めるチャンス」

 

私と紅助君の関係を改める?

 

「……そうだね。はやてとコースケは一度相手がどう思っているのか、自分がどう思ってるのかをちゃんと認識すべきだと思うよ?」

 

「フェイトちゃん、も?」

 

「うん。たぶん、今の状況は長く続かないよ。人の関係なんて簡単に変わっちゃうものだから、だから知らなきゃいけないんだと思う。自分が相手に何をしたいのか、相手が自分に何をしたいのか」

 

今の状況は長く続かない。それは少し、嫌だ。

私は今、家族がいて、紅助君がいて、皆笑っていられる今がとても愛しい。

それがずっと続いて欲しい。いつまでも。

 

「聞いてみるべき、なんかな?」

 

「そうだね」

 

「私もそう思う」

 

頷く二人に不安が募る私。

二人の言葉に文句があるわけではない。

私だってこんななぁなぁな状況がずっと続くとは思っていない。

それに私だって知りたい。

 

彼は私を怨んでいるのか、

 

 

それとも、

 

 

だから、

 

 

「聞いて見る。紅助君に」

 

 

 

 

 

 

なんてかっこつけて見たものの。

 

二人っきりになると、怖くて、

 

 

かちゃかちゃと食器の鳴る音がする。

手にかかる水は冷たくて、でも隣に、肩がぶつかりそうな距離に彼がいると思うとなんというか……緊張する。

別に今のように彼と一緒に皿を洗ったりした事が無いわけじゃない。

どちらかといえばよくする方だ。でもいつもはこんな気持ちにはならないのに。

あの二人のせいや。そう頭の中で悪態をつき隣に経つ紅助君に意識を向ける。

 

「あ、あー……こ、紅助君?」

 

「ん?」

 

自分で口にしておきながらなんだが、凄く不自然な声のかけ方。

紅助くんも何かあると気付いているのだろう。不思議そうにこちらを見る。

 

「うぅ……あの、な。その、えっと……」

 

「…………?」

 

おかしな子、と思われているのだろうか?

自然と頬が熱くなり逃げるように彼から顔を背ける。

 

「あの、あのな。紅助君って最近ようお世話してくれるよね、私の」

 

「ん、そうかな?」

 

くすり、紅助君が笑う。

そういうの、ずるい。わかってないふりをして平然と優しくする。そういうの、本当にずるい。

 

「ご飯だって作ってくれるし、家の掃除だって最近はまかせっきり、というか家事は殆どやってくれてるやん」

 

「……まあ、言われてみれば」

 

「なのに私が休みの時は遊びにつれてってくれたり、私の我が儘も聞いてくれとる」

 

「それは、俺も楽しいし」

 

「……本当?」

 

「本当」

 

ちらりと彼の顔を盗み見る。

見えたのは、笑顔。本当に、笑顔?

私が今、疑心暗鬼に陥っていると言うことは自分でも何となくわかる。

自分の中の『恨まれているのでは?』という気持ちが強すぎて何を聞いても彼の言葉を信じることが出来ない。

でも、ちゃんと聞かないと。彼の、言葉を、ちゃんと理解しないといけない。

それは勇気とかそんな綺麗なものから出た想いじゃない、たぶんただの知識欲。

 

私は知りたい、なぜ紅助君はそんなに優しいの?

 

私は知りたい、なぜ紅助君はそんなに綺麗なの?

 

私は知りたい、なぜ紅助君はそんなに、

 

 

そんなに、

 

 

「ねぇ、紅助くん」

 

 

「なんだよ、次は?」

 

 

「紅助君は、なんで、なんで私に優しくしてくれるの?」

 

 

呟くような小さな声に、やはり彼は笑った。

 

 

 

 

「好きだから」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

『待たせてごめんね、ヴィヴィオを寝かせるのにちょっと時間掛かっちゃって』

 

『皆そろったね、それじゃ聞こうか?』

 

暗闇の中に浮かぶディスプレイから二人の笑顔が見える。

 

あの後、私は何をしたのか、何を言ったのか覚えていない。

気が付いたら眼の前にいたはずの紅助君はいなくなっていて、私はこうやってなのはちゃんとフェイトちゃんに相談をしようとしている。

正直、頭の整理が出来ていない。だからこうやって助けを求めた。家族の誰にも話さなかったのは恐らく家長としての最後のプライドだったのか、そんな物を気にしている場合でもないと思うのだけれど。

二人が私を見つめている中、私はぼそりと言葉を吐き出す。

 

「…………き、って」

 

『え?』

 

喉が、渇く。

ただの一言で体がぼんやりと熱くなるのを感じながら紅助くんの言葉を思い出す。

 

「紅助君に、好きって、言われました……」

 

『おおっ』

 

私の搾り出した言葉に花が咲くような笑顔で返す二人。

その気持ちは乙女として理解できるけど二人も出来るなら当事者である私の気持ちもわかって欲しい。

 

