第零遺跡の「鍵の管理者」   作:奈々歌

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最近の夜は冷えますね。風邪を引かないように気を付けないと。

今回で決闘までいこうと思ったんですが、すみません。次回になりますm(__)m


それではどうぞ!


少女の嘘。

 

 

 

 

 

遺跡(ルイン)』の調査メンバーが士官学園に着いた頃、お昼はとうに過ぎて、時計の短針は三時をさしていた。ノエルは軽く汗を流し、身支度を済ませると、ある少女の部屋へと向かう。向かっている途中、時間の関係もあるのだろうが、甘い香りが漂ってきて、朝食、昼食を食べていない空腹のお腹を刺激してきていたのだった。

 

「お腹減ったなー、昨日の野営で食べたパンが最後だったもんなー」

 

ノエルがそんなことを呟きながら、廊下を歩いていると、

「あ、ノエルちゃんだ。帰って来てたんだね」

不意に後ろから声を掛けられた。

 

ノエルは後ろを振り返る。

「ん? フィルフィじゃん、うん、ただいまだね」

幼馴染であり、今は級友でもある桜色の髪が特徴的な少女、フィルフィだった。

 

呼ばれ方が気に食わなかったのか、小さく頬を膨らませ、

「フィーちゃん、でしょ?」

 

「あ、ああ。そうだったな。昔見たいにフィーでもいいよな?」

昔から彼女は気に入った人には愛称で呼ばせ、呼ばれることを好む子だった。ルクスがフィーちゃんと呼んでいるのもそのためである。

 

そう呼ばれたことで機嫌を直したのか、

「うん。それでもいいよ。ノエルちゃん」

微かに口元を緩めていた。

 

その様子に安堵しながらノエルはフィルフィが胸に抱いている袋に目が行く。

「あ、いいなーそれ。俺にも少し貰えない?」

 

「うん、いいよ。はい、あーん」

フィルフィが抱えていた袋には、ドーナツがたくさん入っていた。ノエルがお願いすると、フィルフィがその中から一つ手に取り、口を開けるよう促してくる。

 

恥ずかしかったが、廊下には二人以外いなかったので、

「えっと、あ、あーん」

ノエルは素直に口を開けた。

 

ぱくっ、とフィルフィからドーナツを口にいれて貰うと、それを自分の手で持ち、口に入った分を食べながら、

「なんかこうしていると昔を思い出すな」

懐かしむような顔になって、目元を細める。

 

「また、ルーちゃんも一緒に三人で遊びたいね」

 

「そうだな、今度三人で出掛けるか」

 

「うん。約束、だよ?」

 

「ああ、約束だ」

ノエルが答えると、フィルフィはこくりと頷いた。

 

持っていたドーナツを食べ終わると、

「じゃあ、俺は行くよ。お菓子あんがとな」

本来の目的の部屋へと向かうため、最初に向いていた方向に向き直る。そして顔を少しフィルフィの方に向けると、軽く手を上げながら歩き始める。

 

「うん、またね。ノエルちゃん」

遠くなっていくノエルの背中にそう言葉を掛けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン。

ノエルは目的の部屋に到着すると、そのドアを叩く。

「クルルシファー、入るぞ?」

 

「ええ、いいわよ」

部屋の住人である少女、クルルシファーから許可を貰うと、そのドアを開け、中に入る。

 

クルルシファーは椅子に座り、今回持ち帰ってきた古文書を読んでいた。

「どうしたのかしら? あなたから私の部屋を訪ねてくるなんて珍しいわね」

手に持っていた古文書を机に置いて、こちらに視線を向けてくる。

 

「いや、今夜の決闘の件で話そうかなって。ほら、作戦とかさ」

 

決闘は酒場での話し合いで、二対二の戦いになった。そのため、相手になるアルテリーゼの情報や連携の確認などをやっておかなければ、戦いを有利に進めることができない。それを聞くためにノエルは彼女の部屋を訪ねたのだった。

 

「ああ、そのことだったら中止になったらしいの。部屋に戻ってくる途中、アルテリーゼがいて、そう告げられたわ。幻神獣(アビス)との戦闘であなたの実力を見せつけられたから、怖気づいちゃったのかしらね」

