俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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眠ければ眠いほどよく書ける事に気付く。
しかし何を書いているのかをよくわかっていない。


19.Again

 

やっぱり私は、コウ君に恋をしていた。

 

 

 

医務室からこっそりと抜け出した私はコウ君を探していた。

 

何年も今日という日を待ち続けてきた。

何度も、何度も想像した今日。それが今なんだていうのが少し信じれなくてまるで夢を見ているような気分だ。

一歩ずつ踏み出す足がふわふわと浮かび上がりそうで歩を進める度に胸の奥が高鳴った。

鏡を見つける度に身嗜みを確認していたり男性局員の姿を見つける度に緊張してしまったり。

いくら時間が経とうと落ち着かない自分がいる。

それが恥ずかしいどころか嬉しくて気が付けば笑顔を浮かべている。一言目はなんて言おう?

 

久しぶり、かな?

 

遅い!って文句をいって見るのもいいかも。

 

おかえり、って笑ってあげるのもいいなぁ。

 

とりあえず抱きしめちゃうのも……

 

うん、それがいいかも。

 

その一瞬を夢見るように歩き回る。

そんな私を呼ぶ声で私は足を止めた。

 

「なのは!」

 

「あっ、フェイトちゃん」

 

なんだフェイトちゃんか、なんて失礼なことを考えてしまった。なんだか申し訳ない。

 

「もう大丈夫なの?」

 

「う、うん。大丈夫なの」

 

嘘、大丈夫じゃない。

シャマルさんからは少しの間安静に、なんて言われていたけれど待っていられる筈もなく隙を見て抜け出してきたのだ。実はまだ体が痛んでいたりする。

 

「あ、あのね。コウ君を、探してるんだけど」

 

「あ、コースケ?えと、私はわからないけど。どこに行ったのかな?」

 

むぅ、コウ君はいったいどこにいるのか。

もしかしたらまだ私から隠れてるんじゃないのかな?

 

そんな風に唸っているとフェイトちゃんがクスリと笑う。

 

「一緒に探そうか」

 

「え?」

 

「一緒に探そう?そのほうが早く見つかるよ」

 

「いい、の?」

 

「うん。それに今のなのは凄く興奮してるみたいなんだもん。それじゃあコースケに変な子って思われるよ?」

 

「ほ、本当!?」

 

「本当。だから色々話しながら探そうか。少しは落ち着くだろうから」

 

「う、うん」

 

……私はそんなに興奮していたのだろうか?

そりゃあ胸はドキドキうるさいし顔は熱いし体を動かしてないと落ち着かないけど、変な子って思われるほどじゃ…

悶々と頭を悩ます私を見てフェイトちゃんちゃんが笑う。

 

「ほら、行こう!」

 

「あっ、うん。待って!」

 

引っ張られる腕によろめきつつも表情は笑顔を浮かべている。

思い返して見ればこんなに素直に笑えたのもいつぶりか。コウ君がいなくなって私だけじゃなく、コウ君と付き合いのある人達の誰もが感じていただろう重い緊張感。

何故こうなったのか、何が悪かったのか。皆が考えてそれぞろの答えを出した。

私の力不足のようにフェイトちゃん客観視をしていたと言った。

だから私は力を付けフェイトちゃんは自分の為にコウ君を探した。

それでもその緊張感は拭えるものじゃなかった。

また、次は、なんて考えないわけがない。

一度の失敗で、小さな間違えで、その代償がずっと纏わりついていた。

 

だけどコウ君が帰ってきた今、その嫌な緊張感が消え去った。

忘れたわけではない。

ただ嬉しかった。

まだ終わっていなかったことに、そして次があることに。

 

だから次はこうならないために、

 

後悔をしないために、

 

私達はやらなければいけないことを決めた。

 

だから安心して笑える。

 

そんな今がきたことが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

「コウ君と私が出会った時の話?」

 

「うん。そう言えば聞いたことなかたなって」

 

「そうだったかな?」

 

フェイトちゃんの言葉に当時の事を思い出す。

 

 