『どんな風にどんな風に!?』

 

「こう、一緒にお皿を洗ってる時に、なんで優しくしてくれるのって聞いたら……その、好きだからって」

 

『うわぁ、コウ君もわかってないなぁ。もうちょっとロマンチックな場面とかなかったのかなぁ?』

 

なのはちゃんはそう言うけどね、私にとっては日常こそがロマンチックと言うか……何を言っているんだか。

 

『それで、はやては何て答えたの?』

 

「まだ、返事を……してません」

 

『えぇー』

 

そんな目で見られたって……その、本当に突然だったですし。

そんなこと言われるなんて思って無かったですし。

 

『それじゃあ、はやてはどうするつもりなの?』

 

「どう、するって……」

 

『コウ君もそれなりに勇気をだしたんだと思うよ? だからはやてちゃんは返事をどうするのかな』

 

「勇気……そう、なんかなぁ?」

 

本当に紅助君は勇気なんて出したのだろうか。

正直、私にはからかわれているいる様にも思える。

 

でも、そんな感じじゃなかった。

 

自分で言うのはなんだが人を見る目は持っているつもりだ。

嘘を見抜くくらいなら、それに紅助君とは付き合いも長いからわかっているつもりだけど。

 

「うぅ……どうしたら、ええんかな」

 

思わず、頭を掲げる。

本当にどうすればいいのかわからない。

 

『はやてははやての思うようにすればいいんだよ』

 

「思う、ように?」

 

『まあ、私達には無理強いできないから。ただ、はやてちゃんがどう思っているのかちゃんとコウ君に伝えてあげて欲しいな』

 

「…………うん」

 

『好きって言われてどう思ったのか、それからコウ君とこれからどうしたいか、どうするべきか』

 

どうしたいか、どうするべきか。

 

私は、やりたい事が、やらなければいけない事が沢山ある。

 

私が、どうしたいのか、どうするべきなのか、か。

 

 

 

私は、

 

 

 

『大丈夫、コースケはどんなはやてでも受け入れてくれるよ』

 

『むしろ受け入れてくれなきゃ困るよね。スターライトブレイカーしちゃうよ』

 

「あはは」

 

 

…………うん。

 

 

「言ってくる、返事」

 

『ん、頑張って』

 

『何かあったらまた呼んでね?』

 

「うん、ありがとう」

 

 

二人にお礼をいい、通信をきる。

胸の中は少し軽くなって考えはまとまった。

 

 

行こっか、紅助君のところに。

 

 

私の、気持ちを伝えに。

 

 

 

 

 

 

ノックを数回、声をかける。

 

「私、はやてやけど」

 

「はやて? 何かあった?」

 

「ちょっとお話せんかな?」

 

「ん、わかった」

 

返事と共にドアが開かれる。

その先に紅助君がいて自然と笑みが零れた。

 

「返事、言いにきたんやけど」

 

「ああ、そっか」

 

真っ直ぐ見つめた紅助君は薄く笑みを浮かべている。

彼には不安とかは無いのだろうか。

 

「まず、やけど。紅助君が言った『好き』ってそういう意味、でいいかな?」

 

「うん、はやてが考えているのでいいと思う。俺ははやてが好きでずっと一緒にいたい」

 

真っ直ぐな言葉。頬が熱くなるのがわかる。

 

「じゃ、じゃあ、聞いてくれる?」

 

「わかった」

 

私はこんなにドキドキと落ち着かないのに紅助君はいつも道理で少しだけ気に食わない。

でも、逆に考えると紅助君が落ち着いて聞いてくれるなら私も安心して話を出来る。

 

「私は、紅助君に好きって言ってもらって嬉しかった」

 

本当に、嬉しかった。

 

戸惑いの方が大きかったのはあるけど確かにそういう気持ちもあった。

だからこその戸惑い、ともいえるかもしれない。

 

一緒にいて不快に思ったことはないし気が付けば手を繋いでいるくらい私は彼に気を許している。

だから彼が私に向けるような気持ちは私にもあったのだろう。

 

 

「でも、ね」

 

 

でも、それでも、私はそれじゃあ駄目だ。

 

 

「私は、紅助君と一緒になれない」

 

 

その言葉に紅助君はすこし驚くように目を見開いた。

少し勝ったよう気分。私はこの一言が言えたことに少しだけ安堵し言葉を続ける。

 

「理由はいっぱいある。例えば私は紅助君を満足させられる自信が無い」

 

それは負い目からくるものなんだろう。

また私と入ることで紅助君に何かあるんではないか、そんな不安。

そして私は今でこそ夜天の主ではあるが過去に闇の書の主であったことは変わらない。

そのため恨まれることもある、私はそれを覚悟しているし何をされたってかまわないとさえ思っている。

でも、それで紅助君が巻き込まれるのは駄目だ。

私のせいでもう紅助君を傷付けたくない。それだけは絶対。

 

