第零遺跡の「鍵の管理者」   作:奈々歌

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今回は短くなってしまいました。すいません。

今週はバタバタしていて、時間がなかなかとれませんでした。


それではどうぞ!


二人の密談。

 

 

 

 

幻神獣(アビス)との戦闘が終わり、調査メンバーは『箱庭(ガーデン)』へと向かう。立方体の形をしている『箱庭(ガーデン)』の入り口の門は六面の各壁際にあり、一定時間により開閉する。その際に、内側と外側の物を吸引、または排出する仕組みとなっていた。

 

調査メンバーは外部待機と内部調査の二手に別れ、外部待機のメンバーは非常時に備え『箱庭(ガーデン)』の周辺に散開する。そして内部調査のメンバーは一番近い門の前で開閉時間まで待機していた。そして待つこと数分、『箱庭(ガーデン)』全体が淡く輝きだし、門の開閉が始まる。メンバーは光に包み込まれ、内部へと入って行くのだった。

 

 

「ここが『箱庭(ガーデン)』の中か―――」

ノエルが周りの景色を見渡しながら呟く。

 

箱庭(ガーデン)』の内部には大きな湖や木々が広がる神秘的な空間が広がっている。だがここは『遺跡(ルイン)』も中であるため、生物がいるような気配はなく、とても静かな場所であった。もし、自分たち以外に何か生体反応があった場合は幻神獣(アビス)でほぼ間違いないだろう。

 

「これから調査―――と言いたいところだが、もう少ししたら日が落ちてしまうな。今日はここで野営をして、明日調査をするとしよう」

時計を確認した後、リーシャがメンバーに指示を出す。『箱庭(ガーデン)』の内部は外の時間と連動しているらしく、外が暗くなれば『箱庭(ガーデン)』の内部も暗くなるようだ。外で待機しているメンバーにも時間によってはこうなることも伝えてあるので、あちらも野営の準備を始めていることだろう。

 

野営の準備に取り掛かるメンバーたち。簡易テントの設営、薪や飲み水の調達。それぞれがあまり時間がない中、手際よく行動していた。男手が必要なテント設営にはルクス、薪集めにはノエルが参加する。薪を集めに行くメンバーはノエルとクルルシファーということになり、二人は薪が落ちていそうな森の中へと入って行った。

 

「なぁ、クルルシファー。さっきの戦闘で思ったんだけどさ、なんか焦ってないか?」

手ごろな薪を集めつつ、ノエルは心に留めて置いた疑問を尋ねてみる。

 

「やっぱりあなたは鋭いわね。そうね、今回の調査は私の個人的な目的を果たすための数少ないチャンスなの。だからあまり時間を無駄にしたくなかっただけ、ほんとはこうしてる時間も惜しいのよ」

 

「前にも聞いたけど、その個人的な目的って一体なんなんだ?」

 

「悪いけど、まだ話せないの。だけどあなたには隠し通せなさそうだから、後で教えるわ」

集めた薪を抱えながら、淡々と答える。

 

「そっか、なんか俺でも力になれることがあったら何でも言ってくれよ? 今は『恋人』なんだからさ」

ふっ、と優しくノエルは微笑みかける。クルルシファーはその表情を見て、小さく頬を染めた。

 

「ありがとノエル君。あなたのことを『恋人』に選んで正解だったのかしらね」

軽く目を細め、くすっと微笑を浮かべる。その美しさにノエルは赤くなってしまった顔を隠すよう目線を逸らしてしまう。

 

「も、もう十分なくらい集まっただろうし戻ろうぜ」

ノエルは自分が集めた薪を抱え上げた後、クルルシファーの分も持ち、歩き出す。ありがとうとお礼を言って彼女は後ろにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薪を集め終わり、野営の拠点としている場所に戻る。二人が着いた頃には、簡易テントの準備は済んでおり、今夜の夕飯になる缶詰や干し肉を鞄から出しているところだった。

 

「おお、ノエル、クルルシファー。やっと戻ったか」

リーシャがこちらに気づき、声をかけてくる。

 

「悪いな、なかなか落ちてなくてさ」

そう言いながら持ってきた薪を置き、火を起こす準備をする。

 