あの頃はお父さんが入院し私の周りが慌ただしくなっていたときだ。

そうは言っても子供の私では家族にできることなんて無く私はただ手の掛からない子供を求められるだけだった。

もちろん私はそれに従った。本当は寂しかったけど、なんて言えずに。

 

そんな中で出会ったのがコウ君。昔で言うコウスケ君。

 

昔の私は彼の事を好きどころか嫌いとすら思っていた。

当時の私は人付き合いが苦手でそんな私を気にしてくれる子なんてのもいないからいつも独りでブランコを揺らしていた。

それに対してコウ君は人気者でいつも何人かの塊で遊んでいるのを見かけた。理由は知っている。彼は私と歳が同じなのに何でも知っていたし何でも出来た。

別に羨ましかったってわけじゃない。誰かと遊びたいとはあまり思えなかったし大勢の人に囲まれるのは苦手だったから。

だから、コウ君が私に近づいてきたことは正直、迷惑としか思えなかった。

 

「俺と遊んでください」

 

そんな畏まった風に言われた言葉を今でも覚えている。

突然私の前に立って彼が口にした言葉だ。皆から人気のある彼が何で私の前なんかにいるのかがわからなかったし彼の後ろに見える数人の影がこちらに向けてくる視線が怖かった。

だから最初はコウ君となんて遊びたくなくてブランコを一漕ぎしてコウ君を蹴飛ばし、逃げ帰ったって言うのが私と彼の出会い。

 

勿論これで終わりってわけじゃないよ。

そんな断り方をした次の日、またコウ君は現れた。

同じように畏まった風に言葉を吐くコウ君に少し困惑した。

私としてはかまって欲しくないって言うのが強かったからその日も蹴飛ばしてやったっけ。

でもその次の日もまた次の日も私のところにくるんだから、絶対おかしいって思った。

 

「もしかして私に惚れてるんじゃ」

 

 

最終的に出た答えがそれ。

今になってみると顔から火が出そうなほど恥ずかしいよ。フェイトちゃんだから話すんだからね。

まあ、そう考えるとなんだか気恥ずかしくなってしまって作業になっていたコウ君を蹴飛ばすってことも出来なくなっちゃって。

気が付いたらいいよって返事をしてた。

一緒にブランコを揺らしてコウ君の迎えが来るのを待ってた。

でもそれがなかなか来なくておかしいなって思い始めた時。

 

「何時帰るの?」

 

ってコウ君が口にした。

こっちの台詞だ!なんて怒るとなんでか笑って返されて、

 

「迎えは来ない」

 

って。

 

コウ君はその頃からしっかりした子だったからそうゆう子供だけのところは親は気にしてくれないって。

じゃあなんで遅くまでいるのって聞くとお前が聞くかって風にため息を吐いて、

 

「君が帰らないから」

 

の一言。

最初は意味がわからなかった。

なんで私が帰らないとコウ君が帰れないのか。

結局わからなくてその日は心配して探しにきた家族にそれぞれ怒られながら帰ったんだ。

 

コウ君の言葉の意味がわかったのがそれから一週間くらい後。

その間もコウ君とは遊んでいたんだけど私にはあの意味が全然わからなくて。

いっぱい考えはしたんだけど結局わからなくてお母さんに聞いたんだ。迷惑にならないかな、なんてビクビクして聞いた答えが、

 

「心配してくれてるのよ」

 

っていうのだった。

私が一人だったから?寂しそうだったから?色々理由は考えられたけど結局「惚れているから」って答えになった。

そんなのでも私は嬉しくて私を必要としてくれる人がいるんだって凄く幸せな気持ちになれた。

 

「心配してくれてるんだよね?」

 

気付かされた次の日。私は得意気にコウ君に話したんだけどコウ君はくすりと笑ってそうかもね、なんて言う。だから「あ、やっぱり惚れられてるな」って私は。

 

思わせぶりなコウ君が悪いんだよ!

絶対にそうだ!

