あるところに綺麗な雌豚が三匹、両親とともに仲良く暮らしていました。ある時、母親は雌豚たちに言いました。
「お前たち、お前たちはもう独り立ちできるくらいまで成長した。そろそろ親の脛をかじるのをやめて、社会という名の荒波に揉まれてきた方がいいんじゃないかい?」
母親の言葉に、父親が続きます。
「そうだな、そろそろ俺たちも年金ぐらしだ。いつまでも寄生されてたら、そのうち生活保護を受ける羽目になっちまう。どうだ、以前税金対策で買った土地に家でも建てて、一人で暮らしてみろ。なに、三人分の土地はある。それぞれ建築と手を組んで、家を建ててみろ」
長女の雌豚は茨城県の隅に土地を貰い、次女は富山県の漁港の近くに土地を貰い、三女はグンマーの僻地に土地を貰いました。
長女は土地を貰うとすぐに、父親の知り合いの建設業の社長にアポをとり、木製の、低コストの家を作ることにしました。素材にこだわらず、ある程度安い木を使い、尚且つシロアリ対策と耐震基準を考えると、コンクリートで家を作ったほうが案外安価かもしれないと社長さんからは言われましたが、長女は頑なに当初の案を下ろそうとはせず、低賃金の外国人労働者を酷使し、短期間で家を作り上げました。
次女は漁港の近くということもあり、木製だと塩にやられてしまう可能性があると考え、レンガで家を作ることにしました。次女は親コネを使わず、大学時代に夜をともにした先輩に頼むことにしました。先輩は建設業ではある程度名が知られている人だったので、すぐに材料と人を集め、通常より若干早く家を作り上げました。
三女に与えられた土地は、日本に唯一残された未開の地、グンマー。そんなところに来てくれる建設会社は、あまり有りません。そこで彼女は有名国立大学に行き、予算を提示してこう言いました。
「この予算を全て使って、理想の家を建ててください」
学生と教授は突然舞い降りてきた依頼に、自分たちの技術を世間に示すことができるチャンスに目がくらみ、まんまとグンマーにおびき出されてしまいました。しかし彼らは日本の将来を担う立派な学生。その熱意で建設会社を引き摺り出し、他大学と提携して、気が遠くなるほどの時を経て、近未来をを彷彿とさせる素晴らしい家を作り上げました。
三匹の雌豚はそれぞれ、与えられた土地で平和に暮らしていました。そんなある日、木製の家に住む長女にもとへ、東京からやってきた借金取りがやってきました。
彼は木製の扉を叩いて、こう言います。
「おぅお嬢ちゃん、ちょっと扉を開けてくれないか?」
長女の家にインターフォンはなく、警備会社とも契約していませんでした。低予算で建てたマイホームには、思わぬ欠点があったのです。
長女は扉につけたチェーンを今一度確認し、扉の前でこう言いました。
「どなたですか?」
「俺は北上組のもんでな。あんたがこの家作るために借りた金を、返しに貰いに来た」
なんと、長女は信頼できる金融機関からではなく、闇金に手をつけしまったのです。ここに来てようやく、長女は気づきました。自分はとんでもないミスを犯してしまったのだと。
「おいお嬢ちゃん、この扉を開けてくれ」
長女の膝が笑い出します。怖さのあまり、失禁してしまいそうです。
「おい開けろ! 北上組の金にて手ぇつけたんだ、どうなるか分かってたんだろ!?」
強く叩かれる扉。長女は家にあったパソコン、現金、数日分の着替え、預金通帳やクレジットカード、その他の大事な物を全てトランクケースに詰めて、裏口から家を出ました。
直後、銃声が響き渡りました。どうやら借金取りが、密輸した銃をつかって扉を壊したようです。長女はなんとか逃げ出すことができました。
かといって、彼女に行く当ては有りません。身体を売れば当面の資金は確保できますが、住居ばかりはどうしようも有りません。
そこでふと、自分の姉妹のことが頭に浮かびました。茨城県から一番近くにある姉妹の家は、三女の家ですが、あそこは日本最後の秘境、グンマー。距離は有りますが、富山の方が安全かもしれません。
長女は茨城からバスを経由し、富山にたどり着きました。富山には以前、三女と一緒に次女の家を見にきたことがあったので、道は何と無くわかりました。
次女が家で為替レートを確認していると、突然インターフォンがなりました。ポンドの価値の急落で頭を悩ませていた次女は、苛立ち紛れにこうどなりました。
「誰。こんな時間に何の用? 今何時か知ってる? 27時よ」
「私よ。家を建てた時に闇金に手をつけちゃったみたいで、追われてるの!」
「闇金、ね。返せる目処はあるの?」
次女は扉を開けずに、長女に尋ねます。
「今持ってる株が、あと数日経てば倍の値段になるの! そうすれば利子も含めてちゃんと返せるわ!」
それを聞いてから、次女は扉を開け、長女を中へと入れました。深夜中歩き回っていた長女は、家に入るなり床に倒れて寝てしまいました。次女はすぐさま彼女を家のソファに寝かせ、毛布をかけてあげました。
