魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
原作と大きく異なる流れがある部分が存在します。
今回は達也視点でのお話です。
物語での主人公の重要さがわかってきた昨今。やっぱり主人公が登場しないと行けないと思います。
……平たく言うと、月島さん不足です。プロットをちょっといじって早く出そうか考えていたりします。
こうして今自分が生きていられるのも、やっぱり月島さんのおかげ。
年が明け、冬期休暇が終わってから始まった新学期。
それと同時に第一高校にはUSNAへ留学した雫と入れ替わりで、USNAから来た留学生が編入することとなった。
アンジェリーナ=クドウ=シールズ。
それが留学生の女子生徒の名前であり、彼女が編入したのは当然だが雫のいた1-A……つまりは深雪のいるクラスだ。
相手はこちらを探ろうとしてきている奴らかもしれない。そうなれば、深雪の事が心配にならないわけじゃないんだが……いくら近づけるとは言っても学校という環境では手を出せないだろうということと、深雪自身の
そして、編入してきてすぐに俺は深雪を通してアンジェリーナ……『リーナ』と面識を持つこととなった。
というのも、同じクラスであり、生徒会メンバーである深雪が、流れで留学生であるリーナの案内役のようなものになっていたからだ。それには、実習中のリーナの魔法技能が深雪に拮抗するほどのものだったというのも含め、二人を引き合わせる
こうしてリーナと関わりを持つこととなったんだったが……
その中でも個人的に注目しているのが、俺の指摘した「『アンジェリーナ』の愛称は普通『アンジー』だと思うんだが」という言葉に一瞬ではあるものの明確に焦りのような反応を示したことだった。
それを俺の中での決定打とし他の要素・情報と繋げ合わせることにより、俺は
リーナは『アンジー・シリウス』である。
『アンジー・シリウス』は、USNA軍統合参謀本部直属魔法師部隊『スターズ』の総隊長であり……国際社会で
……まぁ、『十三使徒』と呼ばれても、実は『灼熱のハロウィン』の一件で一人が死亡したり、そもそも公にされていない戦略級魔法師がいくらいるかなどわかったものじゃなかったりするんだが……それでも、圧倒的
そんな『アンジー・シリウス』が、留学生として潜入してきている……もちろん不明な点というか不可解な点はある。
いくら周囲からは正体不明の戦略級魔法『
他に考えられる理由は……『アンジー・シリウス』には諜報のための陽動任務以外にも別の任務が与えられていて、それが『アンジー・シリウス』に適した内容……それこそ戦闘を前提としたようなものであったとすれば……いや、それでも過剰戦力な気もしなくはない。
だが、一番の悩みどころはUSNA側が「リーナが『アンジー・シリウス』である」ということを隠そうとしているようには思えないことだ。
ガードが甘いなんてものじゃない。もはや
そんなリーナなんだが……俺をより一層困惑させるようなことをすることとなるとは、俺は全く予想できていなかった。
―――――――――
「『アンジェリーナ』の愛称は普通『アンジー』だと思うんだが」といった指摘をした翌日、リーナは休み時間や放課後、深雪や俺たちとは一緒にいなかった。
なんでも、「いろんな場所を見学してまわっていて、それに深雪たちを付き合わせるのは悪いから」などといった理由だった。
確かに、顔など容姿は整っており、色々とタイプは違うもののその美貌から深雪と並び立つ「女王」とさえ言われるリーナ。そういうこともあって、ちやほやされて、深雪がいなくとも何処に行っても案内役には困らないだろう。
……が、一人になったリーナの行動をちょっと調べてみれば、いとも簡単にあることがわかる。
そう、リーナが見学と称して行ったのは『剣道部』と『生徒会』という月島に関係している場所だったのだ。それも、目撃談などからリーナが月島の事を調べていたのは明白だった。
これで、以前に考えていた考察からすると、月島の失踪にUSNAが関わっていないことがわかった。また、『生徒会』に行ったのが深雪や俺がいない時を狙っていたことから、俺たちを警戒していることも予想でき、リーナが黒である可能性はより深まった。
