東方Projectと名作シューティングゲーム「斑鳩」のクロスオーバー!
幻想入りして四季映姫と出会うお話です。

シューター(シューティングゲーム愛好家)である「轟アズマ」は遊んでいたゲーム機と一緒に幻想入りしてしまう。しかもゲーム機はそのゲームに登場する戦闘機「銀鶏」の姿に変じた状態で。

とんでもないモノを幻想郷に持ち込んだということで幻想郷の管理者である「八雲紫」に捕まってしまい、罰を与えるという名目で殺されそうになった矢先、緑髪の少女が救いの手を差し伸べてきた……!


下記のサイトで公開している作品「銀翼と妖怪寺I.F.映姫編」のリメイクとなります。
http://banshee.ai-saloon.com/sp.php?no=4210&word=%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E7%A7%BB%E6%A4%8D%E8%A8%88%E7%94%BB&r=

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東方×名作シューティングゲームのクロスオーバー第二弾です。
映姫様の白黒はっきりつける能力と対になる様に、白と黒のバリアを張る「斑鳩」という縦シューティングゲームの自機を出してみました。

下記のサイトで公開している作品「銀翼と妖怪寺I.F.映姫編」のリメイクとなります。
http://banshee.ai-saloon.com/sp.php?no=4210&word=%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E7%A7%BB%E6%A4%8D%E8%A8%88%E7%94%BB&r=


東方飛鉄塊

 ここは、どこなんだ……。俺こと轟アズマはどうしてこんな事になっているんだ……?

 

 

 

 

 

 ボンヤリとした頭で色々と思索する。気がつくと自分は見慣れない森の中にいた。人の気配がまるでない。そう、気味が悪い程に。振り向くと、黒い煙を上げている鉄の塊が転がっているのが見える。大きさは大体20メートルくらいだろうか。折れた白銀色の翼がかつて飛行機、そう「飛ぶ鉄の塊」であったことを物語っている。

 

 

 

 

 

 実物を見たことはないが、自分はこれの正体を知っている。これはゲームの中、圧政に立ち向かう老人たちが本当の自由というものをこの目で見てみたいと志を同じくした若者に託した戦闘機……いや、飛鉄塊「銀鶏」である。そう、「ゲームの中」ではだ。架空の存在であるはずのこの飛鉄塊が実体化して大破してそこに転がっているのだ。

 

 

 

 

 

「特定の色の敵弾を吸収」とか「しつこく追尾する力の開放」とか強そうな要素が目白押しではありが、これではそこら辺の鉄クズと何ら変わりない。どうしてこんな事になってしまったのだろうか? 確か俺は空を飛んでいて……()()()()()!? あり得ない、俺がまるで自分が戦闘機乗りであるような考え方だった。もちろん俺の職業は飛行機、それも戦闘機のパイロットではない。

 

 どうやら墜落のショックで記憶が混乱しているらしい。だが、俺の目の前には明らかに戦闘機だったものの残骸。そして俺以外に人っ子一人いない。気がおかしくなりそうだが、落ち着いて今日の出来事を思い出してみよう……。

 

 

 

 

 

 興味本位で入った寂れたゲーセン。薄暗く機械が発する熱気でムンムンとしたその場所は、21世紀に入って急速に淘汰されていったゲームセンターの姿がそこにあった。

 

 そしてその奥にひときわ大きな筺体が見える。自分はこの筺体に見覚えがあった。とある縦STG(シューティングゲーム)のシリーズの流れをくんだ3DSTG「Project RS-2」である。確か元の作品名は自機の名前そのまんまの「斑鳩」ってタイトルだった筈だ。

 

 心躍った。名前だけは聞いていたものの、いざプレイしに行こうと思ったらどこも撤去されていてついにプレイが出来なかったもの。それが目の前にある。せめて興奮だけでも味わおうと動画サイトでプレイ動画を飽きるまで見ていた時期もあった。それが、その恋い焦がれたそれが目の前にある。このチャンスを逃す手があるか、いやない。

 

 吸いこまれるようにその大型筺体に自分は座り込み、コインを入れた。確か裏技で自機を斑鳩から銀鶏に変えられた筈だ(※銀鶏はゲーム「斑鳩」における2P側の機体)。こうやってこのボタンを押しながら……よしできた。人呼んで「銀鶏」モード。

 

