第零遺跡の「鍵の管理者」   作:奈々歌

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最近、仕事が忙しくなってきたので更新速度が落ちてしまいました。

ですが、早くセリスの話しまでいきたいのでできる限り早く更新していきたいと思っております。応援よろしくお願いします(笑


ではどうぞ!


『恋人』として。

 

 

 

賊の襲撃があった後、エインフォルク家の従者であるアルテリーゼがノエルたちの前に現れる。

どうやら大事な話があるらしく、場所を変えるため二人はアルテリーゼの後をついていくのだった。

 

歩くこと数十分。

学園の敷地からさほど離れていないお店に入る。

 

「なぁ、ここって酒場だろ? いいのか?」

入ったお店はどう見ても酒場だった。士官学園の校則で酒場の出入りは禁止こそされてはいないが、推奨されてはいない。

 

「ここは私が責任を持ちますのでご安心ください」

アルテリーゼがその疑問に答える。

 

「まず座りましょう。門限まであまり時間もないでしょうし」

 

「そうだな、腹も減ったし」

クルルシファーに促され、三人はそれぞれ席に着く。

四人掛けの席にノエルとクルルシファーが並んで座り、その対面にアルテリーゼが座る形だ。

 

「ご壮健で何よりですお嬢さま。ですが、もう少し気をつけて下さい。あなたの体はエインフォルク家のものなのですから」

先ほどの賊のことを言っているのだろう。

 

「なら賊に狙われるのも仕方ないことだと思うのだけど?」

アルテリーゼの言葉に皮肉な口調でクルルシファーが返す。

 

「さっきも言ったけど、時間があまりないの。手短に頼むわ。どうせあなたの用件はわかりきってるし」

 

「お嬢様がそう不真面目だから、私がこうして来ることになったんですよ」

 

まふぃ(なに)なふぁわふいふぉ(仲悪いの)?」

ノエルが二人のやりとりを見ながら気になったことを尋ねた。

 

「食べながら喋らないで下さい。その前に、あなたはどなたなのですか?」

クルルシファーの隣で、もぐもぐと注文したのであろうサンドイッチを頬張っているノエルに視線を向ける。

 

「私の『恋人』よ。素敵でしょう?」

そうクルルシファーが食べ物で膨らんでいるノエルの頬をつつきながら答えた。

 

「こ、この人が『恋人』ですか……?」

怪訝な顔になりながらアルテリーゼが聞いてくる。

 

「ええそうよ、彼の名前はノエル。士官学園に通う数少ない男子で私の級友、機竜使いとしての腕前も確かなものよ。何か問題あるかしら?」

 

「そうでしたか……。それは困りましたね……」

クルルシファーの言葉を聞いた後、もう一度ノエルを見て深呼吸をすると呟く。

 

「どうしてかしら、彼が貴族とかではないから?」

 

「いえ、そうではなくてですね……」

 

「ほう、これはこれは。私も見くびられたものだな?」

アルテリーゼが返答に困っていると、店の入り口の方から突然男の声が発せられた。ノエルたちはそちらに視線を向ける。

 

「バルゼリット卿!? なぜここに? 会食の予定は明日のはず―――」

 

「ああ、忘れたわけではないぞ? ただ私は少しせっかちなところがあってだな、一足先に我が未来の妻の顔を見ておきたくなったのさ」

男はそう言いながら、アルテリーゼの前まで歩いて来た。

 

「ほう、評判通りの美しさだな。これでも俺は王都の社交パーティに何度か顔を出したことがあるのだがな、これほどの華は見たことがないぞ」

バルゼリットと呼ばれた男は舐めるようにクルルシファーの頭からつま先まで視線を這わせ、満足そうに頷く。

 

「あまりじろじろ見ないでもらいたいのだけど」

男の視線にクルルシファーが顔をしかめる。

 

「これは失礼、我が未来の妻よ」

男は小さく笑みを浮かべながら謝罪を述べた。

 

「ふぉふゆふぁ、ふぉいふふぁふぇ?」

 

「ノエル君、ちゃんと飲み込んでからでお願いできるかしら? 何を言ってるかよく分からないわ……」

今度はミートパイを頬張っているノエルに何とも言えない微妙な表情になりながら告げる。

 

ごくんっ、と飲み込んだ後、もう一度問いかける。

「ていうか、この人だれ? って言ったんだよ」

 

