俺は彼女を壊したようだ。   作:枝切り包丁

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7.Smile

 

唇に指を這わせてみる。

 

 

「…………熱い」

 

 

自然と笑みが漏れた。

 

 

「…………ふふ」

 

 

口元が緩んで笑い声まで漏れる。

 

仕方の無いことだと思う。

 

トーストを齧った時とか、花畑を舞う蝶を眺める時とか、街中で笑顔を見つけた時とか、

何気なく幸せだなって感じることは何百と存在するけど今のこの幸せだけは一生に一度だけ。

 

 

私の、特別な幸せ。

 

 

※

 

 

 

「どうしたの?」

 

隣を歩くフェイトちゃんが不思議そうにこちらを見る。

 

「え?」

 

「何か笑ってるみたいだから、いいことでもあったのかなって?」

 

「あっ」

 

思わず口元を押さえる。どうやらまた緩んでいたらしい。

でも、本当に仕方が無い。それだけ幸せなことがあったばかりで体がうまく制御できない。

触れ合った唇が熱かったり、声を聞いた耳は蕩ける様。それほど彼は私にとって特別で、大切で。

 

「……ふふ」

 

ほら、また。

 

「いいこと、あったみたいだね」

 

フェイトちゃんが微笑む。

 

「コースケのことでしょ?」

 

ズバリ当ててくるフェイトちゃんにドキリとした。

 

「な、なんでわかるの?」

 

「ふふ、なのはのことならわかるよ。コースケ程じゃないけど」

 

顔が赤くなるのを自覚する。

何度思い出してもこうだ。

自分からするのと相手からされるのでは凄い差。

幸せな気分も気持ちよさも、思わず足の力が抜けて転びそうになったくらいだ。

 

唇を撫でる。

 

まだあの時の熱が残っているようだ。

 

「コースケもちゃんと頑張ってるみたいだね」

 

ポツリとフェイトちゃんが呟いた。

それに私が首を傾げるとフェイトちゃんは微笑みながら「なんでもないよ」と手を振った。

 

「そういえばコースケの腕が治るんだっけ?」

 

「あっ、うん!コウ君から聞いたの?」

 

「うん。すごく嬉しそうだった。なのはのおかげだって」

 

「よかったね」と祝福してくれる言葉に少しだけ照れる。

別に私が何をしたってわけじゃない。お礼なら先生に言うべきだと思う。

私は偶々先生と出会っただけで、本当にそれだけで。

それをフェイトちゃんに伝えると微笑むだけだった彼女は突然カラカラと笑い出した。

 

「ど、どうしたの?」

 

「ううん、なんでもない。ただ……なのはって結局コースケと似てるんだね」

 

私と、コウ君が……?

 

「そ、そんなこと無いよ!コウ君は私なんかよりしっかりしてるし格好良いし優しいしクールだけど凄く情熱的で律儀で他人の機微には疎いけど何かあるとすぐに気を使ったりするし怒りっぽいんだけどその怒り方が可愛かったりしてこの前なんて真っ赤になって怒り出したコウ君が両腕をバタつかせたりして怒り出したのが駄々をこねる子供みたいでキュンキュンしちゃったりそういえばコウ君ってすごく甘党でウチのケーキを食べてすごく美味しいって喜んでくれたんだけど実はそのケーキって作ったのは私だったんだけど一口食べるごとに頬を緩ませるコウ君を見てると私がコウ君を食べたくなっちゃたりして他にもコウ君って膝枕とかで体温を感じてるとすぐに眠たくなるらしくてこの前してあげたんだけどなんと十秒で眠たそうにしはじめてね私の膝の上うつらうつらしてるコウ君を見てるとなんだかこう体が熱くなってきて抱きつきたいだけど起こしたくなくて一緒にお昼寝した時なんて目の前数センチでコウ君が寝息を立てててこっそり髪の匂いを嗅いで見たりしたらすごくいい匂いで同じシャンプーをっ使ってるのに何であんなにいい匂いがするのかなそれにコウ君って寝てると足に何かを絡めたがる癖があってその時も私の足がコウ君の足に絡められて少しくすぐったいんだけど何だか言葉にしにくい気持ちでモヤモヤしちゃったり小さい頃とか割とスキンシップとかいっぱいしてたんだけど最近はあまりしなくなってまあでも今はまたよくしたりするけどコウ君って頭を撫でるとすごく可愛いんだよいつもは私が撫でられる側なんだけど不意打ちみたいにこっちから撫でてあげると顔を真っ赤にしてそっぽ向いちゃうんだもうなんて言うのかな母性本能って言うのかな止まんなくなっちゃうんだコウ君を見てると昨日のコウ君なんてチラチラ私のこと見てるんだけど話しかけてこなくてね私も意地悪しちゃって紫さんとばっかり話をしてるとコウ君ったらシュンととしちゃって肩を落として自分の部屋に帰っていくのもう萌えるとかそれど頃じゃないんだよねとにかくキュンキュンしちゃってそれで最近いつもは格好いいお兄さんなコウ君なんだけどその中の子供っぽいコウ君を探すことが癖になっちゃってだから気がついたらコウ君を目で追っちゃったりしてその視線に気付いたコウ君が笑ってくれるとすごく幸せな気分になって私ってコウ君がいればその日のご飯とかいらないんじゃないのかなとか思っちゃったりそんなわけないのにねでも私的に

 

…………って、ハッ!?

 

私今何を!?

 

いつの間にかトリップしていた私にフェイトちゃんは苦笑を浮かべている。

 

「コースケのこと凄く好きなんだね?」

 

「そ、そんなこと…うぅ」

 

恥ずかしくて縮こまる私にフェイトちゃんは言う。

 

「そう言うところもコースケと似てるよ?恥ずかしくて素直になれないとか、相手のために頑張ると自分の事を見えなくなるとか」

 

私も周りから見たらコウ君みたいなのかな?

少し信じられない。

だって私にとってのコウ君は、

 

 

すごく遠くて、ずっと手が届かないと思っていた存在だから。

 

 

彼は与える存在で私は与えられる存在。

小さい頃からそれは当たり前の事で、ああ、世界ってこうやって出来てるんだ。なんて考えていた。

私は今誰かに何かを与える事が出来ているのだろうか?

 

 

「なのはとコースケは誰かを笑顔にできる人。それは私だったりはやてだったりアリサだったりすずかだったり、いろんな人を笑顔に出来るんだよ?」

 

「ほらね」とフェイトちゃんはニコリと笑ってみせる。

 

「なのはは一番コースケの近くにいるからわからないかもしれないけど」

 

でもね、

 

 

「私はなのはにいっぱいのものをもらったよ」

 

 

だから、ありがとう。

 

フェイトちゃんはそういって笑う。

その笑顔がとても綺麗でつられるように私も笑った。

 

うれしかった。ただ認められたような気がして、コウ君に少しでも近づけたような気がして。

 

昔の私がコウ君に助けてもらったように、今の私も誰かを助けていたのだろうか。

 

まだ実感は無い。

 

でも、そうだったらと思うだけで、

 

少しだけ胸が温かくなる。

 

 

 

私は私になりたかったようだ。

 




無駄に書きあがるのに時間がかかった。しかも糞短いという。
本当に申し訳ないです。
書き直し+書き足しって思った以上に辛いですね。気力とか色々。
早くティアナを書きたいです。ティアナティアナ。
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