 プレイ動画をずっと見ていたので、概ねサクサクと進むことが出来た。特にこのシリーズはパターンの暗記が要となる。十分すぎる予習は今回のプレイでも十二分に役に立っていた。あっと、油断した。敵が最後っ屁のようにばら撒いた弾に被弾して自機「銀鶏」が派手に爆発してしまう。1回目のプレイは最初の被弾の後、そのまま体勢を立て直せずゲームオーバーになってしまった。

 

 一度筺体を下りてみるが、どうやらパイロット志願者は自分ひとりだけであるらしい。特に敷居の高いこの作品だ。ただでさえ緻密なパターン構築や白と黒のバリアの有効活用を求められるというのに、それに加えて3D空間で同じことを強いられるのだ。それならば遠慮なく……と再びコインを入れる。

 

 さっき死んだ場所は特に注意を配り、そして何事もなくクリア出来た。その後も上手く立ち回り、気がつけばもう最終ステージ最奥まで来てしまった。これから、ボスと互いに弾を吸収しつつの力の解放、いわゆる「解放合戦」という最大の山場が訪れるのだ。

 

 操縦桿を握る手が汗ばんだ。握る手にも力が入る。ゴクリと生唾を飲む。今流れているBGMのサビが流れる瞬間、球体のような巨大な影が黒色の、白色の追尾レーザーを交互に発射し始める。

 

 さあ、行こうか……!

 

 

 

 

 

 奴は白い弾幕と黒い弾幕を交互に撃ち出してくる。それに合わせてバリアを同じ色に揃えつつ(銀鶏は纏うバリアと同じ色の敵弾を吸収するのだ)反撃に出る。

 

 白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ……しまったタイミングを見誤った!

 

 派手に爆発する自機。だが残機はまだ残っている。再度解放合戦を行うべく接近した。よし、今度こそ!

 

 白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ、黒っ、白っ……

 

 いや待ておかしい。もうそろそろ撃破できるはずだというのに未だにボスが落ちる気配がない。それに段々とスピードが上がっている気がする。処理落ちならまだ分かるが速くなるってのはどういうことだ?急にBGMにノイズが走り始める。耳障りだ。画面までもが揺らぎ始めて本格的に故障したらしいことが素人目にも分かる。店員を呼ぶか。そう思い筺体を降りようとしたが……降りられない。どういうことだ? 文字通りのことなのだ。どこを見渡しても見慣れぬ機械。まるで本当にコックピットの中にいるような錯覚さえ覚える。あり得ない事象に頭が混乱する。

 

「NO REFUGE!!」

 

 混乱するこちらのことなど無視してシステムボイスが鳴り響く。そんな中冷静さを保ちながら立ち回れる筈もない。ズガーン! と衝撃が走る。まるで本当に被弾したかのようなリアルな感覚。機体が大きく揺れ、モニターからはアラート音が鳴り響く。機械がオーバーフローしているのか、時折煙を上げている。

 

 リアルすぎる。まさかっ、いやそんな筈はない。でもこれはまるで……「銀鶏」の中にいるとしか考えられない。というかゲームで被弾したならさっきみたいに派手に爆発するはずではないか。そうだ、これはゲームじゃない。リアルで起きている事なんだ! 信じがたいが、今置かれている状況をまとめるとそのような答えに導かれてしまうのだ。

 

 いつの間にかゲームの世界に迷い込んで戦死する。冗談じゃない! そんな理不尽なことで死んでたまるか! 機体のスピードを最大にし、持てる集中力を搾り出し目の前の敵を打ち砕く。よし、爆炎に包まれていく、倒したぞ!

 

 愕然とした。黄金の八面体が奥から現れたというのだ。これ以上付き合ってられるか、俺は持てる限りの力を振るい、力の解放を限界まで行う。先手必勝だ! 自らも大破しながら、爆炎に包まれ何もかもが真っ白く染まる。これで本来は終わりの筈だが……。

 

 やっぱりおかしい、突然目の前に大きな山が現れた。このままではぶつかってしまうだろう。折れてしまうのではないかというくらい操縦桿を傾ける。山腹をかすめる白銀の翼。最悪の事態は免れたようだ。しかし再びズガンと衝撃が走る。更に高度が落ちる。眼下には流れの激しい川が広がる。落ちてたまるかと、自分は踏ん張った。もっともそれが意味のある行動なのかは分りかねるが。急流地帯も抜けたようだ。

 

