世界的に有名な大富豪アゴーニ。
彼はヒーロー協会の創立者でもある。
「ヒーロー協会設立から三年が経過したわけだが……」
薄暗い部屋の中央でアゴーニがイスに深く腰掛けながら口を開く。
「予想以上に予想以下であり、予想通りだったな……」
感情の読み取れない声音でそう発した。
各市にあるヒーロー協会支部のような一室。
そこにはアゴーニの他、彼がヒーロー協会を立ち上げるときに協力してもらった者たちと、設立以降にアゴーニ本人が声をかけた者たちがいる。
「アゴーニさんみたいな金持ちが何かしら組織を立ち上げる……ってなれば当然、金にたかる虫がわいてくるのは必然。故にこの結果は目に見えていた」
一人が喋り始めたのを切っ掛けに次々に意見を述べ合う。
「それでも三年という時間は早い」
「ヒーロー協会という組織の存在――――その作られた当初の目的を考えれば……些か早い気もするが、問題はないのでは…?」
「この時期にヒーロー協会を切り捨てるのか?」
「予言のことを考えれば早めに行動した方がよい」
「そうだな……有能な人材、使える人材はすでに声をかけた」
「ヒーロー協会に残るのは無能か、未来を見据えない頭の固い連中のみ……」
口々に言う面々。
静かに聞いていたアゴーニが動くと、水を打ったかのように部屋が静まり返る。
「宇宙人襲来、人間怪人ガロウによるヒーロー狩り、怪人協会のときにもメタルナイトとブラストは動かなかった」
アゴーニが挙げた二つの名は、どちらもS級ヒーローに連ねる者であるが……アゴーニの彼らに対する認識は “ 実力はあれど自ら動くことは殆どない、ヒーローとして問題のある者たち ” ……というお世辞にも良い評価とは言い難かった。
「力はあっても、肝心の時には動かない。……では意味がない。世間の一部は彼らのような自由意思で動くヒーローと、ヒーロー協会に頼るのは危険ということを、身をもって知ったことだろう、我々も含めてだが……」
「アゴーニ会長。……そろそろ計画を実行に移すのですか?」
メンバーの一人が嬉々とした表情でアゴーニに問いかけるが……彼は「その前にやっておきたいことがある」と前置きを置いてから坦々と述べていく。
スポンサー企業の異動とマスコミ関係者を使った告知。
ヒーロー協会の内部告発、スカウト・ヘッドハンティングによる人材確保。
「可能な限り内部から喰い尽くしてくれよう。今まで散々、連中がやってきたことだ。嫌とは言わせん……」
凄みを利かせた声で話すアゴーニ。
ヒーロー協会の幹部の中には協会のお金で豪遊を繰り返す者が多々いる。
余程、立腹しているのだろうか…? 目を細めて虚空を睨んでいる。
「それも重要だが、S級が束になっても敵わなかったガロウ。それを赤子の手を捻る如く、打ち負かした A級ヒーロー “ サイタマ ” ……」
彗星の如くヒーロー協会に現れたサイタマ。
同じ日にヒーロー名簿に登録したジェノスの陰に埋もれがちだが、彼は驚異的な速度で階級を上げている。
「サイタマへの監視、場合によってはスカウトですか?」
「そうだ。彼をあのまま……彼の才能を、あの組織で腐らせるのは忍びない」
宙に浮いている画面にサイタマの画像が映し出され、その横に彼の功績が次々と書き記されていく。
それを目で追い、軽く頷く。
彼らの中でサイタマをスカウトすることが決まったようだ。
「それと、ガロウ。彼を
アゴーニがポツリと漏らした言葉に一瞬、硬直。
硬直から解いた一人が恐る恐る質問してみる「そのガロウはあのガロウですか?」…と。
「人間怪人ガロウ。彼をヒーローとしてスカウトする」
部屋の中が静寂で満ちる。
彼らはアゴーニの言うことに頭が追いつかないのであろう。
ヒーローと敵対した者をヒーローとして起用するのだ、周囲が混乱するのも分からなくもない。
「ヒーロー狩りと称しながらも、一人として殺人という罪を犯してはいない。ワシから言わせてみれば、ただのひねくれた小僧にしか過ぎんな……」
「しかし、危険なのでは?」
「そのための “ サイタマ ” だ。彼ならガロウに対する抑制になる。異論があるなら、引退して去ったヒーローたちを埋める戦力を、その埋め合わせ方法を聞こうか…?」
口の端を上げて笑うアゴーニに誰も意見を言うことができずに、その日の会議は進んだ。
(´・ω・)にゃもし。
こんな感じの短編集になるかもしれない。
もしも…とか、裏では…とか、かな?
そんでもって今回はアゴーニさんでした。
タイトルはそのうち変えよう……