「そ、そうだったの。確かにそうね。アルテリーゼ、その人は?」

 

「ほう、どうやら話が通ってなかったようだな。俺の名はバルゼリット・クロイツァーだ」

 

「―――ッ!?」

男が自身の名を言った瞬間、酒場の雰囲気が変わった。

 

「四大貴族だと……っ!?」

「どうしてこんなところに―――」

酒場で飲んでいた客たちからそんな声が聞こえてくる。酒場に緊張が走った。

 

「クロイツァーとは、あの?」

クルルシファーがアルテリーゼに問いかける。

 

「そうです。旧帝国時代から続く由緒ある血筋。この方は四大貴族の一つ、クロイツァー家のご嫡男になります」

 

「四大貴族の嫡男? アルテリーゼ、あなたまさか―――」

 

「ええ。誠に勝手ながら私の方で明日、会食の予定を立てさせていただきました。その場でお嬢様を紹介し、婚約を結んでいただきたいと思いまして」

 

「はぁ、どうしてその話が私の耳に入っていないのかしら?」

クルルシファーが呆れたようにため息をつく。

 

「お嬢様の耳に入ってしまうと何かと理由をつけて逃げてしまいますから」

 

「そうかしら? でも残念だったわね、今の私には『恋人』がいるのよ? ねぇ、ノエル君?」

 

「あ、ああ。そうだぞ、俺はこのままクルルシファーと婚約を結ぶんだからな」

急に話を振られ、ノエルは慌てて答える。

 

「ノエル? 聞いたことがない名前だな。王都のトーナメントには出場したことはあるか?」

先ほどまで黙っていたバルゼリットが口を開き、ノエルに問いかけてきた。

 

「王都のトーナメント? ああ、あのくだらない大会のことか。大したことのない奴ばかりしか出場してないから出たことはないよ」

 

「くだらないとは失礼だな、俺はその大会で三位の実力を持っている。だがお前程度など簡単に倒すことができると思うがな?」

ノエルを見下すような口調でそう告げてくる。挑発しているのだろう。

 

「あっそ、はいはい。すごいすごい」

明らかに敵意を向けられているが、さらりと言葉を返す。

 

「な、なんなんだこいつは。アルテリーゼ殿、こんな奴のために今回の婚約を延期するつもりなのか?」

ノエルの態度にさすがのバルゼリットもたじたじになる。

 

「確かに彼は貴族でもないですし、機竜使いの実力もわかりません。四大貴族のバルゼリット卿と比べるとエインフォルク家に相応しいのはやはり………」

 

「あら、貴族かどうかは置いておいて、彼はあなたより遥かに機竜使いとしての実力は上よ?」

アルテリーゼが同意仕掛けていると、クルルシファーが笑みを浮かべた。

 

「ほう? 確かにこの時代、地位より機竜使いの実力が求められる。突然出現する幻神獣(アビス)を討ち倒し、他国との『遺跡(ルイン)』争いにも勝たなければならないからな」

そう言いつつ、バルゼリットはノエルに視線を向ける。

 

「だが、この男では俺とはどう見ても格が違う。つまらん冗談を言うのはやめてもらおうか? 我が未来の妻よ」

 

「別に冗談で言ったつもりはないわ、私は本当のことを言っただけよ?」

 

「アルテリーゼ殿、これ以上は時間の無駄だ。予定通り明日に彼女との婚約を取り計らってもらいたい」

バルゼリットは呆れたような表情になり、アルテリーゼへそう告げた。

 

「わかりました。では予定通り明日の夜に―――」

 

「悪いけど、ちょっといいかしら?」

アルテリーゼの言葉を遮り、クルルシファーが口を開く。

 

「どうかしたのか、我が未来の妻よ。 何か不満があったか?」

 

「不満は元からあるのだけれど。さっきあなたはこれからの時代、機竜使いの実力が必要とそう言ったわよね?」

 

「ああ、確かにそう言ったぞ? それがどうしたのだ?」

 

「エインフォルク家もその意向で婚約者を選ぶはずよね? アルテリーゼ」

 

「ええ、そうです。ですから確かな実力を持ち合わせているバルゼリット卿が婚約者に相応しいと―――」

クルルシファーの意図が分からないアルテリーゼは怪訝な顔になる。

 

「なら、あなたは私より強いのよね? 生憎私は自分より強い人としか婚約を結ぶ気はないの」

 