 いけない、今度は森に突っ込む……! しかしもはや操縦桿は意味をなさず重力の赴くまま、自分は自機ごと墜落していく。そして今までよりも大きな衝撃がわが身を襲う。ついに墜落した。だがそれだけでは終わらずバウンドし始めた。木々をどんどんなぎ倒している。そうして落ちた後もしばらく地面を滑り込み、森林地帯のど真ん中でようやく止まった。

 

 キャノピーをこじ開けて自分は銀鶏から這い出すように脱出したのだ。そうして俺は初めて自機を目の当たりにした。当然だがデカい。機体の後部が燕尾服のように広がっている独特のデザインを持つそれはほとんど鉄クズ同然となっていた。生まれて初めて見る実物の銀鶏なので惜しいが、これは乗り捨てていこう。とても運べるようなものじゃない。

 

 幸いにも(というか奇跡的にかも)俺は大きな怪我はしていないようで、自分の体は自由に動く。ひとまず出口を求め森の中をさまようことにした。まだ陽が高いのが不幸中の幸いである。

 

 

 

 

 

 案の定迷った。頼みの綱の携帯電話も非情なる二文字「圏外」を表示させている。くそっ、ここは一体どこなんだ!

 

 いたずらに歩き回って余計に体力を消耗するだけだ。ひとまず休もうとそこら辺に腰かけようとした矢先……。

 

「ごきげんよう……」

 

 信じ難いが何もない空間が引き裂かれ、中から金髪の妖艶な女性が現れた。紫色のドレスに身を包んだ大人の女性だ。だが、それよりもあちこちに真っ赤なリボンをつけているその髪型に目が行ってしまう。もちろん彼女の後ろで渦巻く目玉だらけの引き裂かれた空間にもだ。俺があっけにとられている中、その女性はゆっくりと話しかけてきたのだ。

 

「招かれざる客人がこの『幻想郷』に何の用かしら」

 

 外国人にしか見えないような金髪を持った女性であったが、彼女は日本語を話している。どうやら外国に飛ばされたというわけではないらしい。だが『ゲンソーキョー』だって? そんなことを言っていたな。俺は聞いたことのない言葉を反射的にオウム返ししていた。

 

「そう、忘れ去られたモノが流れ着く幻想郷。そして私はその世界を管理している妖怪『八雲紫』……」

 

 妖怪? ここは日本で間違いないようだが、変な世界に迷い込んでしまったらしいぞ。ペタンと座り込んだまま黙っていると「八雲紫」と名乗った女性は続ける。

 

「私はね、すっかり人間に忘れ去られたゲーム機、ええとプロジェクト……ええと細かい名前は忘れたけど、それを幻想郷に誘ったわ。でも貴方のことは誘っていない。そればかりかゲーム機ではなくて物騒なモノをこの世界に持ち込んでしまった」

 

 物騒なモノというのは紛れもなく何故か実体化してしまった戦闘機「銀鶏」のことだろう。しかしあれは既に大破しており使い物にならない。

 

「あの空飛ぶ鉄の塊はオーバーテクノロジーの塊でもあるの。たとえ大破していたってテクノロジーの欠片くらいは集まる。そんなモノをこの幻想郷に野放しにしていたら幻想が幻想でいられなくなってこの世界が壊れてしまう。そしてそれが私にとってとても耐えがたいことであることも伝えておくわ」

 

 話す内容は何だかよく分からないが、俺が歓迎されていないことはその刺々しい口調からひしひしと伝わってくる。だが、事情も知らずに非難される筋合いもない。

 

「無茶苦茶だ。こっちだってどうして銀鶏が実体化したのか聞きたいくらいなんだ! 自分の意思じゃないっ、わかってくれ!」

 

 なので俺は精一杯反論した。自分だって好きでこんな事をしたわけではないのだ。だが、ピシャリと遮られてしまう。紫の声は決して大きくない。だが、不思議と威圧感があるのだ。思わずビクンと体を震わせてしまう。

 

「黙りなさい! 前にもね、外の世界から核の技術が流れ込んだことがあるの。そのテクノロジーを、よりにもよって力と釣り合わない大馬鹿者が手にしたばかりに大変なことになったわ。だから、今回はそうなる前に……幻想郷を崩壊させようとした異変を起こしたお前を屠(ほふ)ることにしたわ。……美しく残酷にこの世から住ねっ!」

 

 容赦がない。魔法の類だろうか、紫色に光るクナイのようなものを足元に投げつけてきた。それは地面に刺さると爆発を起こした。ヤバい、ヤバすぎるぞ! 本能が必死に訴えかけてくる。じりと後ずさりながら自分はこの場を離れる。逃げるしかない!

