第零遺跡の「鍵の管理者」   作:奈々歌

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初めて一万文字書きました。何故かって? 早くセリスを出したいからさ!(笑

最近忙しくて中々書く時間がとれない……けどがんばります!


では、どうぞ!


第六遺跡 『箱庭』。

 

 

 

 

翌日の朝。ノエルたちを含む『騎士団(シヴァレス)』のメンバー数十名が装衣に着替え、演習場の控え室に集合していた。本日行われる任務の『遺跡(ルイン)』調査についての説明を聞くためだ。どうやら変更点があるらしく、ライグリィ教官の前に生徒たちは整列していた。

 

「みんな揃ったな。それでは今回の作戦についての変更点を通達する」

ライグリィ教官の声が部屋に響く。すると一人の女生徒が隣に歩いて来た。

 

「まず、見ての通りだが、今回の作戦にクルルシファーも参加してもらうことになった。留学生の彼女だが、今回は本人の強い意志によるものだ。特別扱いせず、同じメンバーとして任務に当たってくれ」

 

「よろしくね、みんな」

クルルシファーはそう言うと、後ろの方に整列しているノエルの横に並んだ。

 

「クルルシファーってこういう作戦には参加しないんじゃなかったっけ?」

留学生である彼女には独自の戦闘基準があり、危険な任務に参加すると本国から色々と文句を言われると前に言っていたのをノエルは思い出していた。

 

「さっき教官が説明していた通り、今回は私の意志で参加を希望したのよ。ちょっと『遺跡(ルイン)』で確かめたいことがあってね」

 

「そっか、でもあんまり無茶すんなよ? 明日は例の件があるんだからさ」

 

「わかっているわ。確認するだけだし、大丈夫なはずよ」

クルルシファーとそんな会話をしていると、今度は豪華なマントを纏っている金髪の男が部屋に入ってくる。そしてライグリィ教官の横に立ち、生徒たちへと顔を向けた。

 

「そして今回はもう一人、この方に参加してもらうことになった」

ライグリィ教官が渋い顔になりながら告げる。この男の参加についてあまりよく思っていないことが見て取れた

 

「俺の名はバルゼリット・クロイツァーだ。今回の『遺跡(ルイン)』調査の手助けになればと思い、申し出せて貰った。まぁ俺は神装機竜を扱えるほどの実力は持ち合わせているので、皆の足を引っ張るようなことにはならんと思うがよろしく頼む」

 

「はぁ!? なんであんたがここに―――」

バルゼリットの登場にノエルは困惑する。四大貴族である人物が『騎士団(シヴァレス)』の任務に参加するなんて普通はありえないことであるからだ。

 

「ライグリィ教官、一体どういうことなんだ?」

リーシャも納得がいかないようで、怪訝な表情になっている。

 

「それはだな……」

ライグリィ教官は言葉に詰まる。

 

「これはこれはリーズシャルテ王女殿下。確かに俺は貴族であるが、学園としては部外者だ。納得がいかないのも理解できるが、俺はただ純粋に手伝おうとしているだけだ。神装機竜を使える実力者が増えるんだ、むしろ喜ぶことであろう?」

紳士らしく振る舞っているようだが、どこか小馬鹿にしているような雰囲気が見え隠れしているのが分かる。

 

「あいつは一体何が目的なんだ?」

 

「さぁ、私には分からないわね」

バルゼリットの意図が分からない。ただ何となく嫌な予感がするノエルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦会議が終わり、作戦メンバーはそれぞれ演習場に移動を開始する。そこで機竜を纏い目的地に向かうことになる。ノエルたちも演習場に続く道を歩いているところだった。

 

「なあリーシャ様、俺とルクスも呼ばれたからいるけど本当について行っていいのか?」

本来『遺跡(ルイン)』調査は『騎士団(シヴァレス)』のメンバーだけで行うはずだったのだが、『騎士団(シヴァレス)』に入団することのできなかった二人が呼ばれたことに疑問を持つ。

 