ノエルが焚き火を完成させてから少しすると『箱庭(ガーデン)』の内部は暗くなり始めた。辺りは火の光を残し闇に包まれる。『箱庭(ガーデン)』の中には太陽や月がない。それなのに天井が明るくなったり暗くなる原理は今だ解明されていないらしい。

 

メンバーは焚き火を囲むように座り、雑談をしながら簡単な夕食をとる。そして暫くし、夕食を終えると、リーシャが今後の作戦行動について説明を始めた。

 

「明日、『箱庭(ガーデン)』の内部が明るくなったら、目標である『祭壇』へと向かうことにするぞ。そこで二時間ほど調査したのち、調査結果を持って門まで移動。開閉時間まで待機とする。それでいいな?」

説明を聞いたメンバーはそれぞれ頷く。その後は、落ち着いた時間を過ごす時間ができ、ノエルは近くにあった丸太に腰を下ろしていた。

 

「隣、いいかしら?」

クルルシファーが目の前に歩み寄って来ると、その綺麗な髪を耳にかけながら尋ねてくる。

 

「ん? ああ、いいぞ」

ノエルは了承し、横へ少し移動して座れる幅を作った。クルルシファーはそこに腰を下ろす。

 

「ほんと、『遺跡(ルイン)』って不思議なところよね」

 

「そうだな。こんなにも自然があるし、朝や夜まで―――。なんか天井に雲まであるような気がするし……」

そう言いながら、ノエルは『箱庭(ガーデン)』の空―――六面の天井にあたる部分を見上げた。

 

「確か、ここでは雨も降るらしいわよ。他にも色々天候の変化があるみたいだし、まるで外の世界みたいよね」

クルルシファーも同じように天井を見上げる。そしてノエルの隣に来た本当の理由を口にし出した。

 

「ねぇ、あなたにお願いがあるの」

 

「なんだ? 俺にできることなら何でも言ってくれていいぞ」

首を少し傾け、クルルシファーの方に視線を向ける。その時見た彼女はどこか言いずらそうな表情をしていた。

 

「………。今夜、皆が寝静まったら、こっそり抜け出して『祭壇』に向かいたいの」

暫く沈黙が続いたが、クルルシファーが口を開き、そう言いだす。

 

「そんなわざわざ抜け出さなくても、朝には皆で―――」

 

「それでは駄目なのよ」

クルルシファーがノエルの言葉を遮る。

 

「………、どうしてなんだ?」

 

「他の人に見られたら困るのよ。だからお願い、皆にばれないよう行動するにはあなたの協力が必要なのよ」

 

「………。ああ、わかったよ。協力してやる。『恋人』の頼みごとだしな」

珍しく真剣な顔を向けてくるクルルシファーにノエルは暫し考えた後、頷く。そして協力することにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、見張りの順番決めようか! 最初は誰がやる?」

二人の密談が終わった頃、内部調査メンバーである『三和音(トライアド)』のティルファーが提案する。

 

「じゃあ、まずは男の俺から見張り役、引き受けるよ」

誰よりも先にノエルが手を上げた。

 

「おっ、さっすがノエルっち! 男前だねー」

 

「だろ、惚れんなよ?」

パチパチと手を叩きながら、称賛してくるティルファー。それに応えるようにノエルは胸を張る。

 

「でも、惚れはしないかなー」

なんだって、と言いながら、ティルファーの言葉でノエルは項垂れてしまうのだった。

 

「でも、見張り役は二人欲しいんだよねー。もう一人誰かいない?」

そんなノエルを余所に、拍手をやめたティルファーが再度メンバーへ問いかける。

 

「あ、それなら僕がやるよ」

今度はルクスが手を上げる。だが、その近くでもう一人手を上げている少女がいた。

 

「いや、ここは私が引き受けるわ。ノエル君がやるなら当然『恋人』である私がやるべきでしょう?」

クルルシファーはそう言うと、ノエルのほうを見て、軽くウインクをしてくる。

 

それを見たノエルは意味を理解すると、ノエルは項垂れるのをやめ、

「そうだな、それで問題ないだろティルファー?」

そうティルファーに告げた。

 