 

 ある程度距離を取り後ろを振り向いた瞬間、紫色の亜空間が大口を開けていた。そしてその先には恐るべき大妖怪。踵を返す暇もなく、その妖怪の腕が喉元に食らいつく。為すすべもなく首を絞め上げられた。

 

「あ……が…………」

 

 ギリギリと息道を、頸動脈を締め付けてくる。尋常じゃない力、これが妖怪の力……。駄目だ、苦しくて意識が……遠のく…………。

 

 ついに俺の体はドサリと地面に落とされてしまった。未だに焦点が合わず、視界はぼやけそして黒ずんでいる。このまま死んでしまうのか、こんな不条理に揉まれて、こんな理不尽な理由で……。紫と名乗った妖怪は俺の胸を狙いクナイ型の弾を撃ち込もうと狙いを定めていた。

 

 こんなの、死んでも死にきれな……

 

「何をしているのです? 迷い込んだ外来人の保護は必要なことですが、右も左もわからぬ外来人を傷つけるとは何事ですか!」

 

 甲高く幼げな、でもどこか威厳のある声が凛と響く。紫の視線の先には緑色の髪をした小柄な女性が短い木簡のようなものを突き出して立っていたのだ。その女性が俺を庇うかのように移動した。一瞬だけこちらを振り向き、微笑んでいて気がした。

 

「厄介なのが現れたわね、幻想郷の閻魔『四季映姫』。これはどういうつもりかしら? 私は今から人間の身でありながら異変を起こそうとしたあさましい人間に罰を与えようとしたところなのだけれど」

 

 紫が口調こそ丁寧であるが敵意むき出しに凄む。しかし四季映姫と呼ばれた少女、いや閻魔様だったか。とにかく彼女は少しも怯む様子を見せていない。むしろ即座に反撃してきた。

 

「罪を測るのも罰を与えるのも私の役目ですよ! 貴女はただ博麗の巫女と協力し、迷い込んだ外来人を確保していればよいのです。そう、貴女は少し勝手が過ぎる。これでは『死刑』ではなくて『私刑』ですし、よりにもよっていい加減な貴女が裁きを下すなど……」

 

 見るからに険悪なムードだ。クドクドと説教を続ける映姫であったが、紫は扇子を取りだしこちらに向けた。

 

「あーもう分かったわ! あんたの説教は長すぎる上に必要以上に難しい物言いをするから苦手なのよ。それよりも貴女の大好きな白黒はっきりつける方法で決めましょう。決闘……、幻想郷流の決闘『弾幕ごっこ』でこの人をどうするか、このほうが分かりやすいし何よりも早いわ」

 

 こいつら、俺の命を決闘で決めるらしい。本当に滅茶苦茶な世界に迷い込んでしまったようだ。

 

「なっ……、ふざけるのも大概にしてください! 人の命がかかっているのですよ」

「さては怖いのかしら? 負けるのが、私の『境界を操る程度の能力』に敗れるところを目の当たりのするのが」

 

 どうにか穏便に済ませようとする閻魔様だ。どうにかして戦闘を回避するはず……

 

「うぐぐ、私の『白黒はっきりつける程度の能力』が負けるはず等ありません! こうなれば今一度その身を持って貴女に力関係をはっきりと見せましょう」

 

 ええっ、アッサリ挑発に乗っちゃったよ! 少なくとも自分は介入できないことが分かった。乱れ飛ぶ弾、弾、弾。俺は流れ弾に当たらないように物陰に隠れて二人の様子を見届けることにした。

 

 

 

 

「貴女の心はどす黒い。黒い、黒い、黒い……」

 

 信じられないことが起きた、一瞬だけ映姫様の体から黒い色をした波動が広がると、紫の放った弾幕を全て黒色に染めてしまったのだ。そして信じられないことに彼女は黒いバリアを纏いながら弾幕の中心へと突っ込んでいった。

 

「吸収しているというの!?」

 

 紫は更に物量を増やしていくが、映姫様は涼しい顔をしたまま黒色に染まった木簡型の弾を紫に撃ち込んでいく。

 

「言ったはずです。貴女の能力では私の能力を超えることが出来ない。特に相性が悪いようですからね」

 