いや、それはいいんだが……俺が悩むこととなった理由はその後だ。
リーナが『剣道部』や『生徒会』に見学に行った翌日……そのまた翌日の昼休みのことだ。
俺や深雪、ほのか、レオ、エリカ、美月、幹比古といったいつものメンバーに、二日ぶりにリーナが加わったんだが、ふとエリカが「あっ、そういえば……」とある話題を口にした。
「あっ、そういえば聞いたわよ。リーナ、あの森崎といい感じだったらしいじゃない」
エリカにしては「茶化している」というよりは、「なんであんなのと?」という感じの口調だった。
おそらくエリカの中では、今でも入学当初のプライドだけが無駄に高い森崎の印象が強いんだろう。俺としては、『九校戦』中に見たプライドはありつつも変に誠実な森崎が記憶に残っているのだが……『九校戦』の選手でもエンジニアでもなかったことや、一科・二科の違いもあって普段会うようなことは無いからか、エリカは最近の森崎をあまり知らないようだ。
……それで、そんなことを言われたリーナはと言えば……。
「モリサキ……?誰ですか、その人は?」
キョトンとした顔で頭に疑問符を浮かべていた。
「同じクラスの男子生徒ですよ、リーナ」
「ほら、左後ろのほうの席の、茶色の短髪の……」
クスリッと笑った深雪とほのかが、リーナに森崎の事を教える。
「……いたかしら、そんな人?少なくともワタシは会った事も無いと思うんだけど……?」
…………どうやら森崎は、リーナに全く覚えられていないようだ。
そこで黙っていなかったのが、今回この話題を振ったエリカだった。
「知らないわけないと思うんだけど?だって、昨日の放課後にカフェで楽しそうに話して盛り上がってたって聞いたし」
そこまで言うと、エリカの言葉に「ああ、そういえばそんな話……」とレオと幹比古、美月が反応を示した。よくよく見てみると深雪とほのかも同様の反応を……どうやら、俺が知らなかっただけで、昨日の今日で噂はしっかりと広まっていたらしい。それだけ、リーナが全校生徒の注目を集めているという事なんだろう。
具体的な日時・場所まで言われたリーナはようやくというか、やっと何の話かわかったようで、ポンと手を叩いた。
「ああっ!ツキシマさんのことを教えてくれた彼ね!……名前をすっかり忘れてました。ど忘れってやつかな」
本当にど忘れなのだろうか?ただ単に森崎のことを覚えていなかっただけで、クラスメイトのことを全く知らないとなると印象が悪くなるからと、ちょっと忘れていただけにしようとしたのでは?……どちらにせよ、森崎が不憫なだけなんだけどな。
そんなどうでもいい森崎のことは置いといて、俺としては気になる点があった。それは当然、月島のことを森崎から教えてもらったというところだ。
「森崎から月島のことを聞いたらしいが……リーナはそんなに月島のことが気になるのか?」
もし、リーナが月島のことを
その際にできるであろう揺らぎや隙を見逃さないように…………
「エエ!きっかけは同じクラスになれたのに全然会えないツキシマさんのことが気になったからなんだけど、彼のことは知れば知るほど興味が増してきたの!それこそ、こうして未だに会えていないのが残念なくらいに、ね?」
……なんか、もの凄いイイ笑顔でリーナはそう言った。これが作り笑いならまだわかるんだが……前半の「興味が増してきた」あたりは恐らく本心からだろう。後半の「会えないのが残念」あたりは普通なら気付けないくらい僅かにだが笑顔が曇ったようなので本心ではない、もしくは他の何かが混ざっているんだろう。
「へぇー、そんなに興味湧いたって、森崎のヤツからどんなことを聞いたんだ?」
「もしかして、『九校戦』のこととかなのかな?」
月島がいなくなってからは、一部にもの凄くへこむ人がいるため、中々触れることがなくなった月島の話題。だが、こうして話が出てくると食いつかずにもいられないというのも事実ではある。
ただし、俺たちの中ではほのかだけは、表情を少し曇らせた。本当は気を遣ってやるべきなんだろうが、今回はリーナの素性を少しでも探るためこのままにさせてもらう。……後で何かしらのフォローはしとくべきかもしれないが。