「んー、確かに男手が固まるよりはそのほうがいいね。わかった、じゃあ最初の二人はノエルっちとクルルシファーで決定! みんな、それでいいよね?」

皆へ確認をとるため尋ねると、メンバーたちはそれぞれ頷き、了承の意志を表す。

 

「悪いなルクス、せっかく立候補してくれたのにさ」

 

「いいよ、ティルファーの言う通り、僕たちが固まるより別々の組になったほうが良さそうだからね」

 

「まぁ、お前はリーシャ様と組んだほうがいいだろうしな。てか、そうしないとリーシャ様が文句言いそうだし……」

そう言いながら、ノエルはリーシャのほうに視線を向けた。ルクスもつられてそちらを見る。

 

すると、こちらの話が聞こえていたようで、

「なっ!? ノエル、お前何を言っている!! 私がそんなこと言うわけ―――」

顔を赤くしながら否定しているが、その光景を想像したらしく、顔がにやけていく。

 

その顔を見たティルファーが悪戯っぽい笑みを浮かべると、

「じゃあ、リーシャ様はルクっち以外と組んで下さいね?」

 

「確かにな、そんな否定するなら別の人と組んだほうがいいよな。じゃあ、ルクスはティルファーと組んだらどうだ?」

ノエルも話に乗っかると、そうルクスを促す。するとティルファーが胸の辺りでリーシャには見えないように、小さくぐっ、と親指を立てていた。

 

「そうだね、じゃあティルファーよろしくね」

ルクスはノエルに促されるままに、ティルファーと組もうとしてしまう。

 

「ま、待てルクス! お前は私とだな………」

それを見たリーシャが焦ったように止めに入ってくる。だが、途中でノエルとティルファーがにやりと笑みをこちらに向けているのに気づき、言葉を区切った。

 

「どうしたんですかリーシャ様? どうぞ俺たちのことは気にせず続けて下さいよ」

 

「そうですよリーシャ様」

 

「くそぅ、お前たちはそうやって毎回私を―――」

睨むように目を細めながら、頬を膨らませる不満げな表情のリーシャ。正直、可愛い。

 

「どうしたんですかリーシャ様?」

ルクスは先ほどリーシャの言いかけた言葉が何のことか分からず、首を傾げながら尋ねる。

 

「ルクス! お、お前は私と見張りだ! これはこの依頼書を使った依頼だ! 誰にも文句は言わせんぞ!」

そう言ってリーシャは以前の『争奪戦』で手に入れた依頼書を出し、ルクスへ見せる。ルクスは、ははっ、と苦笑いを浮かべていたが了承していた。

 

「リーシャ様、依頼書を使わなくても、言って頂ければ別に僕はよかったですよ?」

 

「そーそー、というか元からルクっちはリーシャ様と組むと思ってたんで、誰も文句は言わないですよ」

 

「なっ!? お前たちも分かっていて黙っていたのか!?」

ティルファーの言葉を聞いて、やり取りを見ていた他のメンバーたちにリーシャは問いかける。

 

「まぁ、そうだな……くくっ」

 

「い、Yes.面白そうだったので傍観させてもらいました」

シャリスとノクトが答えるが、二人も面白そうに笑いを堪えているのが分かる。

 

「もー、なんなんだよー! お前たちはー!!」

リーシャの怒りの叫びが大きく『箱庭(ガーデン)』に響く。だが、幻神獣(アビス)に気づかれるかもしれない行動だったのでルクスが慌ててリーシャの口に手をあて、塞ぐのだった。

 

むぅー、と暴れるリーシャだったが、徐々に落ち着きを取り戻す。すると疲れたのか、もしくは拗ねてしまったのか、後は黙ってしまう。

 

「本当は俺がルクスと組んで、前科のあるルクスから見張りを兼ねて皆をその毒牙から守ろうと思ったんだが………」

 

「えっ……、ルクっち、もしかして……」

ノエルとティルファーはそれでも止まらず、標的をルクスに変えてくる。

 

「いや!? そんなことしないからね!?」

リーシャを宥めていたルクスが、自分に標的が変わったことに驚く。そして慌てて否定しようとするが、それこそノエルたちの狙いだった。

 

「ほう、そんなことって?」

 