 紫から放たれる弾幕は一度止まると、今度は真っ白に染まったクナイ弾を乱射してきた。

 

「ならば正々堂々勝負よ! こんなのはどう?」

 

 それを見ると映姫様は特に避ける素振りも見せずクルリとその場で回転すると再び白い波動を広げていく。彼女の纏っていたバリアが白色に変色した。

 

「へぇ、貴女にもあるのですね。そういう清い心が。それとも、装っているだけでしょうか?」

 

 白いバリアはやはり白く染まった弾幕を吸収していってしまう。

 

「弾幕が効かないだなんて反則じゃない!」

「私の能力の前では弾幕は白色か黒色になってしまうのです。これぞ『白黒はっきりつける程度の能力』。放つ者の心が善に傾けば白色に、悪に傾けば黒色に。そして私は対応した光の防壁でそれを受け止める」

 

 出鱈目だ。この閻魔の力ほど滅茶苦茶なものはない。真っ白な弾幕をものともせず映姫様はさらに攻撃を続けていた。

 

「なるほど、心ね。でも、人の心ってものは単純に善悪ハッキリつけるなんて不可能よ。様々な感情を抱くものですもの」

 

 今度は白いレーザーを映姫様めがけて放つと、同時に黒い大玉をばら撒くように放っていった。が、これもくるりくるりとバリアの色を頻繁に変えてほとんどを受け止めてしまう。

 

「そんなことは百も承知。でも私には見えます、その人の善の部分、悪の部分。そろそろ終わりにしましょう。最後くらいは貴女にもしっかり理解出来るような方法で。審判『ラストジャッジメント』!」

 

 高らかに掲げられたのは紙切れ……いや、カードのようなもの。怯んでいた紫を取り囲むように細いレーザーが照射されると、直後に一際太いレーザーが紫を焼き払う。勝負は決したか。光がおさまり、倒れている筈の紫の様子を見るが……。

 

「いない! まさか……」

 

 紫の姿が忽然と消えていたのだ。俺は嫌な予感がした。思えば紫はさっきから弾幕を無造作にはなっていただけである。違う、彼女の能力はそんなものじゃない。もっと恐ろしい能力を用いるのだ。つまり、今まではそもそも本気を出していない。俺は物陰から映姫様に注意を促すように叫ぼうとした。だが、それよりも早く……

 

「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」

 

 耳をつんざくは電車の汽笛。空間に大きく開かれたスキマから光が照らされ、そして古ぼけた電車が爆走していたのだ。勝ち誇っていた閻魔様はその突進に気が付くことなく……。鈍い衝突音とともに吹き飛ぶ小柄な少女の体。映姫様が電車に轢かれてしまった! いくら弾幕を防御するバリアがあれど、物理的な衝突は防ぎようがない。

 

「映姫様っ!」

 

 思わず彼女の名前を叫ぶ俺であったが、今の俺には血まみれになり倒れている緑髪の少女の元に駆け寄ることすら出来ない。脚がガクガクと震えて動かないのだ。恐怖のあまり。何とかしないといけないというのに。

 

 ヨロヨロと立ち上がる映姫様であったが、先ほどの余裕など微塵にもなかった。紫は更にスーっと音もなく接近するとスキマから道路標識を取り出し、思い切り殴打。

 

「その偉そうなしたり顔が気に食わないのよ。散々この私をコケにして、気が済むまでこれでボコボコにしてやりますわ!」

 

 振り上げられる腕、紫は一瞬だけこちらを睨み、ニヤリと不気味な微笑みを見せた。「次はお前よ」と言わんばかりの恐ろしげな冷たい微笑み……。対する映姫様は負けまいと眼光絶やさずに立ち上がる。だが、鉄製の標識が閻魔の顔面を容赦なく殴打し続ける。大きく振りかぶった一撃で映姫様は吹き飛びながら地面に突っ伏した。

 

 再び紫の背後でスキマが開き、そこに腰掛けると、指でクイっと空気を裂くように揺らす。その直後、倒れていた閻魔様の真上にスキマが開く。あの中から落ちてくるのは……墓石!いけない、いくら閻魔様と言えど、あんなに衰弱した状態で脳天に重たい御影石など落とされたら本当に墓の下行きだ。だが、どうすればいい? 俺を助けてくれた映姫様はまるで「斑鳩」のような戦い方をしていた。白い弾は白いバリアで、黒い弾は黒いバリアで受け止めた。しかし物理的な衝突は避けることが出来ない。そんな斑鳩が持っていた最大最強の攻撃は……。

