俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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書き直しました。
次からは落ち着いて殴り書かないようにしたいです。


27.まけたくない

 

 

 

 

たぶんこの気持ちは悔しいとかそういうものじゃない。

 

 

羨ましい、私はあの三人が羨ましかったんだ。

 

 

 

 

 

 

目線の先に三人の影。

私はそれが家族のように見えた。

二人の男女とその間に挟まれた小さな子供。

 

私にはなかったものだ。

 

私は両親の顔を覚えていない。

実の兄からは私が幼かった頃に事故で亡くなったと聞いたが正直物心がついた頃には二人での生活だったのであまりピンとこないというのが大きかった。

だからこそ憧れというものがある。私の両親がどんな人なのかは知らない。

 

でも、いつかそんなふうになれたらなんていう風には思っていた。

 

もちろん、私の好きな人が相手で。

それをまさか、違う女性と見せられるなんて。

 

しかも、私はその好きな人を含めて、羨ましい、妬ましい、なんて思っている。

 

黒い、嫌な感情だ。

元々、自分がなのはさんにどうこう言えたような人間ではないことを理解していた。

あの時はただ夢中で、フェイトさんが彼女のために諦めたことを知っていたから、なのにあんな姿のなのはさんを見て勝手に怒ってしまったというかなんといううか。

冷静なフリをした激情家、たぶん私はそんなもので感情に飲まれやすい。

 

だから、この黒い気持ちが私の中に広がっていくのを少しずつ感じていた。

 

紅助さんにだけは向けられない。

そう、分かっていてもだめで。まるで私の体の中で煮立つようにその気持ちが膨れ上がる。

 

私には持ってないものが多い。

私のコンプレックス。

 

それは母だったり、父だったり。

 

兄だったり。

 

だからこそ紅助さんは私にとってどれだけ大きな存在なのか、わかっているるもりだ。

 

でも、嫌な気持ちを我慢できない。

 

私は紅助さんが好き。これは絶対。

でもこの気持ちは違う。

好きとか嫌いとかじゃなくて、もっと深くて暗くて。

 

「私も」

 

あんな風に、気がつくとそんなことを呟いていた。

隣にいたスバルが不思議そうにこちらを見る。

 

「なんでもないから」

 

なんでもなくない、そんな事は言えない。

この気持ちは恥だ、醜い気持ちだ。

スバルにも教えたくない。それは私のプライドからくるものなんだろう。

 

こういう自分が嫌い。

 

変なプライドばかり強くて、他人に頼ることが苦手。

追い詰められると凝り固まった考え方しかできない、木偶。

 

それが私の深いところにある変えることのできないひとかけら。

 

こんなのだから、私は。

 

届かない。

 

 

 

 

 

 

泣きたい。

 

ふとそんな気持ちが浮かび上がる。

張り詰めた紐がほどけるような、突然の事だけど昔から何度だって付き合っていることだ。

そしてそんなことが起きるたびに私の目の前には、

 

好きな人がいる。

 

「どうかした?」

 

私の気持ちが漏れたのか。そう紅助さんが問う。

彼の胸には満面の笑みを浮かべる子供、ヴィヴィオの姿。

なにより羨ましいのはこの子だ。私の持っていたはずのもの、それに気づかされたのはヴィヴィオがいたから。

だから、私はこんな子供の前でこんな事を言ってしまったのだろう。

 

 

「なんで私には、両親がいないんですか?」

 

 

口にして、何を言ってるんだと自問する。

言ってどうにかなる事でもない。紅助さんも少し困ったように顔をしかめた。

胸に痛みが走る、困らせたいわけじゃないのに。

すぐに取り消そう、そう口を動かそうとした時、

 

 

「わたしも、パパとママがいないよ」

 

 

そんな声が私を遮った。

視線がヴィヴィオを捉える。

小さな少女は笑顔で、その左右で色の異なる瞳を私に向けていた。

 

「でもね、こーがパパになってくれたの」

 

そうだよね?とヴィヴィオが頭上の紅助さんを見上げる。

紅助さんもそんな少女に表情を崩して頭を一撫でする。

 

「認めた覚えはないけどな」

 

「ヴィヴィオがみとめたから、いーの」

 

なんで、疑問が浮かぶ。

 

なんで目の前の二人はそんなに、

 

まるで本当の親子みたいじゃないか。

 

あってまだ間もないのに、なんで、なんで?