 

中止になったことにノエルは疑問を持つ。

「あの程度で引き下がるような奴には見えなかったけどな。ていうか、アルテリーゼって学園に入れるんだな」

 

「それは、私の家からの使いだし、特に問題はないらしいわよ」

学園は関係者以外、基本的に立ち入り禁止となっている。アルテリーゼはクルルシファーの実家であるエインフォルク家の人間なので大丈夫だったのだろう。

 

「そっか、じゃあ今日の夜はゆっくりできるな。昨日から全然寝てないから眠くてさ。ふあぁ………」

ノエルは大きく欠伸をする。『祭壇』に向かう前に、少し仮眠を取った以外寝てない。決闘が中止になったのならゆっくり休みたいのだが―――。

 

疲れているノエルの顔を見て、申し訳ないといった表情になり、

「色々と付き合わせてしまってごめんなさい。今日はゆっくり休んで頂戴。授業で寝ないようにね」

最後のほうは、意地悪な笑みを浮かべていた。

 

箱庭(ガーデン)』の中で弱っていた彼女は、もうすっかりいつもの調子に戻っていたので、ノエルは安堵していたのだが、

「うっ!? い、いくら寝ても授業は眠いんだよ………」

痛い所をつかれ、項垂れてしまう。

 

その様子を見て、クルルシファーは口元を緩めると、

「ふふっ、それじゃあ用件は終わりかしら? これから出掛ける用事があるから部屋の鍵を閉めたいのだけれど―――」

そう言って、椅子から立ち上がる。

 

「ああ、わかった。お邪魔したな。クルルシファーもしっかり休めよ?」

ノエルもいつまでも項垂れているわけではない。顔を上げ、部屋から出ようと踵を返す。

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

その時に掛けられたノエルの気遣った言葉に相槌を打つ。

 

「じゃあな、また明日」

そう言って、ノエルは部屋を後にしていく。すると、微かにクルルシファーの独り言が聞こえたような気がした。

 

 

 

「大丈夫。これ以上、あなたには迷惑はかけないから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁ………。眠いな」

 

クルルシファーの部屋を後にして、ノエルは自室で休もうと廊下を歩いて行く。だが、目の前に頬を膨らませて、怒っているのだろうが、正直、怖いというより可愛いが似合う少女が立ち塞がった。

 

「おい、ノエル。話がある。何のことかは分かっているだろうな?」

金髪の少女。リーシャは胸の前で腕を組み、その綺麗な真紅の瞳を向けてくる。

 

それを見たノエルは、面倒なことになりそうだったので、

「デートならルクスとしてください。それでは失礼します」

綺麗なお辞儀をして速足で立ち去ろうとする―――が。

 

「なっ!? なんで私がお前にそんな話をしなきゃならないんだ! 今回の『遺跡(ルイン)』調査でのことだ!」

リーシャにがっちりと腕を掴まれてしまうノエル。

 

「ああ、もしかして作戦無視したこと?」

むしろ、怒られるようなことはそれしか思いつかないのだが。

 

「後で、説教すると言ってあったはずだよな? 忘れたとは言わせんぞ?」

確かにリーシャは帰ってから話をするって言っていたことを思い出す。徐々に腕を掴んでいる力が強くなっている気がするし―――。

 

これは従ったほうがいいだろうと思ったノエルは、

「はーい」

と、締まりのない間延びした返事をした。

 

「返事を伸ばすなー!」

案の定、怒られたのだが、それもそれで可愛い。

 

リーシャはノエルの腕を離し、制服の襟に掴み直すと、引きずって歩いて行く。ノエルは、なされるがまま、抵抗しなかった。しても無駄だろうと思ったからだった。

 

 

引きずられること、数分。場所は変わり、ノエルはリーシャと共に工房(アトリエ)に来ていた。

 

「リーシャ様、そろそろお尻が痛いんですが―――」

工房(アトリエ)までの道をずっと引きずられてきたので、そろそろお尻が痛い。

 

「ん? そうか?」

 

「痛いっ!?」

リーシャが突然手を離したので、ノエルは床に背中をぶつける。

 

ノエルが背中を摩りながら起き上がる様子を見たリーシャは、

「すまないな、手が滑ってしまった」

意地悪な感じで、ほくそ笑んでいた。

 

その後リーシャに床に座るように言われ、正座するノエル。

「で、説教されるのは俺だけなの?」

工房(アトリエ)内を見ても、ノエルとリーシャの二人しかいなかったので、念のため尋ねると―――。

 

「ああ、そうだ。クルルシファーはどこか行ってるみたいで姿が見えないし、そのルクスは、そのだな………」

もじもじと指を絡めている。クルルシファーが出掛けたはこのためだったのだろうか?