 

「映姫っ! 『力の解放』をっ! そのバリアを一気に解除するんだっ! 早くっ!!」

 

 閻魔様は紫の弾幕をバリアで吸収していった。その吸収したエネルギーはどこへ行ったのか? それはバリアに溜め込まれている。

 

「何を馬鹿なことをっ。自分からこのバリアを消せというのですか!? ううむ、ですが今はこの防壁も役に立ちませんし、やってみましょう」

 

 映姫様を覆っていた黒いバリアが消える。それと同時におびただしい量の光線が紫へ迫っていった。まるで意志を持っているかのように紫にぐにゃりと曲がりながら貫いていくのだ。

 

「きゃあっ!?」

 

 墓石がスキマから完全に出てくる前に紫を怯ませた。旗色が悪いと判断したのか、紫はそのまま座り込んでいたスキマの中に潜り込むとその入り口を閉じてしまった。

 

「む、逃がしてしまいましたか。まったく、逃げ足だけは速いんですから……。はっ、それよりも先程の外来人はっ!」

 

 それだけ口にすると映姫様はフラフラとこちらに歩みを寄せるがパタリと倒れてしまった。無理もない、あんな無茶苦茶な妖怪相手にあれだけ激しい戦闘を繰り広げたのだ。倒れた映姫様を俺は優しく抱きかかえる。小柄な少女らしくとても軽かった。あんなに強そうでも少女は少女なのだなと思い知らされる。

 

 だが、これからどうしよう。映姫様は気を失ってしまったし、銀鶏は大破したまま。夕闇が迫る森の中で途方に暮れていると……。

 

「おーいたいた。四季様が予定の時間をすっぽかすだなんて珍しいから探してみたら……って、四季様っ!?」

 

 濃いピンク色の髪を持った背の高い少女は大鎌を手に近寄って来た。あんな物騒なものを持ち歩いているのだ。あれは死神っ……!

 

「四季様は一体何があってこんなことに?」

 

 自らを「小野塚小町」と名乗った少女。彼女は船乗りであり、普段は小舟に乗りって亡者を三途の川の向こう側へと誘導する仕事を受け持つ死神だという。俺も「轟アズマ」と名乗るとこれまでのいきさつを話した。フムフムと頷く小町さんはとにかく映姫様の傷の手当てをしたいので裁判所まで向かうと言うのだ。

 

「ついでにアズマ君も裁判所に行かないといけないからね。お前さんは何かの拍子で『幻想郷』っていう区域に迷い込んでしまったのさ」

 

 彼女に連れられた先には彼岸花の咲き乱れる川のほとりがあった。おそらくあの向こう側が死者の……。ちょっと待ってくれ、この川を越えるということは……。

 

「大丈夫、川を越えただけで命はとられないよ。大体あたいや四季様はどうなっちまうのさ。幽霊? あっははは、ご冗談を」

 

 停泊していた船に最初に小町さんが乗り込むと、次に眠っている映姫様を、最後に俺が乗り込む。すると慣れた手つきで小舟を操り川を渡っていく。

 

「本当は博麗んとこの巫女さんの役目なんだけど、あのスキマ妖怪とドンパチやっちゃったんでしょ? スキマ妖怪と博麗の巫女は太いパイプでつながっているからね。ほとぼりが冷めるまであたい達が匿ってやろう」

 

 それにしてもこの死神はやたらと話好きなようだ。幻想入り(幻想郷に迷い込んでしまう現象のことを言うらしい)の際のエピソードなんかは特に興味を示したらしくアレコレ聞いてくる。

 

「ああ、あれ『銀鶏』っていうのね。証拠品として他の死神が回収していたよ。この後の裁判の為にね」

 

 さ、裁判!?

