俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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20.Jealousy

 

 

 

私は、■■■かったんだと、思う。

 

 

 

天井に手を伸ばしてみて気付く。

届くはずのないその行為を今まで何度繰り返しただろうか。

届けば何かが変わると思った訳じゃない。それは望みだったのだろう。

 

いつか、届くから。

 

絶対、届かせるから。

 

 

だから、

 

 

何かが、

 

 

世界が、

 

 

変わってよ。

 

 

 

 

 

 

目蓋を持ち上げてやっと、私は自分が眠っていたことに気が付いた。

こんなにもすっきりとした目覚めはいつぶりだったか。

 

「夢、見なかったな」

 

外はまだ暗い。

時計に目を向けていつも起きるよりより数時間も前だったことを確認する。

どうしようかと、考えた時に最初に浮かんだのは彼の顔だった。

 

「声、低くなってた」

 

背も伸びていた。

誰よりも知っていると思っていたけど、想像していた姿とはどこをとっても違っていて。

初めてかもしれない、彼に対して新鮮、なんて思うのは。

 

「新鮮、新鮮か」

 

昨日、彼の口から聞かされた言葉には私の知るもとなど一つもなく、なくて、

 

「あ、ああ、あれ?」

 

私は、誰を知っていた、の?

 

彼は、コウ君で、

 

彼は、七峰紅助で。

 

彼は、

 

カ、れは、

 

「こ、紅、コウ君っ?」

 

そ、ういえば、

 

そうい、えば、

 

彼は何度も、何度も口にした名前が、

 

あったような、よう、な、ぁ。

 

 

「ティ、アナ」

 

 

私は知らない、の、に、知ってるの?

 

わた、しは知、ら、な、いのに。

 

「な、なに、何だろう」

 

おかしい、

 

口は、笑うのに、

 

涙が、流れる。

 

おか、しい、

 

この、気持ち、気、持ち、ぃ。

 

初めての、気持、ち、だ。

 

痛く、て、

 

苦し、くて、

 

怖、くて、

 

辛い。

 

怒りのような。

 

違う、ような。

 

憎しみのような。

 

近い、ような。

 

「新鮮、だな」

 

こ、んな、気持ち、は。

 

あ、ぁあ、あ、あああ。

 

なんて言うの、かな。

 

 

「あぁ」

 

 

 

羨ましい。

 

 

 

妬ましい

 

 

 

これは、

 

 

嫉妬だ。

 

 

 

 

 

 

「おはようっ、コウ君!」

 

「ん、おはよう」

 

朝食をとるため向かった食堂、そこに彼はいた。

すかさず彼の隣に腰を下ろし笑顔を向けた。

小さい頃にも何度か考えた疑問ではあるが、彼が隣にいるだけでなんで笑顔になってしまうのだろうか?

我ながら成長してないな、なんて自嘲する。

 

「なにかいいことでもあった?」

 

「え?」

 

ぽんと、投げかけられた言葉に首を傾げる。

 

「いや、にこにこしてるからさ」

 

「あー……にゃはは」

 

思わず頬を掻く、自分でも分かっているがいざ他人に指摘されてみるとなんだか恥ずかしい気分になる。

 

「えっと、そのね……夢見がよかった、かな。その程度だよ」

 

「夢か。俺も今日は夢を見た」

 

「コウ君も?」

 

「ああ、昔の事」

 

ズキリと、その言葉に胸が痛んだ。

今まで悩まされてきた夢を思い出したからだ。

こればかりは彼を攻めるわけにはいかない。

あれは私の弱さだったのだろう。それにあの夢や過去があったからこそ今がこんなにも幸せなんだろうとも思う。

 

だから、今は、

 

「どんな、どんな夢だったの?」

 

少しでも笑おう。

 

「なのはがいて…………あー」

 

「コウ君?」

 

「んー、悪い。忘れちゃった」

 

繕うようよコウ君が笑った。

 

どんな夢を見たのだろう。

 

どんな、私を見てくれていたのだろう。

 

なんだか、

 

顔が緩む。

 

「ねぇ、コウ君」

 

「うん?」

 

「また、会えてよかった」

 

「…………うん」

 

二人で、二人で笑えてる。

 

これでいいんだ。

 

たぶんこれが幸せで、

 

だから、

 

………………。

 

でも、

 

なんでだろう。

 

胸の奥、

 

ずっと感じてる。

 

これはまるで、

 

 

身体が引き裂かれるような。

 

 

 

心と体が分かれてしまうようだ。

 

 

 

 

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