……で、リーナが森崎から聞いたという月島の話というのは、いったいどういったものなのか……俺たちはリーナの次の言葉に注目していた。
「ツキシマさんは、人知れず人々に害をなす悪を裁く正義の味方!不法な闇取引の現場を押さえ、テロリストを無力化し、密入国を許さず、侵略者を制圧する……あらゆる分野に精通した日本を護るエージェント!実はニンジャとサムライ二つが合わさった家系の出身で、今はわけあって魔法師の勉強をしている。あと、この前あったっていう『横浜事変』も事前に情報は得ていたけど、あえて大事になる前に止めなかった。それは今現在の日本の魔法界、そして魔法師の卵たちに自分たちが向き合うべき脅威をその身で感じて貰うためで……」
リーナが話し始めた「月島の話」は、事実に嘘が混じっているとか、そういったものじゃなく、嘘に事実が混じっているというレベルの話だった。
おかげで、俺たちは一瞬で固まり、深雪に至っては「……どうしましょうか、お兄様」と、心底困った様子の視線を俺に投げかけてきていた。
実は、リーナが話していることは、
森崎やそのとりまき、剣道部員を中心とした奴らが学校の放課後なんかに話していたことが、その噂の始まりらしい。
中々学校に顔を出さない月島。その寂しさをまぎらわせるためなのか何なのか、「月島さんってあんなこともしたよな」、「あれも凄かったよね」といった話から始まり、「あの黒い箱の魔法って月島さんがやったんだろ?」、「俺の聞いた話じゃあ、アッチも月島さんのしわざだって」となって…………
―――――――――
「『横浜事変』って、建物とか道路とかの被害は多かったけど、人的被害はほとんど無かったってさ」
「それって、月島が避難誘導したり、色んな場所の戦闘をフォローしたからだろ?」
「あっ、私も助けられてたんだ……」「命の恩人だな」「さんをつけろよデコ助野郎」
「飛行術式をしこんだヘンテコな格好の装備で空飛んでる集団が敵を殲滅してるのを遠目で見たぜ」
「その装備を開発したのも月島さんなんじゃね?」
「そうなんじゃない?」「ありえる」「月島さんなら……!」
「あの黒い箱の後に、逃げてく大亜連の船を消し去った光ってあったよね?」
「あれも月島さんの
「知ってた」「当然だろ?」「他に何の可能性があるんだ?」
「『灼熱のハロウィン』って呼ばれる理由になったあの一撃って……」
「何を言ってるんだ?アレは月島さんによる大亜連への裁きだよ」
「
「つまり……俺たちがこうして生活できてるのも、月島さんのおかげってことじゃないか?」
「「「「
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……以上。
ついでにいうと、今でもネットでは上のようなやりとりがよく行われているそうだ。
そんなふうに、有ること無いこと話が膨れ上がっていったものが、今、リーナが語っている話……『月島さん伝説』という噂話というわけだ。
「……といったふうに、人々を繋ぎ導くのもツキシマさんの役目だそうです。そして、「ツキシマ」という存在は時代の要所要所に現れるそうで、かの1999年の核兵器テロや第三次世界大戦にも介入してたとか……。そこまで出来るのは、悪を決して逃さない「眼」を持っていて、
そして、その噂話を本気にしていそうなのが、今目の前にいるリーナだ。月島の活躍の事を話している時は、子供のように目が輝いているような気さえしたんだが……こんなのがあの『アンジー・シリウス』だとは到底思えないな。
ただ、俺が聞き逃さなかったリーナの最後の呟き「敵に回せば厄介ね……」という他の誰にも聞こえていないであろう一言のことを考えると、やはりUSNAの諜報員であることは間違い無いはずだ。
だが、やはり、一度最初から考え直す必要があるかもしれない。はぁ……頭が痛いな……。
まぁしかし、一番頭を抱えているのは、俺じゃなくてリーナの報告を受けたUSNA側の人間たちなのかもしれない。
……まさかとは思うが、真に受けたりしていないだろうな?