「ではそこのノエルとか言う男は、我が未来の妻であるそなたより強いと言うことか?」

 

「そうなのっ!?」

話の行方を見守っていたノエルもその言葉には驚く。

 

「つまりは俺がこの男より強いことを証明することができれば納得がいくわけだな? よかろう、ならばノエルとやら俺と決闘しろ!」

バルゼリットがそう告げると、店内にざわめきが起こる。

 

「ええっ!? ………、めんどいよ」

 

「なら、逃げるか? 腰抜けめ」

ノエルの面倒そうな返事に嘲笑うようかのような笑みを浮かべる

 

「ああん? やってやんよ!!」

ガタッと椅子から立ち上がった。

 

「ずいぶん安い挑発に乗るのね………」

クルルシファーが、意外といった表情をしながらノエルを見上げる。

 

「いや、何となく雰囲気的に乗った方がいいかなーって思ってね。それと『恋人』としてクルルシファーを変な男から守るためかな」

そういってクルルシファーに笑顔を向ける。

 

「あ、ありがとう。でもその戦い私も参加させてもらうわ。アルテリーゼ、あなたも参加して二対二のペア戦にしましょう」

ノエルの言葉に少し照れた様子を見せたが、すぐに表情を戻し決闘の内容に変更を申し立てた。

 

「当事者の私と、今回の件の責任者であるあなたが高見の見物というのも気分が悪いわ。それに私は賞品のように結果を待っているのは性に合わないのよ」

 

「ははは! 結構だ、アルテリーゼ殿もよかろう? 決闘というものは遺恨なきものを主旨とするものだしな」

 

「今回は私が話をお嬢様に通していなかったことで起きた問題ですし、私は構いませんが……」

 

「なら、決まりだ。決闘は三日後の夜、場所はこちらで用意しよう。くれぐれも逃げたり、卑怯な真似をしたりするなよ?」

そう言ってバルゼリットは酒場の出口に向かいだす。

 

「ああ、そうだ。アルテリーゼ殿、明日の会食は残念だがキャンセルだ。それでは三日後に我が未来の妻よ」

 

「最後に一つ、その未来の我が妻って呼び方やめてもらえるかしら? まだ私とあなたは他人なのよ?」

 

「ははっ、それもそうだな。では三日後にまた会おうクルルシファーよ」

小さく笑うと、バルゼリットはそのまま酒場を後にしていった。

 

 

バルゼリットが酒場を後にすると、酒場に賑わいが戻ってくる。

「……、お二人とも自分たちが何をなされようとしているのかおわかりですか?」

 

「ええ、ちゃんとわかってるわよ?」

アルテリーゼの問いに平然と答える。

 

「婚約の拒否に、四大貴族との決闘。冗談が過ぎますよ。バルゼリット卿は神装機竜《アジ・ダハーカ》の使い手にして、王都のトーナメントでの成績から『王国の覇者』と呼ばれるほどの腕前なんですよ?」

 

「大丈夫よ、私もノエル君も神装機竜を使えるわ」

全く動じる様子のないクルルシファーにアルテリーゼは頭を抱える。

 

「……、わかりました。どうやら私の考えが甘かったようですね。今日はこの辺で失礼致します。いくら相手がお嬢様でも私は手加減しませんので」

そう告げると席から立ち上がり、酒場での料金代を置いて立ち去っていった。

 

 

「さて、私たちもそろそろ帰りましょうか」

 

「そうだな、門限も近いし」

そして2人も酒場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノエル君は怒らないのね」

 

「何のこと?」

 

「普通、あんな決闘に巻きこまれたら困るでしょう? 本当の『恋人』でもないのに―――」

 

「なんか、らしくないな。言ったろ? 俺は本当の『恋人』のつもりでいるって、だから気にすんなよ」

 

「そう、ありがとう。ノエル君のそういうところ私は好きよ」

 

「わぁお、愛の告白されちゃったよ」

 

「ふふ、あなたみたいな人だったら本当に………」

 

「ん? なんか言った?」

 

「いえ、なんでもないわ」

 

「そっか。ありゃ、急がないと門限間に合わないな」

そういってクルルシファーの手をとる。二人は学園への帰り道を急ぐのだった。

 





キーボード叩いてこの話を書いていた時、手にゲジゲジが落ちてきましたね。はい。
知ってます? 食べれるんですよあれ(笑

それはさておき、

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