どんな恐ろしいことが待ち受けているかと身構えて待ち合わせ場所に向かう八幡だったが…
今回大好きな陽乃さんの誕生日を祝いたい気持ちを表現すべく初SSを書きました。
しかしなにぶん書くことを決意したのが今日(2016年7月7日)の帰りで、誕生日中に投稿することを最優先したため文章自体が短いですし推敲等もしていないに等しいです。
また、初SSのためどの辺りで改行すれば見やすいか等もつかめていないのでお見苦しい点が多々あるかもしれません。
ですので、誤字脱字や改行アドバイス等あれば言っていただけるとありがたく思います。
それではよろしくお願いいたします。
俺は今部活を休んで海浜幕張駅に向かっている。事の起こりは昨日の夜に突然掛かってきた一本の電話だ。
「ひゃっはろー!比企谷君明日の放課後海浜幕張駅前のマーくんのところに集合ね、それじゃおやすみー」
電話の主は一方的に伝えたいことを伝えると電話を切った。
表示されていたのは登録していない番号な上に名乗られもしなかったが知り合いでこんなことをするのはあの人しかいない。声もそうだったし。
陽乃さんに呼び出される理由は思い浮かばないが行かないと恐ろしいことになるのは間違いだろう。つまり俺に拒否権は無いということだ。
一体どんな無理難題を吹っかけられるのかと気も漫ろに放課後までやり過ごした俺は三浦達と話している由比ヶ浜に
「今日は用があるから帰る、雪ノ下にも伝えておいてくれ」とだけ告げ、魔王の待つ海浜幕張駅へと急いだ。
駐輪場に自転車を停め待ち合わせ場所に向かうと、やはり陽乃さんは既に約束の場所にいた。
相変わらず視線が勝手に吸い寄せられる圧倒的な存在感だ。わざわざ探さ無くて済むのはありがたい。
行き交う人が男女問わず一度は陽乃さんに視線を送っているが無理もない。
突っ立ってスマホいじってるだけなのに何でこんなに絵になるんだろうねこの人は。
そんなことを思いながら近づくと陽乃さんは顔を上げ
「おっ、急いで来てくれたみたいだね、お姉さん的にポイント高いぞ!」
と嬉しそうに腕に抱きついてきた。
「ポイント制は小町の特権なんでやめてください。あと腕放してもらえませんかね、道行く人の視線が痛いんで」
「却下、と言いたいとこだけど今日が何の日か当てられたら放してあげる」
陽乃さんは俺の顔を覗き込みながらそう宣った。
「七夕、でしょう?」と答えると強化外骨格を纏った満面の笑みで
「外れ。確かに七夕だけど今の正解はそれではありませーん。外れたからこのままお姉さんとデートしてもらいます」
と言いながら俺の腕をとって駅前のアウトレットモールへと入っていった。
陽乃さんの目が「逃げたら肘極めちゃうぞ」と言っていたので観念して身を任せ、陽乃さん流のおしゃれ講座を受けつつ
ウインドウショッピングをしていると連れて来られたのはアウトレットモールの隣のビルにある書店だった。
「比企谷君ってどんな本読むの?」
唐突な問いに違和感を覚えながらも漫画、ライトノベル、歴史小説にミステリーと
好きな本をネタバレにならない程度にざっくり説明しながら回ると、陽乃さんはそのうちの何冊かを手に取り、購入した。
「それじゃぼちぼちいい時間だしサイゼにでも行こっか」
書店での会計後、陽乃さんは再び腕を絡めながらそう言うとエスカレーターで4階に上がり、サイゼに入った。
「サイゼでいいんですか?」
陽乃さんが俺のおすすめを食べたいと言うのでミラノ風ドリアとドリンクバーを2人前と辛味チキンとサラダを注文するなり尋ねた。
「いいのいいの」
今までに見たどの陽乃さんの笑顔より自然でかわいい笑顔に思わず見とれてしまったが訊きたいことは他にもある。
「何で突然呼び出したんですか?」
「気になる?」
「そりゃそうです、それに本屋とかサイゼで俺のおすすめを訊いてくるなんて正直訳がわからないと言うか、そもそもデートだなんて…」
「んー、じゃあ『陽乃』って呼び捨てにして訊いてくれたら教えてあげる」
「えー、雪ノs」
「はいダメー、雪ノ下じゃなく『陽乃』」
「陽乃……さん、教えてください」
「・・・」
ヤバい、笑顔なのに目が笑っていない。
「名前は呼び捨て、あと敬語も禁止。ねっ、八幡」