―――――――――
その日の放課後。俺は仕事があるという深雪の付き添いで生徒会室へと行くことになった。
生徒会室へ行ったのは、俺と深雪、あと月島の不在で空いてしまっている書記の仕事を手伝っているほのかの計三人。
その三人で歩いている生徒会室までの道の中、俺は心の中でため息をついていた。
率直に言うと、面倒だからだ。
深雪の付き添いが面倒だとかそういうことは一切無い。だが、問題は生徒会室にいるであろう人物……中条あずさ会長が色々と面倒な状態なのだ。
何を隠そう、
ちょうど
「今日もそんな思いをしなければならないのか……」と思いつつ、俺は深雪とほのかの後に続いて、生徒会室へと入った……。
「あっ! いらっしゃい、深雪さん、光井さん、司波君」
生徒会室にいたのは、中条会長だけだった。
会計である
だが、しかし、五十里先輩が何処にいるのかなんてことは、俺の中ではすぐさま二の次三の次になった。
その理由は一つ。中条会長の様子だ。
昨日のようにぐずったりはしていない。だが、目元のクマはまだ残っている。
……そして、
遠目でも、中条先輩の身体は震えていることがわかる。だが、それでも俺から視線を外そうとしていない。
その目に、俺はあるものが見えた。……「覚悟」だ。あまり良い感じはしない。
何故、中条会長がそんな目で俺を見るのか。中条会長がこんな風になってしまっているのは何故か。……見当がついてしまうというのも、考えものだな……。
「会長、どうかしましたか?」
ずっと見つめられたいと思うような趣味は無いため、それとなく中条会長に言葉をうながしてみた。
「えっと、実は、司波君に聞きたいことがあって……」
「なんですか?」
「あのっ!……
その言葉を聞いた瞬間、「ああ、やはりか」と心の中で呟いた。
おそらく、中条会長にとっては本当に最後の頼みの綱なんだろう。
月島が帰ってこず沈み、七草先輩からの話を聞いて立ち直って『ハロウィンパーティ』の準備を頑張り、七草先輩から月島が行方不明になった事を聞きまた沈み……それから時間をかけて何とか頑張ってきていたところを、リーナに無自覚に掘り返され……。
単純に月島がいないことはもちろん、こんなに浮き沈みを繰り返していれば精神的に弱っていくのは必然だろう。
だからこそ、藁をもつかむ気持ちで、
ならば、次に中条会長の口から出てくる言葉は
「『十師族』にも、月島君を狙ってる他の組織にも、月島君の動向はつかめていないって十文字先輩が言ってました。……でも!もしかしたら、
中条会長がそこまで言ったところで、生徒会室の空気が完全に変わった。
原因は深雪だ。
だが、俺はその深雪を手で制す。
確かに、俺が軍関係者であることは特秘事項であり、それを明かした『横浜事変』の一場面でもその場にいた人たちには口止めがされていた。
聞いたところによれば、明かした際にはいなかった中条先輩は後で合流し、その時に俺が軍人であることを知ったそうだ。その場にいた七草先輩などから口止めをされていたというのは深雪から聞いているから「言ってはいけないとは知らなかった」では済まされないだろう。
そう。いくらこの場にいる4人全員がそのことを知っているからと言ってもだ。
「中条会長、何をおかしなことを言ってるんですか?俺が、月島が何処にいるかなんて知ってるはず無いでしょう?」
突き放すように発したその一言で、中条会長はようやく俺から目をそらし、うつむいてしまった。
「ですが、感謝しています」と口には出さずに呟く、これでようやく
「ですが、「軍人」としてではなく「月島の友人」としてなら、一つだけてがかりを持っています」
「「「えっ?」」」
うつむいていた中条会長だけでなく、深雪とほのかもバッと顔を俺の方へと向けてきた。
俺は中条会長を一瞥してから自分の制服の内ポケットに手を伸ばし、
「
取り出したもの……手のひらサイズまで小さく折りたたまれた細長の茶封筒を人差し指と中指で挟むようにして持つ。……そうできることからもわかるように、茶封筒の中身は中に何か入っているがかなり薄い。
「いつですか!いつ、月島君に会ったんですか!?」
「落ち着いてください、会長。……会ったのは『横浜事変』の時、正確には大亜連合の偽装揚陸艦が撃破されてから、つまり終息した時です。おそらく月島は戦闘を終えた後、俺に会い、それから『十師族』の下へいったのでしょう」
興奮気味の中条会長をなだめつつ、俺は
俺に会った時には、俺のそばにいた独立魔装大隊の面々と
「あのっ!中には何が……?」
「いや、
いつものメンバーの中では最も月島のことを心配していたほのかが、茶封筒を興味深げに見て、それが何なのかを聞いてきた。中条会長などのようにまではなっていないが、やはり月島のことが気になっているんだろう。
……実際のところ、開けていないのは本当だが「
「お兄様がそんなものを持っていたなんて」
「黙ってて本当にすまない、深雪。詳しい事情は今から説明するつもりだが、深雪が納得できないなら、その時は……」
深雪の言葉に即座に謝ると、「……わかりました」と一応は引いてくれたようだ。とはいえ、確実に機嫌は損ねてしまっているため、何かしらの埋め合わせはすべきだろう。
「コレを渡された時に、月島に言われたことは大きく分けて三つ」
三人ともがひとまず静かになったところで改めて中条会長のほうを向き、当時のことを説明していく。
「まず一つ。もし今後、変な相談をしてきたり、おかしなことを俺に言う生徒がいた場合には、何も詮索はせずにコレを渡してあげてほしい……というもので、俺は今の状況をそれだと判断しました。もちろん、月島が想定した状況とは違う可能性もありますけどね」
だが、今回のことで
「二つ目は、渡す状況下になった時以外はコレを隠し、決して開けてはいけない……というもので、未だに開けていないのはそのせいです。そのため、この中身は月島以外知らないでしょう」
実際は俺も知っているが。なお、独立魔装大隊の面々からは「言われたことを守らず調べたほうがいいんじゃないか?」という意見も出たが、あの月島が無意味なことをするとは思えないため、待っていれば自ずとわかってくると思っていたのと、三つ目が理由で結局調べられていない。
「最後に、条件に合った人物以外が開けたり、
どう使うかなどは、もうすでに「視て」予想はついている。後は、月島が特定の人物を想定しているんだろうということがわかるくらいだろうか?