「お前たちの実力は確かなものだからな、私が学園長に頼んで同行を許可してもらったんだよ。他の『騎士団(シヴァレス)』の奴らも別に文句言ってなかっただろ?」

ああ確かに、とノエルは納得していると、隣にいたルクスが口を開いた。

 

「あのバルゼリットって言う人はどうして同行してくるんだろう……」

誰もが疑問に思うことだった。

 

「さぁね。たぶん、どこからか私が『遺跡(ルイン)』調査に参加するって情報を手に入れて勝手についてきたってところじゃないかしら」

 

「そんなところだろうな。目的は分からんけど」

ルクスの疑問にクルルシファーとノエルが答える。だが、謎が増えるだけだった。

 

「まぁ、気にしないで調査に専念しましょう。あの人は『遺跡(ルイン)』付近の幻神獣(アビス)討伐だけ協力するっていう話だし、さっさと済ませて『遺跡(ルイン)』に入ってしまえば後は関係ないわ」

 

先ほどの作戦会議でバルゼリットの今回の役割をライグリィ教官が説明していたのを思い出す。バルゼリットは『遺跡(ルイン)』の調査には関わらず、周辺の幻神獣(アビス)討伐の援護だけという話だ。

 

「随分とつれないことを言うじゃないか、我が未来の妻よ」

突然背後から声が発せられ、ノエルたちは振り返る。視線の先にいたのはクルルシファーが先ほどあの人と呼んでいた人物、バルゼリットだった。

 

「昨日も言ったのだけれど、その未来の妻って呼び方やめてもらえないかしら? 私とあなたは他人だと言ったはずよ、もう忘れたのかしら?」

 

「なに、特に問題はなかろう? 明日行われる決闘の結果など決まっているようなものだ。そうすれば、お前と俺は他人ではなくなるのだからな」

そう言うとバルゼリットはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、演習場へと移動をするために横を通り過ぎようとする。だが、そこでノエルが声をかけた。

 

「俺も甘く見られたもんだな、もう勝った気でいるのか」

先ほどのすでに勝利を確信しているような発言にノエルが眉を顰めている。

 

「ほう、お前もいたのか。興味がないもんでな、存在に気が付かなかったぞ」

あからさまに挑発している様子でノエルの問いにバルゼリットは答えた。

 

「そうかい、なら引き留めて悪かったな。さっさと行けよ」

 

「そうさせてもらうよ、我が未来の妻の『恋人』とやら」

バルゼリットは見下したような目でノエルを見た後、外套をなびかせて演習場の方へと姿を消していった。

 

「なぁノエル。さっき奴が言っていた決闘って何のことだ?」

先ほどのやり取りで疑問に思ったことをリーシャが尋ねてくる。

 

「……、あとでちゃんと話すよ。今は調査に集中しよう。ほら、そろそろ開始時間だろ?」

 

「……分かった。ちゃんと話してくれよ? 協力してやれることもあるかもしれないからな」

 

「ありがと、リーシャ様」

リーシャの気遣った言葉にノエルは微笑み、感謝を述べた。

 

「なっ!? そ、それくらいあたりまえだ! ほらもう時間だ、急ぐぞ!」

その笑顔に顔を赤くしながら、ノエルたちを急かして演習場へと向かう。その時、私にはルクスがとかぶつぶつと呟いていたような気がしたが気のせいだろう。

 

ノエルたちが演習場に到着した後、今回の作戦の部隊長であるリーシャの指揮のもとそれぞれが装甲機竜(ドラグライド)を纏い出撃していく。ノエルも《ワイバーン》を纏い『遺跡(ルイン)』調査へと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城塞都市から約二十klほど離れた場所にある『遺跡(ルイン)』にリーシャ率いる部隊のメンバーは数十分かけて到着する。そこにあったのは荒野に埋まっているような、はたまた生えているような立方体の建設物が存在していた。

 

「これが第六遺跡『箱庭(ガーデン)』か―――。でかいな」

 

「うん、そうだね」

ノエルの言葉にルクスも同意する。

 