「それに私はこれから、やりたいことがまだ沢山ある。やらないといけないことが沢山ある」

 

六課が終わりじゃなくこれからもそしてその先も。

それがいつ終わるのかはわからない、もしかしたら私だけじゃ終われないのかもしれない。

 

「だから、私は紅助君を一番にできん」

 

確かに紅助君と一緒にいるのは幸せだしどんな時だって安心できる。

でも、それに甘えてはいられない。ずっと頼りっきりでは私が駄目になってしまう。

それが怖い、何も出来なくなってしまうのが怖い。私は前に進み続けていたい。

 

「私は皆が思ってるほど器用な人間やない。だから人が人を好きになるってもっと簡単な話なんかもしれんけど、私は紅助君が好きでいてくれるだけ好きでいてあげたい」

 

それは私の一番になってしまうくらい。

もちろん紅助君がそんなに私の事を思ってくれている、なんて自信は無い。

でもどんな好きでも、どんな愛でも、私は一番嬉しくて、幸せで、だから辛い。

 

進み続けるために生きるか、

 

一人のために生きるか、

 

 

どちらか一つしか選べない自分が辛い。

 

 

「紅助君の気持ちは嬉しい。でも、ごめん」

 

 

私は、馬鹿な人間や。

 

 

精一杯、作りに作った笑顔を顔に貼り付けて紅助君を見た。

 

 

「え?」

 

 

思わず、口から零れたのは疑問符。

 

 

笑っていた。

 

 

彼は、紅助君は私を見て笑っていた。

 

 

何で、何が?混乱する私に彼は大きく口を開いた。

 

 

 

「それがどうした」

 

 

 

それが、どうした?

 

「理由はわかった」

 

「だったら!」

 

「自信がないなら、毎日俺がはやてといてどれだけ満たされるか教えてやる」

 

「なっ!?」

 

開いた口がふさがらない、というのはこういう意味なのだろう。

カッ、と今まで以上に頬が熱くなる。

 

「そ、そんなもんだいじゃっ」

 

「それに」

 

熱を逃がすように強く吠えた言葉がさえぎられる。

 

 

「はやてが一番にしてくれなくていいんだ」

 

 

だって、そう彼は私を見た。

目と目が合う。縫い付けられるように目が離せなくなる。

 

 

「俺がはやての一番になるから」

 

 

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ。

なんで、紅助君はそうなの?

 

 

「はやてに好かれるなら何だってする。俺がはやての何番目でも一番まで上ってやる」

 

 

いつだって私の前じゃ笑顔で、辛いときとかないのかな?

私といて嫌な事とかないのかな?

そんなことを考える私に彼はやっぱり笑う。

 

 

「俺ははやての隣にいたいから」

 

 

馬鹿馬鹿しい位に単純でくだらない。

でも、そういうのずるい。

 

 

「紅助君の、そういうところ……嫌い」

 

 

そうやって甘えさせて、駄目にさせる。

私の気持ちなんて考えてないんじゃないのか。

 

 

「私は、私だって……っ」

 

 

握り締めた拳は痛くて、まぶたの奥から零れそうになるそれを隠すように俯く。

 

 

「紅助君と、一緒にいたいっ」

 

 

でも、それじゃあ、

 

 

「紅助君は、私になんとも思わないのっ?」

 

 

迷惑だって何度だってかけただろう。

ソレに今だって、迷惑をかけているんじゃ。

 

 

「私はっ、私、は……っ」

 

 

嗚咽交じりの言葉、かっこ悪い。

ついに零れだした涙、それを伸ばされた手で拭われ引き寄せられる。

 

 

「あっ……」

 

 

わかったのは抱き寄せられた、ただそれだけ。

暖かくて、心地よくて、安心して、

 

 

「そういうのが、ずるいっ」

 

 

見上げた視界には紅助君の顔が広がっていて、また涙がこぼれた。

 

 

「私だって、紅助君がっ」

 

 

手を繋ぐでもなく、抱き合うでもなく、

 

 

 

「好き」

 

 

 

触れ合うそれは、熱く、甘く、幸せで、

 

 

 

「紅助君は、私のために生きてくれる?」

 

 

 

永遠に繋がっていたい。

 

 

 

 

 

 

「結局、はやてちゃんとコウ君ってどういう関係になったの?」

 

あれから数日またの休日に集まった私達が話すのは結局その話題。

 

「うんうん。付き合うことになったの? それとも本当に結婚とか?」

 

「んー、結婚はまだ早いかな?」

 

「じゃあ、付き合うことに?」

 

「どうだろう?えっと、私と紅助君の関係、は」

 

私と紅助君の関係、

 

 

それを簡単に表すなら、

 

 

 

「家族、かな?」

 

 

 

心と心で繋がった存在。

 

 

彼は、私の大切な家族。

 

 

 

ああ、今日も幸せや。

 

 

 

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