 

「まあ形式的なものだと思うよ? ただの人間がこの幻想郷で悪さなんてしようものなら先に命を落としているさ」

 

 映姫様が目を覚まし次第、俺の身の潔白を証明するべく裁判を行い、そこで「白」と判断されれば俺はめでたく外の世界へと帰ることが出来るのだという。とにかくあと数日だ。この常識外れな世界と付き合っていかなければいけないのは。

 

 

 

 

 

 そして数日が過ぎ、開廷される。裁判というから色々な証言が飛び出てそこから判決が言い渡されるものと思ったが、驚くほど簡単に終わってしまった。

 

「四季様の能力のおかげだね。それに今回の裁判は半ば形式的なものだし」

「小町、私語は慎みないさい。判決を言い渡しましょう。轟アズマは……」

 

 小町さんはあんなこと言っているが、それでも緊張するものだ。ゴクリと息をのむと映姫様が口を開いた。

 

 

「外来人『轟アズマ』は黒!」

 

 

 ハッキリと言い渡した映姫様。だが、その色は黒。周囲に衝撃が走る。小町さんが言う通り、この裁判は形式的なものの筈。本来なら白と言い渡されて外界へと帰ることが出来るはずだというのに、まるで台本が途中で書き換わってしまったかのような衝撃を受けた。もちろん驚いているのは俺だけではない。

 

「し、四季様!? そんな筈……」

「いいえ、黒です。確かにアズマには微塵の悪意も感じず、今回の事件についてはむしろ被害者と言えるでしょう。しかし……」

 

 そこで映姫様は俺が乗り捨てた銀鶏に視線を向ける。当然壊れたままだ。

 

「幻想入りの際にこのような物騒な兵器を持ち出したのもまた事実。本人の意思によるものではないことは私にも分かっています。ですが、これを放っておいたままアズマを外界へ返すわけにはいきません」

 

 ならば使えないようにすればいい。痕跡すら残さずに粉々に壊してしまえば……。

 

「銀鶏を破壊することもなりませんよ? これは明確な異変。アズマの証言によると元々は兵器の形をしていなかったものが幻想入りの際に今の姿になった。その異変の真犯人を止めない限り、今後もこのような事件が発生し続けるでしょう。よって貴方は黒! 後ほど罰を言い渡します。それまでは地下牢に収監しましょう」

 

 そんなっ! 俺はどんな恐ろしい罰を受けるのだろうか……。俺は獄卒と呼ばれる鬼達に身柄を拘束されると乱暴に檻に入れられてしまった。

 

 

 

 

 

 やっぱりこの世界は理不尽だ。結局は映姫様もあのスキマ妖怪と一緒じゃないか。違うのは問答無用で俺を殺そうとしたか、自らの持つ正義に基づいて裁きを下すかの違い。このままでは紫に襲われたままの時と同じ結末をたどることになるだろう。情けないかもしれないが俺はメソメソと独房の中で涙を流していた。

 

 こんなの理不尽だ、不条理だ! 俺は銀鶏を実体化させようだなんて意思はこれっぽっちもないというのに。そうやって己の運命を呪っていると、突然独房の扉が開かれた。その先にいるのは……映姫様である。

 

「轟アズマ、罰を言い渡します。銀鶏を速やかに修繕し、この一連の異変の犯人を発見、退治なさい。期限は無限。貴方に出来る善行は、己を知ること。銀鶏を幻想入りさせた原因を突き止めること。そしてこの一連の異変に終止符を打つこと!」

 

 それだけ言うとまるで鉄の仮面でもかぶっているのではないかと思うような冷徹な表情を緩め、俺に手を差し伸べてきた。

 

「もちろん貴方一人でとは言いません。実は私、先程長期休暇の許可を貰ってきたところなのです。これがまたなかなか申請するのが面倒でしてね。何枚書類を書いたことか……。というわけで、私も可能な限りサポートしましょうアズマ……いえ、アズマさん」

 

 俺は涙を流しながら、映姫様の手を掴み、立ち上がった。助かった、ひとまず助かったぞ!

 

「やってやりましょう、映姫様!」

 

「『様』はやめなさいな。これから長い付き合いになるのです。礼儀は大切ですが、これではお互いに肩が詰まってしまいます。それに、貴方はあの時、呼び捨てで呼んだではありませんか」

 

 そうだ、紫に負けそうになった映姫様……いや映姫さんを救う逆転の一手、それを放つように促した際に俺は思わず敬称を付けずに彼女の名前を叫んでしまっていた。

 

「め、面目ない……」

 

「いえ、むしろ礼を言いたいくらいです。貴方が居なければ私はあのスキマ妖怪に敗れていました」

 

 独房を出ると日差しが二人を照らす。この旅の始まりを祝福するかのように。

 

「このままでは貴方の中で私は悪者のままですからね。だから、一緒に探していきましょう? 本当に何が起きたのか、この二人の目で」

 

 そして歯車は回り始めたのだ。銀翼と閻魔様の数奇な運命がここから始まる……。


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