「さすがの二人もこれを見るのは初めてかい?」

二人の反応を見たシャリスが話しかけてくる。『騎士団(シヴァレス)』のメンバーでは三年生だけが『遺跡(ルイン)』調査の経験があるらしい。そうなると、他のメンバーは初めて見る『遺跡(ルイン)』にノエルたちと同じような反応をしていることだろう。

 

「『遺跡(ルイン)』を見るのは初めてじゃないけど、『箱庭(ガーデン)』を見たのは初めてですね」

 

「雑用依頼で周辺の警備はしたことありましたけど、実際に近くで『遺跡(ルイン)』を見るのは初めてです」

ノエルとルクスは、それぞれシャリスの問いに答える。

 

「ほう、ノエル君は他の『遺跡(ルイン)』にも行ったことがあるのか。それはどこのかな?」

ノエルの発言で、疑問に思ったことを尋ねてくる。するとノエルは答えづらそうに、困った表情になる。

 

「それは……、秘密ですね。でも、新王国にある三つの『遺跡(ルイン)』のどれかではないですよ」

 

「そうか……、気にはなるが、秘密なら仕方ないな。なにか話せない事情があるんだろう?」

 

「まぁそうですね。でも、悪いことをしたから隠してるとかじゃないですからね?」

 

「わかっているさ。私は君がそんなことする人だとは思っていないからね」

そう言ってシャリスは微小を浮かべていた。

 

「いつの間にそんな信頼されてたのか謎ですね」

 

「私たちは君たち二人に助けられてばかりだからね。信頼にたる男の子だと思っているよ」

 

「だってよルクス。やったな」

自分の背後を《ワイバーン》を纏い、飛行しているルクスに微笑みかける。だがルクスには話は聞こえてなかったらしく、何のことと首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みなさん止まって下さい。前方に幻神獣(アビス)の反応を確認しました』

遺跡(ルイン)』 に接近しながら《ドレイク》で索敵を行っているノクトからメンバーに竜声が届いた。

 

『よし。総員、戦闘態勢をとれ!』

リーシャの指示を聞いたメンバーはそれぞれ武器を手に取り、構える。すると前方に見える立方体の建物『箱庭(ガーデン)』の陰から巨兵が姿を現す。

 

「あれは確か―――『ゴーレム』」

ノエルは昔読んだ古文書に書いてあった記述を思い出し、その名前を口にする。

 

大型の幻神獣(アビス)『ゴーレム』―――強固な身体を持ち、その巨大な体から繰り出される攻撃はどれも食らえばただでは済まない威力を持つ。だが、弱点として行動が全体的に鈍重である。そのため逃走する場合は容易に可能であるが、今回のように目標へ到達するため戦闘を行い討伐するとなると厄介な相手となる。

 

「ノエル君はよく知っているな。それで部隊長殿、どう攻めましょうか?」

シャリスはノエルを褒めつつ、部隊長であるリーシャへ問いかけた。

 

「そうだな……、奴の核は胸の部分にあることは分かっているし、空と地上からキャノンによる波状攻撃で胸部を攻撃で核が露出するまで外殻を削るとしよう」

リーシャが攻略する術を考え、メンバーに通達しようとする。だが、その前にクルルシファーがその術を否定するように言葉を発した。

 

「ダメね、それでは時間がかかりすぎるわ」

 

「何だと? じゃあ他に何かあるのか、クルルシファー」

 

「私が一人でやるわ。私の《ファフニール》なら問題なくこなせるし、メンバーの体力も温存できるでしょう?」

クルルシファーが言っているのは、今回の作戦において『箱庭(ガーデン)』の内部調査を始める前に幻神獣(アビス)と戦闘になった場合のことだろう。

 

その場合、幻神獣(アビス)を排除した後、余力が残っている者のみ『箱庭(ガーデン)』の内部調査へと向かう。だが、幻神獣(アビス)との戦闘はいくら『騎士団(シヴァレス)』であっても容易なものではない。そのため、内部調査へ向かえるメンバーが減ってしまうのは確実になってしまう。

 

「だが、流石にそれは―――」

 

