俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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-05.world

 

世界にはあるべき形がある。

 

 

少し前の自分の考え方。

自分自身の世界の捉え方は人それぞれ、主観からくるものなのだと思う。

誰を中心に捉えるか、何を歯車に使うか。そういう世界の組立方があって人は大人になるにつれ少しずつ世界を作っていくのだろう。

だから人の数だけの主観、つまり世界があってそのひしめき合いの中、共通認識の集合体または神の視点と言うべきものが個人の主観の外である本来の世界。

そしてその神の視点、共通認識の集合体は各々の歯車の塊である。しかし歯車だけでは世界は回らない筈だ。

芯、つまり中心が神の視点と呼ぶべきそれにも存在するはずだ。

その中心によって回る世界こそ、世界のあるべき形なのだと思っていた。

 

そして、私はその中心が七峰紅助、彼だと信じていた。

 

だから私は彼のそばで世界の歯車になりたくてただ努力をしているつもりだった。

本当は何かをしていれば彼に近付いていると思えたからかもしれない。

 

が、結局はこの有り様だ。

 

彼は腕を無くし私は道を変えた。

 

以前の私が言うとしたら。

彼の腕は私が残した結果で罪で、私が彼に拘る理由になる。

 

だろうか。

結局、彼に縋るための一要素にしかならなかっただろう。

おそらく彼の腕を直すため、なんてそれらしい目標を掲げて見つかるまでの行動意欲にするのではないだろうか?

考え方を変えるため、進む道を変えたのは良かった事なのかもしれない。

 

以前の私は彼のためにと言う理由を私が生きるため求めてきた。

いつの間にか、手段と目的が逆になっていた。

 

だから、私はやめたの。

 

私は彼の腕を治すために何も出来ない。

 

私は今まで貰ったものを彼に返すことは出来ない。

 

私に出来るのは彼からもらうこと。

 

彼に甘える事しか私には出来ない。

 

だから、甘える、沢山。

 

多くのものを彼から貰う。

 

それが私の生き方で、私の恋のやり方。

 

いっぱい甘えて、貰って、彼の事が好きだよって伝えるだけだ。

 

もう、誰が世界の中心でも構わない。

私の世界は、彼と私の二人で回る。

それで充分。周りに人がいればもっと満足。

だから、後悔はしてない。するつもりもない。

 

 

私が幸せだから。

 

 

他は知らない。

 

 

 

 

 

 

「なんかさ」

 

くぴくぴと、マグカップを傾けながらフェイトちゃんがつぶやいた。

暇だから、なんて珍しい理由で私の家、もといコウ君の家に現れた彼女だったが。

 

「コースケに甘えすぎじゃないかな、なのは」

 

コウ君の膝に寝転がる私にそう言ってきた。

 

「甘えすぎ、かなぁ?」

 

彼の顔を見上げると、ふいっと顔をそらされる。

否定はしないらしい。

まあ、確かに。

さっきから私の口にお菓子を運んでくるのは彼の左手だし右手はずっと頭を撫でてくれている。

いやぁ、幸せだなぁ。

 

「私ってほら、コウ君のこと好きだから」

 

だから何だ、フェイトちゃんの目がそういってる。

確かに好きだから何でも許されるってわけじゃないだろうけど、コウ君の場合何だかんだ言いつつ嬉しそうだし。

所謂Win-Winな関係が成り立ってるから何も問題ないんじゃないだろうか。

そう、懇切丁寧に説明してあげるとフェイトちゃんはため息を一つ。

 

「恋に溺れるって、こう言うことなのかな……」

 

「あはは、恋のためなら溺れ死んでもいいかもね」

 

私の言葉にコウ君はあまりいい顔をしない。

彼は大っぴらにこう言うことをいうのは好きじゃないらしい。

でも私はもっと惚気たりしないなぁ、なんて。

これも私の我が儘だから、我慢してほしいな。

 

「私とコウ君はさ、本当に小さい頃に出会ったんだけど」

 

にゃはは、と笑いながら口を開くと、またかと言いたげな視線が投げられるが気にしない。

 

「最近、もしコウ君と出会わなかったら、なんて考える事があるんだ」

 

「出会わなかったら?」

 

「私は凄い魔導師になってたかもね」

 

「は?」

 

驚いた表情を見せたのはフェイトちゃんではなくコウ君。

フェイトちゃんとは何度か杖を交えたから、感覚的にわかるのだろう。

 

「自信はあったんだ。もっともっと高く飛べる自信は」

 

それこそ誰にも負けないくらい凄い魔導師だ。

夢を語るには少し時間は早いが、この世界がA世界だとして、出会わなかった世界をB世界とすると、B世界上では夢でも何でもなく現のことなのだろう。

 

「まあ、正確に言えばなれた、だろうけど」

 

結論を言うと今の私は地に墜ちたツバメだ。

なる気も無ければ資格も資質も失った。

今じゃ恋に生きるただの少女だ。人生何があるかわかったものじゃない。

 

「コウ君はこう言うことを私が言うと傷ついたかもしれないけど、私はもう未練なんてないから」

 

それに私は二足草鞋で生きられるほど器用な人間じゃない。

コウ君と出会いながら魔導師を続けていてもいつかダメになっていただろう。

だから恋だけに生きるというのは私にあった生き方だ。

魔法も使えないままだしより良く選べる道はこちらのみ。

都合のいいと言えば都合のいい。

私らしい人生かな。

 

「フェイトちゃんはさ、恋より大きいものてある?」

 

「あるよ」

 

即答、さすがフェイトちゃん。

ただ周りからは生き急いでいるように見えてるらしいよ?

 

「私は友情。恋より友達を選ぶよ」

 

「つまり親友である私達ってことだね。にゃはは、幸せ」

 

本当に幸せ。

こぼした笑みにフェイトちゃんも微笑む。

綺麗。私はフェイトちゃんの事を綺麗でかっこよくては尊敬できるとは思っているけど羨ましいとは思わない。

世界の捉え方が違うのか、見ている世界が違うのか。

 

コウ君はどうなのだろう。

 

私より大切なものがあるだろうか?

 

私を捨ててでも欲しいものがあるだろうか?

 

まあ、あったとしても、

 

 

ずっとそこにいさせるつもりは無いけどね。

 

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