 

「ははーん、ルクスには怒れないと? リーシャ様怖いって嫌われたくないですもんね?」

うっすらと頬を赤らめている少女に、今度はノエルが悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「うぅ……、うるさいぞ! お前は黙れ!!」

リーシャの叫び声が工房(アトリエ)に響いた。

 

両手で耳を塞ぎながら答える。

「はいはいっと」

これ以上やると、腰に差している機攻殻剣(ソード・デバイス)が飛んできそうだったので、やめておいた。

 

暫くして、落ち着きを取り戻したリーシャは、本題に入ろうとする。

「そうだな、説教をする前に、聞いておきたいことがある。『遺跡(ルイン)』調査に向かう前に言っていた決闘とやらのことだ」

 

「ああ、話すって言っちまったもんな。俺」

ノエルは酒場でも出来事を話した。政略結婚のこと。『恋人』という依頼の理由。四大貴族であるバルゼリットと彼女の『恋人』である自分が戦うことを。

 

「そうか、だいたい事情は理解した。だが、奴が相手なのか………」

ノエルの話を聞いた後、リーシャは怪訝な表情になった。やはり四大貴族が相手だからだろうか?

 

「だけど、中止になったんだってさ。さっきクルルシファーがそう言ってたんだ。だから、とりあえずは大丈夫だろうよ。決闘についてはさ」

 

リーシャは顎に手をあて、考える仕草をした後、

「だが気を付けろよ? 奴にはあまりいい噂がないんだ。どんな手を使ってくるか分からんからな」

話によると、バルゼリットは以前、クルルシファーと出かけた時に襲ってきた賊のような連中を金で雇い、表には出せないような仕事をさせたこともある野心家らしい。旧帝国時代でも、国の乗っ取りを画策していたという話まであるほどだ。

 

「りょーかい。怒ってても心配してくれんだな。ルクスも惚れるぞ、そういうところ」

 

「そ、そうか!? ま、まぁ、お前は色々と危なっかしいからな」

嬉しそうにかをを綻ばせた後、胸の前で腕を組むと、ノエルから目線を逸らした。照れ隠しのつもりなのだろう。

 

「よし、この話はここまでだ。それでは、ここから本題だな」

こほんと軽く咳払いをし、リーシャは正座しているノエルの対面にあるソファーへ腰を下ろす。

 

「まじっすか………」

それから作戦無視のことについて、一時間―――、とまではいかなかったが、長い説教が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと、解放された………」

ノクトに淹れてもらった紅茶を飲みながら、ノエルは大きく息をつく。

 

説教が終わった後、ノエルはアイリの部屋を訪ねていた。目的はノクトに淹れてもらう紅茶で一息つこうと思ったから―――、ではなく、個人的に頼みたいことがあったからだ。

 

「お味はどうでしょうか? 今回は茶葉を変えてみたのですが」

訪ねたのはいいが、アイリは席を外しているため部屋にはノクトしかいなかった。今は同じ紅茶を対面で座りながら、二人で飲んでいる。

 

「すごくおいしいよ。さすがノクト」

従者の一族。さすがの腕だ。

 

「喜んでいただけたなら、幸いです。もう少しでアイリも戻ってくると思いますので、お待ちください」

 

「んー、今日はノクトに用事があってきたんだけど、せっかくだし、アイリとも話していくかな。まだ時間もあるだろうし―――」

部屋にある時計に視線を向けた後、ノクトに向き直る。

 

「そうですか。それで私に用事、とは?」

 