 

浮かび続ける疑問に私はヴィヴィオを見つめると彼女はにっと子供らしく口で三日月を描くと言葉を続けた。

 

 

「新しいパパでもつくれるんだよ。それに、ヴィヴィオがみとめたから、本物のパパなんだ」

 

 

子供らしい、純粋な答え。

馬鹿らしいくらい簡単で思わず笑ってしまいそう。

新しくても自分が認めていれば本物、か。

だったら、紅助さんのお母さんを母と呼んでもいいのだろうか? 認めてもらえるのだろうか?

それに紅助さんだって、私を家族として。

 

「ティアナはさ。俺たちじゃ不満、かな?」

 

「え?」

 

不安そうな、そんな珍しい表情の紅助さん。

少しだけ揺れている瞳にはしっかりと、私が写りこんでいた。

 

「確かに俺たちは血が繋がってるわけじゃないし過ごした時間も結局少ない。それに俺はティーダさんほどしっかりしてないから」

 

「そ、そんなっ」

 

「でも、俺はティアナの事を家族だと思ってる。こういうのは卑怯だけどさ、俺はずっと自分がティアナの兄だと思ってたから、すこし寂しい」

 

「っ!」

 

卑怯、本当に卑怯。そんなことを言われたら。

紅助さんの顔を見ていることができず顔を隠すように俯く。唇の痛みで自分が唇を噛んでいることを知らせていた。

 

「なんで、今まで言ってくれ、なかったんですか……っ」

 

泣きそうになりながら訴える。

そんな自分が情けなくて、小さくて。

 

「私だって、ずっと、不安で、寂しくて……ずっと独りだと、思って」

 

紅助さんが悪いんじゃない。ただ私が一人相撲をしてただけ。だけど。

受け止めて欲しい。そう思わずにはいられない。

 

「ずっと、私が紅助さんに引き取られたのを、同情とか、義務なんじゃないかって……思ってました」

 

だから不安で、私は本当に必要とされているのか。

なんで残ったのは私だったのか。一人では答えの出ない問を続けてきた。

そんな私の殻を破るように紅助さんはゆっくりと語りかけてくる。

 

「確かに、ティアナを引き取ったのはティーダさんから任されたっていう義務感もある。でも、家族になるってそんな簡単じゃないんだ」

 

紅助さんの手が伸び俯く私の頭を撫でた。

それはあの家族になった時から変わらない。暖かくて優しくて。

 

「俺は、ティアナと家族になりたいからそうしたんだ。俺が望んでティアナを家族にしたんだ」

 

その言葉で我慢の限界だった。

ぽたりと床に涙がこぼれる。目の前に小さな子供がいることも忘れて私は涙を流す。

恥ずかしい。泣き虫と言われても仕方ない。

でも、紅助さんの前でならこんな恥ずかしく泣くのも、好きかもしれない。

だってやっぱり私は紅助さんが好きで、この気持ちは確かなものだから。

 

私の家族になってくれてありがとう。

 

私を家族にしてくれてありがとう。

 

貴方を好きになって良かった。

 

私、正直なところなのはさんに勝てる自信がない。

 

だって彼女は私から見ても魅力的で、私もなのはさんのことが好きだから。

 

今ならフェイトさんの気持ちだってわかる。

 

でも、やっぱり、

 

 

負けたくない。

 

 

紅助さんの隣にいたい。

 

そばで支えてあげたい。

 

近くで笑っていたい。

 

 

好きだから、彼が好きだから。

 

 

この気持ちに嘘をつきたくない。

 

 

 

だから、負けたくない。

 

 

 

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