「一人でやるなんて無茶ですよ、クルルシファーさん!」

クルルシファーの提案にリーシャが反論しようとすると、ルクスも二人のやり取りに割って入ってくる。

 

「あら? 心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫よ。それじゃあ、行かせてもらうわ」

 

「まぁ、確かにそのほうが『遺跡(ルイン)』の調査メンバーも増やせるし―――」

ノエルがそう呟いた瞬間。クルルシファーの《ファフニール》が加速しゴーレムへと接近していった。

 

「速いなー。てか、本当に一人で大丈夫なのかな?」

《ファフニール》の速度は目で追うのがやっとのほどだった。そして瞬時にゴーレムへと到達する。

 

「グォォォォ……」

《ファフニール》の接近に反応したゴーレムが唸り声を上げて動き出し、その巨大な腕を振り上げ《ファフニール》めがけて振り下ろしてくる。

 

「危ないッ!」

ルクスが叫ぶ。だがクルルシファーはその攻撃を難なく回避する。その動きはあまりにも無駄が無く、まるで相手の動きの軌道が見えているようだった。

 

巨大な腕はむなしくも空を切り地面へとめり込む。回避をした後、クルルシファーはライフルを構えてその腕に数発放つ。すると着弾した部分が凍結し、地面へと張り付けていた。

 

「凄い……、あれが《ファフニール》の特殊武装―――」

ルクスはその光景に呆気に取られていた。

 

「俺は前に見たけど凄いよな、あの武装」

 

「あれは《ファフニール》の特殊武装―――《凍息投射(フリージング・カノン)》。その能力は見ての通り、着弾部分を凍結させる能力だ。だからあいつと模擬戦をする時は、防御もできないから回避するしかない」

ノエルが称賛していると、武装についてリーシャが説明してくれる。

 

その間にも戦闘は続いており、腕を凍らされて身動きの取れないゴーレムに次々と光弾が着弾していく。するとゴーレムの動きは次第に鈍くなっていき、最後には動きがほぼ止まった。

 

動きが止まったゴーレムを見ると、ほとんどの関節部分が凍結していた。あれではもう身動きが取れないであろう。ゴーレムは何とか動こうとするが、鈍い軋む音がするだけだった。

 

「さすがだな、あとは核を破壊するだけ―――ッ!?」

リーシャが途中で言葉を区切り、驚きの表情になる。リーシャが口を開いたことでそちらに注目していたノエルたちもクルルシファーのほうを向き直した。

 

ゴーレムの頭部が開き、大きな宝玉が現れる。そこに光が集束していき《ファフニール》へと一筋の光柱が放たれた。

 

『回避しろ、クルルシファー!』

ノエルが竜声を介してそう叫ぶが、次の瞬間には《ファフニール》を光柱が包み込んでいた。

 

『大丈夫よノエル君。この程度何ともないわ』

そう竜声が聞こえた後、《ファフニール》から放たれたであろう一筋の光弾が凍って亀裂が入っているゴーレムの胸を正確に貫いた。

 

グガァァァ……。

核を貫かれたゴーレムはその巨体ゆえに大量の砂煙を巻き上げながら、崩壊を開始する。ゴーレムの攻撃が直撃したはずの《ファフニール》は無傷で空中に留まっていた。

 

クルルシファーの前には七枚の盾が展開されているのが見える。

「あれが《ファフニール》のもう一つの特殊武装―――《竜鱗装盾(オート・シェルド)》だ。見てわかる通り、自動で相手の攻撃を防ぐことができる鉄壁の盾というわけだな」

 

「あんなに神装機竜を使いこなしてるなんて……」

ルクスはリーシャの説明を聞きながら、感嘆の言葉を口にしていた。

 

「すごいっ! クルルシファーさん!」

「かっこいいです!」

 

大型の幻神獣ゴーレムの撃破に『騎士団(シヴァレス)』のメンバーから歓喜の声が上がる。

 

「敵も排除したし、『遺跡(ルイン)』の調査に向かいましょう」

クルルシファーはそう言い残して、『箱庭(ガーデン)』へと向かって移動を開始していった。

 