だが、そう考えると『横浜事変』直後に渡されたコレは、事前にそういう状況が来るとわかっていて用意していたか……もしくは、別の用途で用意していたものを急遽転用したものだと考えることが出来る。
「そ、それで、結局ソレは……!」
「会長にあげます。もしかすると、月島の考えていた人物とは違うかもしれませんが……それを判断する
一度言葉を止め、少しだけ目を細めて中条会長の目を見る。
「……今さっきの話を聞いている時の反応を見る限り、会長には何か心当たりがあるようですので、問題は無いでしょう」
そう言うと、中条会長は「ビクッ!」と思いっきりはね上がった。目が泳いでいるので、やはり何か知っているようだ。
「えっと、それはそのー……」
「心配しないでください。詮索しないように言われているんで、これ以上は聞きませんよ」
中条会長からは聞かないだけで、月島の事や
「あのっ!コレって今開けても……」
「かまいませんよ。俺個人としても気になっているので、むしろそうしてもらえれば嬉しいですね」
俺の返答を聞いて、中条会長は元気良く「わかりました!」と言い、折りたたまれた茶封筒を広げ始めた。その手元には、俺だけでなく深雪やほのかも釘付けになっている。
そしてついに、中条会長が広げきった茶封筒の口を開け中身を取り出した。
「これは…………
取り出した中身……表面には黒地に一本の白いラインのデザインの入った『カード』を裏表とひっくり返したりながら眺め始める中条会長。深雪たちも、その『カード』を興味深げに眺めている。
「一方にはTEL、電話番号が書いています」
「反対の面には『
「これは造語だろうな。おそらくは英語の『
元になっている『execution』という言葉には、計画や命令の「実行」や「達成」、法律等の「強制執行」、「処刑」、「死刑執行」といったものの他にも使われ方があるように、様々な意味合いを持っている。
『execution』=『XCUTION』なんだとすれば、前についている『welcome to our』と組み合わせると……いや、『XCUTION』が団体や組織名であることを考えた場合は、前文はそこまで関係無いか……?
「あのー……」
そんなふうに書いていることの考察をしていると、不意に中条会長がオズオズと発言した。
「これ、この番号に電話をかけてみてもいいんでしょうか?」
「……そうですね。月島が言っていたようにこれを「使用」するのであれば、この番号に電話をする以上のことは無いと思いますよ」
「えっと、それじゃあ……」
そう言って、手元の『カード』に書かれている番号を見ながら、中条会長が自身の携帯端末に番号を入力し始めた。その様子を俺と深雪、ほのかが見守る。
そして、まもなくして会長の携帯端末からコール音が聞こえ始めた。
携帯端末を持つ中条会長の表情は、期待と不安が入り混じった上で緊張しているようだった。
もしかしたら、何かてがかりが掴めるかもしれない。いや、それ以前に電話の向こうにいるのが月島本人かもしれない。しかし、最悪は本当に何の関係もない番号だという可能性も……それらが混ざれば、ちょうど今の会長のような顔になるのだろう。
まだ、コール音が続く……
ガチャッ
「
前回の後書きは…………そういうことです。