そこで次女は気づきました。長女の股から白い液体が垂れていることに。次女は胸が締め付けられるような気持ちになりました。自分の姉が、とてもかわいそうに思えたのです。
富山にくるまでに、何度女子を振ったのかは次女には想像できません。それでも次女は、長女がどれくらい辛い思いをしたのか、手に取るようにわかりました。
翌朝、次女の元へ借金取りがやってきました。長女の想像より、三日早い到着でした。次女は長女に地下室へ隠れるように告げると、扉の前に立ちました。
「何の御用でしょう」
「お前があの雌豚を隠してることは知ってる。あの女とやった男ってのが、何人かいてな。そいつらから目的地を聞き出したんだ」
お姉さん! 次女は叫びたくなるのを必死に堪え、昨日のうちにまとめて置いた荷物を持って地下へと向かいます。地下室には秘密の通路が有り、それを使って長女とともに外へ出て、その足で三女の家があるグンマーへと向かいます。
三女の家は、鉄筋コンクリートでできていました。そのフォルムは現代アートを思わせ、所々にハイパーテクノロジーを感じさせました。
始めて三女の家に来た二人は、グンマーにあるとは思えない美しい家に、あいた口がふさがりません。
「どちら様ですか」
朝4時にもかかわらず、インターフォンを押すと三女は綺麗な声で答えてくれました。
「私よ」
「お姉ちゃん!? どうしたの、こんな時間に」
「お姉さんが借金取りに追われてるの。私の家が借金取りにばれちゃったから、逃げてきたのよ」
「それは大変! 早く中に入って! お姉ちゃんたちの指紋は、すでに登録されているわ」
なんということでしょう。三女の家にの玄関には、指紋認証システムがついていたのです。大学生と教授たちの遊び心が、現代人の安心を生み出したのです。
家の中は至る所にお掃除ロボットが配備され、あのグンマーとはかけ離れた光景です。
豪華な椅子に腰掛けた最後の雌豚、三女は自分の姉たちを見ると目を丸くしました。
「どうしたの、お姉ちゃんたち! 顔が真っ青よ!」
「ここまで来るために、いろんな交通機関を、無理やり動かしてもらったのよ」
二人の雌豚の股からは、白い液体が垂れています。三女はすぐに二人をゲストルームに通し、二人をそこへ監禁しました。借金取りとの駆け引きに、素人の存在は不要です。むしろ、いない方がいいのです。三女はお気に入りの白いワンピースをきて、すぐにくるであろう借金取りとの決闘に備えました。
翌日、借金取りがやってきました。当初は部下を何人か連れてきたのですが、グンマーに入ってからほぼ全員が、原住民の手によって、帰らぬ人となりました。
借金取りは、インターフォンを押しました。
「どちら様でしょう」
美しい声に、借金取りの股間が少しだけ熱を帯びます。
「おい、ここを開けろ雌豚! お前の姉が身体で原住民を買収して、交通機関を動かしたのは分かってるんだぞ!」
返事は有りません。部下が扉に手をかけました。
すると部下は突然燃え上がり、帰らぬ人となりました。教授が取り付けた防犯システムは、その人の指紋と脈拍、網膜、そして服装などから害意があるかを判断し、自動で処理できる、夢の全自動警備でした。
日本でやったら法律に引っかかりますが、ここはグンマーです。問題有りません。
三女は扉を開きました。
白いワンピース姿に、借金取りの股間が再び熱を帯びます。
「どのようなご用件ですか?」
「お前のところの姉が、北上組の金を借りたまま行方をくらませちまったんだ。さっさと姉貴を俺の前にだしな」
「北上組ですか?」
三女は不思議そうに首を傾げました。
「そこってパパの組ですよね」
なんということでしょう! 雌豚たちは実はヤクザの娘だったのです。借金取りは、よく雌豚の顔をみました。言われてみれば確かに、自分たちのボスになんとなく似ているでは有りませんか。
自分たちのボスの娘を追いかけ回したとなれば、借金取りに未来は有りません。彼はその場で三女に襲いかかりました。どのみち死ぬなら、せめてこの可愛い娘を犯したかったのです。しかし、彼が雌豚の胸をももうとした瞬間、どこからともなく矢が飛んできて、その腕を射抜きました。
次女と長女が身体で買ったグンマーの原住民が、助けに来てくれたのです。借金取りはグンマー民族に捕まり、帰らぬ人となりました。
借金取りの恐怖が去った雌豚たちは、しばらく三女の家で仲良く暮らしていましたが、借金取りが死んでしまったことに腹を立てた父親によって、三人は売りに出され、仲良く雌豚として余生を過ごしましたとさ。
三匹の子豚、現代版として書いていたつもりが、変な作品になりました。
遊戯王二次やDNR二次の合間に書いたお話です。面白いと思っていただければ幸いです。