「ああ、それはな―――」

ノエルはソファーから立ち上がり、ノクトに小さな声で耳打ちする。ノエルから告げられた言葉に最初は驚いていたが、すぐにいつも通りの冷静な表情に戻っていた。

 

「Yes.分かりました。お任せください」

 

「ごめんね、俺、もう少しやっとかなきゃいけないことがあってさ」

時間までにもう一人、話しておきたい人物がいる。そうしないと上手く事を運べない。

 

「それと、もう一つ―――」

ノエルが言いかけた時、部屋のドアが開いた。ノックをすることなく入ってくるということは、この部屋の住人である彼女だろうと思い視線を向ける。そして思った通り、そこには―――。

 

「あれ? ノエル兄さん、来てたんですか」

綺麗な銀髪の小柄な少女。アイリが立っていた。

 

その少女に小さく手を上げると、

「お邪魔してるよアイリ。それとただいま、だな」

遺跡(ルイン)』調査から戻ってきたあいさつをする。

 

「おかえりなさいノエル兄さん。どうでしたか、『遺跡(ルイン)』の調査は? ノクトの話だと色々やらかしたようですが」

ノエルの言葉に返事をしてくれたが、ノクトから何を聞いたのか、ジト目を向けてくる。

 

「ノクト、もう話してたんだ。俺から話そうと思ってたんだけどなぁ」

 

「Yes.アイリがノエルさんの活躍を是非、聞きたいと言ってきたので、つい」

つい、どんなことを話したのだろうか?

 

「ノクトを助けたところは、さすがノエル兄さんと感心したんですが、クルルシファーさんと『遺跡(ルイン)』の中で逢い引きしたのはどうかと思いましたよ?」

 

「逢い引きじゃないからね!? ノクト、どんな伝え方したんだよ!」

アイリの言葉を聞いて、ノクトの方を急いで見る。だが、ノクトは顔を逸らし、目線を合わせてくれない。口元が緩んでいるところを見ると、わざとやったのは明白だった。

 

「ノエル兄さんはクルルシファーさんみたいな綺麗な人が好みですもんね。いいんじゃないですか? 『恋人』の依頼が終わっても、そのまま本物の『恋人』になってしまえば」

アイリは頬を膨らませ、そっぽを向いてしまう。かなりご不満のようだ。

 

「はぁ、アイリ。怒んないでよ。あれはクルルシファーに頼まれてやったことなんだよ………」

小さく息をついた後、ノクトが伝えたことを訂正し、正しい事の経緯を話した。

 

すると、アイリは顔を俯かせ、

「もう、ノエル兄さんは私の気も知らないで、どうしていつも………」

そう小さく呟いた。

 

その様子を見たノエルは慌てる。

「ア、アイリ? どうしたの?」

 

「なんでもないです!」

顔をあげるアイリ。その目元にはうっすらと涙が溜まっているようだった。

 

ノエルは掛ける言葉が見つからず、少しの間、二人の間に沈黙が訪れてしまう。

「………、ごめんなアイリ? 俺、バカだからさ、なんで怒ってるかよくわかんないんだけど、アイリがしてほしくないって思ってることしちまったんだよな。だからごめんな?」

上手く伝わるか分からない。でもノエルはなんとか言葉を絞り出した。そしてアイリの頭に優しく手を置く。

 

「………、ノエル兄さんは悪くありません。私が勝手に怒ってしまっただけです………」

その手を素直に受け入れていたが、再び、顔を俯かせるアイリ。

 

ノエルは優しく、慰めるように声を掛ける。

「だけど、俺が怒らせちゃったことには変わりないからさ」

 

「もう、ノエル兄さんは優しすぎますよ―――だから取られたくなんです………」

相変わらず、頬を膨らましたままだったが、機嫌は戻ったようだった。

 

最後の方は声が小さく聞き取れなかったが、アイリが顔を赤くしているので、尋ねてみると。

「ん? 最後なんて言った―――むぐっ!?」

頬を両手で挟まれた。

 

突然のことで驚き、アイリの頭から手を離すと、アイリの両手を掴んで頬から離す。

「いきなりどうしたのアイリ!?」

 

「なんでもないですから、気にしないでくださいね?」

屈託のない笑顔を向けられる。どうしてだろう。その笑顔が怖いよアイリ。

 