「私も気になるなー?」

二人とも悪戯っぽい笑みを浮かべ、ルクスの返答を待っていた。

 

「ああもう!! 二人とも勘弁してよー!!」

ルクスが叫ぶ。三人のそんなやり取りを見て、メンバーの中に笑いが起こる。そして、よく幻神獣(アビス)が来なかったなぁ、と思うノエルなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も更けていき、メンバーたちが寝静まった頃。焚き火の近くに座りながらノエルとクルルシファーは見張りのため起きていた。『箱庭(ガーデン)』は元々静かな場所であるが、夜になると更に静かさが増しているような気がする。今はノエルが焚き火に薪を焼べる音が小さく響いているだけだった。

 

「そろそろ交代の時間になるんじゃないかな?」

いずれ薪となるであろう木の枝で焚き火を弄りながら、クルルシファーに尋ねる。

 

「そうね、じゃあそろそろ次の組を起こしに行きましょうか」

クルルシファーが答えた。そして二人は立ち上がると、簡易テントの方へと歩き出す。

 

「次って誰々だったっけ? ノクト? シャリス先輩?」

テントには見張りの組同士、二人組で泊まっている。あの後、見張りの組みわけをしっかりと決めた。リーシャはルクスと組むことができ、上機嫌となっていたので、怒られることはまずないだろう。

 

「確か、次は姫様とルクス君だったはずよ。二人がいるテントは―――あれね」

クルルシファーが奥の方にあるテントを指差す。アイリがルクスに持たせた、大きめのバッグが見えたので間違いないだろう。

 

そのテントに顔を覗かせると、

「おーい、ルクスー。交代だぞー」

周りで寝ている皆には聞こえない程度の声で、ルクスを起こしにかかる。

 

「んん……、ノエル? あぁそっか、交代だね。分かった。リーシャ様は僕が起こしておくから、二人はもう寝て大丈夫だよ」

ルクスはまだ眠そうな瞼を擦りながら起き上がる。そして視界にノエルたちが入ると、そう促してきた。

 

「じゃあ後はよろしくな。じゃあ俺たちは寝ようぜ、クルルシファー」

ノエルは、自分たちのテントへ向かうため踵を返す。

 

「ええ、そうね。ノエル君、襲ったりしちゃダメよ?」

クルルシファーはノエルの後ろをついて歩き、そう言って微笑を浮かべた。

 

「そう言ってくるってことは、クルルシファーは俺のこと一人の男として見てくれてるってことなのかな?」

視線だけを後ろに向けながら、目を細める。

 

「あら、その返しは思いつかなかったわ。そうね、私はあなたのこと、ちゃんと一人の男として見ているわよ」

 

「おっ! 嬉しいな。クルルシファーってさ、大人っぽいからさ、俺とかルクスは子供に見られてると思ってたんだよ」

 

「私ってそんな感じに見えるのかしら? 自分じゃよく分からないわ」

 

ノエルが立ち止まると、テントに着いていた。そしてノエルは後ろを振り返り、

「俺は、クルルシファーは大人っぽくて綺麗だと思ってるぞ」

そう言うと、心なしかクルルシファーの頬が少し赤くなったような気がした。

 

「あなたがそう言うなら、そういうことにしようかしらね」

ふふっ、と笑うクルルシファーに笑みをこぼすノエル。その後、二人は自分たちのテントに入っていく。二人は『祭壇』へ向かう前に、少しだけ仮眠をとることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し仮眠をとった後、二人は行動を開始する。見張り役はルクス達から交代したようで、『三和音(トライアド)』の三人に変わっていた。

 

ノエルはごそごそと荷物を漁りだすと、

「よし、これを使おう。俺は三人の気を引くからそのうちに行くんだぞ」

ノエルは荷物の中から一枚の布を取り出し、クルルシファーに渡す。何かを包んでいた布らしくそれなりに大きい。

 

「ありがとう。悪いわね、つき合わせちゃって」

それを受け取ったクルルシファーは、いつのも涼しげな表情ではなく。申し訳ないといった表情になっていた。

 

その顔を見たノエルは、

「俺たちは『恋人』だろ? 気にすんなよ」

そう言い残して背中を向けた。そして行動を開始するために移動を始める。

 

