やはり俺が界境防衛機関で働くのはまちがっていない。 作:貴葱
いろいろとごたごたが発生していたのですが、漸く片が付きそうなので投稿を再開します。楽しみにしてくださっていた皆さま、遅くなってしまい大変申し訳ありません。
今回は短いですが、ワートリサイドのまったり話となっております。
それではお楽しみください。
「……何してんだ、熊谷」
熊谷への誕生日プレゼントをぶら下げながらやってきた俺を、我が隊室の前で右往左往する熊谷が出迎えた。
「へぁっ!? ひ、比企谷!? なんでここにいるの!?」
恥ずかしいところを見られたからか、熊谷が顔を真っ赤に染めながら凄んでくる。といっても元がいいせいか、どんな顔してても絵になっているんだが……イケメン、美人ってやっぱ得だな。つーか何をそんなに驚いてんだろう。
「なんでって……そこ俺の隊室だし、居てもおかしくないだろ。そもそもお前との約束もあるしな」
言いながら右手に握る袋を持ち上げる。熊谷は一瞬袋に視線をやりながらもごもごしている。
「それはそうなんだけど……隊室から灯りが漏れてるから、てっきり中にいるもんだと思って……」
目を向けると、確かに我が隊室の扉の下から細く光が漏れている。一色は今日は帰るとのことで駅まで送っていったため、大方小町が暇をつぶしているのだろう。
「大方小町が暇をつぶしてんじゃねぇか? つーか悪いな。俺が呼んだのに待たせちまったみたいで」
「それは良いんだけど……」
言いながら熊谷は軽く深呼吸をして平静を取り戻そうとしている。とりあえず俺はボーっとしながらその様子を見守った。
「すぅ……はぁ~。……よし、落ち着いた」
「さいですか……」
落ち着いたようなので軽く返事をしながら隊室の扉に手をかける。
「まぁ立ち話もなんだし入れよ。プレゼント渡してはいさようならってのもなんだし、茶くらい出すぞ」
「そう? じゃあ遠慮なくお邪魔させてもらうわ」
特に意義もなそうなので2人で扉を潜る。そんな俺らを迎えたのは、
「んにゃぁぁぁぁぁ!! また負けた! 柚宇さん少しは手加減してよっ!」
「そうっすよ。ちょっとは手加減してくれないと勝負になんないじゃないっすか」
「ふっふっふ~、強者はどんな時でも手を抜かないものなのだよ~。……おっ、比企谷くんと友子ちゃんだ~。お邪魔してるよ~」
ゲームに興じながら喧しい絶叫を上げている小町と、それに同調する出水、そしてこちらに気付いて手をフリフリする国近先輩だった。
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ゲーム組がソファを占領しているので、一先ず熊谷には一色の机に座ってもらう。俺は絶賛飲み物準備中である。
「なんかすまんな、俺が呼びこんだのに喧しくて」
軽く詫びを入れると熊谷は「別に気にしてないよ。うるさいのも嫌いじゃないし」と応じてくれた。うるさいとは思ってんだな……。
「熊谷はコーヒーでよかったよな?」
言いながらカップを4つ用意して、ポットでお湯を注いで捨てながらカップを温める。……なんか最近うちの隊室が喫茶店染みてきてんだよな。大抵の飲み物、お茶菓子は常備してあるし、太刀川隊、加古隊、三輪隊、那須隊の連中なんかしょっちゅう来てるから好みもわかってきた。この前なんか鬼怒田さんが小町と戯れついでにコーヒー飲みに来たし……。そんなことを考えながら熊谷と出水のコーヒー、小町のココア、国近さんのミルクティーを入れ終わる。
「ん? コーヒーじゃなかったか?」
コーヒーは入ったが熊谷から返事がないのでもう一度確認を取る。
「あっ、うん。コーヒーで……」
「はいよ」
熊谷の前にカップを置く。
「ありがとう」
「……どういたしまして」
……うん、なんか恥ずかしくなって熊谷から顔を背ける。素直に礼を言われると恥ずかしくなる時ってあるよね……あるよな?
「……そっちの3人も、お茶用意したから」
ソファの前のローテーブルに静かに並べる。
「おー、お兄ちゃんありがとう!」
「サンキュー比企谷」
「比企谷くん、ありがと~」
とりあえず一仕事終えて自分の机にどっかり腰を下ろす。
「今更なんだけどさ」
そんな俺に向かって熊谷が口を開く。
「ん?」
「お茶入れるのって隊長の仕事なの?」
「……それを言ってくれたのはお前が初めてだよ」
やっぱこれ隊長の仕事じゃないよね!? いや、うすうす感じてはいたけども、いたんだけれどもね!?
「……慣れって怖いよな、熊谷」
次回もう一話まったり話を挟んで、俺ガイルサイドの話に戻ります。
いまいちワートリサイドの人間関係が把握しきれていないのが痛いところで、誰をどう絡ませるかに苦心しておりますが、早ければ明日にでも続きを上げられると思います。
それでは、また次回。