「クルルシファー?」

ノエルの目にはどこか焦っているように、その姿が映っていた。

 

 

『待ってください! まだ何か来ます!』

騎士団(シヴァレス)』の《ドレイク》を纏っているメンバーから竜声が届く。砂煙で視界が悪いので、念のため索敵を行っていたところ敵影を確認したらしい。

 

「ふははは、どうやら来たようだな」

部隊の後ろから《ワイアーム》を纏い、ついて来たバルゼリットが誰にも聞こえないほどの小声でそう呟く。だが、その顔に浮かぶ不敵な笑みがノエルの視界に入っていた。

 

『ノクト! 敵の確認を頼む』

リーシャが竜声でノクトに指示を飛ばす。

 

『Yes.すでに開始しています。……この反応は、新手の幻神獣(アビス)です!』

ノクトの竜声を聞いた瞬間、ゴーレムの撃破で気が緩んでいた部隊のメンバー達に緊張が走る。

 

『敵は前方に一体、皆さん警戒してください』

その言葉を聞き、それぞれが武器を構える。

 

幻神獣がいるであろう砂煙が漂う方向を見ながら、メンバーの誰かが息を呑んだ瞬間。

 

 

ギャァァアアエァァ!!

耳を劈くような咆哮と共に砂煙が吹き飛び、視界が開けた。

 

「あれは―――、ディアボロスか!」

その姿を確認したノエルが叫ぶ。

 

巨大な体躯に漆黒に染まった翼。たった一体で小さな都市を滅ぼせるほど危険性を持つ中型の幻神獣(アビス)。鋭く長い爪と尖った牙を光らせながら空中に漂っている。

 

「どうするリーシャ様、あれは中々手強いぞ?」

 

「そうなのか? ここにいるメンバーで、あれとの戦闘経験があるものはいない。ノエルがそう言うなら撤退も考えた方がいいかもな……」

 

「ほう、ずいぶんと腰抜けなんだな。我が未来の妻の『恋人』とやらは」

二人が相談していると、後ろのほうで静かにしていたバルゼリットが口を開いた。突然の発言にノエルたちは視線を向ける。

 

「どうやら俺の出番が来たみたいだな。このまま何もしないのもどうかと思っていたところだったのだ、ちょうどいい」

バルゼリットは《ワイアーム》を解除すると、もう一本の機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜いて装甲機竜(ドラグライド)を纏う。汎用機竜ではなく、その見た目は神装機竜のものだった。

 

「これが俺の神装機竜《アジ・ダハーカ》だ」

見た所、陸戦型の機竜なのだろう。そして両肩には特殊武装であろう大きな砲口が連結されていた。

 

「さぁ! 戦闘開始といこうじゃないか!」

バルゼリットは機竜息銃(ブレスガン)を構え、ディアボロスめがけて放った。

 

「グガァァアアア!」

ディアボロスはその攻撃をかわすと、こちらに向かって咆哮をあげながら一直線に接近してきた。

 

「馬鹿野郎!! 勝手に手出ししやがって!」

ノエルはバルゼリットの身勝手な行動に叱咤するがすでに遅い。ノエルは《ワイバーン》を駆り、動き出す。ディアボロスは《ドレイク》を纏っている少女、ノクトへと肉薄していった。

 

「―――ッ!?」

声を出す時間がないほどの速度でディアボロスが向かってくる。そしてその腕を振り上げ、自分を切り裂こうと振り下ろしてきた。

 

ノクトはその場を動けず、恐怖で目を閉じてしまう。間に合わない、誰もがそう思った。

 

ガキィィン!!