陽乃さんは「ねっ」と首を傾げながら満面の笑みで見つめてくる。これはヤバい。強化外骨格の作り笑いだとわかっていても心が揺さぶられる。
つーか超絶美人が笑うとかわいくなるとか反則だろ。
動揺と躊躇いからしばらく何も言えずにいたが
「は…陽乃、教えて…くれ…」
どうにか言葉を絞り出す。
「よく言えました。答えを教えてあげたいところだけど注文してたの来たみたいだからまずは食べよ」
陽乃さんがそう言うとちょうどやって来た店員がサラダと辛味チキンをテーブルに並べた。
今だけはサイゼの提供の早さが憎い…
「さて」
食事を終え駅前の広場に戻ると陽乃さんがおもむろに口を開いた。
「何で今日呼び出したのか、だっけ?」
「そうです」
俺がうなずくと、陽乃さんは両手を広げ「ぱんぱかぱーん」とファンファーレが聞こえそうなテンションで
「今日はお姉さんの誕生日なのです!」
と告げた。
「え、マジっすか、おめでとうございます。っていうか知らなくて済みません。プレゼントも何も」
そう言って頭を下げると陽乃さんは
「いいのいいの、今まで比企谷君に誕生日教えたことなかったし。それにこんな逆サプライズも楽しいでしょ?」
と笑って許してくれた
「それに誕生日ならなおさらこんな風に俺と本屋とサイゼ回るとかじゃなく大学の友達とパーティーするとか…」
「私が誕生日に気になる男の子と一緒に居たいって思ったり、その子に自分の好きなものを知って欲しい、その子の好きなものを知りたいって思ったら変かな?」
陽乃さんは俺のセリフに被せ気味に言いながら真っ直ぐ瞳を覗き込んでくる。
今まで見たことがない陽乃さんの真剣な表情に言葉が出ない。
「お姉さんのこと嫌い?」
「嫌いでは、ないっす」
確かに苦手というか恐怖感のようなものはあるが嫌いではない。シスコンという共通点もあるしな。
「よかった、これからはお姉さんも雪乃ちゃん達に負けないようにアピールしていくからよろしくね」
そう告げるや否や陽乃さんは俺の首を抱き寄せた。あっと言う間に陽乃さんの顔がドアップになり唇に柔らかい温もりを感じる。
時が止まり全身の血が逆流する。耳まで真っ赤になっているのがわかる。
ずいぶんと長く感じたがほんの数秒だったのかも知れない。陽乃さんは唇を離すとそのまま耳元で「ファーストキスだよ」と囁いた。
見ると陽乃さんも真っ赤になっている。
「あ、あの…」
「ら、来月!比企谷君の誕生日は楽しみにしててね!」
口を開きかけた俺の言葉を遮るようにそう言い捨てると陽乃さんはロータリーの方へ走って行きあっという間にタクシーに乗り込んでしまった。
やはり魔王の強化外骨格の中が乙女なのは間違っている…
残された俺はそう呟いて立ち尽くすしかなかった。
正直タクシーに乗り込んでからのことをよく覚えていない。私は気がついたら自室で呆けていた。
どうしてあの時キスなんかしてしまったのか、気持ちを抑えられないとはああいうことなのだろう。
比企谷君に「嫌いではない」と言われただけで安堵感と嬉しさが溢れて思わず抱きしめてキスをしていた。
彼は私を好きなわけではなく、ただ嫌いじゃないというだけなのに。
そう思うと後悔に近い感情がないでもないが、好きというか気になる相手とキスできたことはやはり嬉しい。
そんなごちゃまぜの感情に戸惑っていると突然スマホが鳴った。
番号を見て息を飲む。「比企谷君…」そう呟きながら通話ボタンを押すとさっき別れた彼のぶっきらぼうだけど温かい声に胸が熱くなる。
「あの、すいません、プレゼント渡したいんでちょっと出てきてもらっていいすか?」
彼はあの後プレゼントを買ってくれたのだという。
顔が熱い。きっとまたさっきと変わらないくらい赤くなっているのだろう。
嬉しい。心臓が自分のものと思えないほど早鐘を打っている。
私は取るもの取り敢えず待ち合わせ場所に指定した近くの公園へと駆け出した。
お粗末様です。以上でございます。
本当はもっとアウトレットモール内でのやりとり(デートの記念品を八幡にねだる陽乃さんとか)を書きたかったのですが技量と時間が無いばっかりにサクッと流す感じにしてしまったことが残念です。
しかしどうにか誕生日のうちに書き上げることができたことに安堵しています。
陽乃さん誕生日おめでとうございます!
そして拙作に目を通してくださった全ての方に心から感謝致します。