「………。ありがと、じゃあ行動を開始しましょうか」

クルルシファーは、その背中に感謝の言葉を掛けた後、渡された暗闇に溶け込むことができそうな黒っぽい布を頭からかぶると、木々の間に身を潜めるのだった。

 

ノエルはまず、こちらの存在を『三和音(トライアド)』だけに気づかせるため、草むらで小さく音を立てる。すると狙い通り、こちら側の見張りをしていた少女が向かってきた。

 

「何の音だ? ………、なんだノエル君じゃないか。そこで何をしているんだい?」

 

「ああ、シャリス先輩。お手洗いですよ。その……、見ないでくださいね?」

近づいて来た少女はシャリスだったようで、ノエルは予め考えていた言い訳をする。女の子に対して失礼な言い訳になってしまうだろうが、こちら側から視線を外すには効果的な言い訳になったことだろう。

 

「す、すまん。私はあっちを向いているから存分にしてくれ」

思った通り、シャリスは慌てて後ろを向くと離れていく。

 

「まぁ、するつもりは元からないんだけどな。……、よし今だな」

十分にシャリスが離れていったことを確認すると、クルルシファーに目配せし、合図を送る。すると頷いた後、木々が生い茂る森へと姿を消していった。

 

それから暫くして、ノエルは離れていったシャリスの下に向かうと、

「すいませんシャリス先輩。じゃあ俺はテントに戻りますね」

 

「あ、ああ。仕方ないことだ。『遺跡』の中に用場はないからね」

恥ずかしそうにそう言うシャリスに軽く頭を下げた後、ノエルは自身のテントへと戻っていった―――とシャリスは思っていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い森の中を『祭壇』へ向かうために進む。外とは違い、月明かりなどはないため、道がよく見えない。それでも自分の目的を果たすために少女は歩いていく。

 

「ランプでも持って来ればよかったかしら………」

クルルシファーが小さく呟く。足元がよく見えないため、地面から少しばかり出ている木の根っこなどに、たまにつまずいてよろけていた。

 

かぶっていた布も、野営の明かりが見えなくなったころには取っており、手に持っている。その布に隠されていた綺麗な青い髪は、この暗闇でも少しだけだが、目立つほうだった。それもあったのだろうが、近くから自分を呼ぶ声が聞こえてくる。行き先を知る人物は一人しかいないため、その声の主が誰なのかは簡単に予想がついていた。

 

「………。ここにいるわ、ノエル君」

 

「あっ、いたいた。探したよ」

予想通り、その人物はノエルだった。少し息を切らしているところを見ると、走ってきたらしい。

 

「どうしてついて来たのかしら、私はそこまで頼んでないわよ?」

 

「いや、『恋人』を一人で行かせるわけにはいかないだろ。それにここは『遺跡(ルイン)』の中なんだし、なにがあるかわかったもんじゃないからね。それに『これ』も欲しかっただろ?」

そう言って、ノエルは『これ』と言ったものを取り出す。それはランプだった。

 

「ごめんな、こんなくらいのに持たせなくて。足元ほとんど見えなかったろ?」

クルルシファーの足元を見て、申し訳なさそうな顔になり、謝ってくる。何回かつまずいたため足元は汚れていた。

 

「大丈夫よこれくらい、なんともないわ」

 

「それでも俺は気にするよ。悪かったな。『祭壇』まであとは俺が前を歩くよ」

そう言って、ノエルは持ってきたランプに火を灯す。ランプの明かりで足元を照らしながら、二人は目的の場所へと歩き出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。正直、あなたが来てくれて嬉しかったわ」

 

「まぁ、こんなに暗いし、ランプ欲しかったもんな」

 

「いや、そういうことじゃないわ。あなたが来てくれたことが嬉しかったのよ」

 

「ん? どうして?」

 

「………、あなたってルクス君並みに、そういうところ鈍いのね」

 

「えっ!? どういうこと?」

 

「………。なんでもないわ、先を急ぎましょう」

 

「ねぇ、教えてよクルルシファー!」

 

 




そろそろ番外編を一本書こうかなと思います。

誰の話にするかはだいたい決まっているのですが、もしリクエストがあれば活動報告のほうにお願いします!


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