 

甲高い金属同士がぶつかり合うような音が響く。ノクトが目を開けると、目の前には《ワイバーン》を纏っているノエルが立っていた。あの時と同じように。

 

「ノエルさん!?」

 

「今のうちに離れろ! あんまり長くは持たない!」

ディアボロスの攻撃はとてつもなく重いものだった。ノエルの《ワイバーン》の装甲と攻撃を防いでいるブレードに亀裂が入っていく。

 

「ですが、このままじゃノエルさんが!」

 

「俺一人なら何とかしてみせる!」

このままでは装甲は砕け、二人ともやられてしまう。せめてノクトだけでもと離れるよう指示を出す。リーシャやクルルシファーがこちらに戻ってくれば何とかなるだろう。そうノエルは考えていた。

 

「どうやら手こずってるようだな? よし、俺が手を貸してやろう」

そう言ってバルゼリットは《アジ・ダハーカ》の両肩にある砲口をこちらに向けてくる。

 

『危ないッ! 今すぐそこから離れて!』

クルルシファーから竜声が飛んでくる。何かを感じたのか焦っているようだ。

 

『悪い、動けない!』

ディアボロスの力はだんだん強くなってきている。少しでも気を抜けばやられてしまいそうな状態だ。

 

「ふははは、喰らえ!《双頭の顎(デビルズグロウ)》!!」

《アジ・ダハーカ》の砲口から二筋の光柱が放たれる。ディアボロスはそれを感じ取りノエルから離れ、上空へと飛翔していった。

 

(まずいっ! この距離は避けられない)

回避も間に合わない、後ろにはノクトがいる。こうなったら手段は一つしか思いつかなかった。

 

「ノクト! 俺から離れるなよ!」

 

「い、Yes.分かりました!」

ノクトの返事を聞きながら、ノエルは銀色の機攻殻剣(ソード・デバイス)に手をかけて抜き払う。

 

次の瞬間、二人は光に飲み込まれていった。

 

 

 

 

「ノエル君とノクトちゃんは!?」

「あの男、躊躇なく撃ちましたわよね?」

目の前で起きた光景に『騎士団(シヴァレス)』のメンバーの中に動揺が起きる。二人がいた場所には爆発により土煙が起きていた。

 

「ノエル!! おいルクス行くぞ!」

リーシャが《キメラティック・ワイバーン》を駆り、ノエルたちがいた場所へ向かおうとする。

 

「はい! 急ぎましょう!」

ルクスもリーシャの後をついて行こうとする。すると、かすれた声で竜声が聞こえてきた。

 

『ルクス、俺たちは無事だ。問題ない……かな? 俺以外は』

土煙が晴れると、そこには《フェンリル》を纏ったノエルがノクトを守るように立っていた。

 

「ノエル、その機竜使っちゃったんだね」

 

「ああ、だから言ったろ? 俺以外問題ないって」

これでこの場にいるメンバーには正体がばれてしまったことだろう。だが、それでもノクトを守るためにはこれしかなかったのだとノエルは思っていた。

 

「ところでノエル。どうやって防いだんだ?」

リーシャが疑問に思った事を口にする。

 

「ああ、これですよ」

そう言ってノエルは《フェンリル》の手をかざす。すると紋章が入った円状の障壁が展開された。

 

「《フェンリル》の特殊武装―――《一天紋章(スカイ・エンブレム)》です。能力は空中にこの障壁を複数展開することができ、盾や足場にすることができるって言う単純なものです。大きさの調整も効くんですよ」

 

「ほう、それは色々と応用がききそうだな」

うんうんと話を聞いてリーシャは頷いていた。

 

「それはそうと、おい、バルゼリット。さっきの攻撃は何のつもりだ?」

ノエルは不敵な笑みを浮かべている男を睨みつけ、問いかける。

 

「そう怒るな。なに、俺は幻神獣を倒そうとしただけだ。お前たちが避けるのが遅かった、ただそれだけのことさ」

 

「ああそうかい、お前と話してるとイライラしてくる。さっさとこの場から立ち去れ。邪魔だ」

ノエルが叫ぶ。だがバルゼリットは笑みを崩さないでいた。

 

「ほう、邪魔だとな?」

 

「まともに射撃も出来ないような下手くそは邪魔なだけだからな」

 

「なら一つ勝負をしようではないか。あの幻神獣(アビス)を先に倒したほうの勝ちというのはどうだ?」

上空に漂いながら、こちらの様子を見ているディアボロスを指差しながら提案してくる。

 