「は、はい……」

聞いてはまずいのだろうと理解し、素直に頷くノエルだった。

 

 

「それじゃあ、俺はルクスに用事あるから行くな。ノクト、例の件、よろしくね」

アイリの機嫌を取った後、飲み終わったカップを片づけるノエル。そして次の用件を果たすため部屋を出ようとドアへ向かう。

 

ノクトは先ほどのノエルの頼みにまだ少しばかり疑問をもっているようで。

「Yes.ですが本当にそうなるのでしょうか?」

 

「俺の予想が正しければ、だけどな」

まだ確証はないので、そう答える。

 

「分かりました」

珍しく真剣な顔でいるノエルの顔を見たノクトは頷いた。それを見た後、ノエルは部屋を後にして行く。アイリは何のことだろうと小首を傾げていた。

 

ノエルはルクスの部屋に向かうため、廊下を歩いていると、

「ああ、もう一つの頼みごと言うの忘れてたな、まぁ、いっか」

と、呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクスの部屋の前まで来たノエルは、

「ルクスー? フィルフィと愛を育んでいるとこ悪いんだが、ちょっといいかー?」

扉越しにとんでもないことをいきなり口にした。

 

そんなことを廊下で叫べば、案の定。

「ちょ、ちょっと!! ノエル!? 部屋の前で何言ってるの!?」

このように飛び出してくる。

 

ノエルは慌ててるルクスにお構いなしに、

「お、出てきたな。話があるんだが、いいか?」

そう尋ねた。

 

これ以上ノエルを廊下に置いておくのはまずいと判断したのだろう。

「う、うん。わかったよ。中に入って」

自分に部屋に入るよう促す。ノエルはすまんなと言いながら中に入る。

 

「それで話って―――」

ドアを閉めた後、ルクスが問いかける。だが、ノエルは部屋にある二段ベッドに目を向けていた。

 

ノエルの部屋は一人用のベッドなのだが、ルクスの部屋は二段ベッドで二人用だ。もちろんこの学園には男は二人しかいないため、ルクスが誰かと相部屋となると、それは女生徒ということになる。つまり―――。

 

「寝込みを襲うところだったのか………邪魔だったな、俺」

 

「違うからね!? 変な誤解しないで!」

二段ベッドで寝ていたのはフィルフィだった。ノエルはルクスに冷たい視線を向けるが、ルクスは慌てて否定していた。

 

ぱんっ、と軽く手を叩くと、ノエルは用件を切り出す。

「冗談はここまでにして、あんまり時間がないから、手短に話すな?」

ノエルに散々いじられたため、すでに疲れているルクスだったが、ノエルの言葉に耳を傾ける。

 

ノエルの用件。頼み事を聞いたルクスは、少し悩む様子を見せるが、

「いいけど………、上手くいくのかな?」

 

「だから、ルクス、お前に頼んでるんだよ。俺はこういうの下手だからな」

ノエルは戦闘に関してはルクスより上なのだが、ルクスに頼んだ用件は、小さい頃から策を練るのが上手い彼が適役だった。

 

「うん………、わかった。僕のほうでそれは何とかしてみるよ。ノエルも気をつけてね?」

 

「俺は全然問題ないから、安心しろ」

 

「でも、あのクロイツァー家が相手なんだよね? あの家は昔から知ってるけど、今でも旧帝国の思想をそのまま持ってる家柄だから、僕は好まないな」

 

「バルゼリットの雰囲気からして、そんな感じだからな。新王国は四大貴族の力で何とかやってこれているから、女王陛下は仕方なくあの家と付き合ってるんだろうけど―――」

 

コンコン。

言葉の途中で部屋のドアが叩かれる。

「ノクト・リーフレットです。こちらにノエルさんがうかがっていると思うのですが―――」

どうやらノエルの予想は当たったようだった。

 

「じゃあ行ってくるよ。みんなによろしくな、ルクス」

ルクスの肩を叩くと、ノエルは腰に差している銀色の機攻殻剣(ソード・デバイス)を光らせながらドアへと向かって行く―――、彼女の『恋人』として。

 





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