 

 

でも、まぁ、気が付いたら好きになっていたのは私の方で……

 

 

コウ君が善意でしてくれたって気付いたのもそれくらいの頃。

なんで気付いたかは、恥ずかしいから内緒。

 

 

私が好きになった理由は多分ただ側にいてくれたから。

 

 

支えられてたんだなって、今になってわかる。

 

 

一人でいるのは寂しいから。

 

 

小さな嬉しさとか、幸せとか、

 

 

そんな掛け替えのないものをくれるコウ君が好きになったんだ。

 

 

 

「こんなところ、かな。なんだか恥ずかしい」

 

「ふふ、コースケはあんまり変わらないみたいだけど人付き合いが苦手ななのはかぁ。少しおかしい」

 

「そ、そうかなぁ?」

 

「そうだよ。あっ!」

 

「フェイトちゃん?」

 

「コースケ!」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

その光景を見た瞬間、頭の中がかっと熱くなった。

 

いたのはコウ君とティアナ。

 

声はよく聞こえない。

 

ただコウ君の姿だけが視界いっぱいに広がって。

 

考えるより先に体が動いていた。

 

フェイトちゃんの声は聞こえた。けど無視をした。

 

コウ君の手をとって引っ張る。

 

コウ君と、ティアナ。二人ともの驚く顔を横目で見つつ私はコウ君を連れ去った。

 

ただ二人っきりになりたくて。

 

人気がない場所に付くとコウ君を壁に押し付ける。抵抗されないことに疑問はあったけど気にはしなかった。

 

顔を押さえつける。

 

驚愕の表情。

 

 

唇を奪った。

 

 

荒々しく。

 

 

熱く。

 

 

執拗に。

 

 

 

一方的なそれに意味があった訳ではない。

ただ気持ちを形として伝えたかっただけ。

 

 

また会えて嬉しかった。

 

 

ずっと待っていた。

 

 

この時を、この一瞬を。

 

 

手を繋いで、抱きしめ合って、口付けして。

 

 

何でも伝えたい。

 

 

私の気持ちを、

 

 

好き。

 

 

好き。

 

 

好き。

 

 

好き。

 

 

大好きなんだって。

 

 

ねぇ、伝わってるのかな?

 

 

私はね、

 

 

ずっと君を待っていんだよ?

 

 

ずっと、ずっと。

 

 

褒めて、くれるかな?

 

 

頭を撫でて欲しいな。

 

 

笑った顔を見せて欲しい。

 

 

ゆっくりと唇を離し彼の顔を見る。

 

 

「久し、ぶり、遅い、よ……ずっと待ってた、私っ」

 

 

コウ君を見るまでずっと考えていた言葉が出てこない。

ただただ零れるのは拙い言葉と頬を伝う冷たい涙。

 

そんな私にコウ君は笑った顔を見せ、包み込むように抱きしめられた。

 

 

「暖かぁい……」

 

 

幸せで、ただ幸せで。

 

抱き合う私の耳元で彼がささやく。

 

 

「ごめん、ごめんな」

 

「コウ、君?」

 

「そりゃあ、心配かけたよな」

 

「心配、したよ」

 

「謝ってもだめかもしれない。だから、色んな事を話したい」

 

「話、す?」

 

「今まで見てきたこと、二人で見れなかったこと、口にした食べ物とか、聴いた曲とか、いっぱい張る。勿論、なのはと一緒にしたい事も」

 

「うん、私もコウ君としたいことある」

 

「いっぱい話そう。これからのことも、これまでのことも」

 

「うん、うんっ!」

 

声を聴くだけで、嬉しくて。

 

まるで今まで溜めていたものが流されるような気分。

 

世界が一気に色を取り戻す。

 

彼という一色を、

 

貴方が、ここにいる。

 

それだけで私はこんなにも生きている。

 

もっともっと、

 

熱く、

 

深く、

 

溶け合うほどに繋がりたい。

 

伝えたいよ。

 

好きでも、

 

大好きでも、

 

伝えきれないこの気持ち。

 

 

大切な、

 

 

大切な、私の想い。

 

 

ねぇ、だから、

 

 

「おかえり、コウ君」

 

 

「ただいま、なのは」

 

 

私は弾けるような一瞬に恋をしているようだ。

 

 

 

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