「おい、ふざけるのもいい加減に―――」

リーシャがこめかみに皺をよせながらバルゼリットを睨むが、ノエルがその言葉を遮るように手で制してきた。

 

「いいだろう。俺が勝ったら、さっさとこの場から立ち去ってもらうからな?」

 

「そうか、なら俺が勝った場合は我が未来の妻と別れてもらおうか」

 

「いいだろう」

ノエルは特に迷うことなく承諾する。

 

「では、勝負開始だ!」

バルゼリットが高らかに宣言する。そしてディアボロスへと滑走していく。だがその瞬間、勝負は決する。

 

「悪いが俺の勝ちだ、バルゼリット」

その言葉を聞き、バルゼリットは声がしたほうを見る。すると、すでにディアボロスに白い大剣が突き刺さって核を破壊していた。

 

「なん…だと?」

先ほどまで笑みを浮かべていた表情が一気に驚きに変わり、ありえないといった感じで立ち尽くしている。

 

「さぁ、俺の勝ちだ。さっさと立ち去れ」

ノエルはディアボロスから大剣を抜くとそう促す。核を破壊されたディアボロスは声を上げることなく灰と化し、サラサラと消え去った。

 

「くっ、これが情報にあった《フェンリル》の力か―――」

バルゼリットは小さく舌打ちをし、《アジ・ダハーカ》を解除する。

 

「わかった。勝負は勝負だ、俺は立ち去るとしよう」

《ワイアーム》を纏い、そう言い残してバルゼリットはここに来たときの道を戻っていくのだった。

 

意外と素直に立ち去ったことにノエルは疑問を持つが、気にすることではないと思い、『騎士団(シヴァレス)』のメンバーと合流するため《フェンリル》を解除して《ワイバーン》に切り替えながら降下していった。

 

「さっきのが、前に話していた《フェンリル》の神装か?」

 

「そうなるな」

リーシャの問いかけに答える。

 

「実際見てみるとすごい能力だな。今度調べさせてくれないか?」

 

「ほんと、リーシャ様って機竜のこと好きだよな。ルクスとどっちが好きなんだ?」

 

「なっ!? お前は何を言っているんだ! そんなのルクスに……」

もじもじとしていて声がだんだん小さくなっていく。最後はなんて言っているか聞こえなかったが予想は簡単につくので聞き返さないでおこう。

 

「ねぇ、幻神獣も邪魔者もいなくなったし、早く『遺跡(ルイン)』調査に向かいましょう?」

クルルシファーが口を開く。ノエルはこんなに急かしてくるのも珍しいなと思っていた。

 

「そうだな。でもよ、クルルシファーさっきからなんか焦ってないか?」

 

「そうね、早く確かめたいことがあるからかしらね」

 

「そうか、ならさっさと向かおう。そろそろ『箱庭(ガーデン)』の入り口が開く時間だ」

ノエルが持ってきている時計を確認する。

 

箱庭(ガーデン)』への入り口は一定時間で開閉する仕組みになっている。その時間が近づいているのだ。この時間を逃せば、次の開閉時間まで待つことになってしまう。

 

「リーシャ様。行きましょう」

 

「よ、よし。総員、『箱庭(ガーデン)』へと移動を開始するぞ!」

ノエルの先ほど質問のせいか、まだ少し顔が赤いリーシャの掛け声でメンバーは移動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノエルさん」

 

「ん? どういたの、ノクト」

 

「また助けて頂きありがとうございました」

 

「お礼なんていいよ、それより怪我とかしてないか?」

 

「Yes.問題ありません。ノエルさんの方こそ大丈夫でしたか?」

 

「うん、こっちも問題なし。まぁ、もし怪我してたらノクトに手当てしてもらおうかな」

 

「それくらいお安い御用です。何時でも言ってください」

 

「ありがと、ノクト」

 

二人は微笑み合うと部隊から少し離されていたことに気づき、速度を上げて追いついていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





基本的にノエル中心で書いてるから、フィルフィの出番が中々ないことに気づいてしまったここ最近。


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